18話 謎
「ヒナタ、シエルを連れて先に帰ってくれ」
「駄目だ」
俺は即座に否定した。
「なんでだ?! 今があいつをやるチャンスじゃないのか?!」
「それはその通りだ」
俺は一度、森の奥へ視線を向ける。
あの男は、まだ遠くにいる。
ワイバーンも、恐らくもういない。
確かに、今なら追える。
「でも、それは2人以上で行ける場合だ」
「俺一人で大丈夫だ!」
「あいつに前回負けただろ」
「あれから俺も強くなった」
「その期間で、あいつはワイバーンを連れてきた」
「……」
「あいつはワイバーンを操りながら、強力な魔法も使ってきた」
俺はラグナを真っ直ぐ見る。
「お前一人で、本当に勝てるのか?」
「……じゃあ、今以上のチャンスがあるのか?」
ラグナの言葉に、俺は黙った。
確かに。
ワイバーンは恐らく、もういない。
あれだけの群れを相手にする必要がない今なら、あいつを追うチャンスなのかもしれない。
さらに、エルじぃも近くにいる。
最悪の場合、戦ってもらえる可能性もある。
だからこそ――判断が難しい。
「あいつはシエルを置いていった」
俺は、足元に置かれた袋を見る。
(普通、人質なんて解放しないだろ)
わざわざ置いていった。
それが意味することは分からない。
「それが罠なのか、追われないようにするためなのかは判断できない」
「でも、今逃したらこれからも……」
ラグナは拳を握る。
シエルを助けた。
だから、もう誰も襲われないようにしたい。
そう思っているのだろう。
ラグナらしい。
とても良いと思う。
でも――今は、それを優先すべきではない。
「正直、追いかけた方がいいかもしれないのは分かってる」
「だったら……」
「でもな、一人も失うわけにはいかないんだよ」
ラグナの言葉を遮る。
「お前を失うくらいなら、今後襲われる可能性を残す方を俺は選ぶ」
「じゃあ俺は、もう襲われないようにしたい!」
「……」
真っ直ぐな目だった。
だからこそ、俺は言葉を選ぶ。
「それに、お前疲れてるだろ」
「なっ……」
「図星だろ?」
ラグナは一瞬、言葉を詰まらせた。
「ワイバーンに見つからないよう気を張りながら、しかもあれだけの距離、俺をおぶって走ったんだ」
「でも、まだ戦える」
「戦えるのは分かってる」
そこは疑っていない。
「でも、万全じゃない状態で勝てるイメージはあるのか?」
「……」
ラグナが黙る。
「魔法はイメージなんだろ?」
俺は自分の胸を指で軽く叩く。
「勝てる状況を想像できないまま、勝てるわけないだろ」
「……分かった。すまん」
「いや、謝らなくていい」
俺も自分の判断に確信があるわけじゃない。
「俺の判断が正しい確証もない」
「そうか……難しいな」
「儂は追うべきではないと思うとる」
エルじぃが静かに口を挟んだ。
「なんでですか?」
「もし、操る魔法がすぐに再使用できるのなら、残ったワイバーンを使ってくるかもしれぬ」
「そうですね……」
俺は森の奥を見る。
(何回でも使えるのか?)
もし、そうだとしたら。
ほか




