14.5閑話 再認識
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俺はベッドから起き上がった。
(ここは……)
周りには誰もいない。
どうやら、また気絶して運んでもらったらしい。
(あれ、勝てるのか?)
水吼は攻撃を防ぐのには役立った。
だが、ダメージはほとんどない。
白炎も少し効いた程度。
(勝ち目がない)
考える。
攻撃を防ぎながら、少しずつダメージを与える。
それなら、いつかは勝てるかもしれない。
だが――。
(それだけじゃ駄目だ)
考え事をしていると、リビングから話し声が聞こえてきた。
どうやら、もう昼食を食べているらしい。
俺は部屋を出た。
「おっ、ヒナタ! おはよ」
「おはよ。どれくらい寝てた?」
「一時間そこらだから大丈夫。これ、ヒナタの飯」
ラグナが示した場所には、揚げ物が置いてある。
腹も減っている。
とりあえず食べてから考えよう。
「いただきます」
「ヒナタ、今日の戦い方はとても良かったぞ」
「ありがとうございます。でも、勝てる気がしません」
「修行は、二人で儂に勝てるようになるまで続けるつもりじゃ」
「じゃあ、明日はどんな修行をするんですか?」
「二人で、儂に勝つ算段を考えるんじゃ」
「二人で?」
「そうじゃ。明日は二人で修行してもらう」
「やった! 殴られる回数が減ったぜ!」
ラグナが喜ぶ。
「もっと殴るから安心せぇ」
「……」
ラグナの顔が固まった。
「今日、ずっと殴られてたもんな」
さすがに疲れるだろう。
「そういえば、俺が気絶した後はどうなったんですか?」
「ヒナタが寝てしまった後は、ラグナとの試合じゃった」
「どうでした?」
「動きは良くなった。反射速度も上がっておる」
「だろ?」
ラグナが得意げになる。
「じゃが、攻撃が単調じゃ」
「……」
ラグナの顔から笑みが消えた。
「一つの攻撃が防がれた時、その次に繋げられておらん」
「なるほど」
確かに、俺とは違う。
俺は考えすぎる。
ラグナは考える前に身体が動く。
「ごちそうさまでした」
(早めに食べて、明日に向けて考えよう)
まずは風呂だ。
「ラグナ、風呂行こ」
「うん」
いつもより返事に元気がない。
ラグナはラグナなりに、考えているらしい。
俺達は風呂へ向かった。
「「とうっ!」」
「「ザパァァァン!」」
二人同時に湯船へ飛び込む。
「あぁ~、疲れたぜぇ」
ラグナが珍しく弱音を吐いた。
「ずっと殴られてたもんな」
「マジでいてぇ、あれ」
「分かる」
少しの間、二人とも黙っていた。
やがて、ラグナが口を開く。
「明日、どうやって勝つ?」
「……根性?」
「ヒナタが根性とか言っちゃったら、もうおしまいだろ!」
「だって、勝ち目ないもんなぁ」
俺は天井を見る。
(どうやったら勝てるのか……)
今日、俺は全力を出した。
それでも勝てなかった。
これから急激に強くなれるとも思えない。
「努力というより、工夫をしないとな」
「工夫?」
「足りないところを、作戦とか考えで補うんだよ」
「考えかぁ……ムズいなぁ」
「まず、足りないところを言い合ってみるか」
「どんと来い」
「ラグナは、イレギュラーに弱い」
「つまり何だ?」
「考えてた手を防がれたら、そこで止まるだろ?」
「確かに……」
これはラグナの弱点だ。
だが、逆に言えば――。
(そこはラグナの長所でもある)
ラグナは持ち前の身体能力で一気に距離を詰める。
懐に入れば、一撃で仕留める。
普通の相手なら、それで十分だ。
「じゃあ、次は俺からいいか?」
「厳しく来い」
「まずだな……ヒナタは――」
ラグナが俺を見る。
「身体を使ってない」
「詳しく」
「つまり、身体で防御も回避も攻撃もしてないよな?」
「……」
言われてみれば、その通りだった。
魔法を色々な距離から撃つ。
走る。
それだけだ。
「身体も使えたら、めっちゃ強くなると思うぞ」
「そうだな。明日やってみよう」
「ところで、ラグナ」
「なんだ?」
「必殺技……作らないか?」
「必殺技?! なんだそれ?!」
やっぱり食いついた。
「本によると、魔法は技名を付けて、行動や魔法と連動させて反復練習すると、発動時間を短縮できるらしい」
「……難しいな。つまりなんだ?」
説明するのも面倒だ。
「かっこいいし、強くなる」
「いいな、それ!」
「じゃあ明日、何個か技を考えるか」
「分かった!」
「俺は、身体を使った方法を模索するわ」
「了解!」
「そろそろ出よう」
俺は自分の身体を拭いた。
その後、ラグナの髪も拭いてから家に戻った。
「風呂上がりました」
「お上がりぃ」
「ヒナタ、ラグナ。今日は疲れているだろう。早めに休みなさい」
「分かりました」
「分かった!」
―――
歯を磨き、寝る準備をしていると、ラグナが話しかけてきた。
「なぁ、ヒナタ」
「どうした?」
「聞いていいかな?」
「内容が分かんないと判断できないな」
「じゃあ言うんだけどさ……」
ラグナが少し黙る。
「ぶっちゃけ、こっち来てから、どう?」
(こっちに来てから……か)
思えば、色々なことがあった。
異世界に来て。
死にかけて。
助けられて。
食事をして。
狩りをして。
魔法を覚えて。
襲われて。
そして――。
「俺にはお前が必要だ!」
そう言って、今ここにいる。
「……少なくとも、充実はしてるかな」
「良かった。しんどかったりしないか?」
「しんどいし、楽しいとも一概には言えないけど……」
俺はラグナを見る。
「お前は、一緒に頑張ってくれるんだろ?」
「あぁ、もちろんだ」
「なら、二人で頑張ろう」
「そうだな」
「クチュクチュ……ペッ」
口を濯ぐ。
そして、もう一度考える。
(絶対に見つける)
親友も。
ラグナの両親も。
そのためには――。
(強くならなくては)
俺は決意を固め、自室のベッドに寝転んだ。
(明日は勝つ)
そう考えたところで、意識が落ちた。




