12話【刺突剣の使い手】
彼が生まれたのは小さな村だった。
本当に小さな村だ、首都との間に2つの山脈を挟んだ向こう側だ、村のすぐ近くには深い森があり、40キロも行かないところに他国との境界がある。
彼が生まれた時、そこは開拓されてまもない地域であったらしい。
その少し前まではその村も含めたかなり広い範囲を森が包んでいたそうだが、この森と接している1番外側の山の麓にかなり古い時代のダンジョンが見つかったらしく、この開拓はこのダンジョンを国の資源としよう、とゆうのとこのダンジョンにスタンピードの全長がある、とゆう話から急遽始まっていた。
その過程で3人の【勇者候補】が派遣されることになる。
その中の1人と当時開拓に参加した建築家の娘の間に生まれたのが彼である。
【勇者候補】の魔紋継承されることはなかなか無く、殆どが偶発的に現れた。
しかし、彼は幸運にも【勇者候補】の魔紋受け継ぎ、同時にもう1つ【貫通特化】とゆう母方の祖父から引き継がれた魔紋の二重所持者であった。
2つ以上の魔紋を持って生まれる多重所持者はかなり珍しく、10万人に1人とゆう奇跡的な確率でしか生まれない。
その中でも【勇者候補】と重なって受け継がれるのは300年ほどの歴史を持つこの国でも初めての事であり、神童と呼ばれること事になった。
5歳になる頃にはダンジョンにも【音魔法使い】の就任とともに安定し、彼は5歳から28歳までの23年ほどを王都に移住して生活することとなる。
この時、母親は既にダンジョンマスターの席に着いていたため王都へは行っていなかった。
王都に行くとその後6歳から16歳まで国立の学園に通う事になるるが、彼が入学したのは魔術学園と騎士学園のうち騎士学園であり、父であるノリヨシ・グーラーが刺突剣を収めていたことから彼も刺突剣を学ぶこととなる。
騎士学園では刺突剣の天才であった当時最年少の教授、エリック・フェルマーに支持し、『フェルマール刺突剣術』を学んでいく。
学園卒業後は第3騎士団にスカウトされることとなる。
初陣は当時権勢を誇っていたアノールト公爵家率いる第2王子派の謀反への対応であり、彼はその最前線となった西部地域にあるクロード草原にて見事300人近い敵兵を討ち取ることとなった。
この功績が認められ2年続いた戦争の後、正式に騎士団長となり、最年少騎士団長として大きな期待を背負うこととなった。
その後4度ほど戦争を経験するが、そのいずれも華々しい戦績を上げ着実に信用を勝ち取っていった。
彼が27歳の夏、突如王都の近くで起こったスタンピードに対応した彼は右翼側に突貫、実に10万体の魔物がいたとされるスタンピードで脅威の2万体討伐とゆう結果をもたらすことになった。
が、この時に負った右足の怪我を機に騎士は引退、最後の仕事として依頼された件のスタンピードを起こしたダンジョンを攻略し、その足で生まれ故郷の片田舎村へと帰っていくのだった。
それから現在の37歳まで、幸せな生活は続く。
ーーーーー
「刺突技『紅丸』!」
「はやい、ね? うん、喉が抉られた、」
男の刺突がオオカミの魔物、その最上位種の喉を掻っ捌く。
喉に綺麗な穴があき、その穴を溢れ出した血が真っ赤に染めあげることから『紅丸』と名付けられた技だ、その高速は音を置き去りにし、負傷したことを一瞬遅れで気付かせる程の最速だ。
とは言ってもそこまで深く入ってはい無い、喉の肉が数センチえぐれただろうか?
浅く血が流れたものの、それだけだ。
『紅丸』の名を冠する技だったが、その真髄を残すこと叶わなかった。
位置自体は悪くないが貫通できていない、純粋なパワー不足、本来ありえない状況に男の目が一瞬見開かれた。
たかだか数センチ抉られただけ、その程度で済んだのは間違いなくこの魔物の反射神経がえげつないからではあるのだが、それ以上に首の強度が半端ない。
魔気で強化され、魔物特攻の特性を持つ【勇者候補】の威力強化に【貫通特化】によるら貫通力の強化を受けた一撃だ、本来であれば断崖絶壁の巨大な岩山を抉り、一撃で大きなトンネルを作れてしまうような威力のはず。
それがこの程度で済むとゆうことだけを見ても、この存在が尋常ではないとゆうのが分かるだろうか。
「硬いな、それなら!」
男は刺突を引っこめる勢いのまま後ろ蹴りを魔物の腹に喰らわせ、後ろに飛ぶ。
距離をとると男は剣を収める。
剣を収めた男、だが、その一見無防備な姿に、魔物は接近できない。
恐ろしいのだ、最速の一撃を持っ相手が、静かに自分を待つ、その状況それ自体が空恐ろしい。
かなり長い剣だ、男の身長より少し短いだろうか?
収めた剣の柄に手をかけ、姿勢を落とす。
低く、低く、足は小さく、膝を崩して前傾姿勢をとる。
「ほお、何を見せてくれるん、だい?」
姿勢を低くした男を見た魔物は、目を細め興味深そうに見つめる。
見つめつつ、何を思ったのか木刀をかかげる。
かかげて、そして、、
「ほいっ!」
「んなっ!?」
魔物は木刀を投げつける。
投げられた木刀はその怪力を受けたせいかかなりの速度が出ているようだ、男は飛んでくる木刀に一瞬驚くものの、すぐに平静に戻った。
「『認識停滞』!!」
即座に状況を認識すると、行動の主導権を魔気で脳を活性化する『武技』と呼ばれる技術を使い備える。
『武技』により拡張された意識により投げられた木刀が急にスローモーションになる。
男は選択の猶予が生まれると同時に、ほぼ条件反射で体をさらに全景にたおし、強烈な後ろ足の踏みしめで走り出した。
そして加速する、前へ前へと加速し、そのままに抜き放たれた刃が木刀を弾いた!
最速の称号に相応しい瞬足、利き足を負傷してなおこの速度である、軽く50mは取られていた間合いを一瞬で潰すと、男は剣を構える。
顔の横に柄が重なるよう構えて左手側に身をひねった。
魔物は動かない、ただ見つめているのだ。
「刺突技『波状突き』!!」
「ジュッ!!!」
男の服が擦れて音が聞こえた、それは服が摩擦で焼ける音。
構えられた右腕が動き、突き出された剣は光のような神速で空気を割き魔物を捉えた、らしい。
「うぐっ!なかなか、いたい」
魔物の優れた目を持ってして捉え切る事の出来ない刃は、魔物の喉を突き破り貫通している。
直径5センチはありそうな風穴だ、たとえ最上位種が概念に近い存在と言っても、これが無事ですむ負傷でないのは明らかだ。
そのまま振り切られた事で魔物の首に大きな傷ができてしまい、魔物の無表情がほんの少しだけ苦痛に歪んだ。
血は赤い、流れた血で地面が赤黒く変色していた。
そんな好きを見逃すような男では無い、男は引き戻した剣を構えると、、
「ギチギチギチ、、」
筋肉が絞られ人体からおよそなってはいけないような音を鳴らし始める。
男の最大の武器はそのバネの強さであった、学生時代より筋肉のバネが他のついづいを許さないほどに強靭であり、そんな筋肉を引き絞り放たれる突きは音を切り裂くと噂されるほどであった。
「刺突技『黒う、、え、?」
男の肉体は躍動し、引き絞られた筋肉が解き放たれようとした瞬間、男の動きが止まる。
急に止まったことで生み出されたエネルギーに体が悲鳴をあげるも、男はそれに気づかない。
男は、なにか、絶対に起こっては行けないことが起こったのだと感じたらしい、追撃の手を止めていた。
「、、エノワール、??」
息子の名前を呟き、直近の殺意など忘れて周囲をキョロキョロと見回す男。
相当に格好悪いが、今はそんなことが言ってられる状況じゃない。
男が見渡した焼けた地面のどこにも、息子の姿は見えない。
さっきまでいただろう場所からは足跡が、周りを囲む木々の中でも一際大きく見える木の後ろへと続いていた。
逃げたのだろうか?
逃げたのかもしれないが、しかしあの火柱を食らって逃げられるものだろうか、?
そうでないとしたら、この足跡は一体、??
そんな思考が男の頭に張り付いて離れない中、、
「つづけよう、」
止血のため首を焼いたらしい魔物が近付いた。
その目は興奮している、焼いた傷口も塞がってなどいない、血が止まっただけ、本当にそれだけの大したことは無い応急処置だ。
しかし魔物は気にしない、その目は確かに男を捉えている。
そして、放心している男を、魔物の強烈な拳が襲った。




