表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女荷物持ちの収納魔法【ナイナイ】が実は世界最凶だった件 ~魔王すら瞬殺だけど、カモミールを飲んでいたいの~  作者: 月城 友麻


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/119

48. 最大火力魔法攻撃

「ごーーお」


「まぁ、この辺が限界みたいね」


「姐さん早くぅ……」


 トトはおびえ切って懇願した。


「よーーん」


 小窓から右手を伸ばすリーシェ。


 白い指先が、朝の光の中に伸びる。その先に、空を飛ぶ赤毛少女と、真紅に脈動する巨大な炎の龍。


「さーーん」


「ナイナイ」


 静かな声だった。


 カウントダウンが、絶対静寂に飲み込まれ、途切れる。


 辺り一帯の音が消えた。


 風の音が。麦の揺れる音が。虫の声が。空気の震えが。


 全てが、一斉に()き消された。


 同時に――朝の空に浮かんでいた赤毛の少女が、消える。


 炎龍も、対魔法結界の光も――消えた。


 残ったのは、何事もなかったかのような朝の青空だけだった。雲が流れ、鳥が飛び、太陽がさんさんと照り続けている。ただ、さっきまでそこにいた少女と龍だけが、この世界から取り除かれていた。


 数秒の沈黙の後、風が麦を揺らすさわさわという音が戻ってくる。世界が、平常を取り戻していく。


 まるで最初から、何もなかったかのように。



         ◇



 王宮の屋上が、凍りついた。


「え……?」


「は……?」


「何が起こった……?」


 宰相たち四人の視線が、虚空に釘付けになっていた。遠眼鏡を握る手が震えている。さっきまで確かにそこにいた赤色の点が、朝の空から消えている。


 炎龍の真紅の輝きも。対魔法結界の光の膜も。何もかも。


 城壁の上では、魔導院の部下たちが悲鳴に近い声を上げた。


「リ、リリカさま……?」


「こ、これって……」


「け、消された……?」


 一人が魔導通信器を掴み、叫んだ。


「リリカさま! リリカさま! 応答してください! リリカさま!」


 返答はない。ノイズすらない。完全な無音。まるで受信器そのものが、この世界から消えたかのように。


「ダメだ……。魔導通信にも反応がない……」


 部下たちの顔から、血の気が引いていた。


 首席賢者リリカ・アステリア。王国最強の魔法使い。対魔法結界を展開し、炎龍を従え、空の上から圧倒していたはずの無敵の天才少女が――一瞬で、消えた。


 炎龍ごと。結界ごと。存在ごと。


「総員戦闘配置!」


 副院長が叫んだ。声が裏返っている。恐怖と使命感が、喉の奥でぶつかり合っていた。


「攻撃目標、攻略者の小屋! もはや生け捕りなど不要! 全力で行け!」


「はっ!」「はいっ!」


 城壁の上に、魔法陣が展開されていく。


 赤。緑。青。鮮やかな光の円が次々と浮かび上がり、朝の空を染め上げていく。魔導院の残存戦力が、持てる全ての魔力を込めて術式を起動する。火球、氷槍、雷撃、風刃――あらゆる属性の攻撃魔法が、同時に編まれていく。


 城壁の上が、極彩色の光に包まれた。


「姐さん、来るっすよぉ!」


 小屋の屋根裏で、トトが叫んだ。城壁の上に並ぶ無数の魔法陣の輝きは、ここからでもはっきり見える。あれが全て放たれたら、小屋どころかこの一帯が焦土と化す。


「タルいわ……」


 リーシェは面倒くさそうにため息をつくと、右手を、城壁の方角に向ける。


「ナイナイ」


 刹那。


 城壁の上から、人影が消えた。


 赤い魔法陣、緑の魔法陣、青い魔法陣術式に込められていたすべての魔力の輝きが、発動の寸前で虚空に呑まれた。


 城壁の上は無人と化した。


 あれほど鮮やかだった極彩色の光が嘘のように消え、朝日に照らされた白い石壁だけが残っている。静かで、穏やかで、まるで最初から誰もいなかったかのように。



         ◇



「え?」


「あ、あぁぁぁ……」


 宰相たちは、言葉を失った。


 リリカだけではなかった。


 魔導院の部下たち――主力メンバーの全員が、一瞬にして消えたのだ。


 大陸随一と称された王国魔導院。その戦力が、まばたき一つの間に、跡形もなく消滅した。


 宰相グレンヴァルは遠眼鏡を取り落とした。石の床に当たって、からん、と乾いた音がした。


「あ、あの小娘め……! 大口叩いてこのザマか……! くぅぅぅ……」


 怒りは、すぐに恐怖に変わった。


 治安局の精鋭部隊が消された。首席賢者が消された。魔導院の主力が消された。王国の武力の半分はすでに消失してしまったのだ。


 これは王国存亡の危機――。


「……これは」


 参謀総長カーティスが、震える声で呟いた。眼鏡の奥の目が、初めて動揺の色を見せていた。


「人を、収納できるということじゃないのか」


「そんなバカげた魔法があるか!」


 騎士団長ヴァルゲンが怒鳴った。だがその声には、否定しきれない恐怖が滲んでいた。


「しかし……そうでないと説明できんぞ」


 カーティスは静かに言った。


「リリカは対魔法結界を張っていた。あらゆる魔法攻撃を弾く最高位の防御だ。それが通じなかった。落とし穴でもない。彼女は空にいた。地面に触れてすらいなかった」


 沈黙が降りた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ