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第百十一話「伝説殲滅戦」

「さてどうしてやるか……」


 SSS(トリプル・エス)級すらも、三体のゴーストに取り込まれてしまったのだ。


 未知数の力がゴーストの制御下に置かれてしまった。


「攻撃よ! 攻撃ぃ!!」

「問題はどう攻撃するかですよ」


 ベルナールを先頭に左右にはセシリア、アンディックが付き従い、目標に向かって進む。


 後方にはダンジョンに潜った冒険者たちが困惑しつつ続いた。


 ドラゴンは特に動きを見せず、その黒い体はゆっくりと上昇する。


「私が行くぞ! ベル、援護せよ!」


 やたら元気がいいのはアルマとセシリアだけで、ベルナールは苦笑する。


「まあ、待てよ。ちょっと様子見だ。見てみろ……」


 球体障壁に守られたドラゴンは空中で停止した。黒い体躯が部分的に変色を始める。


「何よ、あれは?」

「力を吸収して学習しているのさ。地上に順応しようとしている、とも言えるかな?」

「力って?」

「太陽の光さ。それを己の力とする」


 ベルナールはかつて師匠に聞かされた伝説を思い出す。産まれたばかりのSSS(トリプル・エス)は、自然に触れてその力を身に付けるのだと。


「太陽――、様子見は攻撃しながらよっ!」


 焦れたセシリアは弓矢を取り出した。続いてアンディックも右手を挙げる。


「攻撃用意だ。全員勇者に続け。かまいませんよね?」

「ああ、せっかちが多いからな。好きにやってみればいいさ」


 そう言ってチラリと騎士と冒険者たちを見る。皆やる気になっていた。


「よし――」


 ベルナールは剣をゆっくりと引き、力を溜めた。そして、自分の今できる最大の魔撃を放つ。


「――攻撃開始だ!」


 その口火に、全員が魔法の光と剣の魔撃を飛ばす。渾身の矢を放つ。複合魔法技を駆使する。


 攻撃がSSS(トリプル・エス)の障壁に食らいつき、空に魔力の花が咲く。ベルナールはその様子を眺めながら、空全体を探った。


 球体は、さしたる変化も見せず、ドラゴンの体は透明に変化しつつあった。その中心には灼熱色の炎が渦巻いている。


「らちがあかないわ。あれが核なの」

「障壁すら破れないとは。しょせんは人の力なのですね」

「ああ、あの化け物は自然の申し子なんだよ。そいつがもうすぐ産まれたるんだ」


 アルマがチラリとベルナールを見た。そしてムキになったように攻撃を続ける。


「自然だと? あの怪物もまた、人間を苦しめる自然の一部だと言うのか? 人間は負けない! この世界を守るのは我々人間だっ」


 この言葉に鼓舞されたのか、皆の攻撃が一段と強くなる。しかしドラゴンは微動だにしない。悠々と空に浮かぶ。


「やれやれ……」


 人は人を守らなければならない。しかし自然をなんとかしようなど、それはやはり冒険者にとっては奢りだ。


 アルマはまた別の立場からこの脅威を見ていた。


「来たな」


 待ち兼ねた力が、ベルナールの探査に反応した。


 セシリア、アンディックもまたその気配に気がつき、攻撃を止め振り向く。


「来てくれたのね」

「久しぶりですよ」


 次に気がついたのはセシールだった。


「あっ……」


 そしてふらふらと、その(エス)級の魔物に向かって歩き出す。


「何なんだ?」


 デフロットもまた気がき、そして全員がS級の気配を察した。攻撃も自然と止む。ドラゴンは相変わらず悠然と空に浮かんだままである。


「ユニコーンだよ」

「「「!!!!」」」


 更なる大物の登場に、場は一瞬凍りついた。


「心配するな。味方だよ……」



 (エス)級自ら近づき、そしてその顔にセシールは手を添える。


「覚えているわ。また会ったね。でもなぜ私に語りかけるの?」


 セシリアが歩み寄り聖弓ディアメネシスと、そして一本の矢を突き出した。


「昔、私もやったわ。今回はあなたが射りなさい。ユニコーンがその攻撃に力を与えてくれる」

「お母さん……」

「まったく。私じゃなくてあなたを選ぶなんてね。こいつ嫌な馬になっちゃったわっ!」


 受け取った弓と矢をつかみ、それを見ながらセシールは考え込む。そしてハッとして顔を上げた。ユニコーンを見やる。


「わかった。私しかできないのね。やるわ」


 まるで会話をするように、独り言を言う。


 そして弓を引き絞り、ドラゴンを狙った。



「違うの、もっと下を狙うのよ」

「で、でも」

「いいの、それがユニコーンの攻撃なの」

「はい……」

「あとは彼が教えてくれるわ」


 ジリジリとした時間が流れる。セシールは目をつぶった。そして見開く。


「今ねっ!」


 ついにユニコーンの矢が放たれた。


 それは土煙を引きながら、地上スレスレを飛ぶ。そしてドラゴンの真下で、垂直に突き上がった。


 矢はドラゴンの球体障壁に突き刺さり、そしてそのまま上へと押し上げる。


「うおーっ」

「なんだ! どうなんだ?」


 バスティとデフロットが叫ぶ。


 信じられないことだが、遥か高みまでドラゴンそのものを運び去っていく。そして貫く。


 矢は空に向かって駆け上がり、そのまま消えて星になる。


 セシールもまた、天をも射貫いた弓使いとなったのだ。



 ドラゴンを守る球体は一瞬膨らむ、そして光った。


「直接見るな。目をやられる」


 爆発音のあと、周囲の全てが閃光に包まれた。皆が腕で顔を覆う。


 肌がじりじりと焼け、周囲の温度が上がる。もう一つ、新たな太陽が出現した。



 収まりつつある火球を見上げていたレディスが、突然飛び上がる。アルマに続き騎士団全員も同様にした。


「まだ何かあるのか?」

「我らが騎士団の目標ですが、ゴーストはレディスの先見事項でもあります」

「今度こそ仕留めるつもりか……」

「ゴーストだって?」

「俺たちも行こう!」


 デフロットとバスティ達のパーティーもその追跡に続く。


 黒い物体が三つ高速で離脱を図る。しかしレディスたちのほうが早い。今度こそ確実に仕留めるであろう。


 ドラゴンからはじき出されたゴーストなど、小物の以下の存在だ。



「二人ともこっちに来なさいな」


 ユニコーンと話すセシールは、アレットとロシェルを呼ぶ。


 二人はベルナールを見上げた。


「行ってこい」


 ユニコーンを間近で見るなど、なかなかできる体験ではない。


 ベルナールたち、再結成した勇者パーティー三人がこの場に残された。


「終わったわね」

「ああ、終わった」

「何よ、その顔は?」


 セシリアはベルナールを覗き込む。


「寂しいもんだよ……」

「あなたは変わらないわね」

「そうだな」


 また退屈で幸福な日々が始まる。


 そして世代交代。年寄りは表舞台から遠ざかるばかりだ。それもまた寂しい。


「ここでも戦力外通告されちまったなあ」

「今回は私もよ」


 寂しく笑う二人を見ながら、アンディックもまた寂しく笑った。


 若者の時代だ。新しき太陽が眩しく輝いていた。


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