CodeⅤ:拠点探し
拠点に最適な場所、この世界でそれの探し方はかなり難しい。
では最適な場所の条件とはなんなのか。
一つ、機械生命体の見回りから外れている場所だ。
アイツラは一定の周期で半径100メートルの音を探知して襲ってくる。
だが、ちょうどその範囲から外れているところなんて滅多にない。
一つ、広い。
これはかなり重要だ。
探しているのは拠点に最適な場所。
だが、見回りから外れた広い場所はほぼないに等しい。
一つ、防衛に適した立地。
広いだけではなく、傾斜になっていたり、遮蔽物がそこそこあってくれると守りやすいだろう。
これら3つの条件を満たす場所は、既に取られていたり、絶劇スモッグが充満していたりして使えないことが多い。
「全然いい場所がねぇじゃねえか」
「最悪、絶劇スモッグが充満しているところだな」
「……まじか?あたしはそれ嫌だぞ...?」
「安心してくれ。絶劇スモッグは完全に攻略している。
寧ろ天然の要塞になるかもな」
「…出入りは?」
「ガスマスク」
「終わってんな」
まぁ、できればそれは嫌だな。
こう話している間にも何体かの機械生命体をシリウスは刈り取っていた。
「……この武器は強すぎるだろうが」
「2体以上現れた時に投げられないのは強くないだろう?まだまだだ。
それにフェンリルとしての強みは恐らく、一対多の攻防一体だろう?」
「……いったいどこまで考えてんだか…」
「よし。データが揃ったぞ」
「?」
空中に液晶を表示する。
回収したデータと、これまで出会った機械生命体、それから今まで通って来た景色を照合し、液晶に重ねて表示して、最後に合成する。
「すげぇな…。マップか。どれくらいの距離あるんだ?」
「ふむ。半径、10kmってところかな?
設備があれば100は行ける。
この世界ってすごいよな」
シリウスは天を眺めた。
世界なんかよりお前のほうが百倍凄いという言葉を飲み込んだ。
「半径10kmを見る限り、候補はこの3つだな。
1つ目は、周りのビルが倒壊していて円形状の広場になっているな。
メリットはビルを使った要塞化が可能。
デメリットは円形だから全方向を警戒しなきゃいけないことだな。
2つ目は、絶劇スモッグが充満している。
ビルが倒壊していて、完全要塞化が可能だな。
メリットは資源が豊富だな。
取ってくる必要がない。素晴らしいな。
デメリットはやはり絶劇スモッグだ。
天然の要塞なのは完璧だが、ガスマスクが消費される状況はあんまりよくない。
3つ目は、もうほぼ平原だな。
メリットは平原だから改造がし易い事。
絶劇スモッグ。
機械生命体達の通り道にもならないから防衛の心配もなし。ただし例外ありってところか。
デメリットはメリットと同じく平原だから資材、設備、雨風をしのぐ為の屋根が一切存在しない。
その為、離れた場所から取って来なきゃいけないことだな」
シリウスは顎に手を当てて思案する。
「1は駄目だな。
ギーナの労力がでけぇ。私じゃ全方向は守れねぇからギーナが要塞化しなきゃなんねぇ。
2は……一旦置いといて、3は最初っからだからそれこそギーナの労力が半端じゃねぇ。
これなら1のほうがマシだな」
「ふむ。なら、2の絶劇スモッグを全て何とかしてしまえばいいな。
その為にはガスマスクを20個程作らなきゃな。私とシリウスの分で10個ずつな」
「…10個でなんとかなんのか?」
「中とその周辺だけならな。空気中に充満したのは無理だ。
それに大事なエネルギー源だからな」
シリウスは天を眺めた。
あんなもんをエネルギーにするのはお前だけだという言葉を飲み込んだ。
「フフフフフフ……………。
腕が鳴るな!!ここにあるガラクタ共で最高級のガスマスク型装甲を作ってみせよう!!」
ーー30分後。
「どうよ?」
「最後の一つが完成したぞ!!
付けてみてくれ!」
付け方は、持った時にデータが指からインストールされるため、何も考えずに装着可能。
三角形状で、右端に赤い星のロゴが入ったただの物体。
口元に寄せて辺の三カ所を親指、人差し指、中指でぐっと押し込むことでカシャカシャと音を鳴らしながら広がり、最後に左右側がカシャッと飛び出す。
「どうだ?息苦しいとか、変な匂いがするとか、そういうのはないか?何でも言ってくれ」
シリウスは眉を寄せて、一言。
『…いい匂いがするのはなんでだ?』
「清浄と消臭を行い、全てを酸素に変換!
どんな空気でもエネルギーに転換!
例え絶劇スモッグだとしてもエネルギーへと姿を変えて、通常時よりも息をしやすく!
尚且つ匂いすら変換することでいい匂いへと変える…。
まさに究極のガスマスク!
難点は効力が3時間しかないことだな」
充分すぎるだろうが…。という言葉を…以下略。
「よし、これで準備は整った。
2番の拠点候補に向かうぞ。
正確な形状や現在の詳しい状態は何も分かっていない。
最悪を想定していこう」
「了解」
――――――――――――――――――――
「ところで聞いてもいいか?」
「なんだ?何でも聞いてくれ」
「この武器のことなんだが、どういう原理で変形してんだ?どうやって手から離れてるのに剣を振れるんだ?」
「なるほど。それでさっきからソワソワしてたのか。
今後は私の話を遮ってもいいから、聞いてもいいぞ?そのほうが私は嬉しい」
「…お前は変わってると思うぞ?」
「まぁ、化け物と呼ばれてきたしな。
さて、武器の説明を歩きながらしよう。
そうだな…。まずは浮く原理だな。
その武器には強力な磁気が発生する鉱石を仕込んでいる。
そしてシリウスのその手に、ガントレットとして付着と分離の機能を付与し、装着できるようにした。
その分離した鉱石と鉱石を番として、巣穴の要領で帰る場所に設定。
後は番が連動し、シリウスの脳データと離れた鉱石が、連動。
結果、頭で考えた通りに剣が空中で軌道を変えたり、ガントレットに変形したりするというわけだ」
シリウスは天を仰いだ。
――――――――――――――――――――
「…………」
「……こりゃあ、ひでぇな…」
アンバー粒子で作った爆弾を、アンバー粒子で作った建物に放り投げたのか。
或いは、
「絶劇スモッグを風で流した?
何をどうすればこんなことになる?
人間が非人道的な行為に移ることはままあることだが、何れにせよ気分が悪い。
やはり私も含め、全人間は滅びるべきだったのかもしれん」
これを見るとそう思わざるを得ない。
そこら中に広がる変色した“白骨死体”。
一切の血の跡がない。
それが不気味さを際立たせていた。
「絶劇スモッグってのは身体も溶けるもんなのか?」
「いいや。
確かに溶けるんだが、正確には吸った側から、内側で細胞が分解されて溶けたように見える、だな。
私は数分であれば吸っても問題はない。
それでもこの濃度なら一分も持たないかもしれないな。
後は、そうだな。
長時間生身を晒していたら、皮膚から絶劇スモッグを取り込んで徐々に細胞を分解していくだろうな。
つまり普通の人間ならばーー」
「それ以上は言わなくても分かる。
ド畜生が。胸糞わりぃな。
設備としてはどうだ?」
「…悪くはないが、気分は良くないな。
拠点にも向かない。
それにここは、恐らく、病院だったのだろう。
尚更よくない」
「………別の場所にするか?」
「……三番のへいげーーいや?
シリウス。お前、武器や装甲があれば同時に何体の敵を壊せる?」
「そうだな…。今のエネルギーだとフル武装で千なら行けるんじゃねぇか?
エネルギーが満タンなら、万は行ける。
ただまぁ…今じゃあ消耗が激しくて直ぐにエネルギー切れを起こすかもしれねぇ」
ふむ。
「ならば、ここの近くにある機械生命体の生成所を落とそう」
「……生成所、あったのか?」
「ああ。武装がなければできないと思ってな。候補から抜いていた。
だが今この場所に残っている材料を私が使えば、エネルギー消費は抑えられないだろうが、お前をフル武装状態にさせることができるはずだ。
ここを戦場のど真ん中にするのは、少々気分が悪い。
それなら、あのゴミ置き場の方がまだマシだ。ここに眠る者は、もういないのだから」
起こす必要も、起きる必要も、何かする必要もない。
この世界に幽霊などいない。
この世界に魂という概念を尊ぶ者は存在しない。
だからこの世界に死んだものの未練を浄化するものはいない。
だから。
ここには触れてはいけない。
何かを思うことはただのエゴでしかない。
「これもただのエゴだろうが、活用させて貰うぞ。
偉大な先人、人の為に生きた戦友達よ」
アンバー粒子を使った装置、絶劇スモッグを吸収する道具を使って、一室だけ綺麗な空気にする。
「シリウス。今から言う物を探してきてはくれないか?」
「何が欲しい」
「工具だ。ここの建物内にある全ての工具。
あるだけ持ってきてくれ。
何回かに分けてもいい。
それまでに、私は設計図を作る。
君の中にあったデータを使って、君がしていた武装をフル再現、フル改造する」
「了解」




