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神に選ばれなかった勇者と神の真似事をする悪魔  作者: 粉末六茶
第一章 勇者を夢見た少女
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第十二話 王都への旅

王都セレスティアまでは、五日ほどの旅になった。


森を抜けて街道へ出ると、次第に行き交う馬車や旅人の姿が増えていった。


聖剣選別が近いこともあり、王都を目指す者は多い。


中には立派な鎧を身につけた騎士や、アルジェナと同じように剣を腰に差した若者の姿もあった。


「みんな、聖剣選別を受けるのかな」


「そうかもしれんな」


「……私以外にも、たくさんいるんだ」


アルジェナは、遠ざかっていく旅人たちの背中を眺めた。


自分と同じ目的で王都を目指している。


そう思うと、少しだけ胸が高鳴った。


旅の途中では、街道沿いの村に立ち寄ったり、宿場町で一晩を過ごしたりもした。


時には野宿をすることもあった。


食事を作り、火を起こし、翌日の準備をする。


そんな旅の中でも、アルジェナはヴァルドから教わったことを一つずつ実践していた。


「だいぶ旅にも慣れたな」


「うん。前だったら、もっと大変だったと思う」


「三年も一緒に暮らしているんだ。少しは成長してもらわんとな」


「……三年か」


アルジェナはふと足を止めた。


村を出てから、もう三年。


あの日から、随分と遠くまで来た。


「ヴァルドさんも、昔はこうやって王都へ行ったんだよね?」


「ああ」


「聖剣選別のために?」


「そうだ」


「その時も、こんな道を?」


「似たような道だったな」


ヴァルドは少しだけ遠くを見る。


「もう何年も前の話だがな」


「……怖くなかった?」


「怖かったさ」


アルジェナは目を丸くした。


「ヴァルドさんでも?」


「俺だって人間だからな」


ヴァルドはそう言って、前を向いた。


「ただ、怖くても前には進める。それだけだ」


アルジェナは黙って頷いた。


その後も二人は街道を進み続けた。


途中、魔物と遭遇することもあった。


「アルジェナ、右だ!」


「分かってる!」


アルジェナは剣を抜き、迫ってきた魔物へ向き直る。


以前なら恐怖で足が止まっていた。


だが、今は違う。


ヴァルドの教えを思い出し、相手の動きを見極める。


そして――。


「……っ!」


一閃。


魔物が倒れた。


「……よし」


「油断するな。まだ周囲を見ろ」


「うん!」


アルジェナはすぐに周囲を確認した。


三年前の少女とは、もう違う。


剣を握り、人を守るために戦う術を身につけていた。


そして五日目の朝。


街道の先に、巨大な城壁が見えてきた。


「……あれが、王都か」


アルジェナが足を止める。


遠くからでも、その大きさが分かる。


高くそびえる城壁。


その上には見張り台が並び、城壁の向こうにはいくつもの建物が顔を覗かせていた。


街道には人が溢れている。


商人の馬車。


旅人。


騎士。


そして、聖剣選別を目指しているのだろう、剣を携えた若者たち。


「……すごい」


アルジェナは思わず呟いた。


「これが……王都」


「ああ。セレスティアだ」


二人が城門へ近づくにつれ、人の声が次第に大きくなっていく。


「次の馬車はこちらへ!」


「荷物を確認するぞ!」


「宿なら大通りを抜けて右だ!」


様々な声が飛び交っていた。


城門の前では、王都へ入る人々を兵士たちが確認している。


商人の荷物を調べる者。


旅人の身分証を確認する者。


王都という巨大な街を守るため、城門は厳重に管理されていた。


やがて二人の番が来る。


ヴァルドが身分証を見せる。


兵士が確認し、アルジェナへ視線を向けた。


「そちらは?」


「俺の弟子だ」


「アルジェナです」


アルジェナは少し緊張しながら答えた。


兵士は頷く。


「聖剣選別の候補者ですか?」


「はい」


「今年は随分と多いようですな」


「そんなに?」


「ええ。ここ数日は特に増えています」


兵士が道を開ける。


「では、どうぞ。王都セレスティアへ」


「ありがとうございます」


アルジェナは一歩、城門をくぐった。


その瞬間――。


目の前に、広大な大通りが広がった。


石畳で舗装された道の両側には、何階建てもある建物が並んでいる。


店先には様々な商品が並び、パンの焼ける香りや、肉を焼く匂いが通りまで漂っていた。


商人たちは大声で客を呼び、馬車が何台も行き交っている。


人の数も、今まで見てきた町とは比べものにならない。


子供たちが走り回り、旅人たちが道を行き交い、騎士たちが街を巡回している。


アルジェナは、しばらくその場から動けなかった。


「……すごい」


「驚いたか?」


「うん……」


アルジェナは周囲を見回した。


村とは違う。


今まで訪れた町とも違う。


ここには、知らない人がいる。


知らない店がある。


知らないものが、いくらでもある。


そして大通りの先。


遠くには巨大な白い城が見えていた。


王都の中心にそびえ立つ、アルディア王国の王城。


その姿を見たアルジェナは、思わず息を呑んだ。


「……あれが王城?」


「ああ」


ヴァルドが答える。


「そして、聖剣殿もこの王都にある」


アルジェナは大通りの先を見つめた。


聖剣。


自分が目指してきたもの。


その剣が、この街のどこかにある。


「……行こう、ヴァルドさん」


「ああ」


アルジェナは剣の柄を握り直した。


五日間の旅を終え、二人はついに王都セレスティアへと辿り着いた。


そしてここから――。


アルジェナの運命を大きく変える、聖剣選別が始まろうとしていた。

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