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第百六話「レ・ミュロー突入」

 バスティとデフロットが底に着地し、後方にはそれぞれのパーティーメンバー全員が続く。


「ブランシャール卿に行けと言われました。ここは任せろと」

「うむ」


 バスティはベルナールに経緯を報告する。


「こっちもだぜ! ジェリックが、俺たちはここで汚名を晴らす。お前たちは勇者たちを助けろってな」

「いいだろう」


 ジェリックはデフロットたちを下に送り込むべきだと判断したようだ。続いて、更に空からセシールたち三人が降下して来た。


「レディスとアルマ、オーウェンに来るように言っておいたのですが、もう少し時間が掛かりそうですね。先に行きましょうか」


 アンディックはそのように手配していたが遅れているようだ。レディスはこの戦いの主役でもある。相手は幽鬼(ゴースト)だ。


「待っててくれたの? 呼んでくれて嬉しいわ」


 セシールたちはセシリアに駆け寄った。このメンバーの中にあって、アレットとロシェルは緊張気味である。


「知っている相方の方がやりやすいのよ」

「お母さんと共同でダンジョンに潜るなんてね。いつ以来かしら?」

「神器は見るだけでも経験よ」


 エルワンは入り口の先をずっとのぞき込み思案していが、ベルナールたちを振り返る。


「さて、まずは様子を見ましょうか」


 作戦開始の合図だった。


「任せてっ!」


 セシリアが前に出て、ダンジョンの奥に特大の矢を叩き込んだ。特に変化は起こらないし、手応えもない。感知する魔力、つまり敵がいないので爆破しないのだ。


「ヤツら下層で俺たちを待つつもりだな」

「途中に伏兵を(ひそ)めさせ――ですね。行きましょう」


 ベルナールたちを先頭に一行はぞろぞろと新ダンジョン第一階層を進んだ。



「「「おー」」」


 天井が低い本道を抜けると、以外にもすぐ巨大なホールに出た。天井が高くびっしりの魔核か煌めいている。開口部もこのような場所が落盤したと想像できた。二つの支道開口が見える。


「手前のヤツには俺たちが行くぜ!」

「ほう……」


 デフロットが声を上げ、ベルナールは感心するように頷く。


「いい心がけじゃないか」

「この面子で俺が先に行くなんて言えねえ。雑魚を掃除してくるよ。任せてくれ」

「では、もう一つには私たちが行きます」

「えっ?」


 アレクの申し出にバスティが声を上げた。


「問題? それとも勇者の皆様に行ってもらうのかしら?」

「うっ……いや、僕たちで行こうか」


 ベルナールは苦笑する。バスティは勇者パーティーと常に行動を共にしたいと考えていたが、やはりパーティーのリーダー、アレクは冷静だった。二人の仲間も顔を見合わせて笑っている。


「よーしっ! 俺たちもさっさと雑魚をかたづけよう」


 バスティは少々わざとらしく張り切って言った。



 一行は更に奥へと進む。


「ここですね。なんだか拍子抜けです」


 下層へと向かう下った支道の前にエルワンは立つ。確かにダンジョンの、この静けさは意外であった。


「奥も一応確認してくる。セシールたちはここに残って警戒してくれ」

「私たちも残ります。ここで後続を待ちますよ」

「念の為、私も残るわね。奥に気配なんてないわ」


 セシールたち三人にエルワンとセシリアを残して、ベルナールとアンディックは第一階層の奥へと進んだ。



「後続は遅れているようです。ジェリックは慎重な男ですから、準備に少々時間がかかるようですね」

「この戦いの終りをどう見る?」

「それはやはりゴーストでしょう。だからレディスをつれて来ました」

「ゴーストの目的か……」

「かつてこの街周辺に、次々とダンジョンが発生すると読んだ者がいたようです。しかしその理由は記録に残っていません。そして下層への進行は中止された……」


 エルワンが言っていた、十いくつまで決まっていた名称の件である。


「ここの底にその理由が?」

「ゴーストの目的ですよ」

「行けば分かるか……」


 予想通り奥には何もいなく、ベルナールたちは引き返す。下への入り口にはレディスたちが到着していた。


「苦戦していると聞いて来てやったぞ、ベル!」

「どこがだよ? 戦いはこれからなんだって!」

「うっ、うるさい! ただの挨拶だ!」

「はい、はい……」


 アルマとオーウェンは相変わらずだ。全く気負いや緊張は感じない。


「奥は問題なしだ」

「では下へ進みましょうか――」

「よしっ、私が行く!」


 エルワンが段取りを説明しようとしたそばから、アルマは勝手に先に下る。オーウェンがあきれつつも後を追い、レディスは少し困ったような顔をして続いた。


「まっ、まあ良いでしょう……」


 続いてはベルナールたち三人、エルワン、ロッティ、最後はセシールたち三人だ。



 地下第二層もまた静寂に包まれていた。脅威の気配がほとんどないダンジョンはかえって異様な空間だ。通常ならば魔物の群が歓迎してくれる。


「嫌な予感がするな。他の冒険者たちは地上待機がいい……」

「確かに。これはいつもの新階層攻略とは違います。ロッティ、行ってくれるかな?」


 エルワンとて現役時代は何度もダンジョンを経験している。これは嵐の前の静けさだ。


「はい、伝令に戻ります」

「要所には数名を配置して、他は地上の掃討を第一に考えるようにと……」

「分かりました」


 ロッティはエルワンの指示を受けて後方に下がる。


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