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魔法は思考で使う。  作者: ひなぶり
2章

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28話 魔族との邂逅2

「おい、ヒナタ。朝だぞ。」


俺はヒナタの身体を揺さぶる。


ヒナタは少しして、面倒くさそうに目を開けた。


少し周りを見た後、再度決意を固めたようにヒナタは立ち上がった。


「今日は何するつもり?」


目を擦りながら、シエルがヒナタに聞く。


「今日は物資補給。それと……」


「街の散策だ。」


少し溜めて、俺の方を見てヒナタがいう。


「いいねぇ! 新しい街! 昨日はあんま見れなかったからな」


正直、新しい場所が気になって仕方なかった。


「……俺とシエルで買い物してくるから、街の散歩してていいよ」


「マジ? 行ってくる!」


ガシッ。


走り出した瞬間、ヒナタに肩を掴まれた。


「日が暮れる前にはこの宿屋に帰ってくること。いいな」


「了解!」


「気をつけてな」


(ヒナタは優しいな)


「ありがと! 行ってくる!」


俺は急いで準備をして、宿屋を後にした。


―――


生まれて始めての知らない町。


見たことの無い景色。


「ワクワクするなぁ!」


さて、どこに行こうか。


「…やっぱあれかな」


町も気になるが、それよりあのでかい木。


雲の上まで伸びている幹は凄まじい迫力だ。


俺は気づくと走り出していた。


―――


「思ったより遠かったな」


デカいから町から常に見えているので近い気がしていた。


俺はこの巨大な木を見上げた。


「登るか!」


大樹の下は、極太の根が地面から少し飛び出た様になっている。


少しといっても、軽い山くらいは高い。


「うぉぉぉおお!」


俺は雄叫びを上げながら、ツルツルとした幹を掴み、よじ登る。


しばらく、登ると遂に幹の麓が見えてきた。


「ハァハァ…到着!」


息を切らしながら登ってきた景色を振り返る。


「おぉ~」


町全体何なら、俺達が来た巨大樹の森の方まで見える。


しばらく景色を堪能していると、視界の端に何かが映った。


「ん?」


そちらを見ると、2人の男女が何やら話をしていた。


(カップルか? でも、こんなところで何を?)


周りには俺達以外には誰も居ない。強いて言うなら下の方に農家が居る程度だ。


「お前ら何してんの?」


俺はその2人に近づき、問いかけた。


「ッ!」


2人は俺の方に対して警戒するように身構えた。


「ちょっと待てよ、別に追い剥ぎとかじゃねぇよ。 ただの冒険者だよ」


俺は両手を上げてできるだけ友好そうに振る舞う。


しばらく俺の方を観察して…特に目をよく見てから2人は警戒を解いた。


「すまない、少し気が立っていたんだ」


男の方が俺に向かって頭を下げた。


「いや、いいよ。 いきなり声をかけた俺も悪かった」


「そうか…お前、名前は何と言う?」


俺は胸に親指を指し、自信を持って言う。


「ラグナだ!」


「…いい名だな。俺はエイドス、こっちはリュシアという」


エイドスの隣に並んだ女はペコリと頭を下げてきた。


「美人さんだなぁ」


思わず声が漏れた。


そこにいたのは、今まで見たことがないほど綺麗な女だった。


腰まで届く白銀の髪が、風に揺れている。

日の光を受けた髪は淡く輝き、白というより銀に近く見えた。


肌は透き通るように白い。

整った顔立ちに、薄い青色の瞳。

その瞳は俺を捕らえていた。


(まるで子供の頃見た人形みたいだな)


「そうだろ、そうだろ」


俺が見惚れていると、エイドスが自慢気に話しかけてきた。


「リュシアは俺が出会った中でも一番の美人だ」


「そうだな、俺もそう思う」


同意すると、自分のことのようにエイドスが喜ぶ。


最初は大人びた印象を受けたが、その様子をみてるとそうでもない気がしてきた。


そして、俺は気になっていた事を聞く。


「…あんたらはここで何をしてるんだ?」


「そうだな…」


エイドスの表情が変わった。


その表情はどこまで話していいかを、慎重に考えているように見えた。


「…強いて言うなら、ある人を探している」


「ある人?」


「俺達が探したい訳じゃないんだが、恩人に頼まれて探している」


「恩人?」


俺が問い掛けると、表情が少し歪んだ。


「…実は俺達はここから離れた村に居てな」


「うん」


「そこでリュシアは迫害を受けていたんだ…」


「迫害? なんで?」


「分からない…偽物だとか、狂ってる、とか心当たりのない罵倒をたくさん受けた。」


リュシアは辛そうに俯く。


「許せないな。でも何でだろ…」


「さぁ、嫉妬だったのか…俺には分からない」


「………」


「そして遂にはリュシアを魔女だ、と言って処刑することになってしまったんだ」


「魔女?」


「昔は、魔法を使って人を陥れる女をそう呼んでいたらしい」


「でも、リュシアは何もしてないんだろ?」


俺は覚えもないのに恨まれている自分、とリュシアを重ねていた。


「…はい、そうですね」


リュシアか始めて口を開いた。


驚くほど穏やかな、透き通った声だった。


「私はただ、エイドスと暮らしていただけだったのに…」


「そうだな…」


その出来事を嘆くリュシアを、エイドスは抱きしめ、頭を撫でて慰める。


「…2人は仲がいいんだな」


「あぁ、俺達は幼少期からずっと一緒にいた」


「そうか、どこで知りあったんだ?」


「…さぁ、昔のことで覚えていないな」


「ふぅん、そんなものか」


「そうだな。…そしてな、そこに救世主が現れたんだ」


「救世主?」


「あぁ、俺達にとっては間違いなく、救世主だった」


「その方はリュシアを迫害していた者に制裁を加えてくれたんだ」


「制裁?」


「そう、全員殺してくれたんだ」


「…気持ちは分かるが、流石にやり過ぎじゃないか」


「そうかもしれない」


「でも、助けてくれたのは事実で、今俺達が一緒に居るのはそのおかげだ」


「俺はその恩に報いたい」


「なるほどな、そしてその恩人にある人を探すよう頼まれたと…」


「そうだ。すまないが…恩人やある人に関しては教えられない」


「大丈夫大丈夫。俺もちょっと聞き過ぎた。」


「お前は素直な男だな」


「似たようなこと友達にも言われたよ。」


「そうか、多分いい友人なんだろう」


「…ところで、あなたは何をしてらしたんですか?」


丁寧な口調でリュシアが聞いてきた。


「ここに来たのは…そうだな、初めての知らない町ではしゃいじゃったのかもしれない」


「初めての町なんですか?」


「うん、俺も友達と大事な人を探しに旅をしてるんだ」


「そうですか、大事な方が見つかることを、私も切に願っています」


「…ありがとう」


「俺達はそろそろ、この街を出ないと行けない」


「そうか、元気でな」


短い時間だったが、こいつらがいい人だということは、よく分かった。


「お前も達者でな」


「どうか、ご武運を…」


俺は夕日に向かって消える2人に、しばらく手を振っていた。


そして気づいた。


「夕方!?」


ここから宿まで結構遠い。


(早く帰らないと怒られる…) 


俺は急いで宿に向かった。

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