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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第06話 異世界の中心で I と叫ぶ
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俺たちゃ、はみ出し野郎の無法者[アウトロー]!!

トラッシュボックスと名付けられた街に光り輝く摩天楼。

そこここに水晶でできた建築物がそびえ立ち、赤茶けた大地に影と反射した光を落とす。

材質を除けば、さながら地球の大都市みたいな光景だ。


通りには、革鎧やローブ姿の冒険者風の旅人、肌の黒い恰幅の良い商人達が、頭につば広の帽子かフードをかぶり歩いている。

混雑しているワケではない。

ざっと見ただけだと30人ほどだ。

ちなみにメインストリートである。

ちょっと少ない気もする。

でも、人以外にも、犬や猫といった小動物も見られ、先程までいた砂の海と比べるなら雲泥の差だ。

「うーん、確かに少ないねぇ~」

雲雀が心話で話しかけてくる。

さっきまで、暑い~だるい~って言っていたのが嘘みたいに元気になっている。



「あはは、もう慣れたのか暑く無いもん」

そう言った雲雀はまぶしそうに目を細める。


心なし気温も少し下がっているのかもしれない。

皮膚感覚の同調まで行っていない僕には判らない事だが。

それでも、水晶のビルによる光の反射はやっかいだ。

道を歩く人々が頭に何かを被っている事からも、それは窺える。


時間は昼頃。

もっと混雑していそうなもんなんだけど……。


(街の者は、殆どか休憩をしておる時間じゃな)

ヴラドからの説明が入る。

休憩?

ああ、昼ごはんを食べてるって事?

僕が心話で返すと意外な答えが帰ってきた。

(いや、ラパ・ヌイは基本的に1日2食じゃ。

 今は暑いので2時間の昼の休憩を取っておるんじゃな。

 まぁ、ここも夕方ぐらいから混み始めるじゃろ)




「さて、伊織、雲雀。

 ギルドへと案内(あない)しよう。

 妾の所属するギルドはテピト・オ・ヘヌアという名での。

 一応は業界2位のよろず揉め事請け負いのギルドじゃ」

「あれ?冒険者ギルドじゃないの?」


「冒険者というか冒険屋ギルドならあるのぅ。

 冒険屋は遺跡や異世界など未知の領域の探索、踏破を目的としたギルドじゃな。

 それ以外の依頼は断る事が多いのじゃ」

「そうなの?

 冒険屋って、ネジ食べるのが仕事じゃないの?」

「どこの奇術師じゃ、それは。

 多分、御主が言いたかった冒険者は、よろず揉め事請け負いの便利屋ギルドのメンバーの事じゃろぅ?」

「う~ん」

「傭兵、護衛、探索、捜索、行商、窃盗、暗殺、よろず依頼請け負います、何でもござれじゃ」

「暗殺までやるの?」

「依頼ならの」

「……無節操」ぼそ

「その通りじゃ、伊織。

 専門ギルドとの縄張り争いなぞしょっちゅうじゃしの」

「うわぁ……でも、だいたい今言った感じね。

 トラブルバスターとしての冒険者は」

「じゃろう?」



でもそれってギルドの意味無いんじゃないのかな……?

もともとギルドは同じ職種の者が集まり、品質の維持、価格の一定化を行い、商売の自由競争を否定し利権を独占する為に作られたものだ。


あ、でも……。

僕は疑問を一旦、棚に上げる。

僕はヴラドと知識共有し、この世界のギルドの成り立ちに着いて調査する。

地球の歴史と全く違う歴史を歩んでいるラパ・ヌイでは、言葉は同じでも地球のギルドとは全く違う意味合いがあるのかもしれない。


少なくとも地球においてギルドが成立したのは、ヨーロッパの中世から近世にかけてだ。

最も早いのが12世紀頃の商人ギルドによる交易独占だ。

今度はラパ・ヌイのギルドの歴史について調査すると、紀元前1世紀~紀元1世紀ぐらいには成立している。


ラパ・ヌイのギルドは地球のギルド史とは全く関係無さそうだ。

じゃあ、地球ではギルド以前に何らかの独占もしくは相互扶助に関する組織は何があるんだろう?


中国、宋の時代の行や作といっても10世紀か……日本の座や結もそれぐらいだし。

……確か、フリーメーソンの母体となった石工ギルドが古代ローマのコレギウムという組織だったっけ。

古代ローマ帝国の成立は、紀元前8世紀頃だから、充分コレギウムがラパ・ヌイのギルド制の母体になった可能性がある。



コレギウムでヴラドの知識を検索すると、あった。

最初の頃は、コレギウムと言っていたのだが、ギルドに関する法律が制定された事で、呼び名を全てギルドで統一する事になったらしい。


コレギウムの成立は、紀元前までさかのぼり、アレクサンドロス3世の反乱と密接に関っている。

アレクサンドロス3世の反乱の後、ムー帝国は滅亡したが、その折に反乱に加担もせず、中立をもって戦火を免れた土地があった。

ラパ・ヌイではエウロパ州という地域だが、地球で言うとヨーロッパだ。

その後、オルビドから来た人竜族[ドラゴノイド]とムー帝国の支配者10種族の生き残り、獣人[テリアントローペ]による恩賞とこれからの統治について会合が行われた。

この時にすんなりと決まらず、世界中で紛争が起こった。


特にエウロパ州は戦渦に巻き込まれず、その上、元・支配者層10種族の中でもムー帝国中央からは疎まれた者が多く流されて来ていたので、人口比では10氏族が多かった。

だから余計に獣人[テリアントローペ]に狙われるという危惧もあり、地方政府を中心に急ぎ軍団再編成、人竜族[ドラゴノイド]と獣人[テリアントローペ]の身分を10氏族と同等に扱う事などの政策を行っている。

その中で、政府主導ではなく民間での相互扶助、自衛の為の組織として起こったのがコレギウムだった。


で、時は流れて戦乱の中から現在の王家に当たる人物が頭角を現し、全土統一する。

その時に迅速な人材の育成、国の建て直しにエウロパ州の政策とコレギウムを手本としたのが、今のラパ・ヌイの基礎となっているみたいだ。

結果として、コレギウムは今で言うギルドと同じ状態になる。

自分達の属する職業から得られる利益を独占する特権集団として発達してしまい、文化の発展を著しく遅らせる結果となった。



さて閑話休題。

話を元に戻すと、やっぱりラパ・ヌイのギルドは地球における実際にあったギルドと同じ様なものだ。

ゲームに出て来るようなギルドかと思ったけど違った。




だとしたら、やっぱり便利屋ギルドは異質なギルドだ。

というか、ギルドとしてはおかしい。


言ってしまえば、ヴラドの所属する便利屋ギルドは全てのギルドに喧嘩を売っている、ギルド制度そのものを否定する矛盾したギルドだ。

だって、それぞれのギルドの支配する領分を侵しているんだから。

傭兵、戦士、商人、探索者、盗賊、暗殺者……なんでも依頼を受けるという事は、そういう事だ。

独占市場に対して、その利益を掠め取ろうとしている、いわば泥棒のようなギルド。

雲雀の言うトラブルバスターどころか、トラブルメイカーだ。




僕はヴラドに疑問を問う事にする。


ヴラド、便利屋ギルドって言うのh

(そうじゃ。言ったじゃろ。

 この世界では実力を見せるチャンスがあるならば、競って力を見せようとする、とな)

「あー!!判った!!」

雲雀が声をあげる。

(なんじゃ?)

「御主人様はぐちゃぐちゃとワケ判んない事、考えすぎ!!

 要はあれね!さすらいのヒーロー!」きゅぴーん

「「「?」」」

「うんうんうん、判った。

 私はやっぱり便利屋ギルドに入る!

 ギターとテンガロンハットも買わなくちゃ!」

「……何を言っておるんじゃ?御主は?」


いかん。

雲雀の暴走が激しい。

自称、なんでも世界一の女になるつもりだ。

怪傑キラットみたいな様式美の物語は、普通に考えて無理だと気づいてほしいんだけど……。


僕はヴラドに心話で、話しかける。


あー、ほっといていいよヴラド。

多分、家で見た大昔の特撮を思い出して、ごっこ遊びの感覚でやろうとしているんだろう……。

「ごっこ遊びゆーな!!」

(まぁ、手綱を握っておかねば、どこかに飛んでいきそうな勢いではあるのぅ)



「さて、いつまでも立ち話をしていても仕方あるまい……こっちじゃ」

ヴラドは2人を引き連れて歩き出しながら話す事にする。


大通りを少し外れたストリートを歩く。

ここでは幾分、日陰があった。

ビルが水晶の壁でなくなっている為だ。

材質はメインストリートのビルと同じく石英だが、上手く結晶化ができていない様で、白く濁った壁となっている。

その為、光が反射されづらくなっているのだ。





「とまぁ、そんな訳での。

 便利屋ギルドのメンバーは、無法者[アウトロー]として名前が売れておる」

ちょ、無法者[アウトロー]って……

「ギルドの中では、新しい部類に入るのぅ。

 じゃが、業界2位は伊達ではなくての。

 優秀な者が揃っておる」


「無法者[アウトロー]なのに業界2位なの?」

「そうじゃ」

「良くそんな所に依頼する人がいるのね?」

「無法者[アウトロー]じゃからの」

「?」


「……手段を選ばずに任務達成」

周りを警戒していた伊織が話に参加する。


「……あー、そういう事かぁ。

 結構、力づくな所もあるんだ」

「違う。力は最後。

 その前にありとあらゆる手段を講じる」

「そーなの?」

「伊織の言うとおりじゃ。

 力を振るう前に、最低限の周辺事情の情報収集を行い、力以外の解決策を模索しておくのじゃ」

「そーなんだ。

 いおりん、冴えてるぅ~」

「力を振るうと、後が無い……敗北は死。

 命と言うチップを賭ける以上、必ず勝てる状況を作り出しておく」


「要はアレね?

 “ヤるなら勝て!”でしょ?」

「ん」

「しかし伊織は、良く便利屋の仕事を理解しておったのぅ」

「……企業忍者の仕事も同じ」

「む、そうであったか」

「あー、そっかぁ。

 負けたら死亡だもんね」





「そー言えば……話は変わるけど、白い砂が無くなったよね?」

靴から砂を出しながら、雲雀が誰に言う事なくつぶやく。


大地は赤茶けた土がむき出しになっており、それが本来の大地である事を語っている。



ああ、そういう事なのかな?

「なにが?」

ああ、うん。

白い砂についてだけど……

多分、建築用の素材だからじゃないかな?

「素材~?って砂を何に使うのよ?

 おかしいじゃん」

あ、いや、だから目の前の水晶とか、玉髄とか、それ以下の……

「何で砂が宝石になるのよ?」


ああ、うん。

この白い砂は、水晶の元となる石英って鉱物の成れの果てなんだよ。

で、この街では、目の前のビルを建てる時に、その成れの果てを集めて圧縮して結晶化しているんだ。

「ほうほう、そっかぁ」


「じゃあ、あの白い砂持って帰って圧縮すれば大金持ちなの?」

いや、それは無理。

魔法が使えません。

それに人工物は天然物と違ってお安いです。


「くぅぅ……」




「雲雀……御主、少し口を閉じた方が良いのではないかの?」

「え?」

「ん」こくこく


「どーゆー意味よ?」


「いや、言葉どおりじゃ。

 少し口をつぐんだ方が良いと言ったのじゃ」


「むか。喧嘩売ってる?」


どうしたんだろう。

急に雰囲気が険悪に……。




はぁ、とヴラドは溜息。

「少し、ココに来てからの行動を振り返ってみるのじゃ」

「あによ」


「大通りから、ココに来るまでの間の事じゃ」

「ただ歩いていただけよ?

 何よ、文句あるの?」



ふぅ

「なんじゃな、雲雀。

 良いか?

 御主は端から見ていると、独り言をつぶやいて浮かれている危ない人じゃぞ?」

「え?」


「ん、口を閉じて話す」

「あ」

伊織とヴラドは僕と心話をしている時は、口を動かさずに思っている事だけを伝えてくるが、雲雀は口が一緒に動いてしまっている。

まぁ、何も無いのブツブツ言ったり、怒ったり笑ったりしていたら、そりゃあ、この暑さでやられたかと、思う人も出るだろう。


「心話で聞く事に慣れてきた所為もあるじゃろうな」

「あ、あはは……、気をつけるねぇ」


急に恥ずかしくなったのか、雲雀は辺りを見回す。

こっちを見てひそひそしているような人がいないか見る為だ。



結果は、周りから凝視されている。

「う、う……」



「あ、あんな所に子犬がっ!

 かわい~~!!」


「こ、こら雲雀っ!」

雲雀はことさらに大きな声で説明的に話すとその場から駆け出す。

急いで、ヴラドと伊織も後を追う。



雲雀は勘違いしていたみたいだけど、凝視されていたのは、独り言が原因ではない。

雲雀、伊織、ヴラド、3人が三者三様に目立つ格好だし、物珍しさや目聡い男の好奇の視線もある。

いや、好奇の視線ならまだ良い。

明らかに値踏みするような視線だって混じっていた。



現在、僕は伊織と視覚共有しているが、伊織の凄い所は、すでに要注意人物をチェックしているという所。

インプラント【義眼】の力で、何人かが視界内に入るとAR(拡張現実)上で警告表示が出る。

この警告が出る人物は、大通りからココに来るまでに、伊織が要注意人物としてチェックした人達だ。

確かに怪しい動きをしている。

数人のグループみたいだが、明らかに伊織や雲雀を狙った尾行をしている。

しかし稚拙な尾行から、プロではなくチンピラとして伊織は登録したみたいだけど……

だが、尾行をしているチンピラの危険度は“辛”となっている。

えぇっと……つらい?

なんでだろう?


(違う。時雨、十干式)

じっかん?


……


あ、ああ!

そういう事か。

甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸という中国の数えだ。

この場合は、危険度は甲が一番高く、癸が最も低いという事か。

チンピラ達の危険度は3。

(魔法は厄介、チンピラの方が数が多い、ココは彼らのホーム。

 以上の理由により、決定された危険度)

へぇ……。





今、伊織たちが居る場所は、路地裏へと続く道の入り口部分だ。

表通りの水晶製の建築物と違い、ここら辺の街並は、若干濁った汚い色だ。

赤や紫、黄色と色取り取りなのは合いも変わらずだが、透明度が無い分、狭い部分はそれなりに影もできている。

両側の建築物は、3階建ての白く濁った色をしている。

陽の光はココまで届いていない。


目の前にある狭い道は、幅1m程で、誰かが落書きしたのか青いペンキがべっとりと両側の壁に塗りつけられている。




そんな場所で雲雀は子犬を抱き上げ、ワシャワシャしている。

「きゃー!かわい~ッ!!」


子犬はきゃうんきゃうんと、とても迷惑そうに雲雀の手から逃げようとしているのだが、それを意にも介さず撫で回し続ける。

そういえば大きさは違えど、ドラコニーにもやっていたなぁ。


「君はどこの子かなぁ?」

わしゃわしゃ。

「首輪が無いところ見ると野良かなッ!?」

きゃうんきゃうん

「逃げない逃げない、おねぇさんと良い事しましょ~ね~」

わしゃわしゃ。

「ほーらほーら」

きゃうんきゃうん

「あら、君、男の子だったんだ~」

わしゃわしゃ。

「よーし特別サービスだ!

 しゃっちょさん、べりグーね!!」

きゃうんきゃうん



「何をやっておるんじゃ。

 いい加減、放さんか。

 嫌がっておるじゃろう……」

流石にヴラドが雲雀を止めに入る。


「ヴラド!私、この子、飼う!」

「ダメじゃ」



「―――!!」

その時だった。


伊織と視覚同調している僕は、伊織が何かに焦ったかのように、路地裏を凝視したのを知る。

路地裏の奥に、陰に潜むように、何かが居る。




「そうです、止めてやってくれやせんかねぇ……」

路地裏の奥から声が聞こえた。


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