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第四十三話 隣の国

国境門が近づくにつれて、街道を行き交う人の数が少しずつ増えていった。


やがて二人の前に、大きな石造りの門が見えてくる。


街道をまたぐように造られた門の両側には、高い石壁が続いていた。


門の脇には小さな詰所がいくつか並び、槍を持った兵士たちが出入りする人々を確認している。


門の前には数台の荷馬車が止まり、その後ろには旅人たちが列を作っていた。


荷馬車からは車輪の軋む音や、積まれた荷物が揺れる音が聞こえる。


商人らしき男が兵士と話をし、別の場所では荷物を確認されている旅人もいる。


国境を越える人々が、それぞれの順番を待っていた。


「結構、並んでるね」


アルジェナが列の先を見ながら言った。


「はい。国境ですから」


リリアも列の最後尾につく。


しばらく待っていると、前にいた商人たちの確認が終わり、少しずつ列が進んでいく。


商人の荷物を兵士が確認し、問題がなければ通過していく。


「思ったより、ちゃんと確認するんだね」


「国を越える場所ですからね」


「そっか」


二人はそのまま順番を待った。


やがて、二人の番が来る。


「止まってください」


兵士が二人に声をかけた。


「アルディア王国から出る方ですか?」


「はい」


リリアが答える。


「セレフィア聖国へ向かっています」


兵士は二人の姿と荷物を確認する。


「身分証をお願いします」


二人はそれぞれ身分証を取り出した。


兵士は内容を確認すると、リリアの持っている教会関係の証も確認する。


「セレフィア聖国の教会へ向かうのですね」


「はい。神官になるための試験を受けるために、本部へ向かっています」


「なるほど」


兵士は頷いた。


「アルジェナさんは?」


「私は付き添いです」


アルジェナが答える。


「リリアと一緒に旅をしています」


「分かりました」


兵士は二人の身分証を返した。


「問題ありません。通ってください」


「ありがとうございます」


リリアが頭を下げる。


アルジェナも軽く頭を下げた。


二人は国境門をくぐった。


大きな石造りの門を抜けると、その先にはこれまでと変わらない街道が続いている。


アルジェナは少し歩いたところで、後ろを振り返った。


「……これで、アルディア王国を出たんだよね?」


「はい」


リリアも振り返る。


国境門は、少しずつ二人から遠ざかっていく。


「なんだか、あっさりしてるね」


「そうですね」


アルジェナは前を向く。


道はそのまま続いていた。


空も、草原も、吹いてくる風も、今までと大きくは変わらない。


けれど――。


「……ここからは、リュネス王国なんだ」


「はい」


リリアが頷く。


「国が変わっても、主要な国では共通語が使われていますから、言葉は普通に通じますよ」


「そうなんだ」


「地方によっては訛りがありますけど、旅をする分には困らないと思います」


「じゃあ、安心だね」


「はい」


二人は再び街道を歩き始めた。


しばらくすると、道を行き交う人々の姿が増えてきた。


荷馬車には、アルディア王国では見かけなかった紋章が描かれている。


道沿いの店に並んでいる品物にも、少し違ったものがあった。


建物の造りも、どこかアルディア王国とは違って見える。


「……やっぱり、少し違うね」


アルジェナが店を眺めながら言う。


「そうですね」


「何が違うのかは、まだよく分からないけど」


「私もです」


リリアは苦笑する。


「私もリュネス王国に来るのは初めてですから」


「そうだったね」


二人はそんな話をしながら歩いていく。


夕方になる頃、街道沿いに小さな町が見えてきた。


今日はここで休むことにした。


宿を探して歩いていると、アルジェナがふと足を止める。


「ねえ、リリア」


「はい?」


「国って、不思議だね」


「不思議、ですか?」


「うん」


アルジェナは、さっきまで歩いてきた街道を振り返った。


「道はずっと繋がってるのに、途中に門があって、そこから先は別の国なんだ」


「……そうですね」


「さっきまでアルディア王国にいたのに、今はもうリュネス王国なんだ」


アルジェナは少しだけ笑った。


「世界って、広いんだね」


「はい」


リリアも笑う。


「私も、今回の旅で初めて実感した気がします」


二人は宿を見つけると、中へ入っていった。


セレフィア聖国までは、さらに長い道のりが続いている。


まだ旅は始まったばかり。

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