CodeⅤ:自然の摂理
心臓を失ったリリィが起きていられる時間は残り一分。
ギーナが帰って来られなくなるまで30秒。
時間は十二分にある。
問題は適合率だが、そんな物は今考えた所で何にも、どうにもならない。
この状況で考えるべきは、シリウスに全てを預け、完璧にギーナの意志を完遂すること。
「スサノオ!!力を貸して!!」
戦闘に参加していたスサノオがリリィに呼ばれたその一瞬、手に持っていた銃を放り投げ、脇目も振らずに走り出し、ギーナの元へ。
だが、ガラハッドは今尚、痺れる続ける体を動かし、武器を捨てたスサノオに迫る。
スサノオは振り返らない。
シリウスがいるから。
理性を失っていても敵が目の前にいる。
フェンリルである以上、理由はいらない。
ガラハッドがその剣で防ぐも、シリウスの拳にはその痺れた身体には相応しくなかった。
スサノオは無事にリリィの元に。
リリィの中に溜めていたギーナの血だけでは圧倒的に足らず、スサノオに流れている、ギーナのDNAが含まれた、”オイル”を血液代わりにする。
ギーナのアーカージを起動し、リリィの頭の中に仕込まれた知識、人工臓器をアーカージから取り出す。
その事実が、ギーナが、信じたくない思いと、予感していたこの未来が、これを作らせた事を物語っていた。
衛生問題も気にしなければならないし、余計なダメージを与えることも、あってはならない。
失敗は、許されない。
失敗イコール、私達の死なのだから。
心臓以外の部分も、ダメージを受けている、もはや生存は絶望的だ。
だが、私ならば、マッドに変えることはできるのだ。
ギーナはマッドを「人間」にした。
逆を【この癒す者】が出来ないはずはない。
スサノオは何も言わず、自身に流れている血、”オイル”を渡し続ける。
少しでも、乱れないようにじっとシリウスを見つめながら。
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「がアァ!!!」
獣のように、ガラハッドを追い詰めるシリウス。
もはや自身が傷つくことなど、考えてはいない。
ギーナはいない。ならば、私が仇を討つのだと、思考を放棄する。
ガラハッドの頭を鷲掴み壁に投げつけ、追いかけ、ガラハッドの反撃を貰いながら、可変式ガントレットで一心不乱に殴り付ける。
センスだけで圧倒するシリウスは、紛れもなくフェンリルであり、痛々しいほどに輝かしかった。
そんな霞がかかった頭に突如、電撃が奔る。
ーージリジリーー
『落ち着け。シリウス。
私の死を悲しんでくれているのだろう?
だが、その必要はないよ。
私は私の死を予感していた。
というか知っていたんだ。
ずっと話せなかった。
リリィがあそこにいるとわかったのも。
私が死ぬのも。
そして、君があのゴミ捨て場に捨てられていたのも。
全部知っていたんだ。
私は、君達を利用した人間だ。
だから、私のために怒るな。
いや、これは違うな…。こんな事を言いたかったんじゃない…。
……シリウス。私は、君に。いや、これも違うな。言葉が出てこないなど、初めての経験だ。
私は、生きるつもりだ。何としても。
だが、それは絶望的だった。
だからもしものために、これだけは伝えておきたくてね。
シリウス。私の為に怒ってくれてありがとう。
楽しかったよ』
意識を繋ぎ止める防波堤は、確かに意味を成した。
意思なき破壊は、ギーナが望むところではないのだと。
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スサノオは限界だった。
後、数秒その血を取られれば、眠りについてしまう。
シリウスは、右腕がボロボロに、左足も原型を留めておらず、半壊していた。
既に無理が祟っており、その身体は、限界を超えていた。
「拒絶反応!?だめ!!絶対に生き返るんです!!まだ!まだ!何もしてない!!」
見ていることしか出来ない。
信じて戦うことしかできない。
「…死なないって言ったもん」
リリィは、騒ぐ、さわいで。
「………反応が…なくなった」
リリィが急に静かになり、項垂れた。
その時。一筋の電撃が走った。
その電撃が、地面の水を伝い、寝ているギーナへ。
「……信じ、られない」
リリィは、その光景を”見た”。
一体何が起きたのか。
分からないか?
「私は一度たりとて、できないとは言っていない」




