表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に愛された子供たち  作者: 七星北斗
こちらからお読みください

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/85

二十一 囚われた白馬

 燃え盛るリゾートホテル。


 黒煙が夜空を汚し、赤い火の粉が風に舞う。


 その屋上で——


 アロハシャツの男、呪術製造は目を丸くしていた。


「へぇ……」


 楽しそうに笑う。


「分身体が殺られましたか」


「流石ですねぇ、神殺しの狂花」


 だが——


 隣に立つ男は笑っていなかった。


 赤羽。


 冷え切った目。


 感情の見えない顔。


「……遊んでいるからだ」


 呪術製造の肩が跳ねる。


「貴様、死にたいのか?」


 空気が凍る。


 呪術製造は即座に地面へ額を擦りつけた。


「も、申し訳ございません……!」


「次こそは、次こそは必ず——」


「次はない」


 赤羽の殺気に、呪術製造の喉が引き攣る。


 声すら出なかった。



---


 一方。


 狂花は、異様な“重さ”を感じていた。


 空気が違う。


 嫌な予感が、肺の奥にへばりつく。


「……柘榴」


「はい」


「道を開け」


 柘榴は即座に能力を展開。


 空間が裂ける。


 その先に見えたのは——


 炎だった。



---


 燃えるホテル。


 崩れた壁。


 血の臭い。


 負傷した団員たち。


 狂花は周囲を見渡す。


 そして——気づく。


(いない)


 白馬。


 ミナサ。


 二人の姿がない。


 近くにいたハルへ視線が向く。


「……説明しろ」


 ハルの肩が震えた。


「ミナサちゃんは……」


 声が掠れる。


「白馬さんを守ろうとして……」


「運を無効化する能力、《円陣》の中に飛び込んで……」


 狂花は黙って聞いている。


 だが空気が、少しずつ重くなる。


「ミナサちゃんの能力は、運をエネルギーに変換して動くタイプです……」


「だから……動けなくなって……」


 ハルの声が震える。


「《道化師》に……四肢を切断されました」


 その場の空気が止まる。


「それでも……」


「ミナサちゃんは、白馬さんを庇って……」


 ハルは涙を堪える。


「最後は……赤羽に焼かれて……」


「……何も残りませんでした」


 静寂。


 誰も息をしない。


「白馬さんは……」


 ハルは唇を噛む。


「ミナサちゃんが殺されたのを見て、一人で突っ込んで……」


「捕まりました」


 ——沈黙。


 狂花は俯いたまま動かない。


 数秒。


 数十秒。


 誰も声を出せなかった。


 そして——


「……全員下がれ」


 低い声。


 感情が消えていた。


 ハルが目を見開く。


「ですが、ボス一人では——」


「下がれ」


 空気が揺れる。


 殺気。


 その場の全員の本能が悲鳴を上げた。


「……ッ」


 ハルは息を呑む。


「ボス、ご武運を……」


 血が滲むほど唇を噛む。


 何も出来なかった。


 守れなかった。


 その事実だけが胸を抉る。



---


 狂花は静かに刀へ手を伸ばした。


 ——封印指定称号。


 《血扇乱舞》


 発動。


 次の瞬間。


 ドクン、と。


 周囲の空気が脈打つ。


 さらに——


 能力《リミッター解除》


 黒刀。


 白刀。


 二本を抜刀。


 称号《二刀流》発動。


「——《花血散残》」


 赤い花弁が舞う。


 血の色だった。


 何千万。


 何億。


 世界を埋め尽くすような、死の花吹雪。


 花弁に触れた闇営業の人間が、一瞬で崩れる。


 血だけを残して。


 肉も。


 骨も。


 何も残らない。


 それを見た赤羽が、初めて表情を変えた。


「……撤退だ」


 本能的な危険察知。


 幹部たちは即座に逃走を開始する。


 狂花は追おうとした。


 だが——


「行かせません!」


 サヤ。


 そしてハル。


 二人が能力を使い、狂花を止める。


「放せ」


 低い声。


「斬るぞ」


 本気だった。


 止めれば、たぶん本当に斬られる。


 それでも——


 サヤは離さない。


「駄目です……!」


 涙を流しながら叫ぶ。


「《血扇乱舞》をこれ以上使えば、また貴女が壊れる!」


 狂花の目が揺れる。


「また——」


 サヤは泣きながら叫ぶ。


「あの時みたいになるんですか!!」


 ハルも必死に押さえる。


「今追えば罠です!」


「準備なしで突っ込むのは危険です!」


 それでも狂花は止まらない。


 刀が振られる。


 一閃。


 サヤたちには当たらない。


 だが背後の森が——


 一瞬で斬り倒された。


 何百本もの木々が、遅れて崩れ落ちる。


「……放せよ」


 狂花の声が震える。


 その目から——


 涙が流れていた。



---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ