Episode EX6 調整Ⅲ 20470709
梅雨川悟は公安狩人のリーダーとして地位を手に入れたが、彼は今でも日々のパトロールに出向くことにしている。
部下には「総監はいいんじゃないスかね?」とか聞かれることもあるが総監だからこそ部下にいい手本を見せなければいけないのだと毎回それっぽいことを言っている。
というのは建前であって、実際のところは、ペアであり嫁である梅雨川瞳との巡回を40を過ぎた今も完全に楽しんでいるからである。「完全に楽しんでる」とかいうレベルでいいのだろうか。
というレベルで。公安警察時代にペアで行動するようになってから悟は瞳に告白したのだが、そこから結婚まで3年。お互い29歳で結婚。結婚11年目でいまだ子供もいないが仲だけは最初から右肩上がりでよくなっていくばかりで、独身、あるいは彼女いない系男子からは完璧に嫌われている。
そして今日も何気ない巡回のはずだった。
「今日も特に腐人はいないなぁ。」
「それがいいことなんだけどね。あなたと私がいちゃついてても見られることはないじゃない?」
さらりととんでもないことを言っている瞳だが、彼女も悟のことが好きなので、「瞳さんのように自分のことを大好きでいてくれる人がいい」と公安狩人内での理想の彼女像はかなりハードルが高くなっている。
「まぁそうだね。パトロールなのにイチャイチャできるのも結局腐人がいないからか。」
ヤバいのは瞳だけではなかった。
そんな何気なくはなかった巡回の雰囲気は一瞬で破壊された。
「炎刃!」「水刃!」と詠唱の単語が聞こえる。
悟も瞳もそれが魔法の起動を意味する単語であることも、どんな魔法かも一瞬は理解できなかった。
その単語を発した少年の目の前で家が燃え出した。しかし少し不自然な形で燃えているのだ。斜めに直線を描くような形で燃えていたのだ。そこにその線をなぞるように水がかかる。そうすると水がかかった部分から漏れて燃え広がった炎は家を包みこむようにすさまじい速さで広がる。
「水波動」と単語を発しながら少年は突如現れたサッカーボールほどの大きさの水の球を思い切り蹴った。
すると水が大きく広がり炎は消えていく。
それを呆然と見ていた瞳は少年が唱えた「風刃」という一言の魔法で文字通り首が飛んだ。その場に体だけが倒れこむ。
悟は少年に向かって剣を向けるが、彼の飛ばしてくる魔法を受け止めるのが精いっぱいだ。
そして彼は言った。「僕は宮崎夏斗。君は素質を感じる。記憶の矛盾を突かれたら敵討ちにでも来い。」
そう言って夏斗は懐から取り出した面をつけた後、瞳の遺体を抱えて去っていった。
来週から本編再開です




