第四十一話 グランセルを後にして
グランセルに滞在して、数日が経った。
二人は街を歩き、食事を楽しみ、旅に必要なものを揃えた。
大きな市場にも立ち寄り、これまで訪れた町では見たことのない品物を眺めることもできた。
「グランセルって、本当に大きな町でしたね」
宿を出たリリアが、振り返りながら言った。
「うん」
アルジェナも後ろを見る。
大きな城壁。
その向こうには、いくつもの建物が並んでいる。
「最初に来たときは、ちょっと驚いたよ」
「私もです」
「でも、楽しかったね」
「はい」
二人は笑いながら、街道を歩き始めた。
グランセルを出ると、街の喧騒が少しずつ遠ざかっていく。
行き交う荷馬車の数も減り、周囲には広い草原が広がっていた。
夏の暑さはまだ残っている。
けれど、風には少しずつ秋の気配が混じっていた。
アルジェナは歩きながら、前方に続く街道を見つめる。
「次は、どこまで行くんだっけ?」
「次の大きな町までは、数日かかるそうです」
「じゃあ、しばらくは歩きっぱなしだね」
「そうですね」
リリアが持っている地図を広げる。
グランセルから先は、これまでよりも人の少ない街道が続いている。
その先には、アルディア王国の領土を越えるための国境がある。
さらにその先には、別の国がある。
そして、その国を越えた先に――セレフィア聖国がある。
「セレフィア聖国までは、まだかなりありますね」
「どれくらい?」
「グランセルからでも、五百キロ以上はあるそうです」
「五百……」
アルジェナは思わず地図を覗き込んだ。
「まだそんなにあるんだ」
「はい」
「じゃあ、急がないと」
「急がなくても大丈夫ですよ」
リリアが笑う。
「急いで怪我でもしたら、それこそ遠回りですから」
「……それもそうだね」
アルジェナも笑った。
二人は再び前を向く。
街道の先には、まだ見たことのない町がある。
まだ知らない人たちがいる。
そして、その先にはセレフィア聖国が待っている。
「……長い旅になりそうだね」
「はい」
リリアは頷いた。
「でも、二人なら大丈夫ですよ」
「そうだね」
アルジェナは剣の柄に軽く触れる。
そして、歩き出した。
グランセルの街並みが、少しずつ遠ざかっていく。
二人の旅は、また新しい場所へ向かって進み始めた。




