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殲滅戦記メギド  作者: 松茸
Episode3.ガラハッド
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CodeⅤ:自然の摂理

 心臓を失ったリリィが起きていられる時間は残り一分。

 ギーナが帰って来られなくなるまで30秒。


 時間は十二分にある。


 問題は適合率だが、そんな物は今考えた所で何にも、どうにもならない。


 この状況で考えるべきは、シリウスに全てを預け、完璧にギーナの意志を完遂すること。


「スサノオ!!力を貸して!!」


 戦闘に参加していたスサノオがリリィに呼ばれたその一瞬、手に持っていた銃を放り投げ、脇目も振らずに走り出し、ギーナの元へ。


 だが、ガラハッドは今尚、痺れる続ける体を動かし、武器を捨てたスサノオに迫る。


 スサノオは振り返らない。


 シリウスがいるから。


 理性を失っていても敵が目の前にいる。

 フェンリルである以上、理由はいらない。


 ガラハッドがその剣で防ぐも、シリウスの拳にはその痺れた身体には相応しくなかった。


 スサノオは無事にリリィの元に。

 リリィの中に溜めていたギーナの血だけでは圧倒的に足らず、スサノオに流れている、ギーナのDNAが含まれた、”オイル”を血液代わりにする。


 ギーナのアーカージを起動し、リリィの頭の中に仕込まれた知識、人工臓器をアーカージから取り出す。


 その事実が、ギーナが、信じたくない思いと、予感していたこの未来が、これを作らせた事を物語っていた。


 衛生問題も気にしなければならないし、余計なダメージを与えることも、あってはならない。


 失敗は、許されない。


 失敗イコール、私達の死なのだから。


 心臓以外の部分も、ダメージを受けている、もはや生存は絶望的だ。


 だが、私ならば、マッドに変えることはできるのだ。


 ギーナはマッドを「人間」にした。


 逆を【この癒す者】が出来ないはずはない。


 スサノオは何も言わず、自身に流れている血、”オイル”を渡し続ける。


 少しでも、乱れないようにじっとシリウスを見つめながら。


────────────────────


「がアァ!!!」


 獣のように、ガラハッドを追い詰めるシリウス。

 もはや自身が傷つくことなど、考えてはいない。


 ギーナはいない。ならば、私が仇を討つのだと、思考を放棄する。


 ガラハッドの頭を鷲掴み壁に投げつけ、追いかけ、ガラハッドの反撃を貰いながら、可変式ガントレットで一心不乱に殴り付ける。


 センスだけで圧倒するシリウスは、紛れもなくフェンリルであり、痛々しいほどに輝かしかった。


 そんな霞がかかった頭に突如、電撃が奔る。


ーージリジリーー


『落ち着け。シリウス。


 私の死を悲しんでくれているのだろう?


 だが、その必要はないよ。


 私は私の死を予感していた。


 というか知っていたんだ。


 ずっと話せなかった。


 リリィがあそこにいるとわかったのも。


 私が死ぬのも。


 そして、君があのゴミ捨て場に捨てられていたのも。


 全部知っていたんだ。


 私は、君達を利用した人間だ。


 だから、私のために怒るな。


 いや、これは違うな…。こんな事を言いたかったんじゃない…。


 ……シリウス。私は、君に。いや、これも違うな。言葉が出てこないなど、初めての経験だ。


 私は、生きるつもりだ。何としても。


 だが、それは絶望的だった。


 だからもしものために、これだけは伝えておきたくてね。


 シリウス。私の為に怒ってくれてありがとう。


 楽しかったよ』


 意識を繋ぎ止める防波堤は、確かに意味を成した。


 意思なき破壊は、ギーナが望むところではないのだと。


────────────────────


 スサノオは限界だった。


 後、数秒その血を取られれば、眠りについてしまう。


 シリウスは、右腕がボロボロに、左足も原型を留めておらず、半壊していた。

 既に無理が祟っており、その身体は、限界を超えていた。


「拒絶反応!?だめ!!絶対に生き返るんです!!まだ!まだ!何もしてない!!」

 

 見ていることしか出来ない。

 信じて戦うことしかできない。


「…死なないって言ったもん」


 リリィは、騒ぐ、さわいで。


「………反応が…なくなった」


 リリィが急に静かになり、項垂れた。










 その時。一筋の電撃が走った。


 その電撃が、地面の水を伝い、寝ているギーナへ。


「……信じ、られない」


 リリィは、その光景を”見た”。


 一体何が起きたのか。


 分からないか?


「私は一度たりとて、できないとは言っていない」

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