第三十八話 大きな傭兵組合
グランセルの大通りを歩きながら、アルジェナは目的の建物を探していた。
やがて、大通りの一角に大きな建物が見えてくる。
入口の横には、傭兵組合を示す看板が掲げられていた。
「……あれかな」
アルジェナは足を止める。
以前訪れた町の傭兵組合は、小さな建物だった。
受付も一つか二つ。
依頼が貼られた掲示板も一つだけで、並んでいる依頼も近くの町や村に関するものがほとんどだった。
けれど、目の前にある建物は違う。
建物そのものが大きい。
「……ここまで大きいんだ」
アルジェナは少し驚きながら、中へ入っていった。
中に入ると、広い室内にいくつもの受付が並んでいた。
壁際には、大きな掲示板がいくつも設置されている。
それぞれの掲示板には、違う種類の依頼が貼られていた。
【護衛】
【運搬】
【魔物討伐】
【捜索】
【採集】
【情報収集】
さらに奥には、長距離の商隊護衛や、大人数を必要とする依頼まで並んでいる。
「こんなにあるんだ……」
アルジェナは掲示板の前まで歩いていき、依頼を一つずつ眺めていく。
近隣の村への護衛。
商隊の長距離護衛。
薬草や鉱石などの採集。
行方不明者の捜索。
魔物の討伐。
街道周辺の調査。
さらには、盗賊の動向を調べる依頼まであった。
「……前に見たところとは、全然違うな」
小さな町の傭兵組合では、依頼を受ける人もいつもの顔ぶれが多かった。
けれど、ここには様々な依頼が集まっている。
それだけ、この町では傭兵を必要とする人が多いということなのだろう。
アルジェナが掲示板を眺めていると、近くにいた職員が声をかけてきた。
「何かお探しですか?」
「ううん。依頼を探してるわけじゃないよ」
「そうでしたか」
「ちょっと見てみたかっただけ」
「見学ですか?」
「うん。ここまで大きな町の傭兵組合って、どんな感じなのかなって」
「なるほど」
職員は納得したように頷いた。
「グランセルは商人や旅人が多く集まりますからね」
「その分、傭兵に頼まれる仕事も多いんです」
「だから、こんなに大きいんだ」
「はい」
アルジェナは改めて、広い組合内を見回した。
受付の数も、掲示板の数も、以前見たものとは比べものにならない。
「同じ傭兵組合でも、町が変わるとこんなに違うんだ……」
アルジェナはしばらく掲示板を眺めたあと、組合を出ることにした。
今日は依頼を受けに来たわけではない。
ただ、どんな場所なのか見てみたかっただけだ。
「……面白かったな」
そう呟いて、アルジェナはリリアとの待ち合わせ場所へ向かって歩き始めた。




