「共闘」
太陰の位のイメージイラスト。。。
→ http://www.peacock-heaven.jp/pic/mob.gif
「今日は苦労しないで済みそうだっ!」
僕と晩霞と碧鮮。
なんて落ち着きのあるトリオなんだ! 安定性重視だよね、やっぱり。
「なんだか随分と嬉しそうだね、孔弌」
ニコニコしながら碧鮮が僕の横に並ぶ。
「ふっふふふ、碧鮮は来たばかりだから知らないのさ。僕がどれだけ(ツッコミで)忙しい日々を送ってきたか」
「そうだね、みんな昔より大分明るくなってるみたいだし。うん、疲れるのはわかるかな」
そうそう、大体僕はツッコミ役じゃないのに。
慣れてないことばっかりさせられてるせいで、もう肩と腰が……。
「二人とも、あそこ」
晩霞の示す方向には、いつものように獣の群れがまるでドームのように集まっている。
「獣の断末魔と風をきる音。どうやら誰か戦ってるみたいだね」
状況を分析する碧鮮。とりあえず、耳がいいんだね。
「よし、早く助けに行こう!」
「そこの人、今助太刀するからねっ!」
暗闇と蔓延る黒い獣の影で姿ははっきり見えないけど、数で押されて苦戦してるみたいだ。
切る、とにかく切る。ある意味妖怪の体でできた壁だ。それを突き破っていく。
「はぁ、誰か知らないけど大丈夫?」
力技でなんとか中央付近まで進んで行くと、見慣れた姿が目に入る。
「おや、あなたは……こんな所まで追跡してくるのですか!? まさか、こうやって私が体力を消耗した時を見計らって……」
「しないよっ!? しかも、そんな場合じゃないでしょ!?」
獣に襲われていたのは、町で遭遇する度に僕のことをストーカーだと言い張る例の女の人だ。
あれ、待てよ、そういえばこの人は……。
「孔弌、大丈夫?」
「あ、うん。晩霞も平気だった?」
僕の後に少し遅れて晩霞もやってくる。
「うん、大丈夫だよ」
そしてその晩霞に続いて……
「やぁ、久しぶりだね太陰の位」
遅れてやって来た碧鮮がそう口にする。
「あなたは……青竜の位……」
そうだ、この人は十二式神……太陰の位っ!
「どうしてあなたが討魔師……いや変体ストーカー及びその使い魔と一緒に?」
「あのさ、僕は何回も言ってるけど別に悪気があって飛び掛ったわけじゃないからね!?」
この誤解が解ける日は来るのだろうか。
……そしてどうでもいいけど戦闘しながら瞬時にツッコミを入れるのは疲れる。
これは新発見だ。ツッコミ学会にレポートを発表してみよう。
「んー、今はその話よりこの邪魅達をどうにかしたほうがいいと思うけどなぁ」
「……共闘しろと?」
「効率の問題だよ。もちろん強要はしない。提案と推奨はするけどね」
「……わかりました、いいでしょう。不本意ですが共同戦線を張りましょう」
自然と四人で背中合わせで中央に集まる。
「二十重、展開」
その掛け声とともに太陰さんから無数のカードのようなものが飛び出していく。
どうやって操っているのかはさっぱりだけど、腕を忙しく振るう度にカードが獣達を切り裂き霧散させていく。
しかし、どうにもあの腕の動きだけを見てたら太陰さんには悪いけど、怪しいダンスにしか見えない。なんかMPとか減りそう。。
「うん、そのまま妖怪達が寄り付けないようにして」
そういって微笑む碧鮮の武器がすごい電気を放ち始める。
一瞬閃光が走り、視界が白に染まる。目をつぶれとか、何かそういう事を先に言って欲しかった……。
「よっと、雷法陣だよ!」
碧鮮の放った雷が周囲を一瞬で焦土にする……は大げさだけど、とにかく妖怪達を一網打尽にした。
「す、すごい……」
ほんと毎度思うけど、よく勝てたな僕。
「孔弌、まだみたい」
「え?」
晩霞のほうに振り返ろうとした瞬間、目の前の地面に黒い亀裂が走る。
どの裂け目からじわじわと人影が出てくる。そしてその姿が次第に鮮明になっていき……
「あの数を一瞬ですか、いやはや流石十二式神ですね」
「陽気に笑っている場合ではない。これは任務だぞ」
亀裂から出てきたのは針使いと髪切り。
平気で沙羅を捨て駒にして逃げた奴らだ……。
その沙羅のことだけど、出てくる時に蛍さんから、沙羅のことはこいつらには伏せておいたほうがいいって言われた。
もちろん、はなから言うつもりはない。
「どちらにしろ邪魅がやられた所で、私達は痛くも痒くもありませんよっ!」
そう言って突然空に向かって指をさす針使い。麗姫の真似?
「転送陣だって!? ……馬鹿なっ、高等法術だよ」
「碧鮮、転送陣って何?」
「ある地点とある地点の空間を切り離して、距離を無視して結びつける術さ」
なるほど。碧鮮も随分と物知りだな。
「さぁ、お出ましですよぉ!」
光の中から次々と妖怪が出てくる。
なるほど、こいつらはこうやって妖怪を一度に沢山町に呼び出していたのか。
「孔弌。暢気に電波を受信してる場合じゃないと思うんだけど」
脳内実況を電波と同じカテゴリーに分類するとは、失礼な。
「夜刀神の位か……なるほど、先程よりは随分と高質な妖怪ですね」
「う~ん、普通はこんな雑魚みたいにぽんぽん出てくる妖怪じゃないはずなんだけどねぇ……。こいつらはいわば複製……だけど完全な姿ではないとは言え、夜刀神は名前のとおり神と称される妖怪だよ」
二人の言ってることはわからないけど、とりあえず蛇みたいなのが沢山いる。
その姿は、蛇なんだけど、なんていうか少しノイズのようなものが混じっているように不確かだ。碧鮮の言っている不完全というのはこういうことだろうか。
「でもまぁ、このメンバーなら何とかなるかな」
「どうだか。あなたの力は知っていますが、あの二人の力を私は知りません」
ふむ、まぁ僕も未だに自分の強さがよくわからないからな。
「敵の隊長二人には無難にそれぞれ一人ずつぶつけた方がいいだろう。残りは雑魚の殲滅だね」
出てきたばかりなのに雑魚呼ばわりされる可愛そうな妖怪たち……。
といってもさっき碧鮮が、この妖怪、元々はそれこそ神として崇められるほど強力だったって言ってた。
「よし、それじゃ僕と太陰の位でそれぞれ隊長を。残りの二人は挟み込むように他の敵を殲滅してい――」
碧鮮が最後まで言い終える前に異変が起きた。
「ごほっ」
太陰さんが大量の血を吐き始めた。
「す、すみません。実は封印が解けてからあんまり悪事をしてなくて縛りが……」
そうか、そういえば君達はそういう縛りがあるんだったね。
「あれ、でも電車でむちゃくちゃ小悪党な事してなかった?」
「ごほっ、……、あれは、本当に苦しくなって仕方なくしてただけで、あまり効果は……」
そこまで言ってもう一度血を吐く。
とりあえず最近悪事の定義が更によくわからなくなってきた。
「おっと、お喋りをしている暇はありませんよ?」
「その通り。私たちはそこまで甘くないっ!」
「仕方ない。晩霞、君はそっちの男の相手を」
そういって碧鮮は髪切り女のほうに武器を向ける。
「僕はここで太陰さんを守ってればいいんだね」
「うん、頼めるかな孔弌」
戦力的に考えてもこれが一番ベターだろう。
ただ、晩霞は一度あの針男に競り負けてるのが気がかりだけど……。
「いくぞッ!」
それでも今は目の前の獣と戦うしかないんだ。
蛇を振り払うとすぐにまた次の蛇が来る。
その上から更に複数襲ってくる。
「この妖怪……」
今まで戦ってきたあの犬みたいなのよりかなり強い……。
「くっ!」
身を守りながら、なんとか隙を見つけて一体に攻撃を仕掛けるのがやっとだ。
「孔弌……」
僕のことを気にする晩霞も押されているみたいだ。
このままじゃ、あの時みたいにまたあの針にやられる。
僕がこいつらを満足に相手できないから……。
「くぅ、はぁっ! 孔弌!」
晩霞が双剣を巧みに使って敵を弾き飛ばし一気に距離をとって僕のそばまで下がってきた。
「晩霞、僕は大丈夫だからあいつに集中して」
僕の言葉に晩霞が首を振る。
「大丈夫、孔弌がいればできると思う。昨日少しコツを掴んだから」
そういって双剣を前に突き出して
「始動」
二本の剣から赤い光が出てくる。
これは、あの暴走状態になる技じゃないのか……。
「ふぅぅ……はぁぁあっ!」
晩霞の瞳の色が変わる。
いつもの紫苑から一瞬金色になったかと思うと、次にその金を塗りつぶすように瞳が燃えるような赤色になった。
あの時と同じ色の瞳だ。
「……大丈夫だよ、ちゃんと孔弌の事わかる、からね……」
確かに息は荒いけど晩霞は正気を保っているらしい。
「碧鮮、下がって!」
その言葉に碧鮮がすぐにバックステップ。一歩で5メートル近く跳ぶのを果たしてステップと言っていいのかわからないけど。
「やあぁぁぁあっ!」
そして晩霞が二本の赤い光を鞭のように撓らせながら周囲を斬り燃やしていく。
「すごい……この力……」
口元を押さえながらも太陰さんが驚嘆の声を上げる。
しかし、今日もカメラ忘れてしまった……。いつになったらあの携帯電話(実質カメラ専用)は活躍できるのだろうか
「驚いたでしょ? 彼女が騰蛇の位なんだよ?」
「え? でも、この方の式神だと……」
「うん、そうだよ。ちなみに僕も今は孔弌の式神なんだ。新米だけどね」
「え?」
と言って今度はこっちを見てくる。
「そんな……ことが……」
「まぁ話は後で。今はとにかく目の前の事態に当たろうよ」
今も僕の眼前では紅蓮の光が周囲を切り裂き続けている。
実際敵が今どうなってるのか全くわからない。紅蓮に覆いつくされているせいで。
赤熱が静まった所で、改めて周囲を確認してみると塵一つ残っていない。何という。
「で、できた……。孔弌、私自分を見失わないで力を使えたよ」
「うん、ありがとう晩霞」
そういって晩霞の頭を撫でる。
「あの孔弌、なんだか子供扱いされてるみたいなんだけど」
晩霞が困ったような嬉しいような複雑な笑みを浮かべる。冷静になってみると、流石になでなではなかったな……。
「さてと、敵はどうやら全滅。隊長たちは逃げ出したみたいだね」
碧鮮が冷静に戦場を見回す。
「あの女の人の技で一時的に身を隠してるだけかもしれないよ?」
「う~ん、でもどう考えてももう勝ち目ないし」
まぁそりゃそうだ。
仮に奇襲で一人倒しても、残った三人に袋叩きにされるし。ちなみにこの場合最初に奇襲を受けるのは凄まじく僕のような気がしてならない。
「とりあえず今日はもう戻ったほうがいいと僕は思うかな」
「んー、じゃ碧鮮の言うとおり今日はこれで引き上げようか」
晩霞もお疲れのようだし、それに……
「ついでだし太陰の位、君もついてきなよ」
「……」
碧鮮の言葉に頷きかけて、無言で僕を睨んでくる。
そこまで嫌われることしたのかな……。




