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神に愛された子供たち  作者: 七星北斗
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二十 世界の声

---


 フィリピン中部、セブ島。


 プライベートジェットから降りた瞬間、肌にまとわりつくような熱気が白馬を包んだ。


「うわ……南国って感じだ」


 高級リゾートホテルにチェックインした僕たちは、そのままプライベートビーチへ向かうことになった。



---


 海に出ると、すでに傭推さんがいた。


 準備運動してる。


 異様に本気で。


「おや、白馬君。遅かったね」


「傭推さんが早すぎるんですよ……」


 傭推さんは血走った目で振り返る。


「私は今日という日のために生きてきた」


 そう言って、防水カメラを掲げた。


「見たまえ。最新式だ」


「いや目が怖いですって」


「この時のためだけに買ったんだよ?」


 満面の笑み。


 白馬は若干引きながら苦笑いする。


(この人大丈夫かな……)



---


 やがて、水着姿の女子メンバーが集まり始めた。


 傭推さん、感極まる。


「白馬君……ここが天国だ」


「落ち着いてください」


 女子陣の視線は冷たい。


 そして最後に——


 狂花が現れる。


 黒のビキニ。


 一瞬、空気が止まった。


 傭推さん、鼻血。


 そのまま砂浜に倒れる。


「うわっ!?」


「はい没収です」


 ハルさんが防水カメラを回収。


 さらにスイカ割り用のバットで叩き割った。


 容赦がなかった。


 傭推さんは砂に埋められた。


 顔だけ出てる。


(扱い雑すぎない!?)



---


「白馬……」


 振り返る。


 ミナサだった。


 白いワンピースタイプの水着。


 裾をぎゅっと掴みながら、上目遣いでこちらを見ている。


「……どうかな」


 破壊力が高い。


 白馬は思わず視線を逸らした。


「……すごく、可愛い」


「っ……!」


 ミナサの顔が一気に赤くなる。


「そ、そっか……ありがと」


 その後ずっと機嫌が良かった。



---


 リナとアリスは、海そのものが初めてだった。


「海って塩辛いんですね……!」


「波すごいです波すごいです!」


 子供みたいにはしゃいでいる。


 そんな姿を見ていると、ここが“神殺し”の集団だということを忘れそうになる。


 ——その時だけは。



---


 夜。


 サヤ、柘榴、雛、リナの四人は、近くのスーパーへ買い出しに出ていた。


 帰り道。


 突然、街灯が消える。


 辺りが暗闇に沈んだ。


「……っ」


 甘ったるい香りが漂う。


 嫌な匂いだった。


 本能が警鐘を鳴らす。


「誰だ」


 サヤの声が低くなる。


 暗闇の奥から、男が現れた。


 アロハシャツ。


 軽薄そうな笑み。


「おやおや。これは失礼」


 男はわざとらしく頭を下げる。


「私たちは“闇営業”と呼ばれる者でして」


「……裏社会の便利屋か」


「ええ。金さえ積まれれば何でもします」


 男が笑う。


「そして今回は——貴女方を殺す依頼です」


 空気が変わった。


 サヤは一歩前へ出る。


 柘榴たちを庇うように。


「能力は?」


「ご丁寧に名乗りましょう」


 男は笑みを深める。


呪術製造(カースドメーカー)


「またの名を——呪術王(カースドキング)


「……痛い名前」


「ふふ、よく言われます」


 次の瞬間。


「では、スカートを捲ってください」


「……っ!?」


 体が勝手に動く。


 意思と関係なく、手がスカートへ伸びる。


「な……に……!?」


 止まらない。


 筋肉が命令を聞かない。


 羞恥で顔が熱くなる。


「ははっ、いいですねぇ」


 男は愉快そうに笑った。


「次は——自分の首を絞めなさい」


 指が喉へ伸びる。


 力が入る。


 呼吸が止まる。


 酸素が足りない。


「ぁ……っ……!」


 意識が遠のいていく。


 リナが涙目で苦しそうに喘いでいた。


 雛は恐怖で震えている。


 柘榴の顔が青ざめる。


 サヤは歯を食いしばった。


(ここで終わるのか——)


 超感覚を発動。


 それでも身体は止まらない。


「ボス……ごめん」


 涙が零れる。


「あの時の約束……守れない……」


「簡単に諦めるな」


 声。


 次の瞬間。


 男の首が宙を舞った。



---


 狂花が立っていた。


 返り血すら浴びず。


 ただ静かに。


「無事か?」


 サヤは、その姿を見た瞬間——


 全身から力が抜けた。


 柘榴と雛が泣きながら抱きつく。


 リナは腰が抜け、その場で荒く呼吸を繰り返していた。


 風が吹く。


 そして。


 男の死体は、砂のように崩れて消えた。


 まるで最初から存在しなかったみたいに。



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