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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第11章「太陰の位と信用できない主」
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「ちょろイン参戦」

次で最終章です。

あと残ってる式神が何か覚えていますかね。






「たぁっ!」

 僕の一振りがテンちゃんの背後に迫っていた獣を倒す。

「……ありがと、孔弌」

「うん、どうってことないよ!」

 今日はテンちゃんとペアだ。

「……孔弌、最初の頃に比べるともう随分強くなった」

「そりゃあの頃に比べたらね。でも皆に比べるとまだまだでしょ?」

 比べる相手があまりにも大きすぎるけど。



「よし、もうこの辺りは残りわずかだね」

 ざっと見回すけど、蛇は全滅していて獣が数頭残っているぐらいだ。

「……ん!」

 言いながらテンちゃんが獣を切り伏せる。

 と、その時

「テンちゃん、危ないっ!」

 テンちゃんの不意をついたように一匹の獣が襲いかかる。

 完全に不意をついた攻撃だ。あの獣、どうやってこんな死角に潜んでいたんだ、くそっ。

「うっ……」

 テンちゃんを弾き飛ばし獣から庇う。背中を爪で裂かれて血が吹き出る。


「孔弌!!? 孔弌ぃっ、くぅ……はぁぁっ!」

 周囲の獣を一掃してテンちゃんが駆け寄ってくる。

「孔弌、孔弌、ボクはあんなの平気なのにっ!」

「僕だって大丈夫だよ。肉体強化してるし」

 とは言っても流石に痛い……。簡単に動けそうにはないかな。

 普通の人間ならあんなの喰らったら即死なんだろうなぁ。生きてるだけ流石だよ。

「孔弌……」

「そういえばテンちゃんに初めて会ったときもこうやって庇ったね」

「……うん……また助けてくれてありがと」

 そういってテンちゃんが僕の背中に手を当てて何やら呟く。



「……ごめん、孔弌。ボクの治癒じゃ完全に治せない。さっきので力を使いすぎたかも」

「いや、だいぶ楽になったよ。これなら何とか歩ける……かな」

 テンちゃんが僕の肩をとって担ごうとするけど、流石に身長が足りなくて上手くいかない。

「……見せてください」

「え?」

 いつの間にいたのかすぐ傍に太陰さんが立っていた。

「傷を」

 その言葉に従ってゆっくりと背中を見せる。


「平癒合」

 ぽんと手を当てると僕の背中の傷が即座に塞がる。

「どうですか」

「あ、うん。何ともない、治ったっ!」

 すごいや太陰さん。

「それじゃ私は先に戻ります」

 そう言ってそそくさと太陰さんは消えていった。

「そういえば、なんでここにいたんだろ?」

「……さぁ」





「孔弌、服が裂けているじゃないか。怪我したのか? 大丈夫なのか? 傷口舐めようか? 歯茎なめようか?」

「あぁうん、すぐ治してもらったから大丈夫だよ」

 とりあえず誰かこの変態をどうにかしてくれないものか。

「そうか、よかった」

 アルテが安堵する。


「孔弌、おめぇは俺達程頑丈じゃないんだから無茶ばっかりするなよ」

 セラが肩に手を乗せて心配そうに見つめてくる。

「うーん、ほんとそれだね。心配かけてごめんっ」

「まぁだからこそ守りがいのある主だ。俺も腕が鳴る。むしろ腹が鳴る」

 グーという間抜けな音が聞こえてくる。

「お腹減ってるなら、夜食でも食べてきなよ……」

 それにしても守りがいのある主か。秋月は騎士とかそういうのに憧れてるのかな。





「はぁ……それにしても……」

 テンちゃんは僕のこと強くなったって言ってくれたけど、そのすぐ後にこの様か。

 結局この傷だって太陰さんがいなかったら完全には治ってなかっただろうし。

 あれ、そういえば太陰さんはどうしてあそこにいたんだろう?

 ――コンコン。

 規則正しいノックの音が鳴る。

「あ、うん。まだ起きてるよ? 誰?」

 電気を付けて扉を開けるとそこにいたのは


「あ、太陰さん……」

「こんばんは。少し、よろしいでしょうか?」

「あ、うん。汚い部屋だけど、どうぞどうぞ」

 部屋に通してとりあえず座ってもらった。

「あ、さっきはありがと。それで急にどうしたの?」

「はい、それも含めてのことです……」

 太陰さんの声が心なしか少し沈む。

「実は今日一日悪いとは思いながらあなたを監視させていただきました」

 ……朝から感じてた違和感はそれか。


「先に言っておくけど、別にそのぐらいじゃ怒らないから安心してね」

 ここにいるメンバーの奇行に比べたらちょっと観察されるぐらいどうってことないよ。

「はい……それで一日見させてもらったのですが……」

 そこで言葉を区切り、顔を上げて真っ直ぐ僕の目を見る。

「すみませんでした、孔弌様」

「え?」

 詳しいことを話さずに頭ごなしに謝られても。

「あの、どういうこと?」

「はい、今日のあなたの行動を見ていたら私のほうが間違っているのが明らかだったからです……」

「間違ってる?」

「あなたを疑って、ぞんざいな扱いをしていたことです」

 あぁ、あれか。


「今朝、球技をして皆さんと遊びに興じる姿を見て私は驚きました」

 いや、僕も流石にあのドッヂは驚いたけど。

「険悪だった彼らがあそこまで楽しそうに遊ぶ姿、そしてそんな彼らをまとめるあなたの姿」

「一応聞いてるけど、昔はそんなに仲が悪かったのか……」

「仲が悪いなんてほどではありませんでした。それこそ今の彼らの姿からは全く想像もできない酷い有様でした」

「それにその途中皆さんを応援する六合の位、いいえアロさんの姿は私には信じられない光景でした」

 確かにアロはここ最近で急に明るくなってきたからね。ある意味一番変わったのかも。

「皆さんが抱えていた心の闇……それが小さくなってきていました。いえ、あの頃に比べたらもう全くないと言っても過言ではありません」

「……心の闇、欠点なんて誰でも持ってるよ……」


「そうです。でもかつての私達はそれと向き合おうとしませんでした。力を向け合ったのは常に背中を預けるはずの相手。」

「………………」

「そして午後、皆さんに慕われるあなたの姿を見ていれば、あなたが本当に信頼されていることは一目瞭然です」

「……うん」

「そして先程の戦い……天奈さんを庇ったあなたの姿に嘘偽りはありません……私のときも本当にあのように獣が迫っていたのですね?」

「うん……」

「では、あの時も私のために獣の攻撃から庇おうとして……」

 まぁそうなるのかなぁ……一応。


「本当は先程の戦いも最初から見ていたんです。だから私が本当にあなたの事を信じていれば、あなたを援護できていたはずなのに……」

「でも、できなかった。そのせいであなたは傷を負った……」

「で、でもほら、治してくれたから平気だよ」

「例え傷が消えたとしても、あのときに受けた痛みの記憶が消えるわけではありません」

 そりゃそうだけど、そんなのそのうち忘れるし……。ていうかもう忘れたんだけど。

「あなたのその姿勢、心構えは私が理想としていた主の姿です……」

 理想の主……か。果たして本当に僕はそんな大それたものなんだろうか。

「ようやくたどり着いたのです。700年の時を超えて真に使えるべき者に」

 なんて大袈裟な、とは思う。でもそんな風に語るリエラの顔は真剣そのものだ。


「こんな私ですが、お願いしてもよろしいでしょうか……?」

 上目遣いに僕のことを見てくる。くっ、このポーズはやばい。

「あなたの、式神にしてください……。そして私をここの末席に加えてください……」

 ふぅ、落ち着け僕。落ち着いてとりあえず名前を考えるんだ。

「私も先程言ったように欠点を抱えています。人を悪い風に疑う……という悪癖を。あの頃よりは幾分もまともになったとはいえ、また迷惑をかけてしまうかもしれません」

 自分で言うのもなんだけど、飛び掛られたら普通に信用しないと思うけど。

「大丈夫、気にしてないよ。欠点も含めて個性なんだ。なら、それを補うのが家族の役目だよ」

「家族……暖かい言葉です」

「それで、本当に僕の式神になるの?」

「はい、お願いします」



「よし、それなら君の名前はリエラだっ!」

 僕がそう叫ぶと、いつもの様に周囲が光り輝く。

 桃色の光だ。

 なんかエロイな。



「あの、これで?」

「うん、僕は君の主だよ」

「ぁ……。はい、よろしくお願いいたします、主様」

「いや、その、主様は流石にやめてくれないかな」

 残念ながら僕にそういう属性はついてないのでむしろ恥ずかしい。


「ですが……」

「だって、僕たちはもう家族なんでしょ? ならそういう他人行儀で仰々しい呼び方はダメだよ」

「わかりました、腐れストーカー」

「………………」

「……冗談です、孔弌さん」

 もうなんか全てがどうでもよくなった。



「とにかく、詳しいことは明日皆に説明するから今日はもう休みなよ」

「はい、ですが……」

「ですが?」

「主より先に眠るのは私の主義に反します」

 くっ、そういうタイプで攻めてくるのか。こういうときは……



「じゃ、もう寝ます。おやすみリエラ」

 さっさと寝るに限る。

 そうすればリエラもすぐに部屋に戻ってくれるし。

「はい、おやすみなさいませ孔弌様……」

 リエラが部屋の電気を消す姿を見たところで僕の意識は闇に落ちた。



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