僕が、阿呆になる理由
「だったらどうする?」
「せめて私の手で…!」
そう言うと、彼女が顔を上げた。その顔は憤怒のそれだった。歯を食いしばり、目も見開き血走る。そして右手に持っていたナイフを再び握りなおしながら、胸のあたりまで掲げた。
僕はそれを見て再び口を開く。
「未熟なるパンツ至らぬ五片たちよ、これよりその欠如を補わん。我が右手に集い、しなやかなる剣となれ!パンティー!」
そう詠唱すると、先ほどの柔らかき盾から五枚のパンツが離脱し、僕の右手に展開していた魔法陣の中心へと集まる。
「ぱ、パンツが…う、浮いている?」
誰かの良い声が聞こえる。
そしてその五枚のパンツが縦に並んだ。次の瞬間、瞬く。それぞれのパンツがそれぞれのそのパンツの色の光を発し、眩しくなる。それと同時にそれらパンツが連結した。
そうして、パンツによる鍔のない、刀身が出来上がった。
「そんなパンツで、私の怒りは止められない!」
「それはどうかな!試してみるかい?」
彼女は僕の言葉を受けると、床を蹴った。そして掲げていたナイフを一旦引く。そしてその突進の勢いに乗せて、そのナイフを突き出した。僕はそのナイフを、しなやかなる剣で対応する。そうするとパンツ持ち前のその柔らかさが、そのナイフの衝撃をしなることで吸収した。
「そんな…私のナイフを…そんなパンツごときに…っ!」
「郷美…そんな事言っちゃいけないよ。貶めちゃあ、蔑んじゃあいけない。君もパンツは穿いているだろう?お世話になっているだろう?しかもこれは君のパンツでもある。それとも、君の言うところの“パンツごとき”いらないのかなっ」
言い終えるのと同時に右手を彼女に向ける。
「感じるぞっ!パンツの波動をっ!」
「え?」
彼女が短く反応し、ナイフを握っていた手を弱めた。それを確認して僕は再び息を吸う。
「愛しき淡紅の横縞よ、その邪なる淫猥を顕在せよ!我がたなごころへとたおやかに転移」
「や、やめてください!私のパンツを取らないでください!」
彼女が目に涙を滲ませながら、スカートの上から足の間を左手で押さえて必死になる。僕はその反応を少し楽しんだ後、大人しく魔法陣の展開しかけていた右手を下ろしてニヒルに笑った。
「…冗談だよ。まさか、僕が君からパンツを奪うとでも?…僕は穿かれているパンツが好きなんだ。足が通っているパンツが好きなんだ。膨らんでいるパンツが好きなんだ。密着しているパンツが好きなんだ。わざわざ魅力が半減、いや激減するようなことするわけないだろう?君はそうやってパンツを美しくいやらしく魅力的に穿いていてくれればそれでいいっ!」
「こ、この外道がぁ!」
彼女は咆哮すると、再びナイフを振りかざした。対する僕もしなやかなる剣を構え、その刃を受ける。それが十回ほど続くとさすがに息が上がった。僕は仕方なく再度、右手をかざした。すると彼女も同じように足の間を押さえる。僕はそれにおかまいなしに口を開いた。
「陰る浅紅の横縞よ、我が潜考に応えよ。今こそその吸着を強め、隠す得体を浮き出さん!パンティーっ!」
次の瞬間、短くそれでいていやらしい声が響いた。
「んっ!んっひゃあぁんっ!んっ!」
「おやおや、どうしたんだい?そんないやらしい声を出して」
僕はにやにやとわざとらしく彼女に問う。
「し、締め付けられるぅー!パンツにぃ!パンツに締め付けられるぅぅぅーー!んーーーっ!」
それを聞いて再び僕は声を張り上げた。
「細やかな諸腕よ、その膠着を解きほどき、諸手を挙げよ!」
すると足の間にあった彼女の両腕が、糸で引っ張られているように天井へと掲げられた。さらに僕は詠唱する。
「艶めくその御御足よ、その内股を開き、開脚せよ!」
「いひゃっ!」
彼女は短く声をあげながら、綺麗に開脚して見せた。
「そ、そんな…手も足も…パンツもぉぉーーー!な、なにをする気ですか!?」
「決まってるだろう?」
僕は言い切るのと同時に走り出した。
そして彼女の下に滑り込む。
「ぐはははははっ!いやー絶景かな絶景かなっ!はっはっはっ!最高だぜっ!」
ついでどこからかいい声が聞こえた。
「あれは、あの技は…!滑り込んだ捲士を渓流、そして被捲者のその長く伸びる脚を橋に見たてて、その名も「夢の吊り橋~素股橋~」っ!まさか現代であの技をできる者がいようとは…っ!文献でしか見たことがない…しかもこの技は赤石山脈での二日間の厳しい修行を耐えた者だけが会得できるという…その難しさから現代のメクラズ界ではもう伝説の技扱いだったはずなのにっ…!まさかメクラズではない彼がっ…やはり彼は…」
彼の興奮気味な渋い声を聞きながら、ピンクのしましまを眺める。
「だめっ!見ちゃだめですっ!今、ものすごく!ものすごく締め付けられて、もすごく食い込んでいるんですぅぅっ!」
「ああ、本当だ。とても魅力的だよ」
「らめえぇぇぇええぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇえぇぇぇええぇぇえぇぇっ!」
しかしその絶叫を心地いいBGMにしてピンクのしましまを楽しんでいるときだった。
「その下衆な心の持ち主よ、そこをどけぇーーー!」
その叫びを聞くと同時にピンクのしましまがぶれる。ついでに頭に激痛が走った。そしてなんと悲しい事か、橋が、ピンクのしましまパンツが遠ざかる。
「あでっ!」
埃だらけの背中を起き上がらせながら、その声の主を見上げた。すると郷美の後ろにいたのは三津さんだった。その三津さんは屈みながら右足を涙目で押さえている。ついでに黒のレースのパンツを探すと制服の胸ポケットからはみ出ていた。くそう、胸を揉む振りをしながらその黒のレースを奪い取りたい。そんな三津さんは立ち上がりながら声を張り上げた。
「よ、よくも郷美に!」
「やってくれるね…三津さん…言い忘れていたけれど、僕は一度触ったものにはどんな魔法でもかけられるんだ。…そう!今、君の穿いているその、水色のパンツもなっ!」
彼女を人差し指で指しながらそう声高らかに言う。
「ひっ!…うそ…うそよ!私のこの水色のパンツをいったい、いつあなたが触ったっていうの?ありえないわ!嘘よっ!」
「さあどうかな!涼やかな淡碧よ!我が意志に応えよ!今こそその吸着を強め、隠す得体を浮き出さんっ!」
「んっ!んっひゃあぁんっ!んっ!ひゃあぁぁん!」
三津さんもまたいやらしい声をあげた。それを確認して彼女達二人に近寄る。そして郷美を越えて三津さんの前にしゃがむ。
「んひゃっ!な、なにをする気!?」
「そりゃ、もちろん…」
そうやって口角を上げると、三津さんは悟ったのか手と足で足の間を守る。しかし僕はそれを一蹴する。
「細やかな諸腕よ、諸手を挙げよ!艶めくその御御足よ、その内股を開け!」
「らめぇえぇええぇぇ!」
「ぐはっはっはっはっはっはっはっ!」
ひとしきり笑うと、そのやや足を開く三津さんの前に片膝立ちとなった。
そして、捲る!
「ひゃあぁぁん!」
「ぐへっへっへへへへへっ!こりゃ最高だぜっ!」
しかし
そうやって阿呆になっている時だった。




