「好みの女性トーク」
近所の店でもらってきた水着のカタログを見ながら騒ぐ女性陣。そしてスイカの割り方や、釣り、泳ぎ、料理などそれぞれ好きなことについて調べる男性陣。
さっきまで早く事件を解決しようとやっきになって話し合いをしていたはずなんだけど……。
「結局途中からは海に行く時の予定をたてることになっちゃったんだね……」
最初のやる気はどこにいったんだ。式神捜そうよ。
「やっぱり、一回結界を張ったあと中に火気を集めてスイカを破壊するのが一番スマートじゃねぇのか?」
「いや、やはり美しさを求めるのならば直線状から右にずれて、対象と鋭角を作ってだな……」
「それなら昨日みたいにまたリュウにあの煙が出る札を借りてだな」
「愚かな。先ほどからお前は爆破にこだわるが、果たしてそれは自分で割ったと言えるのか? 爆発の指向性を調整する訓練にしかならんぞ」
なんでスイカ割りでここまで熱く討論できるんだ?
てかリュウに借りた札ってなんだ!? 明らかに危険物の予感!
「……孔弌」
つい、とテンちゃんが僕の服を引っ張ってくる。
「どうしたのテンちゃん?」
「……孔弌はどれが好き?」
テンちゃんが差し出してきたのは水着の雑誌。一面に水着と、それらを着た女性が写っている。
「ふむ、僕の女性の好みかい? やっぱり髪型はショートよりロングが好きかな。だから、このページにのってる人の中から強いて選ぶとなると……この人かな」
「なんでお前はそんなに質問の意図をずれて解釈することができるんだ? この場合はどう考えても水着の好みを聞いているだろう……」
うんざり顔のアルテ。
「あ、はいはい。水着の好みね」
「……うん」
「と言われてもあんまりピンとこないんだよね」
正直水着とかはよくわからないし。
「このヒラヒラがついてるのとか可愛いんじゃない?」
「なんだ、パレオ付が好みなのか」
パレオ?
「でも、結局のところこういうのは着る人と合ってるのが一番だから一概に好みを決めるのは難しいよ。自分が着るわけじゃないからね」
「ふむ、そなたにしてはまじめな意見だな」
あれ? 麗姫の中でも僕ってそういうキャラクターなの? おかしいな、利巧なキャラクターで通ってきてると信じてたのに。
「まぁいい、どうせすぐに行けるわけじゃないからじっくり考えてみるさ」
……うん、とりあえずアルテは黒色か青色だな。いや、緑とか白も捨てがたいぞ……あ、あれ?
「……孔弌」
「ん、今度は何?」
「……さっき孔弌が言ってた、女性の好み。もっと教えてほしい」
「濡れフェチは暫定だがな」
一生このネタでからかわれそうですね、僕。
「んー、でも、好みって言われてもなぁ」
こういう時ってどういえばいいんだろう……。
「ふふふ、お困りのようだね孔弌君」
「呼んでないよ」
「お困りのようだね、孔弌君」
「呼んでないよ」
「お困りのようだね、孔弌君」
「呼んでないよ」
「うぅ……お、お困りのようだね、孔弌、君……ぐす」
「わーい、リュウ、ありがとう! 来てくれて助かったよっ!」
空気が読めるボクカッコイイ。
「ふぅ…………。うん、何でも聞いてくれ!」
「女性の好みってどんな風に説明すればいいの? 僕あんまり好みとかないからどうにも……」
「うん、女性の要素といえばまずは容姿だね。それから性格、環境、技術なんてことも。でもこういう場合の女性の質問っていうのは大抵容姿とか性格の事を聞いてるからそれを答えてあげるといいよ」
「出番作りに必死だな」
「そこ、うるさいよ!」
ビシっとアルテを指差す。
「まぁ、リュウの言ったとおり天奈が知りたがっているのは容姿と性格だろう」
「……アルテも知りたがってるくせに」
「……ぅ、うぅむ」
容姿と性格か……。
「さっきも言ったとおり髪の毛は長い方が好きだよ」
「孔弌、私の髪の毛って長髪に分類されるかなっ!?」
即座に晩霞が飛びついてきた。
「え……う~ん……」
というかこのうねる髪の毛はそもそもどうなってるんだ?
「わからないけど、別に長髪じゃないからって嫌いじゃないから、大丈夫だよっ!」
何が大丈夫なのかは知らないけど。
「ん、よかった……」
胸を撫で下ろす晩霞。そういえばうちってロン毛ばっかだね。
「……孔弌、胸……、の大きさは?」
くっ、ここでこの質問か。やるなテンちゃん。
だが僕はその質問が来るであろう事を既に予測して前もって模範解答を考えてあるのさ、ニヤリ。
「バランスが一番だと僕は思う。その人の今の胸がその人に一番いいバランスなんだと思う。だから常に現在の状態が一番だよ」
どうだ僕の回避スキルは。
この当たり障りのないセリフで見事に難関突破ですよ。ふは、ふははっはあ、我が叡智を崇めろ!
「ふっ、逃げたね孔弌君」
みんなに聞こえないようにリュウが耳打ちしてくる。
気色悪いから蹴っておこう。膝で。
「へぐっ!」
ふぅ、スッキリ。
「性格はどうなのだ?」
「性格は難しいね。僕は苦手とか得意とかないから」
さて、どう言ったものか……。
「どんな性格だろうと仲がよかったらお互いに気遣い合えるでしょ?」
「そもそも好きじゃない性格の奴とは仲良くならないだろ」
「あー、そっか。じゃ、優しさのある人かな」
優しくない人とはなかなか仲良くなろうとは思わないし。
「ふむ、優しさか」
「ふっ、ずばり言えないなんて君も男じゃないね。大体、好きな人の前では誰だって優しくなるに決まってるだろ」
澄ましたリュウの声が……っていうか相変わらず復活が早いな……。
「だって本当にこれといった言葉で説明できないし」
そもそも性格なんて千差万別なんだから、この人はこうだなんて割り切る事はできないでしょ。
「そういう時はね、例えるんだよ。何かゲームのキャラとか漫画のキャラとか」
「ほぅ、じゃそのリュウの好みを聞かせてもらおうか?」
凄まじくオタな会話だ。だがこれで話題がリュウの方にそれたぞ。
「そうだなぁ……」
さて、どう切り出してくるんだリュウ……。
「初代伝説の樹の下ゲーなら断然魅○様だな……」
「なんというレトロな例えかつ意外な趣味……」
このネタはゆとり世代に通用するのか?
「美を追求するところについ共感してしまうのだよ」
いや、全然共通点ないと思う。ちなみに僕はヘルメット派だ。
「そうだなぁ、他には某人形ならサクランボ派だね」
「ごめん、リュウの好みがわからなくなってきた」
さっきの好みと随分違わないか?
「むしろ君が僕の言ってる意味をわかる事に僕は驚きなんだが」
「……とりあえず私達のわかる人物で例えてもらわないとよくわからないんだが」
全くその通りだと思うよ、うん。
「う~ん、知名度が高い作品を出したと思うんだけどなぁ」
そういう問題じゃないよっ!?
「それなら、動物で例えてみるのはどうかな?」
ん、晩霞もやけに積極的に会話に入ってくるな。
「そうだなぁ……猫は好きだよ」
ただ、猫っぽい人が好きかといわれると際どいなぁ。
「孔弌、こんな所で告白されても困るのじゃ。わしには既に仕えるべき主が……」
「いや、別に蛍さんに告白したつもりじゃないから……」
さりげなく話をややこしくしながら会話に入ってこないでくださいよ、もう。
「わしはこう見えて、かつては戦場のトリックスターと言われておってな……戦場を掻き乱すのは楽しいのぉ」
あんまり有益じゃない情報ありがとうございます。
「孔弌、蛇は嫌いかな?」
蛇……。
爬虫類とかって、むしろ好きな人を探す方が難しいと思う。
僕だってもちろん得意じゃ……ない。
「嫌いでは……うん、ないよ」
「よかった」
ふぅ、ここで蛇は苦手だなんて言ったら……晩霞がどうなることか。
「まぁいいだろう。猫なら誰も当てはまらないからフェアだ」
一体なんの審判なんだ?
「結局さっきは煙に巻かれてしまったな」
少し早い夕食の時間、アルテがさっきの話題を掘り返す。
「そんなことないよ、ちゃんと答えたじゃない」
「そうなのだが……、肝心なことを聞いてないと言うか、聞けなかったと言うか……」
肝心な事か。とりあえず聞かれなくてよかった。
「さてと、そろそろ出勤の時間かな」
「出勤? NEETってどこに勤めてるの? 自室が職場でしょ?」
「孔弌君、僕は別に無職じゃないよ!? 神なんだよ!?」
いやぁ、現状ではどう考えても居候だし。
本気で家事ぐらいしてほしいんだけど。
「と、冗談はこのぐらいにしておこうじゃないか」
「そうじゃな、リュウの言うとおり……それにしても思ったより早かったのう」
ん、蛍さんまでマジモードってことは
「今夜も出たの?」
獣達が。
というわけで今夜も出動するわけなんだけど
「っしゃー、早速くじ引きだぜっ!」
なんでくじ引きでそんなに熱くなるんだ……。
ちなみにくじ引きというのは、チーム分けのくじ引きのことだ。
さて、今夜は誰と一緒になるか。




