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第三十三話 二人で受ける依頼

街道を歩き続け、二人は小さな町へ辿り着いた。


「町が見えてきましたね」


リリアが前方を指差す。


「うん。今日は町で休もう」


アルジェナは町を見ながら答えた。


「……そうだね」


リリアは少しだけ息を吐いた。


「……やっぱり、町が見えると安心しますね」


「そうだね」


「はい」


リリアは小さく笑った。


「さっき魔物に襲われたばかりですから」


「うん。今日はゆっくり休もうか」


「はい」


二人はそのまま、町の中へ入っていった。



二人は宿を探したあと、それぞれ別れて行動することにした。


リリアは町の教会へ。


アルジェナは傭兵組合へ向かった。


「また依頼を探すんですか?」


「うん。旅を続けるには、お金も必要だから」


「そうですね」


リリアも頷く。


「私も教会での用事が終わったら、あとで行きますね」


「うん。またあとで」


二人はそこで別れた。



傭兵組合の中へ入ると、壁にはいくつもの依頼が貼られていた。


【薬草採取】


【荷物運搬】


【村までの護衛】


【魔物討伐】


アルジェナは依頼書を一枚ずつ眺めていく。


「……これならできそう」


目に留まったのは、近くの村への荷物運びだった。


報酬はそれほど高くない。


だが、危険も少なそうだった。


アルジェナが依頼書へ手を伸ばした、そのときだった。


「……そうだ」


ふと、あることを思い出す。


「私、まだ傭兵組合に登録してなかった」


今までは、その場その場で頼まれた仕事を受けてきただけだった。


傭兵として、どこかに所属したこともない。


「でも……」


アルジェナは少し考える。


「使えるものは使わないとね」


ふと、ヴァルドの顔が浮かんだ。


「……ヴァルドさんも、そう言うだろうし」


アルジェナは受付へ向かった。



「傭兵組合に登録したいんですけど」


「新規登録ですね」


受付の男が手続きを始める。


いくつかの確認を終えると、簡単な説明を受けた。


「傭兵組合は、依頼の仲介や報酬の受け渡し、依頼人とのトラブルなどを扱っています」


「うん」


「ただし、傭兵にランクをつけるような制度はありません」


「そうなんだ」


「傭兵には、組合に登録して仕事を受ける者もいれば、依頼人と直接契約する者もいます。何人かで傭兵団を組んでいる者もいます」


「へえ」


「依頼を受けられるかどうかは、基本的に本人と依頼人の判断です。危険すぎる依頼であれば、こちらから注意することはありますが」


「なるほど」


アルジェナは登録証を受け取った。


「じゃあ、登録してるからって、どこかに所属しないといけないわけじゃないんだね」


「はい。組合への登録は、あくまで仕事を受けるためのものです」


「分かった」


アルジェナは登録証をしまった。


傭兵になりたいわけじゃない。


どこかに所属したいわけでもない。


ただ、旅をしながら人を助けるために――使えるものは使う。


それだけだった。



その頃、リリアも教会での用事を終えて、組合へ戻ってきていた。


「アルジェナ」


「おかえり」


「登録されたんですか?」


「うん。これで依頼も受けやすくなるって」


アルジェナは依頼書へ目を向けた。


「それより、これならできそう」


「どんな依頼ですか?」


「近くの村への荷物運び」


リリアが依頼書を覗き込む。


「……あ」


リリアは別の依頼書を取り出した。


「私も、少し気になる依頼がありまして」


「気になる依頼?」


「はい」


リリアが指差した。


そこには、別の依頼書が貼られていた。


【教会への物資輸送】


【依頼先:近隣の村】


【内容:医薬品、食料、生活用品の輸送】


「この村の教会で、薬が足りなくなっているそうです」


リリアは依頼書を見つめる。


「私たちが向かう予定の方向とも同じです」


「じゃあ、これにしよう」


アルジェナは迷わず言った。


「え?」


「村まで行くんでしょ?」


「はい」


「だったら、ついでに運べばいいよ」


リリアが少し驚いた顔をする。


「でも、危険かもしれませんよ?」


「そのときは私が戦う」


「……ふふ」


リリアが小さく笑った。


「アルジェナらしいですね」


「そう?」


「はい」


リリアは依頼書を手に取った。


「では、一緒に行きましょう」


「うん」


二人は組合の受付へ向かった。



依頼の手続きを終えると、二人は必要な荷物を受け取った。


思っていたよりも荷物は多い。


「結構ありますね……」


リリアが箱を見つめる。


「持てる?」


「はい。これくらいなら大丈夫です」


リリアは箱を抱えた。


アルジェナも別の箱を持ち上げる。


「じゃあ、行こうか」


「はい」


町を出る。


今までなら、アルジェナは一人で歩いていた。


魔物が出れば、自分で戦う。


困っている人がいれば、自分で助ける。


それだけだった。


けれど今は違う。


隣にはリリアがいる。


「アルジェナ」


「ん?」


「アルジェナと一緒に旅をしていると、いろいろな人を助けられそうですね」


リリアが前を向いたまま言った。


アルジェナは少し考える。


そして、笑った。


「うん」


「私も、そう思う」


二人は並んで歩いていく。


向かう先には、まだ見知らぬ村がある。


そして――そこにも、誰かが助けを待っている。


二人は歩みを止めなかった。

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