CodeⅡ:ゴミ置き場
地下空間の外は荒廃したビルのジャングルだ。一面が緑に覆われている。
この緑は草や木の緑ではない。
全て絶劇スモッグによるものだ。
普通の人間ならばどう頑張っても、ものの数秒で死に至る。
ここを通れる人間など、私唯一人だろう。この身体は普通じゃないから。
機械生命体はその限りじゃない。
マッドやドットでさえそのガスを耐えられるのはほんの一部だ。
それに危険はこのガスだけではない。
ここには機械生命体がうじゃうじゃといる。人型のものから触腕しかない化け物まで千差万別。
伊達に未来の世界ではないのだ。
今の私が見つかってしまえば、一発で終わり。前世で私が書いていたメギドと比べてもかなり難易度は高くなっている。
闘う術も、抗う術も、何もない。
それに私の背は平均より高い。
そのせいで屈んで移動しなければならないのだ。…胸が擦れる。
背に比べて慎ましい胸で助かったが、ないわけじゃない。
こういう時男だったらとどうしても考えてしまう。
かなり進んだ先、早速私の記憶に存在しない敵が5体もいた。
幸い迂回も、バレないように素通りすることも難しくない。
迂回一択だ。この身体で、武器もなしに勝てる相手ではないし、追いかけられたら逃げ切れない。
特に今は。
段ボールがあればなぁ…。
前世でやってたステルスゲームを思い出しながら、先を目指した。
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「着いた」
機械達のゴミ置き場。
ここを根城にする。
食料と水は今のところ3日分は持つ。
時代は超未来。
収納も取り出すことだって簡単だ。
贅沢はできないが。
このゴミ置き場にて廃棄されたマッドがバラバラで落ちていたところを偶然発見する所から千変機構メギドは始まる。
最終話までは書けなかったが、ここで出会うマッドは私と最後まで一緒にいるマッド。
私はこのマッドを求めてここまで来た。
このマッドが私の命綱なんだ。
何としても見つけてみせる。
――――――――――――――――――――
日が沈んでしまった頃。
覚えている限りで探してみたが、マッドの腕の欠片すら見つからなかった。場所は合ってる筈なのに。
「なんでないんだ…」
…あるはずなんだ。ここのゴミ置き場に。
今日は大人しく仮拠点に帰ることにする。
後1日以内にここを発たなきゃいけないのに…。
いくら探しても見つからないジャンクを探す私の様子は、焦りをちっとも隠せていなかった。
――――――――――――――――――――
最悪だ。
ここにいることが完全にバレている。
まだ半時も経っていないのに…。
ここに来るのは1日後なはずなのに…。
……、ここで終わり…?
いやだ…。いやだ!イヤダイヤダ!!
「……まだ、死にたくない」
後退りをした時にカツンっ。と足に何かが当たった。
それは。あれだけ見つからなかった、私が探していたマッドだった。
起動できれば、、かてる。
居ても立ってもいられずに無我夢中で掻き集めて、そのマッドに触れ、腕、足、頭を繋げていき、軽い修復をかける。
データを修復し、プログラムコードを埋め込み、口に水を含んでマッドの口を開き、私の唾液を流し込む。これを燃料にする。
これでは全く足りない。
でもこれは絶対に必要だ。
この後やる行為に必要だから。
その前にプログラムを再度構築し直して、元々あったプログラムに上書きする。
これで準備は整った。
私の唾液、これによりDNAを認識して、このDNAによる燃料化を可能にする。
これは一度ジャンクになっているからこそできることだ。
前世で書いた私の知識とは全く別の、この世界特有の復元方法。
私のDNA、液体であれば何でも燃料にできる。
……つまり、あれでもできる。
輸血しといた血液を使うつもりだが、足りなかったら……。
こほん。それは最終手段だ。
収納ボックスから血液を取り出して口にチューブを差して、流し込む。
………忘れていた。中にバッテリーがない。
………自作するしかないか。
一応集めておいたガラクタを使って、電気を発生させる機構を組んで、全身に循環するように回路を組む。
廃棄された機械生命体から銅線を切り取って、そのマッドに埋め込む。
不格好だが悪くない出来だ。
さて…燃料は足りたかな。
……………。足りない。
……これだけはやりたくなかったんだけどなぁ………。
チューブを外して、血液が無くなったボトルを、あれ、と入れ替える。
……臭いは、完全に…。
これを口から入れるのは気が引ける…。
体の向きを変えて、お尻の方へ。
…………ちょっと足りない…。
後ほんのちょっとなのに…。
ちょうど催す感覚を覚えた私は息を呑んで、寝そべるマッドを見る。
………マジほんとにごめん。
心のなかで謝罪しながら、そのマッドの口に向け、………をして燃料の確認をする。
…これで起動できる。
一応口の中を拭いて、気休めの消臭をして最後のプログラムコードを入力して。
「…おねがい。おきて。ここまでやったんだ……。一度でいい…。…救ってくれ」
キリキリ、ギリギリ、ビリビリと色んな甲高い音を鳴らしながらその存在は起き上がった。
「……何処だ?ここは…?」
「話は後にしてほしい!!君を起こした音で周りに集まっている!!」
その者は私を一瞥し、埋め込まれたデータによってどういうことか瞬時に周囲を把握しそれを求めた。
「きれいなあんたを守るってか?
ふざけんじゃあねぇ。
武器もなしにそんな事できるわけねぇだろうが」
「武器があればアイツラを蹴散らせるのか?
ならこれをやる!」
首に付けていたペンダントを引き千切りそのマッドに頼む。
「私は守らなくていいからアイツラを蹴散らしてくれ!!」
その者、マッドはそのペンダントを握り込んでからニヤリと嗤い、機械生命体を一瞥する。
「おもしれぇ。墓荒らしたぁ、感心しねぇなぁ!!!!!」
………マ◯アさまかな…?
前世で遊んだ狩人のゲームで出てきたキャラを思い出した。
口調は大部違く、酷くなっているが…。
私が付けていたペンダントは握り込むとメリケンと似たようなものになる。
………ただの護身用だ。
それは私が使えばの話だが。
5方向からの銃弾を四足歩行の高速移動で避け続け、リロードのタイミングで高く飛び上がり、左手を照準に、天から右手を突き出すように機械生命体に鉄拳を繰り出した。
「まずは一体!!!」
壊した機械生命体を盾にしながら突進して滑り込みで機械生命体の足を潜って、
「け◯あな確定だぁ!!」
それは意味が違う。それに君も◯つあなし……いや、これはやめておこう。
直ぐに腕を引き抜いて飛び退き、メリケンから手を引き抜いて、一番近くにいた3体目の機械生命体に投げつけて、遮蔽物に飛び込み、遮蔽物から遮蔽物へと駆けていく。
その者は3体目の頭に刺さったメリケンを勢いよく引き抜き、残った機械生命体の銃弾をバク転で全て避けた。
廃ビルの壁に“着地”して、壁を地面に機械生命体に突進。
「スクラップに、スクラップにされる気分はどうだよ?」
煽りも一振りに、5体目の機械生命体を4体目で袋叩きにして、戦闘を終了させた。
「壊す者・フェンリルの実力。
満足したかぁ?」
期待以上だ…。
「…あの量をこんな一瞬で…。壁は高いなぁ。…ん?フェンリル?フェンリルって言った?」
「あ゛ァ?なんだ?なんか文句あんのか?」
おかしい…。
フェンリルはウルフが形態を変化させ、進化した後の名称だ。
つまりこのゴミ置き場で見つかるのはウルフのはずなんだ…。
「嬉しい誤算だよ。
まさかフェンリルに出会えるとはね」
「起こされた時から分かってたけどよ。
てめぇ、型番はなんなんだ?
関節、肌の質もだ。
それに廃棄された私を起こすなんてただのマッドじゃないだろ。
なにもんだよ?」
馬鹿で脳筋なように見えて鋭い。
設定した通りではあるのだが、にしたって確信が速すぎるぞ…。
やはり私が書いていたものとの違いが多すぎる…。
想定していた諸々を考え直さなければ。
「すまない。いろいろ話をしたい。
ここでは何だ。あっちに私の仮拠点がある。そこで話さないか?」
ゴミ置き場の奥の方を、親指で指して返答を待つ。
フェンリルは睨みを効かせ顎で返事をした。
交渉開始だ。




