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第四十四話 リュネス王国の道

国境を越えてから、四日ほどが経っていた。


その間に二人はいくつかの町を越え、リュネス王国の街道を進んでいた。


アルジェナにとって、初めて見る隣国の景色は、思っていた以上にアルディア王国とは違っていた。


アルディア王国では、石や木を使った家々が多く、広い畑や草原の中に町が作られていることが多かった。


一方、リュネス王国では森や丘の近くに町が作られていることが多く、木造の家々も目立つ。


屋根も雨や冬の雪に備えるように傾斜がついていて、アルディア王国とは少し違った造りになっていた。


「同じ国じゃないってだけで、結構違うんだね」


アルジェナが、通り過ぎた町を振り返りながら言った。


「そうですね。私も、実際に来てみると少し驚きました」


リリアも町の様子を思い出す。


「町の大きさや建物は違っても、店で買い物をしたり、仕事をしたりしているところは同じですけどね」


「うん」


アルジェナは笑った。


「そこは、あんまり変わらないんだね」


少し考えてから、アルジェナが言う。


「……あ、でも」


「はい?」


「国が変わるたびに、お金をその国の硬貨に替えるの、面倒だね」


「ふふっ。そうですね」


国が変われば、景色も暮らしも少しずつ変わる。


けれど、そこに住む人々の生活まで大きく変わるわけではない。


そんなことを、アルジェナはこの四日間で少しだけ感じていた。


街道の周囲には森が増え、遠くにはなだらかな山々が連なっている。


道も緩やかな上り下りを繰り返し、森の中から小さな川が街道の近くまで流れてきている場所もある。


「リュネス王国は、森林や山地が多い国なんです」


リリアが周囲を見ながら言った。


「そのせいか、この辺りは森に適した魔物が多いそうです」


「うん。アルディア王国より、森の魔物が多いってことだね」


アルジェナも周囲を見ながら頷く。


「アルディアでも森には魔物がいたけど、こっちは種類も少し違うのかな」


「そうですね。土地によって、生息している魔物には違いがあるそうです」


「なるほど」


アルジェナは森の奥へ目を向けた。


「じゃあ、見たことのない魔物が出てくる可能性もあるってことか」


「はい」


「それなら、少し気をつけたほうがよさそうだね」


「そうですね」


二人は再び歩き始めた。


しばらくすると、街道の脇に小さな木製の標識が立っているのが見えてきた。


そこには、この先にある町の名前が書かれている。


アルジェナが足を止め、標識を確認する。


「次の町まで、あと半日くらいかな」


「そうですね」


「じゃあ、今日はそこまで行こう」


「はい」


二人は街道を進んでいく。


森の近くを通るたびに、アルジェナは無意識に木々の奥へ目を向けた。


まだ魔物の姿はない。


ここは、アルディア王国とは違う土地だ。


どんな魔物がいるのか。


どんな町があるのか。


どんな人たちが暮らしているのか。


アルジェナには、まだ何も分からない。


「知らない場所って、ちょっと楽しみだね」


「はい」


リリアが笑った。


二人はそんな会話をしながら、長い街道を歩いていった。


夕方が近づくにつれ、森の影が長く伸びていく。


その先には、まだ二人の知らないリュネス王国の町が待っていた。

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