↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第4章「六合の位と官憲」
PR
31/86

「トマト再来」



 そしてペットショップでの買い物の結果…………。

「重いよぉ…………」

 すごい量の荷物に。人間が持てる量じゃないよね、これ。

「…………あ、あの、手伝いましょうか?」

 アロが心配そうに尋ねてくるけど。

「大丈夫だよ……それにアロが手伝うと今度は猫を持つ人がいなくなるでしょ」

 懐いてるといっても、逃げられたら困るからね。


「それに……」

 ふっと力を込める。

 ちぎれそうだった腕と指に余裕が戻ってくる。

「討魔師って便利だね。こんな風に力を使ったりできるから」

 銀色の力、凡庸性高くて便利だなぁ。

 今そのありがたみをしみじみと感じてるよ。ありがとうアルテ。


 そんなにつらくはないけど、このまま家まで帰るのはめんどうだなぁ。

 頑張れば走れそうだけど、それだとバランスとれなくて荷物落としそうだし。

 なんてことを考えてると

「……孔弌?」

 背後から声をかけられた。

 アロじゃない声だな。

「えっと、誰かわからないけどごめん。今見ての通り大変なことになってるからちょっと……」

 振り返るのも一苦労だよ、ほんと。


「あ、私だよ」

「あぁえっと……」

 そこには、あの女の人が立っていた。

「えっと、トマトジュースの人!」

「え? えぇ……あぁ、うんトマトジュースだよ。また会えたね」

「ぇ……ぁ……」

 少し離れた所にいるアロが困惑している。

「えっと、そちらの方は…………?」

 こちらのトマトジュースさんも少し困惑しながら聞いてくる。


「えっと、アロ、この人は、んと……トマトさんていう名前で、以前困ってた時に助けてもらったんだよ」

 トマトさんでいいよね?

「ぁぅ……」

 うつむくアロ。

「あ、ごめんね。アロはちょっと人と話をするのが苦手なんだ」

「あ、気にしないで。それだったら私も苦手で……孔弌以外の人ともあんまり話したことないから……」

 あぁ、そういえば君も対人恐怖症に近いものがあったね。


「人前に出ると、すごく自分が見られてる気がして……。それで何か言わなきゃとか、でも何を言えばいいのかわからなくて怖くなってきて……」

 下を向いてそう語るトマトさん。

「お、同じです!」

 そして突然大きな声を出すアロ。こんな大声を出すアロは初めて見た。

「わ、私も……拒絶されるような気がして、それで、すごく恐くて……」

「私も同じだよ!」

 なんか馬あってるんですけど、この二人。


「なんだかアロのこと他人とは思えないよ」

「わ、私も……」

 そして僕が蚊帳の外。

 いや、互いに友誼《ゆうぎ》を結ぶのはいいけど……。

「重いから歩きながら話さない?」

 ここで立ち止まってるのはつらいよ。


「あ、そうだった。また荷物で困ってるみたいだから、お手伝いしようと思って声をかけたんだけど……」

 あぁ、そういえばこの前とまったく同じパターンだね。

「今度は一体何を買いすぎたの? この前よりも多いみたいだけど」

「ちょっと……猫を飼おうと思って……」

 僕がそういうとアロが抱いている猫に気がついたみたいだ。

「あ、可愛い……」


 というわけで、申し訳ないけどまた荷物運びを手伝ってもらうことに。

「いいよ、気にしないで。特にすることもないから」

 この人いつも暇そうにしてるけど学生なのかなぁ。まさか自分探し中とかそういう人?

「あの……ちょっと質問していいかな?」

 僕が学生かどうか聞こうと思ってたら先に質問された。

「ん? 何?」


「あの……抑えてるみたいだけど、そっちのアロからも微妙に霊力が漏れ出してるんだけど、アロも孔弌と同じで討魔師の方?」

 あぁ、そういえばこの人はそっち方面詳しいんだったね。

「えっと……アロはテンちゃんと一緒で僕の式神だよ」

「え? 式神?」

 いや、何もそんなに驚くことじゃないよね。テンちゃんのことは知ってるし。


「そんな……天奈ほどの式神はぱっと見ただけでも契約が難しいのがすぐわかるほどなのに、それと同格の式神をさらにもう一体って……孔弌、一体何者なの?」

 あー、リュウも言ってたけどやっぱ異常なんだ……。僕の式神に関する才能って。

「何者ってついこの間まではただの一般人だったよ」

「もしかしてまだ式神がいるの?」

「うん、もう二体」

「……!」

 言葉も出ないぐらい驚かなくても……。


「今行っている肉体強化の術といい、すごい。まさに討魔師のために生まれてきたとでもいうような……」

 あ~、気づいてたんだ。僕が強化してるってことに。

 やっぱりこの人ただものじゃないんだなぁ。

「でも今やってるのはこれ僕の術じゃなくて、神装具ってやつの能力で……」

 ただ単に銀色のところに力を流し込むだけで発動するからなぁ……。


「自分の力を使いこなすのも強さのひとつだよ。私なんて自分の力すらうまく使えないのに……」

 う~ん、この人たまに自分を卑下するこというけど何かとわけありのようだなぁ。

「私も……自分の力に自信ないけど……」

 と珍しく積極的に話に入ってくるアロ。

「新しい主……孔弌さんと一緒にいると少しずつ変われそうな気がするんです」

 アロ、僕の事そんなに頼っててくれたんだ……。



「あ、あの、す、すみません。……それに、えと……変われそうって言っても、まだまだ当分全然無理ですし」

 そのあとなぜか顔を真っ赤にしてうつむくアロ。

「でもアロの気持ちわかる気がする。私も孔弌と一緒にいるとこうして普通に話もできるし、とても安心するから」

 マイナスイオンでも出してるのかな僕。

「それにしても新しいご主人様……ですか……まさか、ね……」

 その新しいご主人様っていう言い回しは、なんかアレ気な感じがして嫌だな……。


「さて、そろそろ家に着くぞぉ」

「あ、そういえばあのあたりだったね。確かあのすっごく大きい家」

「うん、実はとなりの塀が既に我が家のものなんだけどね……」

 いやぁ、それにしても荷物を軽く感じるおかげであんまり疲れないなぁ。アロのおかげで暑さもないし。

 あと猫は拾ってからずっとおとなしくしてるな。まぁ子猫だからおとなしくしてるだけかもしれないけど。


「そうだ。もしこの後用事がないんだったら、トマトさんも少し寄っていけば?」

 何かとお世話になってるからね。

「まぁ、今はみんなおでかけしてるから家には誰もいないけど」

 流石に僕とアロだけどじゃ盛大なおもてなしはできないかな。


「あ、残念だけど遠慮するよ」

「そっか、じゃありがと。もし困った事があったら今度は僕のほうに頼ってね。助けられてばっかりだと男がすたるよ」

 最近はいろいろあって、僕の尊厳は粉々になり気味だけど。

「うん、それじゃまたね」

 というわけでトマトさんと門の前で別れた。


「……あ、あの孔弌さん」

 玄関の前でアロが俯いたまま口を開く。どうも何か思案してるみたいだ。

「ん、どうしたのアロ?」

「……さっきの、あの、トマトさん」

「トマトさんがどうかしたの?」


「あの人も多分只者じゃなかったと思います……。かすかに純度の高い霊力が漏れてたみたいですし……」

「そうだねぇ。実際僕もあの人が一体何者なのかよくわかんないんだよなぁ」

 普通にいい人だとは思うんだけどなぁ、いかんせん言動が怪しすぎて……。

「それに、少し傍にいただけで私のことを、その、強力な妖怪だと見破りました。そんな芸当はなかなかの実力者じゃないと……」

「そうだなぁ。でも、多分悪い人じゃなさそうだから気にしなくていいと思うよ」

「あ、はい」

 と、こんなやり取りをしながらアロの部屋へと向かう。





「ほんとにここに全部置いていいの?」

 猫用品は、アロの部屋に全部持ちこんだ。アロの要望だ。

 確かに当初の目的通り部屋に無個性感はなくなるけど……。

「トイレとエサ皿ぐらい、玄関とかに置けばいいと思うんだけどなぁ」

「大丈夫……です」

 子猫の寝床を作り終えて、一緒に遊んであげているアロが力強くそう答える。


「それにしてもアロは、動物には普通に触れるんだね。はじめて会った日の朝も鳥を助けてたんでしょ?」

 人間とかには近づくことも難しいのに。

 今日だって大通りとか通れないから、遠回りもしたし。

「ぁぅ…………」

 あ、まずい傷つけちゃったかなぁ……。僕のバカ!


「動物以外にも触れます……」

 うつむきながらぼそぼそとそういうアロ

「へぇ、動物以外にも何か平気なものがあるの?」

 意外と虫とかかなぁ……。それともウナギとかそういう系かなぁ。

 なんて思ってると、いつの間にかアロが寄ってきて


「あ…………」

 僕の手にほんの少しだけど触れるアロ。

 手からわずかな震動が伝わってくる。とんでもない恐怖を何とか抑え込んでるような。

「ぅぅ……タ、タッチ…………できました……」

「ぁ……その、あ、ありがと」

 うぅぅ、なんだか恥ずかしいよ……。


「うー、甘酸っぱいのぅ」

「きゃぁぁあ!」

「うわっ、蛍さん!」

 いつの間にか部屋の入口に蛍さんがいた。

「気配を消して接近するのは、わしの特技の一つじゃ」

 だから、そうやって身体能力を無駄遣いするのやめてくれないかな……。

「あ、いや、その、空気を読まずにいいところを邪魔してすまんのじゃが……」

「い、いいところって……」


「いやのぅ、わしだけ皆より一足早く帰ってきたのかと思っておったのじゃが、玄関にお主らの靴があったのでどこにおるのじゃと思っておったら……」

 ちろっと部屋のすみを見て

「可愛いお嬢さんがいるではないか」

 猫のほうに寄っていき撫でている。

「ていうか、メスだったんだ」

 お嬢さんって言うぐらいだからね。


「えっとね、その猫はね(……状況説明中……)というわけなんだよ」

 われながら、美しい説明だよ。ふっ、なんて楽な文章だ。

「なるほど、そういえばわしもまだ普通の猫じゃった頃に殺されかけたことがあるのぅ」

「え? 蛍さんが?」

 誰だそんな恐れ多いことしたのは……死にたいのか?

「いや、たちの悪い野犬じゃ。思うにあれが人生で一番命の危機じゃったのぅ……」

 犬SUGEEEEEEEE。


「そして死にかけておったところに、親切な者達が通りかかって治癒の術で命を助けてくれた……」

「なんだかこの子猫の話とそっくりだね」

 瀕死の傷を術で治してもらうあたりが。


「にぃ……」

「ん? なんじゃ?」

 蛍さんが抱いている子猫が何やらにぃにぃ訴えている。

「ふむ、トイレじゃと」

「あぁ、トイレ用意しないと! アロ、袋からトイレのシート出して、僕はトイレ本体出すから」

「……ぁ、はい」


「ふぅ……」

 トイレに子猫をいれると同時に排泄を開始、なんとか間にあった。

「それにしても蛍さん猫の言葉がわかるんだね」

 まぁ蛍さんも猫だから、わかって当然か。

「まぁ、直接的に言葉を交わしているのではなくて、思念を伝え合っているのじゃがな」

 まぁどちらにしろ会話ができるってことだよね。

「あとは犬の言葉も大抵はわかるぞ?」

「犬の言葉もわかるのっ!?」

 猫なのに!


「にぃ……」

 子猫がまた蛍さんのほうに何かないている。

「今のは何て言ったの?」

 通訳さんに聞いてみると

「ばあちゃん、抱っこしてほしいの だそうじゃ」

 ばあちゃん?


「わしも……もうばあちゃんか……」

 センチメンタルな空気が伝わってくる……。

 ばあちゃんって蛍さんの事なのね……。

 まぁ、その言葉づかいがすでにばあちゃんだよね。

 年齢も僕らの中で一番年上っぽいし(900歳だっけ?)


 蛍さんが抱いてあげると次はアロのほうを見て

「みぃ~」

「ご主人さま、助けてくれてありがとうなの」

 即座に蛍さんが通訳してくれる。

 ていうか、その喋り方が見た目とマッチしててちょっと面白い……。

「ご、ご主人さまだなんて……お友達だからそんな風に呼ばなくていいよ」

 照れながらアロが答える。


「みぃみぃ」

「ありがとう、ご主人さま。私は子供だから、まだわからないことが多いけど、ご主人さまみたいな人が私を拾ってくれて嬉しいの」

 結局ご主人さまは変えないんだ。

「ううん、そ、そんなに気構えなくていいよこれからよろしくね」

 指をもじもじさせながらアロが答える。猫に対しては随分と気さくなんだなぁ……。


「みぃみぃ~」

「うん、ご主人さまはお友達でお母さんでとっても優しいの」

 主人と友達と母親って同じ存在になることあるの?

「それにしてもこのお嬢ちゃん、随分と賢いのぅ。人間で言うとまだ二、三歳時程度のはずなのじゃが……」

 え、かしこっ!?

 超天才児じゃないですか。


「全く、どうりで小さい頃の僕に似てると思ったよ……この猫」

 この凛々しい顔立ちとか、利口そうな瞳とか、美しいイヤタフト(耳から出てる毛)とか……。

「にぃ」

「ご主人さまのご主人さまはバカなの」

「猫にまでバカって言われたよ!?」

 ていうか僕の言葉通じてたの?

「関係ないが、ご主人さまのご主人さまという言葉はかなり言いにくいと思うのじゃがのぅ」


「そういえば、この子の名前はなんていうの?」

 名前もないと呼びづらいからねぇ。

「そうじゃな。お主、名はなんと申すのじゃ?」

 そもそも猫って名前とか持ってるものなのかなぁ。

「みぃぃ」

「名前はまだありません。ご主人さまがつけてください」

 う~ん、すごい。

 何がすごいって? だって僕にはみぃみぃ言ってるようにしか聞こえないもの。


「それにしてもお主、相当好かれておるのぅ。猫という生き物は基本的に冷たい生き物なのじゃがな」

「ぅ…………」

 このアロの仕草は……照れているらしい?

「その分、好きな者にはとことん甘える動物じゃ。よい親になるのじゃぞ」

 猫は基本冷たいけど好きな人にはとことん甘えるか……。でも蛍さんがとことん甘えるところなんて想像できないな。

「それじゃ、わしは先に下に行っておる。何か猫の事で伝えたい事があったらいつでも頼るがよい」

 と言って、蛍さんが部屋から出て行った。


「そういえば、そろそろみんな帰ってくるなぁ」

 猫のお世話したりしてたらだいぶ時間がたっている。

「そうだなぁ、あとは名前を決めてあげないとね」

 本人も御所望のようだし。

「アロはどんな名前がいいの?」

 ここはアロのネーミングセンスに期待だ。


「わ、私は……チコ……とか」

 チコか……。

 意外と普通だ、割とありそうな名前だし。あと葉っぱカッターとか使いそうだ。

 にゃおにゃおさんとかそういう名前が飛び出すと思ってたのは、やっぱり僕のセンスが逸脱しているせいだろうか。

「それじゃチコだね」

 チョコレート食べたくなってきた。


 ――ぐ~。

「…………ごめん、ちょっと食べ物の事考えてたら……」

 食べ物というよりお菓子の事だけど。

「……ふふっ」

 と、ほほ笑むアロ。

「あ、アロ初めて僕に笑ってくれたでしょ」

 こんな風に笑うんだね、君は。


「ぁ……! ……ぅぅ……」

「もう、そんなに恥ずかしがらなくていいじゃない」

 全く……今日で対人恐怖症は少しだけましになったかもしれないけどその分シャイになってきてるじゃない。

「そんなわけでそろそろご飯も近いから、僕は下に行ってご飯の用意をしてくるよ。アロもよかったら、みんなと一緒に食べなよ。それじゃ」

 といって、部屋から出る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。