表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/116

第百五話「進行前休憩」

「さて、三人で進むか後続を待つか、あるいはここを確保しつつ上を援護するか――だがな」


 ベルナールは横穴の奥を覗く。開口での攻防をあきらめたのか、魔物の姿は見えない。


「私の部下もやって来ますから、援護は不要でしょう。ここを確保しつつ後続を待ちましょう」

「ああんっ、最初の分岐路まで進みましょう! 早く店を正常に戻したいのよ!」


 ベルナールが複数の選択を提示し、アンディックが一つに絞り込み、セシリアがひっくり返す。そしてブラッドリーが更に混ぜっ返すのが、昔からのこのパーティーの儀式だった。


 ここから結論をどう出すのかが面白いのだが、そんな楽しみをお邪魔虫が台無しにする。


「やあやあ、さすが勇者パーティーですね!」


 エルワンがロッティを伴い降下して来る。動きがこれほど早いのは、作戦が順調に進み張り切っているからだ。


「こんな前線に来たら危ないぞ」

「常に勇者パーティーを最前線で助けるのが私の仕事ですから!」


 そして助けられるのもまた、エルワンの仕事である。今も昔と同じにするつもりらしい。


「ところで、総指揮官殿はどんな命令を下すんだ?」

「うーん、行くも成功、引くも成果ですかねえ? 正直、上手くいくイメージしか湧きませんよ」

「なんともいいかげんな責任者ですねえ。どちらも正解なのでしょうが、どちらを選ぶかが問題です」


 久しぶりに三人そろったので、アンディックも軽口ぎみである。ベルナールはどうしてもゴーストの繰り出す、次の一手が引っ掛かっていた。


「エルワン! 命令しなさい。早く終わらせろって!」

「いやーっ、出来れば若手にも、この興奮を味合せたいですね。ちょっと待ちましょうか……」


 エルワンが作成した作戦計画書は基本、下層への進行を下敷きにしていた。つまり集団で退路を確保しつつ、強力な先鋒が道を切り開く、といった内容だ。


「まあ、しょうがないわね……。今日中に終わらせれば同じことだしね」

「エルワン、ちょっと相談があるんだが……」


 ベルナールはこの余裕な空気に、自分も少し乗っても良いかと思った。


「何ですか? あらたまって」

「セシールたちをダンジョンまで呼びたいんだが」

「うーん、警戒線にさほどの圧力はないでしょうが、あの(・・)弟子たちもですか?」

「ああ、俺も今のパーティーのメンバーと戦いたいのさ。経験にもなる」

「なるほど、さすがに引退組とずっと一緒じゃ可哀相ですかね」


 ベルナールとて引退組なので、その辺は余計であるが、街の将来を考えているエルワンの考えにも合致する。


「セシールに次を託す時期が来たのかしらねえ――。ちよっと寂しいけどね」


 セシリアの言葉もまた複雑であった。この戦いカギはセシールなのだと考えている。


「私が呼んで来ます」

「頼むよ」


 気を利かせたロッティが空に飛び上がった。


   ◆


 街を守る警戒線。セシールは探査を全力で駆使する。一時押し寄せていた小物の群は、今は静かになっていた。


 進軍する冒険者たちの目的地は開口部だ。どうしても小物程度は包囲をすり抜けてしまう。


「ちょっと強いのがやって来るぞ!」


 前方警戒に行っていた即席のパーティーが戻って来る。本職が酒場のマスター、エルネストがリーダーを務めていた。


「C級のアラクネーが一匹に、同じくオーガのC級が二だ。大丈夫かな?」

「はい、行けます。アレット、ロシェル。いつもと同じにやるわよ」

「はい」

「はい~」


 三人共に剣を抜いて準備する。森の見通しは悪いので、弓使い(アーチャー)が二人のパーティーは分が悪かった。全員が剣技で戦っていた。


「行くわよっ!」


 セシールを先頭に三人は森の中を駆け抜ける。



「いたわっ!」


 一体突出してきたオーガが棍棒を振り上げ、飛び掛かったセシールは攻撃の剣を合せる。


 すかさずアレットがすれ違いざまに胴、ロシェルが足を切り裂く。セシールはもう一段飛び、頭部に剣を突き刺した。


「左のオーガをやるわよ!」


 そのまま飛行し森の木々を()う。


 そのオーガは地上を疾走して接近する、アレットとロシェルに気をとられていた。そのスキを見逃さず、セシールはオーガの首を一瞬で飛ばす。


 残るはアラクネーが一体だ。


「近接で弓の攻撃!」


 ロシェルはすかさず剣を収めて木の陰に隠れる。背中から弓と矢を取り出した。


 アレットも手近な木に隠れて援護の体勢をとる。セシールもまた弓矢を取り出して地上に降り立つ。


 巨大な黒い蜘蛛が現われ、続いて人間の半身も姿を現す。頭部から蜘蛛の糸を吐き出し、三人は身を隠した。


「いけっ!」


 ロシェルとセシールの放った矢が、アラクネーの胴に次々に突き刺さる。


 アレットは木々に身を隠しながら迂回して背後に接近、そのまま切りつけた。一旦離れてから側面に回って下半身に深々と剣を突き刺す。


 セシールとロシェルも剣の攻撃に切り替えて(とど)めを刺した。


「二人共、よくやったわ」


 三人の連携は完璧だと、セシールは息を付いた。



 仕事を終わらせ、三人は警戒線に戻る。


「御苦労さん。たいしたものだよ」

「上手く倒せました」


 エルネストのねぎらいにセシールは笑顔で応える。


「お嬢ちゃんたちもどんどん強くなるなあ。早く稼いで俺の店に通って欲しいよ」

「うふふ、お酒のお店はまだちょっと早いですかね?」


 褒められたアレットとロシェルは、恥ずかしげにはにかむ。


「おーっ、戦いが始まったようなんで、加勢が必用かと思って来たがもう終わったのか?」


 食肉業者のレイラスが様子を見にやって来た。持場も平穏なのだろう。


「こっちには強力な現役パーティーがいるんだ。加勢なんて不要だぞ!」

「そうだったな。こっちはずっと暇なんだ。魔物たちは引き始めているなあ。作戦は上手くいっているようだが……」

「ああ、あいつら開口にいる連中の背後を脅かすつもりだ」

「大丈夫かな?」

「勇者パーティーに王宮騎士団(ロイヤルナイツ)だぜ? 魔物に同情するよ」

「違いねえ」


 レイラスとエルネストはそんな話をしながら笑い合う。警戒線への脅威は去り、戦いの舞台は開口周辺とその中に移ったようだ。


「ん?」


 気配を感じてセシールは空を見上げた。ロッティが降下して来る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ