Episode 4 〈怠惰〉のレオン 2048824
「僕が直々に殺すんだから、名前ぐらい覚えて逝けよ。ニンゲン!」彼、いや。レオンは確かにそういった。体育館のステージに涅槃像のような姿勢で寝そべったままだ。もちろん学校に布団はないので体育館の床に直で、である。
だが彼はもちろん攻撃しないわけではない。春央を、春央たちを殺す余裕があるはずだ。
何をしてくるかわからない状況で警戒しているとレオンは詠唱の単語を発した。
「分身創造」。
その言葉をきっかけになにもない体育館のいたるところから泥のようなものが湧き出てくる。そしてその泥は形を作り始めてやがて人のような形になる。その泥人間はこちらに向かってくる。
すぐ近くにいた泥人間の心臓を試しに一度ナイフで刺してみる。すると通常の腐人同様灰のようになって消える。
春央は公安製ナイフを、千秋は20式5.56mm小銃という日本の自衛隊が使用している最高性能といわれたライフルを手に泥人間の心臓をめがけて攻撃し続ける。
当然体育館を埋め尽くす様な量がいるわけなのでどれだけ倒してもきりがない。
そうやって戦っている間にもレオンは時々ため息をつきながら詠唱をする。
「クッソ、こんなんじゃいつまでたっても死なねぇ。しょうがねぇな。」そういったちあきはすばやく撤退する。その動きはすさまじいスピードだった。まるで今までいくつもの視線を逃げ延びたかのような凄まじく慣れた勢いで。
取り残された春央はナイフを持って戦い続ける。逃げてしまうのはいいが千秋みたいに逃げ切れる可能性は低い。
もし逃げるのに失敗した場合自分が死ぬだけじゃない。ワクチンが盗まれたらそれを研究して対策を行う可能性だってあるしどうとでも腐人側は対策の手段ができる。それに、夏斗を助け出すという旅の目標も達成できなくなる。
「あれは…⁉」
遠くからだからはっきりとは見えないが間違いない。
レオンが最初からつけていた深緑の面は色が薄くなっていて今は薄い黄緑にまで薄くなってしまっている。
これが白まで行けばもう泥人間は作れないのではないだろうか。もしその仮説が正しければ詠唱の度にため息を吐いていた意味も理解できる。
このまま押し切れば確実にあいつを倒すことができる…いや違う。彼が使えるのは分身だけではないかもしれない。
そう考えているとステージからダァァァン‼と銃声が鳴り響く。
泥人間は全員溶けるように消え、ステージには限り無く白に近い薄い黄緑の面が落ちていた。さらに20式5.56mm小銃を持った千秋が立っていた。




