第158話 指定の依頼
そんな中、ラクレットの冒険者ギルドを介して、ノクトームさんから依頼が入る。
わざわざノクトームさんからの依頼だったので、急ぎの救援かと思ったのだが、実際にノクトームさんに会ってみると、内容としては大した内容でもなかったのである。
「おぉ、わざわざすまないのぉ」
「いえ、なかなか顔を出せずにすみません」
「いやなに、最近、村も注目されているようじゃの」
「えぇ、お陰様で。ラクレットからはひっきりなしみたいで」
「そうじゃろうなぁ。あれだけの施設と食事があればそうなるだろう」
「わしも引退したらお世話になろうと思ってな」
「いやいや、ノクトームさんあってのギルドだからそうは簡単にいかないんじゃ...」
「あぁ。まぁ、そん時はフィンドールがおるからのぅ。構わんじゃろて」
「ハハハ、それよりお話って言うと?」
「あぁ、大した内容ではないがの、是非カノン殿にと思ってな。ご指名だからのぅ」
「ご指名ですか?」
「あぁ、依頼内容は魔物の討伐じゃよ。依頼者は兄と妹の兄弟でな」
「へぇ。どんなでしょう?」
「あぁ。たぶん年の功は十代半ばくらいか?ただ報酬が少なくてな」
「あぁ。報酬なら結構ですよ」
「うむ。そなたならそう言うと思ったぞ。まぁ本来ギルドとしても受け付ける内容ではないのだが、若い兄と妹が困ってるなら、カノン殿なら逆に逆にやりたがるんじゃないかと思ってな」
「えぇ。是非そうしたいです。どこまでいけばいいのですか?」
「うむ。依頼はブランケット国。ブランケットのダンジョンの西の村の外れじゃの」
「行ったことはあるか?」
「いえ、ブランケット国で行った場所は、西側でダンジョンまでですから、そこから西には行ったことありません」
「ふむ。ダンジョンからそう距離はない。カノン殿ならすぐじゃろうて」
「えぇ、じゃぁどなた宛に伺えばいいのでしょうか?」
「うむ。依頼者はタウロとピジルというらしいのぅ」
「魔物は?」
「あぁ。なんでもイモムシ型の魔物といっていたそうでな」
「依頼者の家に居座ってしまったらしくてのぅ」
「へぇ。それは困るでしょうに。依頼が入ってから今時点で何日目ですか?」
「まだ二日じゃ。できれば早めに片づけてあげてほしいのぅ」
「えぇ。わかりました。すぐに行ってきますよ」
こうして王都のギルドを出た俺は、すぐにブランケット国のダンジョン付近へ行き、ラヴィに咥えられ依頼主の元へ向かったのである。
「すみません!このあたりにタウロさんとピジルさんという方はいらっしゃいますかー?」
「あぁ。あの二人なら、今はこの先の知り合いの人の家で世話になってるぞー、緑色の屋根だー」
...
(緑色の屋根...ここかな)
ドンドン
「すみません!カノンという冒険者ですが!タウロさんかピジルさんはいらっしゃいますかー」
扉がガチャっと開くと、年の功十代半ばの青年が出てきたのだ。
「あ、カノンさんですか!お待ちしてました!」
そう言って室内へ案内してくれたのである。
...
「わざわざすみません...。お金もないって言うのに...。他に頼るところがなくて」
「えぇ。問題ないですよ。タウロさんがお兄さん?」
「はい。妹はもうすぐ帰ってくると思うんですが...」
そうタウロさんが言うと、ほどなくして妹さんが帰ってきた。
「あ、すみません!わたしがピジルです!わざわざお越しくださってありがとうございます!」
「それで、現場はどちらですか?」
「えぇ。この先少し行ったところの自宅に、ハイドロワームと思われる魔物が巣くってしまったようで」
「自宅ですか...」
「えぇ。わたしが家にいる時に床下から這い出てきたのですが...気づくのが遅れてしまったために、お兄ちゃんまで怪我させることになってしまって...」
「ばか!いいんだよ俺は!」
「わたし達も一応冒険者なんですが...冒険者になったばかりなので...」
「へぇ。それで私のことを聞いたんですね?」
「えぇ。ご覧の通り、わたし達はお金もないものですから、本来は依頼できる立場になかったのですが...。高名なカノンさんであればもしかしたらなんて考えてしまって...。」
「いや本当に図々しい限りで...お恥ずかしいのですが...」
「えぇ。構いません。報酬もいりませんから、すぐに魔物は退治してみせますよ」
「それより...タウロさん、足を見せていただけますか?」
タウロさんは足を引きずって歩いていたこともあり、怪我をしているのだと分かったのだ。
「え?あ、ハイ」
ズボンをめくると、雑に包帯が巻かれていたのである。
「ん?結構、色も悪いし...大きく腫れてますね...」
「えぇ、たぶん骨が折れてるか...ひびが入ってるかなとは思うのですが...」
「お医者さんには見せました?」
「いえ、恥ずかしながら...お金の問題で...」
「わたしは医者じゃないので治るかどうかわかりませんが...魔法を試してみましょう」
「え...でもお金が...」
「いやいや、お金は結構ですから。ではいきますよ」
「聖光回復:(シャイン・ヒール)」
パアァァァ
患部にかざした掌が発光すると、タウロさんの足は治療されていった。
「え!?あ!?治ってる!」
「カノンさん!ありがとうございます!」
「いえ、良かった治って」
「じゃぁ、後は魔物ですね。場所を教えてくださいますか?」
「え?あ...そうしましたら案内します!」
「お兄ちゃんは無理しないで!」
「いや、本当にもう大丈夫なんだよ!全然痛くない!案内できるよ!」
タウロさんとピジルさんのお知り合いにご挨拶をして、現地まで案内してもらうことになった。
...
「カノンさん、あそこの家です」
タウロさんが指した先に家がある。
「えぇ。わかりました。じゃぁちょっと行ってきますんで」
「え?あ...」
...
「はい。終わりましたよ?」
「「 へ? 」」
「こいつですよね?」
そういってゲートから魔物を取り出す。
「えええ!?」
「とりあえず家の中の状況も確認していただけますか?」
...
「うわぁ...これはひどいな...」
僅かとはいえ、魔物の巣になってしまったこともあり、室内はメチャクチャ。室内の木部はほとんどが魔物にかじられてしまっていて、復旧は難しそうである。
「お兄ちゃん...どうしようか」
「あぁ...もう住めそうにないな...」
聞けば、家は空き家だったらしく、村の皆さんに空き家であることを確認して住んでいたのだそうだ。
「あ!それよりカノンさん!ありがとうございました!」
「えぇ、まさかこんなに早く討伐していただけるなんて...駄目もとでも依頼してよかったです!」
「いやいや、お安いご用ですよ!...それより...お二人はどうされるのですか...?」
「ええっと...いつまでも知り合いの家にお世話になるわけにもいかないので...」
「でも...正直...どうしたらいいか...」
「...。んー。お二人は冒険者なんですよね?」
「えぇ。まぁ...。」
「そうしたら...わたしの村に来ませんか?」
「え!?カノンさんの村!?」
「えぇ。生活の基盤を失ってしまった今、また生活を回すのは大変でしょうし...」
「わたしの村であれば、お金も稼ぎやすいと思うので...」
「いやでもそこまで甘えるわけには...」
「何言ってるのお兄ちゃん!カノンさんがこう言ってくださってるんだから!」
「いや逆だよ!だからこそ甘えるわけにはいかないんじゃないか!」
「ハハハ、タウロさんのお気持ちも有難いですが、わたしの村はできたばかりですから、本当に人手も欲しいんですよ」
「ほら!カノンさんもこういってくださってるじゃない!」
「どちらかご挨拶するところはありますか?」
「いえ、俺達は親もいないもんですから...。でも本当にいいのでしょうか?」
「まぁ、一度来てみてくださいよ」
「えぇ...。カノンさん...そうしたら一度お伺いします...が尋ねるのに時間もお金も...」
「あぁ、それも心配ありません。一度ギルドに依頼完了の届をするので、王都に寄りますが、そのまま村に案内しましょう」
こうして魔物の討伐を報告に王都へ行き、依頼自体をキャンセルするようにした後、エルフィオーレの村に二人を案内したのである。
「し...信じられない...」
「こ...こんな賑やかな村があるなんて...」
タウロもピジルも、ゲートとエルフィオーレの村での出来事に、とても驚いていた様子であったが、俺の見込み通り、エルフィオーレの村に住む方向で調整されていくようになる。
とりあえずの労働場所として、ラクレットのシェーラさんの宿屋を紹介することができ、まずは住み込みで仕事を開始するようにもなったのである。シェーラさんもとても喜ぶ結果となり、ユウリの心配も少しは負担が減ったかな。
タウロは十六歳、ピジルはリネアと同じ十五歳の設定です。
★ご覧いただきありがとうございます★
☆すでに評価/ブクマ下さっています方、ありがとうございます!
☆ご新規の方、モチベに繋がりますので、よろしければブクマと評価頂ければ幸いです!




