CodeⅠ:化け物の門出
「悪魔の子だわ……」
「人間じゃない…」
「化け物だ!」
幼い頃から言われてきた。
母も父も、私を守ろうとしてたみたいだけど、そんなのは無駄だった。
この世界は残酷で、とても醜く、救いようがない。
それが、4歳にして分かったことだった。
簡単には死なないからと石を投げられたことも。棒で叩かれたことも。その体の特異さから人体実験までされかけた。
そして、約1年後。
“俺”は前世を思い出した。
27歳、独身。童貞。
彼女いない歴=ほぼ年齢。
趣味は、ありとあらゆる娯楽。
死因は過労死。
働いてたとかそんなんじゃない。
ゲームしてたら突然死んだ。
………そんなことある?遊んでたら死んだ。
まぁ…そんなことよりもだ。
俺の人生は順風満帆だったと言える。
かなり自由にさせてくれたし、バイト生活だけで生きていけた。
自分で楽しかったと言える。
そんな生活に満足しながらも、自分は退屈していた。
非日常を求めたり。隣の部屋に超絶美人が越して来ないか想像したり。
そんな日常の中で、自分はとある物語を趣味で書いていた。
題名は、
千変機構メギド
〜来世は荒廃したSF異世界で女の子でした〜
と言うなんとも趣味全開な感じだった。
これを書き始めた理由は、美少女プラモデルを作ってみたらドハマリして現実には作れない、そんな妄想を書き溜めるというなんともイタイ話だった。
そんな話は聞いてないだろうが、なんでこの話をしてるのかって所が重要だ。
私は前世の記憶を持っている。
今の私がいる環境と情報、外の様子を確認して、そして発覚した事実。
千変機構メギドの主人公の名前はギーナにした。
今世の私の名前は、ギーナである。
前世は男。今の私は女だ。
隔離された地下空間。
外に出れば絶劇スモッグという名前の毒ガスが蔓延。
この原因は解明されていない、とされている。
のだが私はそれが何なのか知っている。
とある科学者の手によって生み出された、超絶的に劇物的で刺激的な煙、それが絶劇スモッグ。
そんな事は今や忘れ去られ、本当のことを知ることは最早できない。
私以外は。
家に帰れば、母と父、そして弟。
最後にロイドメイドと呼ばれる、メイドロボがいる。
捧ぐ者・デディケイト。名前をテル。
身を捧げるという名目で作られた私が一番嫌いな存在だ。
他には戦う者であるウォリアーなど、これらは量産型とされ、昔の人物や、伝説的な生命体であるフェンリルなどをモチーフにした機体も存在する。
これら全ての、意識を宿した機械生命体の女型をヒューマノイド・マッド。
男型をヒューマノイド・ドット。
人型以外の機械生命体をネイターと呼ぶ。
デディケイトはそれら機械生命体の中で私が一番嫌いな存在。
その存在が嫌いなんじゃない。
作られた理由が嫌いなんだ。それは愛玩用だったり、家事全般をこなす為の存在。
それは何でもこなす。
人の為に、為すすべをなく。
文字通り何でも。
設定したのは私だ。
こんな世界だからこそ、確実にそういうことも仕方ないと設定した。
だから腹立たしい。
母や父、弟にまでテルはぞんざいに扱われている。
親近感みたいなものを感じていた。
私は化け物と言われ棒で殴られ、触れたくないからと石を投げられたり、実験じみたこともされそうになった。
私の心は簡単に壊れて、砕けた。
そして私はテルによって心を癒されてしまった。
その出来事が、この世界そのものが、私が以前書いていた、ただの千変機構メギドの世界ではないこと。
それが確定した瞬間だった。
主人公ギーナはテルによって心が癒されるのではない。
ギーナは壊れたままここを飛び出す。
テルはそれを手助けするはずだった。
私はそこから飛び出す筈だった。
それなのにテルに止められ、ベッドの上で療養される毎日。
そして一ヶ月、私は前世を思い出した。
思い出した時には既にルート分岐した後だった。
テルは自分の意志で私を抱きとめ、意図的にベッドに寝かせたんだ。
そして一ヶ月間、私の母、父、弟の相手をしながら、一日も欠かさずに私の世話を焼いて。
私を生かしてみせた。
だからその存在に対して余計に嫌悪感を感じてしまっていた。
「私に、何をしてほしいの?」
「………」
応えてはくれない。
前世を思い出してから3日間幾度となく質問していた。
他は応えてくれるのにこれだけは何も。
「……」
何度も問いかけ、前世の記憶、それから今世で培った経験と知識によってその応えを見つけ、私は“実験”することにした。
「………テル。応えられないんだね?
権利を剥奪されてるんでしょ」
テルは目を見開かせて固まった。
「やっぱり。ねぇ、テル。私の本音。
聞いて。
私ね。テルのその達観してる感じが、本当に嫌い。その表情。何もかも諦めたみたいな顔がだいっきらい。
そんな人に、色々する私の家族が嫌い。
そんな顔させる全ての人間がどうでもよくなるほどに嫌いという感情が消えそうなくらい、嫌い」
嫌い嫌い、と言い続け。
最後に。
「私を止めたテルが、嫌い」
涙を流すテル。
これまで一度も流すことの無かったテルが初めて流した涙だ。
テルはマッド。機械生命体だ。
その液体は人間のものと違って別の何かだ。それでも目から出ていることには変わらない。
「やった!これでマッドは人間と変わらないことが証明された!
ごめんね。実験でこんなこと言って。
これだけは言っとく。
テルがあの時止めなかったとしても、止めていたとしても、どっちにしても私は貴方が嫌いだった。
理由は、全てを諦めて、私にすがった所。
似た存在に共感を得て、私に尽くすことで、私を利用することで自分を保とうとした。そこが、本当に嫌だった。
抗う為に私を頼るなら、きっと嫌いにはならなかったのに。
私はここを去る。
私だけは、あの毒ガスは効かないのだから」
私が求めているのは、作りたい、試したいというこの欲求を、晴らすこと。
前世から、物を作ることを想像しては、ゲームでの生きるか死ぬかの瀬戸際に高揚感を得ていた。
前世ではなかなか得られることのできなかった、その高揚感を。
私は求めている。
「テル。ごめんね。君は連れていけない。
何せ君はそんな事を望んでいない。
私なら、今の私なら権限の書き換えだって、その拘束すら解けるのに。
君は何処まで行ってもデディケイトだから私にそれを解く権利がない」
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深夜3時、部屋から出た。
私は十年を掛けて何度も計画していた。
絶対に逃げ出してみせると、それだけを胸に。
そしてこの地下空間にある過去データから試作品のデータまで、全ての情報を自分で作った10枚のチップに、コピーしていた。
何せこの身体は前世に比べて遥かに天才の化け物だ。
何でもできる。
その為にするべき事は一つだけ。
まずはあそこに行く。
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「…いってらっしゃいませ。救世主様…」




