CodeⅦ:芸術は爆発だ
「準備はいいか?」
「完璧です」
「問題ねえよ」
「よし。派手に行こうか!!」
腰に10個程装着させたそれ、凹凸のある球体の一つを手に掴み、目の前の巨大建築物の扉に軽く投げて走り込む。
「芸術は爆発だ!!!」
今まさに爆発しているその入り口に顔を腕で守り、体を丸めて飛び込む。
同じように私の後を追従しているシリウスとリリィ。
「計画通りに行くぞ!」
「「了解!」」
『侵入者!侵入者!直ちに排除せよ!』
実に機械的なアナウンスで私達を排除する命令が下された。
「デコイーズ!!」
収納システム、アーカージと名付けたそのボックスからスクエアキューブを8つ取り出して、投げ込み、遮蔽へと隠れてシリウスに合図する。
「こっからはあたしの仕事だ!!」
宣言通り右手に大剣を携え、左手に盾を構え突進していくシリウス。
その姿は今までのようにお粗末な格好ではない。
腕や足は装甲で隠れ、その豊満な胸は黒の鉱石に覆われ、光沢を放っている。
ヘソ出しというやつで、腹が菱形で出ているが、残念ながら肌色の装甲だ。
腕や足の装甲は、特徴的な灰色で光を浴びて銀に輝き、散りばめられた金色の装飾は王の風格を放っている。
背中に1本の棒を携え、両腕に1本ずつ斧を携えている。
爪はしっかりと武器としても使えるように、頑丈に作った。
折れていた狼耳の装甲もしっかりと修復し、ガスマスクも全体的な色に合わせている。
左右や後ろからの敵をデコイーズで引きつける。
【デコイーズ】
名前の通りこれはデコイ。
私が設定した姿を映し出す優れたアイテム。
その姿を複数のシリウスと一人の私に変え私がシリウスに指示しているように見せかけデコイであるシリウスはその小さな本体から斧を取り出し、あたかも本物であるかのように機械生命体を屠る。
デコイの本人であるシリウスは、そんなデコイもお構い無しに機械生命体を壊し尽くす破壊の権化と化していた。
私はここのシステムを乗っ取るために腕に装着した機械を使ってハッキングを始めていた。
私を守る保険にリリィを滞在させているため、私たちに死角は存在しない。
「シリウス!敵が時間稼ぎに移った!
温存してくれ!」
「了解!!」
敵が作戦を切り替えた拍子に、こちらも作戦を変更する。
「リリィ、何時でも充電できる準備をしておいてくれ。
シールドもね」
「お任せください」
二人とも、頼もしい限りだ。
「後は私次第、だな」
プログラムコードを仕組んで機械生命体の製造を完全停止、それから現在製造中の機械生命体に自壊プログラムを入れ込む。
これを1分以内でやらなければならない。
前世では不可能だったが、今ならば。
「充分可能だ!」
――――――――――――――――――――
「どうなってるの!?」
「全システム機能停止!再起動失敗!
妨害されています!!」
「何とかしなさいよ!!ファイアウォールは機能していないの!?」
「突破されました!」
「なんなのよ!あのマッドは!?」
「型番が存在していませんね。
その姿は人間に酷似しています」
「人間を模して作られたとでも?冗談でしょ?」
「事実です」
「第二防壁!突破されました!!」
「………あれを出すわ」
――――――――――――――――――――
「この程度のファイアウォールで私を防げるとでも?」
「復旧されるのでは?」
「はは!今ごろ私の、見たことも無い妨害プログラムで焦ってウイルスバスターでも作ってる頃だろうさ。
そうだなぁ…、復旧するまで2時間ってところかな?
まぁ、どれだけ早くやれたとしても解析に時間が掛かるだろうから1時間は復旧できないさ。
つまり今いる機械生命体共を倒しきれば」
「あたしらの勝ちってわけだな?」
「そういうことだ。っと、どうやらそう簡単には行かないようだ」
信じられない程の大きさの機械生命体。
私の百倍、或いはそれ以上かな?
「シリウス。エネルギーはどうだ?」
「あれを倒すには足りねぇな…。
相手しないほうが賢明だと思うぞ?」
アーカージの中身を確認し、一度瞑目。
シリウスに顔を向ける。
「エネルギーがあれば、倒せるんだな?」
「……本気か?」
「質問している。シリウス、答えを聞かせてくれ。
エネルギーがあれば、倒せるんだな?」
「……倒せる」
口の自由が利かない。
頭では理解できている。
シリウスが本気かどうか聞いてきたのは、私が足止めをするのかという意味だと分かっていた。
だが進まずにはいられない。
本能が訴えていた。
ここでやれ。と。
「リリィ。シリウスの充電を開始しろ。
シリウス、私の背中を見ていろ。
最後だ。お前は前だけ見ていればいい。
後ろを確認するな。前を、見ていろ」
アーカージ。取り出せ。
「SystemCall・Architect.Drop.
Armored・Mebius.起動開始」
カシャカシャと音を立てギーナの体を黒い金属が覆っていく。
「この身体は無限の可能性。
『メビウス』だ。
試作品だがな?今からこの私がその巨体を実験に使ってやる。
光栄に思えよ?」
最後のギーナの言葉が開戦の合図だったのか、巨大型機械生命体のその腕がギーナに向かって振り下ろされる。
「早速だな!!M・Dコントロール!
モデレート・アイギスシールド!!」
腕に付随させたデバイスと、8つあるデコイーズ達をペアリングさせ、脳まで繋がれた配線によって考えた事をそのまま行うことを可能とし、デコイーズの6つを使って、六角形のエネルギーシールドを幾重にも重ね、広げてその巨大な腕を完璧に防ぐ。
「はは!!パーフェクトだ!」
それでも損傷は発生していた。
長くは保たないが、今必要なのは時間稼ぎ。
今の私にできる、全力で、やる。
「全速前進!!
M・Dコントロール!
モデレート・ヘラクレス!!」
地面から数ミリ程浮かび、ただでかいだけの機械生命体に向かって右腕を引き、思い切り突き出す。
再び6つのデコイーズ達が反応し、アイギスシールドを実現させていたそのエネルギーの出力方向を変更し、ギーナの身体ごとエネルギーで包み込む。
ただの突進、されど突進。
かの英雄ヘラクレスを模倣し、自分自身を矢と見立て、突撃する。
そのエネルギーは先程その腕を受け止めた程の力の全てを矢へと変えたものだ。
(ぐぅ!!!やはり受け止めるのとはわけが違う…。反動が半端じゃないな…。何度もは使えない…)
決死の一撃を受けた機械生命体は、その巨体を揺らし、体勢が崩れた。
「モデレート・レーヴァテイン」
3つのデコイーズがエネルギーで出来た剣を生み出し、残りの3つはギーナの周囲をグルグルと回る。
ぞろぞろと機械生命体が姿を見せ始めた。
(後5分は保つ。シリウスのチャージまで6分。一分足りない。エネルギーは…足りる。
足りないのはメビウスの耐久値)
「随分大層な機械じゃないか?
見ているんだろう?体数は、2かな?
いや、5か?戦闘用でもないマッドがこのデカブツと対等に渡り合っているのを見て焦っているんだろう?
製造を止められたのに機械共を向かわせたのがその証拠だな。
何とか言ってみたらどうだ?
キサマらの機械共がただの製造用マッドにガラクタにされるぞ?」
近づいてきていた機械共が全てストップした。
時間稼ぎは一先ず成功ってところか。
『私たちに何のようかしら?
何がしたくてここに来た?
まさかただ適当に攻めてきたわけじゃないでしょう?』
後30秒稼げればいい。
「面白い。理由を問うか。
そうだよな。気になるだろうさ。
一番の目的はここを根城にしたくてね。
分かるだろ?そう簡単に、住める場所は見つからない。
ここまで設備が整っているのもなかなかない。それに知っているぞ?ここの地下で何をしているのかを。
無限の資源でも見つかったんだろう?
私はそれが欲しいんだよ」
『そう。じゃあ壊れなさい』
「まぁ、待てって。せっかちなやつだな。
実は他にも理由があってだな?」
『他?』
「そうだ。ここに来る前に、とある場所に寄ってな。
そこには何にもなくてね。
でも一つだけ、まだ使えるものがあったんだ。なんだと思うよ?」
『興味ないわね』
「はは!そうか!そうか!
ならこれはどうだ?
無限のエネルギーを生成できる物体だって言ったら?」
『嘘を付くな』
20秒は稼げた。後10秒。
「おいおい、私がそんな嘘をつくと思っているのか?
メリットがないじゃないか。
まぁ聞けって。
そのアンバー粒子を生成できる物体てのはな?私がいなきゃ使えないんだよ。
これも嘘じゃないぞ?
そしてここからが嘘なんだが、聞く気はあるか?」
『…壊せ』
はいはい!短気な機械共だよ!まったく!
左右から挟み撃ちにしてきた機械を飛び上がりざまに2体切り伏せ、デコイーズに捕まって更に上へと飛び上がり、スラスターを使用し着地をずらして、更にもう2体を一刀両断。
(体が悲鳴を上げている…)
無理な動きを強いられ、関節がギシギシと音を鳴らし、肉体に絶大なダメージを与えていた。
たった数回動いただけで尋常ではない程の反動と衝撃。生身であれば既に立ってはいられなかっただろう。
突如私ではなくエネルギー補給中のシリウスとリリィを狙い出した巨体機械。
何か言う、考える前に私はシリウスとリリィの前にでる。
「アイギスシールド!!!!!」
速度的に足りず、デコイーズが到着する前だった。
故にデコイーズではなく左手を犠牲にするしかなく、血が噴き出し、体のほうが悲鳴を上げていた。
「があああああァァァ!!!!!」
(信じられない程の痛みだ!!)
「ギーナ!!」
(休んじゃだめだ…!今休めば全ての機械生命体が押し寄せてくる!!)
「……ぐ…。
……モデレート・…フランベルジュ!」
通してたまるか!!!!
デコイーズも利用し、炎を灯した剣で2人を守る。
左手がうまく扱えず、先程のようには上手く行かない。そんな中でも巨体機械は止まってはくれない。
「逃げろ!ギーナ!!!」
シリウスは悲痛な叫びを上げ、リリィは目を向けずにシリウスのエネルギーを溜め続ける。
「そこで見ていろシリウス!!!
モデレート・アイギスシールド!!!!」
左手を無理やり上げ、事前に用意しといたデコイーズと、今度は右手も追加して、反動を殺す。
プシュ〜と冷却を終えて、次の拳を振りかぶっている巨体に向かって、真っ向勝負を仕掛ける。
「モデレート・ヘラクレス!!!!!」
凄まじい程の風圧を発生させて周囲の機械生命体と腕を弾き返すのに成功する。
「まだ私のターンだ!!!」
エネルギーはもうほんの少ししか残っていない。相手は弾かれただけで健在。
ならば。
巨体の胴体まで飛び上がり、
「Armor・PURGE!!
これでも喰らえ!!!!自壊!!!」
凄まじいほどの黄色の光を放ち、次第に光が収まる。
突如、周囲とその巨兵を諸共吹っ飛ばす。
爆発に巻き込まれ、地面をバウンドしながらシリウスとリリィの元に落ちた私は、意識を飛ばしながら何とか目を覚まし、親指を下に向けて、ニヒルに笑いながら、告げる。
「………自爆は、ろま…んだ…」




