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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第7章「貴人の位と手痛い敗北」
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「レッツ庭弄り」



 ――ガチャッ。

「ふわぁあ、みんなおはよう!」

 なんかやけに煙たいな。何事?

「おや、孔弌君遅かったじゃないか。今丁度皆でキムチ鍋パーティーをしていたところだよ」

 ぐつぐつと煮えたぎる音が食卓の方から聞こえてくる。

「あのさ、昨日あんなに大変な事があったのに皆随分と好き勝手やってるね……」

 朝から何やってんの……。

「どうして俺に一番近い所からばかり肉を持っていくんだ天奈ぁ!」

「……なんとなく」

 うわ、しかももうみんな食べてるし。

 誰一人として皆揃うまで待ってようとか思わなかったの!?

 くそ、いまいち状況にはついていけないけど僕も早く戦場に踊りでないと!


「ていうかこれ誰が作ったの? 普通に美味しいよ」

 さっきからがつがつ食べてるけど誰の料理なんだろ、これ。

「ふっ、何を隠そうこの僕さ」

「何だって!? みんな、早く逃げろ!」]

「僕の作ったものを無条件で危険物扱い!?」

「いやだって……自然の摂理というか何というか……」

 大体、このニート野郎が料理を作るってこと自体が怪しいし。

「孔弌の考えもわからないでもないが、確かに美味いな」

 うんうん。なんとも不思議なことに不味くない。

「ぶっちゃけて言うと具を煮て、キムチスープの素を入れただけじゃがな」

 蛍さん鋭い一言だなぁ。

 しかし、昨今は料理の素が増えて本当に便利になったもんだ。





「そういえば今日の予定だけど……僕はいつもどおりここを守るから、皆もいつも通り出撃して式神を捜し出してくれ」

 なんだこの自宅警備員。

 しかも警備員としてはものすごく頼りない。チワワにだって勝てるかどうか怪しいのに。こりゃコーギーが相手なら確実に負けるな。

「よし、今日は私も疲れたから家で本を読み耽《ふけ》ろうか」

「あれ!? いつも通り出撃してくれないの?」

 いや、むしろゴロゴロするのが皆のいつも通りでは?

「それじゃ僕は庭の掃除をしますね。昨日の出来事で少し荒れてしまったみたいなので」

「あれ、お前いたの?」

「なぜか僕のお皿が用意されてなかったから取りに行ってただけです」

 頑張れ氷凍……。

「そうだなぁ、それなら俺も庭の手入れでもするかな」

「へぇ意外だね、セラが庭の手入れなんか」

 がさつそうだなぁって思ってたけど考えを改めないと。


「立派な訓練所を作ってやるから、期待して待ってろ!」

 そう言うセラの手には『お家でできる簡単訓練所作り』って書いてある本が。

 いや待て、何を冷静に分析しているんだ僕よ。一体なんだあの本、筋○番付でもやるつもりなのか。

 テンちゃんのなぞなぞといいい、どうして皆おかしい本ばっか持ってるんだ。

「でも庭の手入れって大変だよ? 一応見える範囲は年に一度ぐらい草むしりをしてるけど、他は何もしてないからもう荒れに荒れてるよ」

 僕一人だと一部分を整えるだけでも大変なのに、庭全体なんてとても無理だからね。

 ちなみにあの死にたくなるぐらいめんどくさい作業は我が家の年間行事の中で一番嫌いだ……。

「うははは、安心しろ。めんどくさい事は全部氷凍がやってくれる」

「えぇ~!」


「……ボクも庭の掃除する」

「あの、それなら私もお手伝い……」

「アロまでするの? う~ん、なら今日はみんなで庭の整備でもしよっか」

 あんまり皆と関わろうとしないアロまで参加か……庭の掃除に何か惹かれるものでもあるのだろうか。

「おいおい、それならば私も読書などしている場合ではないではないか」

 というわけで結局みんなで庭の掃除をすることになってしまったらしい。

 それにしても昨日の今日だって言うのに呑気な一日になりそうだなぁ。





「改めて見なくても、やっぱり荒れてるなぁ」

 一人じゃ庭全体の手入れまではできないから仕方ないけど。

 むしろ家のほうはそこそこ清潔さを保ってるのを褒めてほしいぐらいだよ。

「孔弌、ボク何すればいいのかな」

「う~ん、じゃ午前中は皆で草むしりしようか」

 こんな何もない庭の手入れなんて草むしりしかすることないんだけどね。





「疲れたなぁ……」

 そろそろお昼かなぁ。

 この人数で黙々と草をむしり続けたおかげで庭はすっかり綺麗に……ってまぁ雑草が消えたぐらいじゃそこまで綺麗に見えないよねっ!

 そりゃ、さっきに比べてましにはなってるけど。

 でも他にすることもないしなぁ。何もない庭だから。


「ふぅ、ようやく訓練所作りに取り掛かれるな」

「えぇ!? 本気でやるつもりなのセラ?」

「あぁ、当たり前だ」

 当り前か……一体どんな頭の構造してるんだろ。

「それじゃ僕は花壇でも作ろうかな」

「なんだ、随分と普通だな。面白くない奴」

「そんなぁ……」

 氷凍とセラのコンビは見てると面白いな。


「ボク達は何作ろうかな」

「噴水なんてどうだ?」

 おいおい、なんだかスケールがおかしい方向に走ってるぞ……。

「あの、あんまり張り切らなくていいんだよ?」

 正直雑草抜いただけで十分なんだけど。


「それじゃわしは本格日本庭園を……」

「僕は秘密基地を」

「蛍さんとリュウは、草むしりしてないのに面白そうな事だけはするんだね」

 この二人はいつもいつも……。

「まずは砂利や岩を準備する必要があるのぅ」

「あ、それだったら神社にいっぱいあるから持っていってよ」

 おい、神! それ持ってきて大丈夫なのか!?


「そういえば俺も材料準備しないといけないなぁ」

「丁度いい、私と天奈の分も持ってきてくれないか」

「おう、わかった。いくぞ氷凍」

「うわーん、やっぱり僕も行くんですね……」

「リュウ、秘密基地作るのに何がいるの?」

「そうだなぁ、とりあえずまずは木材だね」

 みんなすっかり図工気分になっちゃってるみたいだな。


「じゃ僕は庭の改造には興味無いから、部屋に戻って休憩を――」

「あ、あの……」

「あ、アロ。どうしたの?」

「私は猫の遊び場を……」

「…………わかった、手伝うよ」





「それにしても、最近ちょっとお金使いすぎだと思うんだけど……やばいかなぁ……」

 ここ一週間ほどでなんだかんだで百万円以上は使ってるな……多分。

 いや、ついさっきみんなにせがまれて渡した『庭改造用の材料費』も加えるとすごい量に……。

 落ち着くまではお金の事、考えないようにしないとなぁ。キリがなさすぎる。金銭感覚が狂ってしまう。やばい、マジやばいですよ。

「あ、あの、ご、ごめんなさい」

 隣を歩いているアロが申し訳なさそうに頭を下げる。

「あぁ、別に気にしないで。お金は使わないといけないものだと思うからさ」

 むしろ今まではどうすればいいかわからなくて持て余してたものだからなぁ。

「ただ、金銭感覚はしっかり持ったままでいないといけないなぁと思ってね」

 いくら金を持っててもね。まぁそりゃ適度には使わなといけないけど、それでも庶民魂だけは忘れちゃ駄目だ。


 たった今、二人で近くのホームセンターまで行ってきたんだけど資材はほとんど買い占められていてなかった。

 店員の人の話だと、和服のようなものを着た人と少年がわんさか買っていったって言ってたし……。

 まぁ、セラ達が僕らより一足先に行って買い占めたんだろ。

 それならそれで、家に帰って少しわけてもらえばすむしね。

 少しだけ無駄足になったけど。そういえばすれ違わなかったけど、あの二人どういう道で帰ったんだろ……。

 しかし猫の遊び場かぁ。とりあえず材料は用意されてるとして、僕達に作れるかなぁ。

 そもそも一体どういうものを作ればいいんだ……。

 作るとしたら集会所とか砂場とかかなぁ。

 あぁ、うちにはチコが一匹だけいるだけだし、集会所なんか作っても仕方ないか。

 まぁちょっとした日曜大工程度の頑張りでどうにかなりそうなプチ砂場とプチアスレチック、略してプチレチックでも作るか。


 そろそろ公園だから、もうすぐ家に着くかな。

 それにしてもまだこの辺りだったのか。割とのんびり歩いてきたなぁ。アロも随分緩み切ってるみたいだし。

 なんて事を思いながら、二人でとぼとぼと歩いてると

「ほれ、抜けろっ!」

 公園の方からやけに大きな声が聞こえてきた。

「なんだ、なんだ?」

 見ると絶対に関わりたくない痛い服装(ドレスにマント)をした女の人が

「ふっふっふっ」

 なんて、いかにもな笑い声を上げながら

 ――シューシュー

 近くの自転車のタイヤの空気を抜いていた。

 セラの時といい、なんかこの公園は怪しい人がたくさん出るなぁ……。珍スポットにならなけりゃいいけど。


 空気を抜き終わったタイヤにわざわざ栓を戻して(律儀)

「ふむ、これで本日十四台目か……。わらわも随分慣れてきたものよ。よし、ついでに鍵穴に砂も入れておいてやろうではないか」

 えぇ!? あの人今日だけで十四回もこんなアホみたいな事やってるの!?

 ていうかあれは犯罪だよ、やめさせないと!

「こら、君何してるんだぁ! このコスプレ犯罪者っ!」

「ん? 誰だ」

「僕は阿保孔弌。そんな事より、君。人の迷惑になることはしちゃだめじゃないか!」

 全く、いい歳して子供みたいな事を……。

「ほぅ、意見するというのか。たかが裸虫の分際で……あらゆる事象を司るわらわに」

 うぅ……なんかすごいプレッシャーが。今更だけどこの人怖いよ……。


 大体一人称がわらわって何だよそれ。キャラ作りなんだろうか? 痛いにも程が、アル!

「ふむ、そなた、ただの人間ではないな。討魔師か、丁度よかった力が足りなかったところでな。上玉とあらば食ろうてやってもよい」

 ひぃぃぃぃっぃい、この人妖怪だ……! 間違いなく人間じゃない! 絶対に!

 やばい……自分の中の小さな正義を守るためにとんでもない相手に喧嘩を売っちゃったかも。マッハ土下座の準備をしないと。

「こ、孔弌さ~ん!」

 僕に遅れてアロも公園の中にやってきた。

「はぁはぁ、あの、ど、どうしたんですか……」

「よし、助かったよ。いけ、あの人をすっぽんぽんにしてやれ!(決して下心はない)」

「……え……あ、ぁ……」

「……む 貴様は六合の位」

 あの~? 知り合いなの?

 というか、この展開はもしかして……。


「式神?」

 女の人を指さして言うと、アロがコクコクと頷く。

「……貴人の位」

 やっぱり式神か! 実は僕も薄々そう思ってたんですよ! しかも厄介だって噂の……貴人の位さん。



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