Episode 20 〈十腐(ジップ)〉 204808281936
忍者のコスプレをした男はゆっくりとこちらへ歩みを進める。
どう考えてもあれは夏斗ではない。さすがにこんなタイミングでふざける奴でないことは分かる。
手甲鉤を両手に付け、背中には忍刀を背負っている。服装はド〇・キホーテで売ってそうな黒ずくめのコスプレ衣装だった。
彼は低い声で、「仮面を返せ。」と言って懐から取り出した苦無を3本同時に投げてくる。端に突き刺さったその苦無を回収して武器にしてやろうと拾おうとすると、
「重っ‼」と思わず声が出るほどだった。もちろん春央の筋力がなさすぎるわけではない。今の春央は分からないが、実は1本あたり30キロあるのだ。これを3本も同時に投げたのだ。つまり彼は最強の忍者モドキなわけだ。
そしてその後も忍者モドキは何本も苦無を投げ続けている。懐から無限に取り出しているのだ。
20本ほど避けたあたりで春央は叫んだ。「どうなってるんだぁぁぁぁぁ!」あの数の苦無を懐にしまっているわけがない。
なぜか忍者モドキは律義に質問に答えてくれた。
「実はこの衣装の下にルーン文字をたくさん刻んでいてね。空間収納という能力が使えてね。1000本の苦無を腐人王様から頂いていてね。」
「腐人王って誰だよ?」
「我々腐人を束ねる王でな。俺はあくまでその腐人王の10人の手下である〈十腐〉の一人だ。名前はないがおおむね忍と呼ばれてる。」
となぜか地味になれなれしい腐人の話を聞きながら、十腐て…あの朝の情報番組じゃないんだから。と考えていると春央の脳裏に番組の最後に出演者が全員で行うあのポーズがよぎる。そして思わず吹き出す。
「何が面白いんだ⁉」
「おい、おおむね(忍者モドキ)。確かに朝の情報番組をどれ見るかは完全に個人の好みだし、何なら見ないってやつもいるぐらいだ。でも〇IP!は知ってるだろ?あのZ〇P!だぜ?ZI〇!知らないは非国民だろ」
「いや俺国民でもなければ元地球人でもないし。腐敗星って星が出身だから。もともと腐人は元々種族として存在してたんだよ。そこから勢力拡大していろんな星を支配してたらここ見つけて、ここの制圧の最中。そこで派遣されたのが俺たち十腐。それから十腐とは無関係に〈屍〉とかいう日本の組織が出来上がったが、あれは完全に俺らの下位互換だよ。弱すぎる。」
「えっ?」
その話を聞いた春央は口をぽかーっと開けて呆然としていた。おおむねは〈屍〉を弱いといったのだ。
そしてその隙を見つけたおおむねは手甲鉤で春央の首を斬ろうとする。終わった。そう思った瞬間聞こえたのは、「炎剣!」という詠唱の単語だった。
そこには炎の剣を手に持った夏斗がおおむねの心臓を刺そうとしていたのだ。
そしてその時皆が気付くのであった。
春央の右腕から大量のルーンで書かれた術式が浮かび上がっているのだ。




