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魔法は思考で使う。  作者: ひなぶり
一章

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6話 異世界生活


「買い物してかねぇの?」


「……マジ?」


俺は異世界での初めての買い物に、好奇心が爆発する。


「首の分でヴェインから金もらってるしな。手伝ってくれたし、50エル使っていいぞ」


「ヨッシャア!」


「じゃあ俺は今日の飯とか買ってくるから、好きにしててくれ。買い終わったら街の入り口にいてくれ」


「了解です。ラグナ様!」


そう言うと、俺はラグナと別れて市場を回り始めた。


正直、全部気になる。


目に入るものが、何もかも知らないものばかりだ。


だが、絞らないといけない。


何を買うか迷っていると、気になるものが視界に映った。


『魔石』魔力結晶 一つ10エル


そう値札のようなものに表記されている。


10エルは…日本円で500円程度だろうか。


魔力は確か、図鑑には目に見えない粒子と書いてあった。


それが結晶化したら見えるものなのだろうか。


(そもそもどうやって結晶化しているんだ?)


気になることが多いので、いくつか買いたい。


しかし、他のものも買いたいので一つにしておこう。


俺は、屋台の中にいるおばさんに話しかけた。


「すいません、これください」


「これかい? 一つ10エルね」


ラグナからもらった袋の中から金を取り出していると、店主らしきおばさんが話しかけてきた。


「あんた、外の人だろう? 聞いたことない言葉だが、どこの出身だい?」


(翻訳魔法があると言っても発音か何かに違いが出るのか?)


「……ん~、結構遠くですね」


とりあいず適当に濁しておく、あながち嘘でもないので大丈夫なはずだ。


「なら、コイツの使い方も分からんだろう。教えようか?」


見た目に反して、強面店主のおばさんは親切に聞いてくれた。


「ぜひぜひ、お願いします!」


「なんでもいい、ものを出す魔法は使えるかい?」


「はい、水が出せます!」


「なら、それを触りながら水をだしてご覧。面白いよ」


「はい、わかりました! ありがとうございます!」


そう言って10エルを渡し、俺は再び市場を歩き出した。


(魔石かぁ。どうなるんだろうなぁ。帰ってから試そう)


何が起こるのかは分からない。


でも、試せると思うと楽しみで仕方がない。


またしばらく歩いていると、今度は別のものが目に留まった。


『大樹の杖』大樹の枝から作った杖。魔力の伝達がよい。30エル


(魔力の伝達がよい?)


手元で無くても杖の先で魔法が使えたりするのだろうか。


他にも副次的な効果があるかもしれない。


「すいません、これください!」


「ん? あぁ、これ?」


店主は怪訝な顔で俺を観察する。


そして、しばらくして言った。


「え~とね……100エルね」


「ん? いやいや、30エルですよね?」


「あぁ、ごめんごめん。見間違えてた。30エルね」


俺は30エルを渡し、杖を受け取って屋台を離れた。


(多分、あいつ、俺が外の人だと思って騙そうとしてたな)


しかし、文字程度なら集中すれば読める。


あまり舐めないでほしい。


しかし、次からは気をつけておこう。


これで俺の財産の残りは10エル。


もう大きな買い物はできないので、屋台の商品を眺めながら街の入り口へ向かう。


気になるものはいくつもあるが、また今度にしよう。


入り口に向かうと、ラグナが大量の袋を担いで待っていた。


「いっぱい買ったなぁ」


「ヒナタの日用品と、二日分くらいの食材だな」


「マジか。色々買ってもらってすまん」


「いいよ、いいよ。買い物も慣れないだろうし」


「相変わらずいいやつだな」


「それはその通り。それより、ヒナタは何買った?」


「杖と魔石かな」


「ハハッ、やっぱり買うと思ってた」


予想通りと言わんばかりにラグナは笑った。


「そりゃ、魔法は面白いですからねぇ」


「魔法を試すのもいいけど、家から少し離れたところでやれよ?」


「それもそうだな。風呂付近なら鎮火とかもできるしいいかな?」


「うん。それでいいと思う」


それから俺達はしばらく話しながら歩いた。


そして巨大樹の縁の廊下を歩き、家のドアを開けた。


なんだかもう、実家のような気さえしてくる。


二人でエルじぃに帰りの報告をする。


「ただいま」


「エルじぃ! 帰ったぞ」


「おかえり。ヒナタ大丈夫じゃったか?」


「全然大丈夫でした。むしろ楽しかったです」


「そうか…ラグナが何かしてきたらいつでも言うんじゃよ?」


「何もしねぇよ」


ラグナが不満そうにエルハルトを見る。


「それじゃあ、昼ごはんにするからヒナタはラグナと座って待っとれ」


エルハルトはそれを無視して着席を促す。


「いや、料理過程見てみたいたいです」


異世界の料理方法が如何なものか拝見したい。


「そうかそうか、ならよいぞ」


エルハルトは微笑見ながら言った。


俺が何かに興味を持つことが嬉しいらしい。


「それでは、わが家の伝統料理を作っていく」


そう言うと、エルじぃはデカい卵を取り出した。


直径は、普通の卵3個分といったところか。


その卵の頭部分(あたまぶぶん)にに手を触れる。


「パカッ」


すると、触れた部分を中心に、卵が円形に割れた。


エルじぃは中身を半分ほど別の容器に移し、米やいくつかの調味料を入れる。


そして魔法で中身を混ぜ始めた。


(魔法料理面白いな)


この混ぜる魔法はミキサーと名付けよう。


ミキサーを終えると、エルじぃは卵を浮かせ、その下に火の玉を出現させた。


「ここから10分じゃ」


そう言うと、魔石に触れて念じ始める。

すると卵はそのまま浮かび、火の玉によって茹でられ続ける。


残った卵の中身は容器に移し、冷蔵庫のようなものに入れた。


普通のタンスのような見た目だが、中は冷えているらしい。 


「あとは、しばらく待ち時間じゃ」


エルじぃはそう言うと椅子に座り、本を読み始めた。


(できるまですることないかな…)


ふと、リビングを見る。


ラグナはストレッチをしている。


(待つのも暇だし、魔法の練習するか)


まずはラグナと話してた火魔法だ。


ワイバーンの炎のブレスを参考にして考える。


(燃えている原理はなんだ?)


何もない空間に火を出している以上、普通に考えれば燃料が必要なはずだ。


ひとまず、燃焼に必要そうなものを再現してみる。


(炭……木炭……石炭……)


それらをイメージしていく。


すると手のひらの上に、黒い粉が出現した。


今度はそれを着火させないといけない。


俺は炎の映像や、鉄を加熱したときに色が変化する様子をイメージした。


「ボッ!」


突然、黒い粉が小さな灯火をあげた。


「アッツ!」


しかし、手元で発火させてしまったので少々火傷を負った。


「大丈夫か?」


その様子を見ていたラグナが声をかけた。


「…うん大丈夫、ちょっと火傷しただけ。」


(浮かせておけばよかったのか?)


実験の失敗に少し落ち込む。


だが、ついでだ。


治癒も試してみよう。


火傷した手のひらを見つめる。


そして、普段の手をイメージする。


さらに、焼けた部分が取り除かれ、元の細胞が再生していく様子を具体的に思い浮かべる。


「……おっ?」


少しずつだが、治っている気がする。


赤みは残っているが、痛みは引いている。


時間をかければ、簡易的な治癒ならできるようだ。


「ガタッ」


エルじぃが立ち上がる。


どうやら10分経ったようだ。


エルじぃは火を消した。


そして棚から器を取り出す。


もちろん、手は使わない。


浮かせ、動かしながら、器を準備していく。


さらに器にご飯をよそっていく。


そして醤油らしきものを適量いれて、卵の中身を再度「ミキサー」した。


その後、浮いた卵の殻が一人でに傾き、器に中身が流れ込んでいく。


どうやら出来上がったらしい。


「……これは?」


「わが家伝統料理、ゆで卵混ぜごはんじゃぁ!」


エルハルトが大きな声で言い放った。


(意外とテンション高いな、このじぃさん)


こういうところがラグナに遺伝してるのかもしれない。


それにしても、この料理、見た目は少々微妙だが、美味しいのだろうか。


エルじぃは魔法でスプーンを取り出し、器とともにリビングの机まで運んだ。


そして3人とも席についた。


俺は手を合わせる。


「いただきます」


「昨日も思ったが、なんだそれ?」


ラグナが首を傾げている。


「現世での食事前の挨拶みたいなもんかな。食事とか、作ってくれた人への感謝とか、そういう意味があったと思う」


「へぇ」


すると。ラグナは真似をするように手を合わせた。


「いただきます」


俺は、ラグナのこういう素直なところはいいと思う。


それを見たエルじぃも、


「いただきます」


と言って食べ始めた。


(さてと、俺も味わおう)


スプーンで卵の混じったご飯を掬い、口に運ぶ。


「うまっ」


毎回、思わず声が出る。


(この世界の飯、うまくないか?)


(もしかすると、「美味しくなれ」って思ってるから魔法が作動してるのか?)


(だとしたら、シェフは味の想像が上手い人がなるのだろうか)


そんなことを考えながら食べ進めていく、


見た目は、固まった卵の白身と黄身が混ざっていて少々微妙だ。


だが、溶けた黄身が米をコーティングしていて、とても美味い。


(これなら俺も作れるかもしれない)


素材を聞いてみよう。


「これ、素材は何ですか?」


「米と、外のスズメの卵じゃな」


「どうやって卵とるんですか?」


「巣を作らないから、木の上に置いてあるやつをそのまま取ればよい」


「なるほど」


樹の高さがあるので、あまり卵を守らないのだろうか。


うちの世界のスズメとは違うのかもしれない。


(もしかすると、現世から異世界に来たスズメが魔法によって肥大化したのかもしれない)


(……俺もムキムキになるのだろうか)


くだらない考え事をしながら食べていると、いつの間にか無くなっていた。


俺は再度手を合わせる。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした」


ラグナもエルじぃも戸惑いながらも、俺の真似をしてくれている。


現世の文化の逆輸入は、少し嬉しい。


(なんでだろ)


俺はこの世界に本来いない人間で、

この世界に生きた証はなかった。


しかし、今は俺がいることをこの二人が思ってくれる。


それが無性に嬉しいと感じるのだろうか。


そんなことを考えながら、食器を洗って片付けた。


「さてと、」


食事を終えたら、したいことは決まっている。


俺は頬を緩ませながら、カバンから杖と魔石を取り出した。


「実験開始だ!」


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