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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第4章「六合の位と官憲」
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「あざとアルテ」

「僕は思う……この家って男少ないから、男の立場弱くないかい?」

 ご飯の時にいつものごとくリュウが謎の話題を切り出してきた。

「いや、どっちにしろリュウの立場は常に弱いと思うんだけど」

 しかも今のところ男と女って一人差だよ?


「それにしても猫か……私もあとで見せてもらっていいか?」

「ぅ……うん……」

 アロも食堂にきてくれた。

 このままだんだんと打ち解けてきてくれたらうれしいな。


「兄ちゃん、兄ちゃん、あとで将棋しようよ」

「将棋?」

 将棋か、うちにあったかなぁ……。

「大丈夫、僕買ってきたから」

 あぁそういえばみんな今日は買い物にいってたんだったね。

「さっきアルテとしてたんだけど……全然勝てなくて」

 うわ、アルテは強そうだな。しかも容赦なさそ。


「これでも一応指揮をとるものだからな」

 軍師ポジションのくせにあの戦闘力ですか。普通ブレイン担当は非力だと思うんだけど。

 大きな刀を振り回す指揮官とかってどうなんだろ。

「そういうアルテも何か買ってきたの?」

「あぁ、本棚と本をな……古本屋で七十冊ほど。流石に全部は持ち帰れなかったので、残りは後日届く」

「七十冊!?」

 読むのに一体どれだけ時間かかるんだ……。あともし古本じゃなかったらどれぐらいの値段するんだろ。


「テンちゃんも何か買ってきたの?」

 確かみんなと一緒に本屋に行ってたはずだよね。

「うん。本屋で面白そうな本を見つけたから……」

 スーと一冊の雑誌を渡してくるテンちゃん。

「アクアンヒャッホゥ8月号?」

 どういうタイトルの雑誌だ。ちなみに表紙は魚の正面ドアップ。グロキモイ。

 魚なら普通横から見た写真だろ……。

 とりあえずめくってみると


「最新タンクの騒音チェックと動作……熟練愛好者に聞くアロワナの魅力……特別コラムクラゲだっていいじゃない……って何の本これ?」

「……アクアリウム」

 あくありうむ?

「……水槽で魚を飼うこと」

 へぇ、テンちゃん魚の飼育に興味があるのか。


「……機材一式と魚揃えた」

「え?」

「……水を見てると心が満たされる……豊かになる。孔弌もあとで見に来る? 豊かになる?」

 見に来るっていうか、テンちゃんが何を言ってるかわからないんだけど……。

 え、なに? 機材と魚と水で心が満たされる? 一体何のこっちゃ


「天奈はその雑誌を買ったすぐあとにペットショップというところにいき、必要なものと初心者向けの魚を購入したのだ……」

 アルテが説明してくれる……って

「行動おこすのはやっ!」

 僕はその行動力に敬意を表するよ。

「今や天奈の部屋はちょっとした水族館になっている。正直私も驚いている」

 うん、僕もものすごく驚いているよ。……どうでもいいけど、アルテ水族館知ってるのか。

「……大丈夫、できるだけ音が小さいの揃えたから」

 そういう問題なのかな……。


「美味そうじゃな……」

 じゅるりと音をたてる蛍さん。

「蛍さん? 食べちゃだめだからね!?」

「冗談じゃ、流石のわしもそこまで野生的ではない」

 ふぅ、よかった……。冗談に決まってるよね。

「しかしよかったのぅ、アロ。これでチコの食費が浮く」

「だぁぁぁああ、ダメ! そういうブラックなジョーク禁止!!」


「あ、そういえば孔弌君」

 と今度はリュウが

「僕も思い切って、自分の部屋を改装しようと思っていろいろ買ってきたんだよ」

 あの香水くさい部屋にこれ以上何をしたんだ。

「あぁ、アマチュア無線用の通信機器一式を部屋に備えた。いやぁ、あの規模のマイ無線局を開設したのは初めてだよ」

「何やってんだおまえぇぇぇえええ!!?」

 ジャ○コで何があったんだ!?

 ていうかリュウ通信免許とか持ってんの!?

「パソコンや携帯で簡単にチャットとかができる今の時代の子には理解できない趣味か、ふぅやれやれ」


 こうして我が家には新たに

 ・猫天国

 ・ミニ水族館

 ・書斎(すでに書斎は一つあるんだけどなぁ……)

 ・通信室

 ができた……。


 スザクの部屋はまぁ元から僕のお古のゲームいっぱい持ってったせいで既にゲーム部屋だったからね。

 それにしても通信室って……通信室って……。

 興味のない僕が言うのもなんだけど、せめてパソコン機材一式とかのほうがまだ使いどころあったんじゃ……。





「恒例! 本日のテレビタイム」

「……孔弌、どうしたの?」

「ごめん、なんでもない……」

 居間に集まって、みんなでテレビの前に座る。

 アロは流石にもう限界がきたようで、一人部屋に戻って行った。


「それにしてもよくこんなバカな企画が思い浮かぶものだね」

 バラエティー番組を見ながらリュウがそう言う。

 ん~、でもバカなら……

「リュウをテレビで映したほうがバカな番組……いや、放送禁止にひっかかるか……」

「さらっと失礼なこと言わないでくれないか!?」

「……お主らが漫才師になったほうが面白そうじゃが」





 テレビを見たあとみんなの部屋を一通りまわって自分の部屋に戻ってくる。

 想像を超えるプチ水族館とプチ図書館が出来ていたのには驚いた……。

 一部の意味不明な水槽は、水を自力で浄水できるテンちゃんだからこそできた芸当だな……。

 通信室もすごいことになってたなぁ……。相変わらず香水臭かったし。

 さて、明日もまた大変な一日になるんだろうなぁ。早く寝ないと。


「……孔弌?」

 寝ようと思ってベッドに寝転がったところで部屋の外から声がした。

「アルテ? 開いてるよ?」

 粛々とした様子でアルテが扉を開いて入ってくる。


「こんな時間にどうしたの?」

「夜這いだ」

「え!?」

「……冗談だ。少し話しておきたい事があってな。あ、横になったままで構わないぞ」

「いやいや流石に横になったまま人とは話できないよ」

 とりあえず体を起して、ベッドに腰掛ける。

「それで話って何?」


「あぁそれなんだが、まずは今日の事について礼だ。アロがこうして少しずつ歩み寄ってきてくれるようになったのはお前のおかげだろう?」

「う~ん、よくわかんないけど一緒に出かけてただけだよ?」

「ふふっ、あいつがともに行動している時点でお前は相当の好意を受けているということだ。そしてお前はその好意をちゃんと汲み取ってやっている。それだけでも十分だ」


「もう気づいているかもしれないが私達は全員が全員何かしら難儀な性格をしている。特に他人に対して上手くコミュニケーションをとることができないものが多い」

 昔のテンちゃんが他人に無関心だったり、アロが人前に出て話をすることができないってことか……。

「気づいてないと思うがスザクは子供っぽさだ。お前と一緒にいるうちに少し大人のような落着きを身につけたようだが……。それから私はそれなりに自分の事はわかっているつもりだからな一応は自己で制御しているつもりだ」


「そういう理由で私達は集団でありながら仲間意識が決定的に欠落していたのだ。全員が共にいる時など、戦いのときだけだった。だがお前はそんな私達を簡単にまとめてくれる……。礼を言おう」

 まとめる……か、僕にそんな大それたことができてるのかな。

「胸を張れ孔弌、お前は私達の主なのだぞ」

「そうだね、こんなにすごい君たちの主人だからね。胸を張るよ」


「それからもうひとつ、お前のことだ」

「僕の事?」

 アルテが少し近寄ってくる。

「お前は、私達の心の隙間を埋めてくれる……。だがお前にもあるんじゃないのか? 心の隙間が……」

「…………」

「時折、お前から厄……というより負の香りが漂ってくる。他の者は気付いていないだろうが」

 負の香り……?


「心や気持ちによくない思いがあると、陰気を生み出す。その陰気は、厄や祟りになることがあるのだ」

 なるほど、暗い気持ちになればなるほど、その陰気ってのが出てくるのか……。

「今のお前なら、負的要素を抱擁した因果の偏差による影響もあまりないだろうが……」

 因果の偏差って……ようするに不幸のことだよね。そんなもってまわした言い方しなくても。

「お前は今日私達に、自分の部屋らしさが出るように賃金を与えてくれたな」

「うん、それがどうかしたの?」

「部屋っていうのはある種の鏡だ。部屋の主の内面を映し出すからな……。たとえば、人とうまく付き合えないアロは昔から動物を愛でる。だから自分の部屋を猫のための部屋に改装し始めた。水を操り、本人もまた水のような気質を持つ天奈はアクアリウムや水に関係した物……。子供っぽいスザクは、おもちゃの多い部屋。常に知識を欲する私は書斎だ」


「お前の部屋は……」

 改めてあたりを見回すアルテ。

「とても楽しい部屋だ。時間を忘れてしまうくらいにな。この小さい空間のあらゆる場所に楽しさがある。だがどうしてだか、私には誰かに来てもらうための部屋、誰かにずっといてもらうための部屋、そんな感じがするのだ」

「……そうだね」

「孔弌、私はお前の家族だ。私だけじゃなく今いる式神は全員お前が好きだ。私達はお前が大好きだ……」

 そのままアルテが僕のすぐ前まで寄ってきて

「だから、何が起きても寂しがったりしないでくれ……。時折、どこか孤独感を漂わせるお前を見るのは辛い……」

 僕の頭に手を置いてくる。

「アルテ……」


「大丈夫だよ。僕にはもうみんながいるから」

 立ち上がって、そのままアルテの肩に手を乗せる。

「ありがと」

「……あぁ」

「すまんな……どうも私は心配症らしい。お前の強さは知っているはずなのにな」

「ううん、僕が孤独で苦しんでいたことがあるのは事実だから」

 部屋の様子とか、僕の普段の仕草でそこまで気が回るなんて……。

 やっぱりアルテは、最高の参謀だよ。


「まぁ、また一人の辛さを思い出したらいつでも私を呼べ。一緒にいるから……。何なら今からずっと朝までいてもいいんだぞ? 添い寝だ添い寝、ふふ」

「ありがと、あと添い寝はノーサンクスだよ」

「だが、こうして見つめ合うだけでは朝が遠すぎるぞ?」

「おとなしく自分の部屋に戻って寝てください」

「主なら命令してみたらどうだ?」

「ん~……寝れ?」


「ははっ、お前はやっぱり面白いな」

 あの二文字にウケるとは。アルテの笑いのセンスはわからん……。

「こうも据え膳を押しのけるとはなぁ」

「主人公のお約束だからね。あとは武士は食わねど高楊枝ってやつかな」

 大体、なんでフラグ立てた覚えがないのにデレ期が到来しているんだ……謎だ。


「では夜分遅くにすまなかったな。ただ、これだけは覚えておいてくれ。辛い事があったらどんな時でも私達に頼ってくれ」

「うん、ありがと」

 それから

「アルテ……」

「ん?」

「おやすみ」

「あぁ、おやすみ」


 ――バタンッ

『私達を救ってくれるのがお前のようなものでよかった……。今度こそ、今度こそ私たちは幸せを掴むのだ』



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