十四 神の先兵
ベッドでは、狂花がすやすやと寝言を呟く。
「怜白、今度こそ。息の根を……」
執務室で凪沙は、優雅に紅茶を注ぎ、サノラムと静かに意見交換する。
奈落落ちの本部隊の進軍ルートに沿って、白馬たちは移動していた。
移動中、白馬はふと疑問を口にする。
「人間は、どうして武器を持つんですか?」
「んー……理由は簡単だけど、その闇は深いよ」
UNAは少し難しい顔で答えた。
『まず大前提として、武器は“どうすれば効率的に人を殺せるか”を考えて作られた、人殺しの道具だ』
白馬はその言葉に、思わず苦い顔を作る。
『人間は臆病な生き物だから、周りが武器を持つと、自分も同じか、それ以上を持たないと不安になる。
武器は持つだけで抑止力になる、が。本来この世界に存在すべきものじゃない』
UNAのどうしようもなさそうな表情を見て、白馬は胸が痛んだ。
『暴力から派生して生まれたのが武器で、暴力がなければ武器は存在しない。
でも、人間の手は使い方次第で、人を助けることもできる。
僕はそれができると思ったから、神殺しに入ったんだ』
UNAを含む神殺しのメンバーたちは、どこか人間らしい優しさを持っている。
白馬は迷いが和らぐのを感じ、自問する。
「自分には、何ができるのか……これからもっとできることを増やさないと」
「貴重なお話、ありがとうございます」
白馬は礼を言う。UNAは少し照れ、頭をかきながら微笑んだ。
「おい、無駄口はその辺にしておけ」
「はい、すみません」
白馬はすぐに口を閉じた。
サヤが指を一本伸ばす。その先にあったのは、奈落落ちの本部隊。
だが、様子が異常だった。兵士たちが次々と血を吹き出し、倒れていく。
「ヤバッ、神の先兵がいるじゃん」
サヤが慌てたように呟く。
「しかも、アイツは“大気”だな」
輝が目を凝らして観察する。サヤは頷いた。
「相手するの大変なんだよな……とりあえずボスに連絡しないと」
サヤは携帯を取り出す。
その数分後――
奈落落ちの兵士たちの体が、次々に破裂し始めた。
「ボスが増援を送るらしい。怪我しないように大気を足止めしろって」
サヤは電話を切り、作戦を伝える。「白馬、前線にはあんまり出るなよ、死ぬから」
「了解です」
白馬は返しつつ、疑問を口にした。
「大気とは、もう何度も戦っているのですか?」
サヤは頷き、説明を始めた。
『ヤツは神の先兵、自然神と呼ばれる存在だ
個ではなく核を壊せば倒せる。だが、倒しても時間が経てば復活する』
「倒しても復活するなら意味ないじゃないですか」
不安げに尋ねる白馬に、サヤは悪戯っぽく笑った。
「まあ、倒したら二ヶ月は暴れないけどね。
考えるよりも、今は行動じゃない?」
サヤは白馬の背中を軽く叩く。
「男だからとか女だからとか、そういうのは関係ない。
生まれたからには、強く生きようぜ」
その言葉に白馬は頷き、胸の不安は自然と消えていた。
UNAは待ちきれない様子で催促する。
「早く、行きましょう」
サヤは頷き、音頭を取る。
「我らが神殺し、神を討ち滅ぼす者なり」
サヤ、UNA、輝が同時に声を重ねる。
白馬も少し遅れて、その言葉を繰り返した。
サヤは能力「跳ビ姫」を発動、一瞬で前線に到達。
UNAと輝は能力「縮地」を使い追従。
白馬も縮地を使うが、まだスピードは十分ではない。
大気の姿は、まるで巨大な中世の城のようだった。
周囲には空気がなく、圧縮した塊を飛ばしてくるため、近寄ることはできない。
サヤはしばらく観察し、思いついたのか能力「獣王」を発動。
身体能力が飛躍的に向上し、猫耳と尻尾を生やして巨大な岩壁を持ち上げ、大気に投げつけた。
岩壁は衝突し、大気の六分の一が崩れるが、すぐに修復され始める。
「一筋縄じゃいかないか~。まあ、ボスの命令は“倒す”じゃなく“足止め”だし」
UNAは能力「闇衣」を発動、ダメージ軽減・身体能力アップ・闇属性能力倍加。
輝も能力「天使の言霊」を発動、命令で守護・攻撃を操作できる状態になる。
全員の身体能力が強化され、白馬も前線に到着。
能力「金剛の守り」を発動し、周囲に強力な障壁を展開した。
守りに徹した僕たちの元に、増援である凪沙が到着する。
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