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一年生二人が並んで座ってペンを走らせる。
ちらっと左側にいる同級生を見ると、やや気だるげに問題に向かっていた。入学前に染めたアッシュハイライトの髪は、伸びてきた分の黒が混じって落ち着いたグレーになっている。
二人で授業をサボった日から約一か月。彼女の、光梨の死に対する気分はそろそろ変わっただろうか。
続いてのんちゃんがいる方を向く。
のんちゃんは文庫本を両手に持ったまま目を瞑って眠っていた。珍しい。
その後そんなに時間は経っていない頃、特にきっかけはなくのんちゃんは目を覚ました。
「……私、寝てたんだ」
「希さんが居眠りなんて珍しいですね」
「白木院さん、おはようございます」
「ひーちゃ、じゃなくて、瞳さん、彩瀬さんも、おはよ」
多分寝ぼけて言い間違えただけだ。彩瀬と三人でいる間は、ひーちゃんという言葉は出てこない。
私はひーちゃんって呼んでもらいたいな。でもこれはノーカウント。
さっきのんちゃんががひーちゃんと言いそうになったお返しに彩瀬の前で「のんちゃん」と言いかけてイタズラをしたり、自分からのんちゃんに抱き着くといった思い切った行動ができるのは「ひーちゃん」のおかげなのだ。
下校時刻のチャイムと共に三人で校門を出る。彩瀬の家は高校を挟んで反対側にあるから、すぐにお別れになる。
彩瀬が私たちに背中を向けた瞬間に、私はひーちゃんになってのんちゃんに抱き着いた。
「のんちゃん!うりゃ!」
「んなあ!ひとーみちゃん?」
部活の後輩である瞳から家族であるひーちゃんに切り替えるタイミングがあまりにも早かったから、普段とは逆にのんちゃんの方が驚く。
それはそうとして「ひとみちゃん」かあ。
「ねえ、ひとみちゃんって誰?」
「それは……瞳は、私の大切な人だよ」
のんちゃんはひーちゃんを愛してくれればいいのに!だから彩瀬に見つかるリスクを負ってでも、少しでも早くひーちゃんになったのに。
最近ののんちゃんは、ひーちゃんを越えて私の根っこの部分まで迫ってくる。
急激な熱膨張が起こる。頭に血が上る。
「許さない」
「もう瞳の名前は出さないから。だから許して、ひーちゃん」
「……いいよ、許してあげる」
「ありがと!ひーちゃん大好き!今夜はひーちゃんの好きなものを食べよう」
「でも作るのは私じゃん」
本物の姉妹のように微笑み合う。
この居場所が何よりも心地いい。瞳という他人が踏み入ると、私のそばから希は居なくなってしまいそうで怖い。




