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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第8章「白虎の位と三つ巴の決戦」
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「炎蛇」

 ――シャアアアッ

 小学校の方から、昨日と同じような鳴き声が聞こえてきた。

 間違いない、騰蛇の位がいる! そんな確信と同時に周囲を紅蓮色に埋め尽くした昨日の後継が脳裏をよぎる。

「はぁ、消防服とか欲しいなぁ……」

「……大丈夫、ボクが孔弌の消火係になる」

 それって火が着いてから消してるよね? 既に燃えてるよね? 燃える前に防いでよ、いやマジでさ。

「そんなことよりも、今回僕たちは周りの建物も守りながら戦わないといけないからね。いつもより骨が折れるよ」

 そんなことって、できればそれとなく僕の命も守りながら戦ってほしいんだけど。


「ひるむんじゃありません、一斉にかかりなさい」

 ――グルアァァ

 ――シャアァッ

「沙羅、あなたも行くのです」

 うわ、あいつら既にもうドンぱちやってるよ。

 校庭の真ん中で大蛇VS黒い影sの戦いが……。

「騰蛇の位のほうは相当きているようだな。戦いで我を忘れている。話をするならまずはあいつの目を覚まさせないとな」

 ふーむ……。ここは式神に詳しいアルテの意見に従おう=僕たちも乱闘に参加……ってことか。

 そんな風にいつ切り込もうかと悩んでいると、突然青と紫の光が飛んでいって黒い影の群れを一瞬で消す。

「どうじゃ、横やり一番乗! ストライクじゃ!」

 流石蛍さん。一瞬何が起こったのか全く理解できなかったよ。

 今夜もいかんなくチート性能を発揮してるね。絶対登場作品を間違えてるだろ。

「蛍君、建物には当たらないように力加減頼んだよ。今みたいな派手な技だと後で色々と大変だから」

 校庭に大きなくぼみができてる……。

「うむ、承知した。できうる限り単体殲滅を心がけよう」


 蛍さんの規格外の攻撃で流石に向こうもこちらに気付いたみたいだ。

「やはり来ましたね、式神使い!」

「出たな針男! 今日こそ、下水道に閉じ込めてやるぞ! エターナル下水道サイコ地獄を味わえ」

「さ、さらりと恐ろしい事を言いますね……。ま、まぁいいでしょう。ですがそんなことより、今はあれをなんとかするのが先決ではないのでしょうか?」

 ――キシャァァアッ

 蛇の口から出た圧倒的な量の炎が辺りを火の海に変え、周囲の妖怪を無差別に焼き消していく。

 そして、その炎は僕にも向かってきてるわけで……死んだな!

「……むぅ!」

「……ふっ」

 僕に迫ってきていた火は直前で消し飛んだ。ふぅ……いや、別にびびってなんかないよ?

「ありがと、テンちゃん、アルテ」

「……孔弌、火は水を使って防ぐ。ボクの力を」

 一般常識論すぎるね、それは。いや、言われなくてもわかってたよ?

「孔弌、お前は天奈や他の者と共に騰蛇の位を鎮めて来い。雑魚とその幹部の相手は私がしよう」

「う、うん。でもアルテ気をつけて、あいつ妙な技使ってくるから」

「わかっている。治癒能力の低下だな。だが、大丈夫だから心配するな」


「アルテ!?」

 言ってるそばから、アルテの体を無数の針が貫く。

 ピチャ、と僕の顔にも血が飛んでくる。

「こう何度も奇襲が成功するとはな、お前達本当にあの十二式神なのか」

 いつの間にかアルテの背後に髪切女が立ってる。

「なんてことするんだ!」

 僕が一気に間を詰めて斬りかかろうとすると。

「心配するなと言っただろう孔弌。大丈夫だ」

 大丈夫だって……。え、アルテ?

 ――ズプズプッ

 アルテを貫いてる針が勝手に抜けていく。

「そう驚くな。異物とみなされたから排除されただけだ」

 そのまま体の傷も塞がっていく。こりゃ、驚くなってほうが無理でしょ。

「馬鹿な……私の針が……」


「私の特技は言うなれば奴の真逆だ。肉体活性と瞬間再生」

 す、すげぇ……。ナ○ック星人みたいだ。

「というわけで、余程の事がない限り私が傷を負うことはない。もっとも、妖怪なんていうものは元々傷なんてすぐ塞がるから、この術もこういう機会でなければあまりありがたみを感じないがな」

 なんてこった。ただでさえ妖怪は頑丈なのに、更に半不死身ということか……。

「まぁこれで懸念もなくなっただろ。とにかく、こっちは任せておけ」

「……孔弌、今は騰蛇の位を止めないと」

 いつの間にか傍に控えていたテンちゃんが、ギュッと手を握って僕を引っ張る。

 確かに、あっちを放っておくほうが被害はすごそうだ。

「……このままじゃ皆でテレビ見れない。孔弌に見てほしいテレビがある」

「うわ、凄まじく不純な動機。ていうか、録画してあるから見逃しても別にいいんじゃ……。ま、まぁいいや行こうテンちゃん」

 とにかく僕は僕のやるべきことをする。まずは、あの蛇を僕の式神に誘う!




「ふぅ、孔弌は行ったか」

 己の主が空を覆うほど強大な大蛇へと向かっていくのを見届け、アルテは正面の敵へと視線を流す。

「くっ……私の針が効かないとは……」

「案の定、地力では私の方が優っているみたいだな」

 相反する能力同士でぶつかった場合、当然勝つのは自力が優れている方だ。

「だからと言って油断していると……思いも寄らぬ死角から死神が飛び出してきますよ? お綾さん!」

 男の叫びと共に、アルテの影から巨大鋏がその腭を覗かせる。

「聞いていた透過能力か。わかっていてもうろうろされると邪魔だな。仕方ない、多少の被弾は覚悟して無視を決め込むか」

 瞬間再生能力の前では、おおよその攻撃は無視しても問題がない。

 したがって、アルテにとって致命傷以外の攻撃は脅威ではなく、ただの嫌がらせ程度にしか感じられない。


 そうして、多少動きに支障が生じる事を受け入れたアルテだが、結局刃がその身に届く事はなかった。

「ふん、この程度の攻撃、本来であれば回避や防御に意識を割くまでもない」

 アルテを狙った凶刃は全て、一枚の布が防いでいる。

「麗姫か。一体どういう風の吹き回しだ?」」

「なぁに、わらわの向かう場所にたまたまいたので、ついでに防いでやったまでよ。そこの髪切には借りがあるのでな、今日はわらわも暴れてくれようぞ。そなたはそこの針男が邪魔に入らぬよう任せたぞ」

 余裕の表情を浮かべた麗姫がアルテの傍に歩いてくる。

「もっとも、そなたで手が回らぬようであれば二人まとめてわらわが蹴散らしてくれる」

「まったく……普段からそうやって戦線に加わってくれればな」

 示し合わせたわけではないが、互いに背中合わせとなった二人がそれぞれ針使い、鋏使いに向き合う。


「まるで神クラス妖怪のオンパレードだな。正直、真正面から一対一で勝てるビジョンが全く思い浮かばないぞ」

「確かに、これはあまり芳しくありませんね。しかも、先ほどから沙羅が交戦しているあれは恐らく描禰古末神蛍」

「何? そんな相手までいるとは聞いてないぞ」

「はい、あれは私達では相手にすらなりませんねぇ。格が違いすぎます。沙羅もそう長く持たないでしょうねぇ」

「このままでは退くのも辛いか……」

「難しいでしょうねぇ」

 大蛇に向き合う孔弌の戦いとは別に、闇に蠢く影を蹂躙するアルテ・麗姫の戦いも幕を開ける。





「セラ、秋月、僕たちに道を作って!」

「よっしゃー、祭りだぜ」

「うむ、了解した」

 二人が炎と敵を蹴散らして作った道を僕とテンちゃんで進んでいく。

 とりあえず突っ込ませてもらう。あと祭りではないと思う。

「二人は、ここでこのまま敵を足止めしておいて」

「おうよ、つかまつったぜぇぇぇえ」

「了解した」

「よし、テンちゃん、このまま跳んで直接攻撃しよう」

 前方に浮かぶあの蛇を止めるのに、僕の小手先の技術じゃ効きそうにないし。

 まぁバッタみたいにピョンピョン跳ねながら戦うのもかっこ悪いけどね……。

「……わかった飛ぶ」

「ん?」

 テンちゃん、何か"とぶ"の漢字が違わないかい?


 突然テンちゃんの体がフワフワ浮き始めた。

「……孔弌」

 そのまま僕を抱きしめて……。

「うわっ、飛んでるよ。落ちたら死ぬねこれ!」

「……大丈夫、ちゃんと持ってる」

 女の子の抱きかかえられて空を飛ぶなんて、全く情けない姿だよ。

 そもそも妖怪って空を飛ぶこともできたんだね……。

 ――キシャアァァ

 ゴゴゴッと正面から炎が……。

「って、テンちゃん、何平気で突っ込んでんの? やばいって、消し炭になるって。レアでお願いします!!」


「……結界」

 水色の半透明の壁が僕たちを包み炎を防ぐ。

「ふぅ、いや、別に焦ってないよ?」

 でもすごいや、僕たち炎の中を飛んでるよ。

「うん……でもそんなに長くもたない」

「ちょっ、ちょっと大丈夫なの!?」

「大丈夫、ボクが騰蛇の位の周囲を旋回するから孔弌は攻撃に集中して」

 あぁ、もうこうなりゃやってやるよぉ


 ――キシャアァァァッ

 うわ、すっごい速さで尾がこっちに向かってくる。

 これはあれだな、叩きつけるつもりだな、うん。

 しかも、タイミングバッチリ。ホームランコースだ。

「テンちゃん」

「……むぅ」

 困ったな……これは、160M級の特大ホームランが出るぞ。


「兄ちゃん、平気?」

「大丈夫ですか、孔弌さん」

 僕達に迫っていた尾は、スザクとアロが放ったであろう攻撃でなんとか逸れた。

「二人も空飛べるんだね」

 どうも妖怪って言うのは飛行は基本スキルみたいらしい。新発見だ。

「よし、そのまま援護をお願い」

「オッケー!」

「はい」


 それにしても騰蛇……昨日見た時から思ってたけどすごい。

 放っておいたらこの町のすべてを燃やしつくす。

 言い過ぎかもしれないけど確かにこの妖怪からはそういう雰囲気が溢れ出してる。

 あそこで火だるまになってるリュウとは、多分比べ物にならないくらい強い。

 あ、燃え盛るリュウの周りに大量の妖怪が群がって……あ、あ……。

「ぎゃあぁぁぁぁあっ! 僕に近寄るなぁぁぁっ! うわぁ、超マジごめん、許してくださいっ! え? スパイラル土下座でもだめなの!?」

 見なかった事にしよう……。


「……孔弌、よそ見」

「あ、うん。ごめん」

 改めて相手を見る……う~ん、これだけ大きいと攻撃が効いてるのかもわからないな。

 できれば、他のみんなにも手伝ってほしいけど……。

 アルテ、麗姫は例の二人とその他多数の妖怪を相手に戦ってるし。

 セラや秋月もあそこは大切な場所だから外せない。

 蛍さんに至っては、交戦中の相手を圧倒しつつ、襲いかかってくる妖怪を蹴散らして、逸れて建物に当たりそうになった騰蛇の攻撃を防いだりと大活躍中。

「よし……テンちゃん、僕をあそこに降ろして」

 こうなったら、直接張り付いて致命打を与えないと。

「……孔弌」

「それで、僕が振り落とされたらそれのキャッチをお願いするよ」

「わかった」


 ストンと敵の体に無事に着地。

「よっしゃー、ハブ酒にしてやんよ!」

 景気よく体をぶっ叩いた。足場が動いて、態勢を保ち辛いけど、さっきより深く切れたはずだ。

 ――キシャァァァアッ

「うわ、すごい揺れ。震度5はかたいな……」



 よし、とにかく攻撃しつつ頭の方に向かおう。

 多分そっちの方がダメージ大きいだろうし。

「みんな、援護頼んだよ!」

 周りで飛び回る三人が頷く。

「やぁぁぁああっ」

 そのまま一気にダッシュ。

「……孔弌、気をつけて」

「うははははは」


 ははははは、とうとう僕の活躍の出番がきたな!

 今まではみんなばかり派手な技で目立ってきたけど……

 それも今日までさ!

 "なぁ、ちょっとこの主人公最強すぎねぇ?"とか"ちっ、厨二設定バリバリかよ"とか言われるようになってやるさ。

 いつまでも貧弱主人公だと思ったら大間違いだ!



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