✒ ピクニック 3
キノコン:本体
「 マオ様、1時間経過しましたエリ。
休憩に入ってくださいませエリ 」
マオ
「 うん…… 」
何度目の休憩だろう。
慣れたものでキノコンが差し出してくれるオシボリで顔を拭いてスッキリさせた後、水分補給に適した飲料を喉へ流し込む。
汗は掻いてないし、息も上がってない。
セロを相手にした剣術のスパルタ稽古に比べたら大した事ないからだ。
当たり前の様に空になったペットボトルをキノコンに手渡したオレはセロと鬼鳥さんが寛いでいる安全地帯に向かって歩く。
後ろでキノコンが空のペットボトルを透明パック袋に入れては、1本ずつ笠の中へ入れてるけど、追求はしないでおこうと思う。
キノコンが空のペットボトルを悪用するとは思えない。
リサイクルに出すにしても1本ずつ透明パック袋に入れてるのは謎だけどな!
──*──*──*── 安全地帯
マオ
「 コラ、セロぉーーーー!!
『 オレの勇姿を見たい 』とか言っといて、本を読んでるってどういうつもりだよ!! 」
もう何度目だろうか。
オレはセロから本を奪い取ると結界の外に放り投げる。
宙を舞って結界の外に出た本は、地面に落ちても汚れる事はない。
キノコンが本をナイスキャッチしてくれるからだ。
セロフィート
「 マオ、酷いです。
何度ワタシの本を投げれば気が済みます? 」
マオ
「 本じゃなくて、『 懸命に頑張ってるオレの勇姿を見ろ 』って言ってんの!
少しは鬼鳥さんを見習えよぉ! 」
鬼鳥
「 …………………… 」
キノコン:本体
「 マオ様、5分経ちますエリ。
結界から出てくださいエリ 」
セロフィート
「 マオ、次は七十六式丹輝劍訣11番です 」
マオ
「 分かってるよ! 」
結界から出るオレに鬼鳥さんが笑顔で手を振って送り出してくれる。
マオ
「 セロは鬼鳥さんの優しさを見習った方が良いよ! 」
セロフィート
「 ワタシは十分、マオに寛大で優しいでしょうに 」
セロは笑顔でオレを見送る。
健気に頑張るオレに手ぐらい振ってほしい!!
──*──*──*── 約5日後
キノコン:分身体
「 鬼鳥さま、夜も更けて来ましたエリ。
何時でもテントの中で御休みくださいませエリ 」
鬼鳥
「 有り難う、キノコン殿。
至れり尽くせりで申し訳ないくらいだがね 」
キノコン:分身体
「 鬼鳥さまはセロフィート様の御友人ですエリ。
お・も・て・な・し・しますエリ 」
キノコンはペコリと一礼するとテントへ戻って行く。
セロフィート
「 鬼鳥さん、マオの事は気にせず休んでください 」
鬼鳥
「 疲れたら休ませてもらうとするよ。
セロ殿は休まないのかい? 」
セロフィート
「 マオが寝ずに励むのにワタシが寝ている訳にはいきません 」
鬼鳥
「 そ…そうかい? 」
マオは七十六式丹輝劍訣を繰り出し、懸命に亡者達を倒している。
ぶっ通しで1時間もみっちりと亡者達を倒し、5分しかない休憩後に再び1時間みっちりと亡者達を倒す。
この繰り返しをマオは1人でひたすらこなしていた。
カラフルに光る長細い棒を両手に持ち、亡者達を倒すマオを応援しているキノコン達の姿は愛らしい。
キノコン:本体
「 マオ様、お疲れ様ですエリ。
七十六式丹輝劍訣76番が終わりましたエリ。
休憩に入ってくださいませエリ 」
マオ
「 やっとぉ~~~~ 」
ササッと現れたキノコンが差し出してくれるオシボリで顔を拭いてスッキリさせた後、水分補給に適した飲料を喉へ流し込む。
キノコン:本体
「 セロフィート様へ御伝えしますエリ 」
マオ
「 有り難な 」
はぁ……長かったなぁ……。
七十六式丹輝劍訣を76番まで身体に覚えさせる為に此処までさせるなんて、鬼畜の域を超えてるよな~~。
セロフィート
「 マオ、頑張れましたね 」
マオ
「 セロ! 」
セロフィート
「 これで七十六式丹輝劍訣を極める事が出来ましたね? 」
マオ
「 え?
まぁ……そうかな? 」
セロフィート
「 仕上げといきましょう 」
マオ
「 仕上げ? 」
セロフィート
「 マオが極めた七十六式丹輝劍訣を駆使し、ワタシを円から出してください 」
マオ
「 え!? 」
セロフィート
「 ワタシを円から出せたらピクニックは終えましょう 」
セロは杖の先端で地面に円を描く。
セロが地面に描いたのは1mくらいの小さな円だ。
セロを円から出すなんて簡単そうに見えるけど、実は1番難しかったりする。
セロが手に持っている杖が、棒術に使用する棒に変わる。
セロは真剣を使わず、棒でオレの相手をするらしい。
セロの使う棒は、コーティング魔法が掛けられていて、オレの剣でも斬れない様になっているのだろう。
セロフィート
「 マオ、構えてください。
始めましょう 」
マオ
「 お…お願いします! 」
セロはオレが剣を構えるのを静かに待っている。
オレはセロに向かって剣を構える。
オレが「 何時でも良い 」と視線でセロに伝えると、セロは棒を構えた。
「 打ち込んで来い 」の合図だ!
真剣を使い、組み合わせを変えながら、七十六式丹輝劍訣を繰り出すオレの攻撃を、セロは微笑みを浮かべながら見事に受け流す。
セロを円から出すなんて、何時間掛かるんだろう。
キノコン達が応援してくれてるけど、キノコン達の応援に応える事は出来なさそうだ。
もう日が昇り始めている。
夜間、日付が変わる前もセロを円から出す事が出来なかった。
深夜になり、日付が変わってからも、セロをセロを円から出せていない。
朝日が昇っているのに、セロを円から出す事が未だに出来ない。
七十六式丹輝劍訣は、高身長で体格の良い男が扱い易い様に考えて生み出された剣術だ。
本来ならば、低身長で女子並みに小柄なオレには合わない剣技だ。
違和感が無い程度に工夫して、自分流に扱い易く変えて繰り出している。
それがいけないのか……。
オレはセロを1歩も動かせてはいない。
セロフィート
「 そこまで。
朝食にしましょう 」
マオ
「 ……………………セロ…………オレは………… 」
セロフィート
「 朝食が済んだら、左手で七十六式丹輝劍訣を1番から始めてください。
1時間ずつ、休憩は5分です 」
マオ
「 っ──、今度は左手かよぉ~~ 」
セロフィート
「 何時何時、右手が使えなくなるか分からないでしょうに。
ワタシを円から出せなかったペナルティです♪ 」
マオ
「 嬉しそうに言うなよ! 」
セロフィート
「 キノコン、朝食はマオの頑張りを讃えて奮発しなさい 」
キノコン:本体
「 畏まりましたエリ!
腕に縒りを掛けて作りますエリ! 」
キノコンは見事な敬礼を見せ付けてくれる。
気合を入れて、朝食の料理を作ってくれそうだ。




