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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第3章「勾陣の位と平和な一日」
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「まったりタイム」

「というわけで早速、今から料理をはじめまーす」

「おー」

 ぱちぱちと手を叩くテンちゃん。

「といっても、二人とも本とかで勉強したみたいだし練習もしたみたいだから、あとは経験が足りないだけで僕が教えてあげられる事はほとんどないけどね」

 なんかてきとうな気がするけど、まぁこれは事実だし。


「あ、でも、例のアレをいれるのだけは勘弁してね、マジで。いや、マジで」

 アレさえなければ、この二人は問題ないんだ。

「あぁ、あれはリュウにちょっと悪戯してやろうと思ってな」

「……うん、いたずら~♪」

 天奈、アルテ……恐ろしい子!

 ていうか、明らかにリュウじゃなくて全員を狙ってたと思うんだけど……。鍋ごと盛ってたし。


 そのあと二人に細かい事を教えながら何とか料理は作ることができた。

 といっても野菜の切り方とか肉の下味の付け方とか教えてただけだけど。

「ふむ、こういう知識をたくさん身につけ、色々と応用していけるわけだな」

「……目指せオリジナル料理」

 テンちゃん、そういうのって本当に料理うまい人じゃないと大抵失敗するから、当分はやらないでね。


「さて、蛍さん以外は家にいるみたいだし、蛍さんが帰ってきたらすぐご飯にしようか」

 しかし……助っ人にばっかり仕事させて、リュウめ!

「そういえば、スザクの姿を見ないな」

「あぁ、ゲームにはまってるんじゃないかなぁ」

「孔弌、ゲームって何?」

「ん、ん~、まぁ娯楽?」

 なんて説明すればいいんだろ。


「とにかく、実物を見てもらった方がいいと思うし、ご飯食べたらテンちゃんも行ってみようか」

「今帰った」

 などと話をしていたら玄関のほうから蛍さんの声がした。

 ナイスタイミングすぎるけど、まぁオッケーだろ。もうこの程度のご都合主義展開で驚いてたらキリがない。

「それじゃスザクを呼んできてご飯食べようか」

「……孔弌、リュウは?」


「僕ならもういるよ」

 後ろから声がした。なんていうやつだ。





「ほぅ、今日は昼に続いて夕餉も豪勢だのぅ」

「豪勢って、ただの冷しゃぶとチヂミと卵スープだけどね」

 手を抜いたような、ちゃんと作ったようなよくわからない内容だ。

 冷しゃぶとかぶっちゃけ生野菜にゆでた肉をのせるだけだし。


「みんな、食事中で申し訳ないけど、ちょっと大事な話がある」

 むしゃむしゃ肉を食べながらリュウが深刻な顔でそう口にした。

 どうしたんだろう、もしかして式神の事で何か重大な会議かな。


「一人称が"ぼく"の人多くない?」

 酢豚にパイナップルいれるかいれないかぐらいどうでもいい話だった。

 ちなみに僕はパイナップルは中立派だ。あと小学校の時とかリンゴが入ってるサラダが出てたけど、あれは嫌いだ。

「それではこれより、第一回『一人称ぼくが多すぎるんじゃない!?』会議を始めます」

 誰も何も反応していないのに、勝手に始めよった。しかも第二回とかもあるのかなぁ。


「まず、一人称にぼくを使うのは僕、孔弌君、天奈君、スザク君だ」

「いや、一人称なんて被るの当り前でしょ……」

 メジャーなのって俺とか僕、私ぐらいしかないじゃん。

「はっ、これだから素人は。いいかい、一人称ってのは個性を見せつける絶好のポイントなの。世の中には特徴的な一人称でキャラを際立たせている者も多いんだぞ」

 そんなバカな事をまじめに力説された。


「六人中四人か。確かに一人称でキャラが被るのはまずいな」

 アルテ、こんなバカバカしい会議にまじめに参加しなくていいよ。

「ちょっと待つのじゃ。天奈の"ボク"もカウントするのか? これはある意味ひとつの論点だと思うのじゃが」

 蛍さん!? あなたまでこんなバカ会議、略してバ会議に参加するんですか!?


「確かにそこはかなり大きなポイントだね……。キャラとしてもボクっ娘はある意味で希少価値が高いからね。それに一作品のなかで被ることはほとんどないから」

「……ん、ボクはボクのままでいい。孔弌が教えてくれた言葉だから」

 その一言のせいで、しばらく僕のボクっ娘フェチの話になって酷い針の筵を味わった。





「孔弌は、ボクがいいのか……。な、なら私もこれからは……」

「これはどうやら"僕"も"ボク"になる時が来たようだね」

「わしも、このような年寄りくさい一人称を変えるべきかのう。ボクは蛍、どや!」

 そのどやの意味がわからない! どうもこうもないよ!

「ボクの名前はアルテだ。どうだ孔弌、……か、可愛いか?」

 いや、やめてくださいマジで。全員ボクって一人称は流石に収集つかなくなります。嫌いじゃないけどね!

 あとリュウきもい。一人称被るの嫌だったんじゃないのかよ……。


「みんな、とりあえず話戻そうよ……」

 でかしたぞスザク。あとで飴をあげよう。

「っと、そういえば天奈君の一人称の扱いだったな。まぁ表記もカタカナだし、天奈君の事は除外して考えようか」

 そんなカタカナとかさっきから異次元とか紙面ネタの話持ちだしすぎだよ。

「とりあえず僕としては男の一人称が全部僕ってのが気になる所だね」

 男全員どころか、さっきは女も全員ボクになりそうだったけどね。


「……あー、それわかる~」

 テンちゃん、面白いリアクションを覚えたんだね。ていうか絶対わかってないだろ。

「ふぅ、孔弌君ノリが悪いぞ。そんなことじゃキャラクターが弱くなるぞ」

「じゃ、リュウは明日から俺でも儂でも私でも好きなのを使えばいいじゃないか」

「儂だとワシと被るのぅ」

「私だと私とかぶるしな」

 いいじゃん別に! むしろさっきは率先して統一しようとしてたじゃん!


「やっぱり私達も明日からボクを使うというのはどうだ?」

 アルテ、聡明な君はどこにいったんだ。どうして話を戻す?

 僕には君が何を言いたいのか一マイクロもわからない。早く本来の君が帰ってくる事を切実に願うよ。

「うむ。やはり結論はそこに収束するというわけじゃな……ボクは木春蛍じゃっ!」

 うわ、じじい言葉とボクっ娘は混ぜると危険だな。


「僕は、俺とかはちょっと……恥ずかしいかな」

 スザクなら別に俺でもいいと思うけど。

「兄ちゃんは小生が似合うと思う」

「似合わないよ! どっから出たのそれ!?」

 小生は、阿保孔弌である。今後お見知りおきを……。

 あれ、意外とかっこいいんじゃない?


「いや、孔弌君はもっとなよなよした感じだろ……。う~ん、愚生とかわたくしとか?」

 何、前者のその言葉!? 聞いたこともないよ。

「いいと思ったんだけどねぇ」

 いや、明らかに似合わないよね?


「ふむ、孔弌、孔弌……。意表をついてミーなんてどうじゃ?」

「ごめんなさい、絶対嫌です。断固拒否です」

 今時そんな一人称使うやつ漫画の世界にだっていないだろ。

「そうか、わしはいいと思うんじゃがのぅ」

 意外と欧米贔屓なんですね。

「いや、わしは和風贔屓じゃが」

「なら、もっと和風な一人称を出してくださいよ!」

 いや、ほんとに。

「わちきなどどうじゃ?」

 わちき……?


「なんか女っぽいね」

「はは、そりゃそうだよ孔弌君。わちきっていう一人称は遊女達が使っていた一人称だからね!」

 遊女……女の遊び人か。僕はやっぱり女僧侶が好きなんだけど。

「遊女というのは、遊郭で客をとる女の事だよ」

 遊郭というと、なんだ、昔やった侍ゲームでなんかそういうのがあった気がする。


「しかし懐かしいな。ありんす詞……廓詞や里詞ともいうけど、ありんすなんて最近は聞かないからなぁ」

「吉原、島原、新町、丸山。色町は何かと事件が絶えないから楽しかったのぅ」

「直接は行ったことないけど、そういえば僕も色々な噂を聞いたよ」

 あぁ、二人とも思い出話モードに入っちゃったよ。


「私は、孔弌は今のままでいいと思うのだが」

「……ボクもそう思う」

 アルテとテンちゃん。さりげなく話を盛り上げてそれはないだろ。特に話題ブレイカーのアルテ。

「ていうか、いつの間にか論点が僕の一人称についてになってない?」

 そもそも何なのこの会議? グダグダにも程がある。

 とりあえず冷しゃぶ食べながら日々の疲れでも癒そうよ。


「おろしのタレはあるかい?」

「冷蔵庫にあるから自分でとってきて……」

 自分でこの話題振っといて、飽きたらもうどうでもいいのかよ。

 あと僕は、冷しゃぶはごまドレッシングしか認めないぞ。

「わちきもごまがいっち好きでありんす。ぬしさんとは気が合うみたいでありんすね。ど、どうだ可愛いか?」

 アルテ、何だか君ははじめて会った時に比べると大分ぶっ壊れたね。


「じょ、冗談だ……。忘れてくれ……」

 顔を赤くして呟く。恥ずかしいなら言わなきゃいいだろ……。

「格子女郎、いやアルテなら太夫になれるやもしれぬな……」

 そんな品定めはどうでもいいからね。どうやら蛍さんも最近壊れ気味のようだ。

「わしは元からこんなものじゃが?」

 余計ダメじゃん。





「ここからが山場じゃのぅ」

「……これがテレビゲーム、なるほど」

「あぁ、人の娯楽も進んでいるんだな」

 夕飯が済んだあとスザクがゲームを教えてほしいって言ってきたから、ついでにテンちゃんにもゲームの事を教えてあげようと思ったんだけど

「またも見事に全員集合しているのはなぜなんだ……」

 せまいよ、やっぱりひとつの部屋にこれだけが集まるとせまいよ。

 せっかく居間にでかいテレビあるんだからそっち集まりなよ。


「しかし懐かしいなぁ、このゲーム。ボクも昔やったものだよ」

 へぇ、神でもゲームとかするんだ……。

 ていうかもう何でもありだな……この世界の神とか妖怪って。


「まぁ僕がやったのはこれより前のPC○ンジン版だったけど」

「むしろ余計コアだよ! 神として大丈夫なの!?」

 嫌な神様だよ、ほんと……。

「あ、ちなみに言っておくけど……」

 ん、まだリュウは何かあるのか。


「犯人はヤ○」

 みんなでリュウをぼこぼこにした。

「はい、こっちのゲームも推理ものだから、気を取り直してこれはじめてみなよ」

 カセットの山から某芸能人が探偵のゲームを取り出す。

「ありがと、兄ちゃん!」

 まったくリュウのやつめ……。

 あのセリフ、僕が言おうと思ってたのに!


 それからしばらくは対戦ゲームとかをみんなでやった。

 部屋の隅でボロ雑巾のようになっている、かつてリュウだったものは終始一度も動かなかった。

 あ、いや、たまにピクピク痙攣してたから多分死んではいないのかな。

 まぁこのメンバーの総攻撃を受けて生きているあたり流石神だなリュウ。

「絶対……神だと思ってないでしょ……」

 喋った、まだ意識があるのかこの野郎。


「とりあえず、ここで寝られると困るから、誰かこれ部屋に持って行って」

 邪魔な神様だなぁ……全く。もしかして厄病神?

 ちなみにリュウはそのあとスタッフが美味しく……じゃなくて、蛍さんが引きずって(階段も)一階に持って行った。


「兄ちゃん、もう十時だよ!」

 蛍さんとリュウが部屋から出て一時間たったぐらいの時にスザクがそんなことを言い出した。

「うん、そろそろ十時だけど、それがどうかしたの?」

 別にうちは十時消灯とかじゃないから、どうでもいいと思うんだけど。

「今日は十時からテレビが」

 あぁ、見たいテレビがあるのか。君もこの三日間で随分現代に順応したねぇ。





 とりあえずゲームならともかく、テレビをこの小狭い部屋で見るのは流石にあれなので下に降りることにした。

 やっとあの大型テレビの真の力をフルに生かせる機会がきたわけだな。

 きたきたきたきた、きたぁぁああ!!!

 と、無駄に心の中でテンションをあげてみる。

「……孔弌、変な顔してるけど大丈夫?」

 むなしくなった…………。


「ん、ゲームはもうよいのか?」

 居間に行くと蛍さんが一人でソファに座って何やら尻尾をいじっていた。尻尾が多いと手入れが大変そうだなぁ。

「スザクが見たい番組があるらしくて、それなら下の大きいほうのテレビで見ようってことになって」

 状況を説明する。

「ふむ、ではわしも暇をしておったから一緒に見ようかの」

「そういえば蛍さん、リュウは?」

「部屋じゃ」

 部屋まで持って行ってあげたのか、やさしいね。

 僕なら階段から突き落としてそのままにしておくのに。


「あ、これだこれ」

 チャンネルをいじってたスザクがどうやらお目当ての番組を発見したようだ。

 ていうか、妖怪とかが機械慣れしてるのってどうも微妙な心境だな。

「『東方のスパイ』……また意味のわからないタイトルだね」

 何やら洋画みたいだけど、主役は日本人なんだ。

「確か昨日のドラマの途中でCMをやっておったのぅ」

 あぁ、そういえば流れてたかなぁ。

「うん、その時になんか気になっちゃって」


 と、それぞれが視聴ポジションにつこうとしたところで

「はいストップ、天ちゃん。どうして人の膝の上に座ろうとするのかな」

「……特等席」

「特等席も何も今まで座らせてあげたことないよね?」

 僕の記憶では多分ないはずだ。うん、ない。

 昨日も普通に隣に座ってテレビ見てたし。


「公園で遊んでた時」

 座らせたっけ……?

 ん~、そういえばそんなこともあったような。

「ロリコン孔弌じゃのぅ……わしも用心せねば」

「蛍さん、失礼なことボソっと呟かないでね」

 笑顔で注意する僕。あとロリとか自分で言わないほうがいいよ。

 しかもロリコンなんて言葉使うんだ……。蛍さんなら幼女偏愛とかって言い回しをしそうだけど。


「わー、わー、もう始まるよ」

 スザク、周りのやり取りに少しはツッコんでよ。

 子供っぽいとはいえ、君はこの中ではかなりまともなほうなんだから。


「…………」

「アルテ、ちょっと狭いんだけど……。どうしてそんなに詰めてくるの」

 ビッグサイズソファーなんだからもっとぜいたくに使おうよ。

「はい、天ちゃんも諦めてこっちに座っておとなしく見ててね」

「む~」

 とりあえず事態は収拾したぞ……。ようやくテレビに集中できる。


 ちなみにその映画の内容はこんなかんじだった。

 主人公は子供の頃外国の軍に拾われた日本出身の人。

 そのまま軍人の教育をされて大人になった主人公が敵の基地に隠密潜入する、そんなかんじ。

 ちなみにその主人公、たまにエセ忍術みたいなのを使うのが面白い。いや、まぁ制作側はまじめだと思うけど。


「何をしている、そこは袈裟に薙ぎ払うところだろう」

「……だめ、やられる」

「わしならここは逃げたのぅ」

 意外と熱く実況解説を交わす女の子三人組。

「ていうか潜入任務で戦闘になるって状況がダメだろどう考えても……」

 隠密潜入任務じゃなかったのかよ……。


 そのまま、物語は進んでいき、途中で敵側の捕虜になったり、敵の女幹部と恋に落ちたりと、それなりに視聴者をハラハラさせる展開がいくつも続き、ようやくエンディングに辿り着いた。

 ちなみにこの映画突っ込みどころ満載過ぎていちいち解説してたら僕が大変。

「兄ちゃん、僕スパイになるよ」

 感化されるのはやっ!


「立派なスパイになるんじゃぞ、孔弌」

「いや、僕は別にならないから……」

 残念ながらそんな進路希望はないし、別に軍隊に拾われるようなこともないと思う

「コールサインはバカ1、バカ2とかそんな感じじゃな」

「流石にそれは上官に対して殺意抱きそう」

「贅沢な奴じゃな。ならば、ポチ一号、ポチ二号などどうじゃ」

 うわ、五十歩百歩だよ。


「孔弌はもしボクが捕まっても、あんな風に助けてくれる?」

「まぁ、行くと思うけど……一体何に捕まるんですか天ちゃんは」

 僕の疑問にアルテが

「警察……とかではないのか?」

 何するのテンちゃん!?


「いいなぁ、僕も警察署に忍びこんでみたいなぁ」

「なんで警察署限定なの。スザクはいったいどういうスパイを目指してるの!?」

 それから暫くの間映画の感想をみんなで喋って、そろそろ夜も更けてきたから、寝るということになって解散になった。


 そんなわけで、僕も部屋に戻ってベッドに転がる。

 目覚ましの確認もして

「寝るか!」

 やけに威勢良くそう言って目を閉じた。





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