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美少女荷物持ちの収納魔法【ナイナイ】が実は世界最凶だった件 ~魔王すら瞬殺だけど、カモミールを飲んでいたいの~  作者: 月城 友麻


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47. 盛大なキノコ雲

「あなた、私の部下になりなさい。そしたら今まで犯した罪は減刑してあげるわ」


 リリカはドヤ顔で見下ろす。


「部下だって。どうします?」


 トトが小声で訊いた。


「嫌よ、タルい……」


 リーシェは即答した。こんな面倒くさそうな小娘の下につくなど、想像するだけで気が重い。静かに暮らすという夢が、今以上に遠のく未来しか見えない。


「何よ! 私の部下になれるなんて名誉なことなのよ? 何が不満よ!」


 朝のおだやかな麦畑にリリカの怒声が響いた。


「そんな名誉要らないってのに、何なのこの子? 困った子ね……」


 リーシェはため息をつく。


 何のアクションもないことに、リリカの頬がぷくっと膨らんだ。


「いつまで黙ってるつもり? こっちは実力行使してもいいのよ?」


 リリカの声が、一段低くなった。


 腕を振り上げる。白いローブの袖が翻り、その手のひらから真紅の光が迸った。


 直後、空に巨大な魔法陣が展開されていく。


 直径十メートルはあろうかという真紅の円陣が、朝の青空に焼きつくように浮かび上がる。古代文字が円周を駆け巡り、中心部で魔力が渦を巻く。ブワッ、と輝きが膨れ上がり――魔法陣の中から、それは現れた。


 炎の龍。


 全長二十メートルを超える、純粋な魔力で編まれた巨大な龍。真紅の鱗が溶岩のように脈動し、双眸は太陽のような金色。口を開くたびに灼熱の吐息が漏れ、周囲の空気が歪んでいた。


「うわーっ! なんか来ますよぉ!」


 トトが真っ青になった。


 リーシェはきゅっと口を結び、炎の龍を睨み上げた。あれが飛んでくるなら、消さねばならない。


「そいやーっ!」


 リリカが腕を振り下ろした。


 炎の龍が咆哮を上げた。大気そのものが悲鳴を上げるような、凄まじい音。真紅の巨体がうねり、斜め下に向かって突っ込んでいく。


 小屋から少し離れた麦畑のど真ん中に――着弾。


 世界が、白く弾けた。


「うわぁっ!」「くっ……!」


 閃光が視界を埋め尽くした。一瞬遅れて、衝撃波が襲ってくる。小屋全体が大地震のように揺れ、屋根の干し草が舞い上がり、壁板が軋んで悲鳴を上げた。熱風が小窓から吹き込み、二人の髪をなぶる。


「なんなのよ……とんでもないわね」「さすが主席賢者……」


 小窓からは盛大なキノコ雲が青空へ向かって浮かび上がっていくのが見えた。


 外を覗くと、麦畑に巨大な(えぐ)れた跡が残っていた。大きく円形に地面が焼け焦げ、麦は炭化して、赤黒い地面が露出している。煙が立ち上り、焦げた麦の匂いが鼻を突いた。


「キャハッ! 次は当てるわよー? 早く出てこないと炭になるわよー!」


 上空で、リリカは楽しそうに笑っていた。


 リーシェはその凄まじいパワーに首を振った。あの一撃がまともに当たれば、小屋どころか地形ごと消し飛ぶ。こんな相手と話をするだけ無駄だろう。



         ◇



 その頃、王宮の屋上――。


 宰相たちは遠眼鏡を手に小屋の方角を凝視していた。


 閃光が見えた。遅れて轟音が届く。地平線の向こうに立ち上る巨大なキノコ雲。


「……あのバカ、畑を吹っ飛ばしやがった」


 宰相が額を押さえた。


「補償が必要ですな。魔導院の予算から捻出しましょう」


 参謀総長カーティスが冷静に言った。


「それにしてもとんでもない威力だ……。あんな小娘と戦うとしたら、どうしたらいいんだ?」


 騎士団長ヴァルゲンが腕を組み、渋い顔で呟いた。あの炎の龍の一撃が騎士団に向けられたら、深刻な被害は避けられない。


「対空戦力と言うとバリスタの一斉射くらいだが……そう簡単には当たらんだろうな」


「はぁぁぁ……。まぁ、味方でよかったと考えるしかない……か」



       ◇



 王都の城壁の上には魔導院の幹部たちが並び、上司であるリリカの一挙手一投足をじっと見つめていた。


「ほわぁ……リリカさまやり過ぎっすよ……」


「何もできない相手にあそこまでやらなくても……」


「俺らの出番はなさそうだな」


「ほんと、頼もしいですよねぇ……」


 苦笑と溜息が混じり合う。十八歳の首席賢者の下で働くということは、つまりこういうことだった。



         ◇



「なにー? まだ出てこないつもりー?」


 リリカが再び腕を振り上げた。


 空に、二体目の炎龍が顕現(けんげん)した。一体目よりさらに大きい。全身から放射される熱で、周囲の空気が陽炎のように揺らめいていた。


「十数えるうちに出てこなきゃ、小屋ごと吹っ飛ばすからね!!」


 リリカの緋色の目が、冗談ではない光を帯びた。


「じゅーーう」


 カウントダウンが始まった。


「きゅーーう」


 炎龍が首をもたげ、小屋を見下ろした。金色の双眸が、獲物を定めている。


「はーーち」


「姐さん……」


 トトは炎龍に睨まれ、顔が青ざめていた。あんなのが小屋に落ちてきたら、瞬殺されてしまう。


「なーーな」


「ろーーく」


 リーシェは大きく息をついた。


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