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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第06話 異世界の中心で I と叫ぶ
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どしたのワサワサッ?広義なベストフレンド!


白い砂塵の舞う中を、3人の美少女が横一列に歩く。

左から順に

革の胸当てにケープを纏い、右手に槍を持った鬢髪の幼女。

白いエプロンに黒を基調とした衣服を着た、胸の大きな娘。

黒い水兵服に、風変わりな片手剣の長身黒髪の乙女。


言わずもがな、ヴラド、雲雀、伊織の3人だ。


場所は異世界ラパ・ヌイの首都アレキサンドリア外郭部、メインストリートへと続く道。

かれこれ20分ほど歩いているが、未だ背後には高く高く駐輪場がそびえ立っている。

道の両端には街路樹の様に、マングローブみたいな樹が等間隔に植えられている。

ん?

マングローブ?

でもアレは干潟や塩性湿地に生息する植物だ。

周りが水辺でないから違和感を覚えたのだが、地表に顔を出した特徴的な、のたうち絡まる根っこはマングローブ特有のモノだ。

もちろん別種の可能性だってあるけど。


んー。

でも、まぁ、港町だからなぁ。

気にしないでおこう。

異世界なんだし。



再び視覚を、伊織と同調させる。



アレキサンドリア近郊は、港町だというのに内陸部のギザと同じ様な白い砂が延々と続く風景が広がっている。

辺り一帯が、すでに砂漠化しているのだ。

砂漠化という意味でなら、地球のアレクサンドリアと比べても、ラパ・ヌイの砂漠化は深刻な状態だ。

礫[レグ]や岩[ハマダ]ではなく、砂海[エルグ]と呼ばれる白い砂による侵食。


地球のサハラ砂漠では、この砂海[エルグ]はそんなに多くは無い。

サハラ砂漠全体でも、確か20%にも満たないはずだった。

ましてやアレキサンドリアは地中海に面した港町だ。

それなりに雨も降る。

いや、それよりも前に、この辺りはナイル川の恩恵を受けていて、砂漠化も鈍ってると思うんだけど……。


それなのにラパ・ヌイの首都であるこの街は、すでに街中にまで砂海[エルグ]による侵食が始まっている。


……。



原因を探る為に、ヴラドの知識からサルページしていると、いくつかあったが主原因と思われるものがあった。


ダムを作ったらしいです。

エジプトはナイルの賜物という言葉があるが、そのナイル川の支川、白ナイル川と青ナイル川の合わさる場所ハルツームに、浮遊城に使うような岩塊をドボン!

それでナイル川の流れを変えちゃったって……紅海の方に……。

うわぁ、もったいない、肥沃な土が……。


そもそもそんな事やったら、必要な水資源の確保だってできないだろうに……

何故そこまでしてこの街を放棄せず、未だにココを首都としているんだろう。

もっと住みやすい街がありそうなモノなんだけどな。


愛着とか歴史とかだろうか?



(あーいやいや、そういったわけでは無いぞぇ?)

ヴラドからの心話。


「?」

じゃ、何だろう。

(住み心地が良いからじゃろうな)


そう言ってヴラドは真上を見上げる。

「妾と同調するのじゃ」

そういったヴラドは、感知魔法【ディティクトインヴィジブル】を使う。

「今、妾の目は、光を操る事で幻覚を見せる魔法を解除しておる」

「「?」」

「見るが良い」



僕もヴラドと視覚共有する。


おお。


「……」ごくっ

「ふぇー。さっすが、ヴらえもん」

伊織と雲雀も空を見上げて絶句している。


「なんじゃ、雲雀。

 初日に襲い掛かって来たのが、嘘の様な変わり身じゃな」

「あはは、それは御免って。

 だって魔法って言ったら、悪魔に贄を捧げて契約する邪法じゃない」

「ニューエルサレムではそうかもしれんがのぅ……」ふぅ




僕達が見上げた空。

そこには蒼穹の中、いくつもの岩塊が大空高く浮遊していた。

浮遊城の比ではない程の巨大な岩塊が、幾つも、幾つも。



街だ。


直感で判った。

大空高くに浮かぶ岩塊、あれこそがアレキサンドリアの街だ。



(御名答じゃ。

 あれこそが世界の中心地。

 政治、経済、学問の総本山にして市民の憩いの街アレキサンドリアじゃ)


「ふぇ~、気づかなかった」

「遠方からでは視認は不可能。

 光学迷彩されている……?」

「そうじゃ。

 ある程度近づかねば、下からでは判らん様に成っておる。

 まぁ隠しておるのではなく、日照権の問題なんじゃがな」

雲雀が天空の街に気づけなかった理由についてヴラドに質問というか確認を取った。


地球の特殊能力【写真記憶】を擬似的に再現したものなのだろうが伊織には、インプラント【義眼】で視認した物を脳内処理する際に、聴覚と連動させて動画として最大3日間保持するプロテーゼ【映像記憶】という能力があるらしい。

要するに動画撮影能力だ。

それを使ってココに来るまでの道程を再確認したら、ある時から頭上の風景に歪みみたいな物が判明したので、光学迷彩と判断したんだろう。

先程、ヴラドが日照権と言っていたので、光学迷彩は意図しての事では無いだろうが、光の屈折した結果として下からだと見えないという効果があったというだけの事か。


ちなみに、伊織を監視するという五十鈴さんの当初の予定では、今のプロテーゼ【映像記憶】が僕の体内に仕掛けられる予定だったわけだ。

その為、僕の眼鏡にも似たような装置は搭載されている。

映像のみ最大24時間分の保存だけど。



閑話休題。




んー。

(どしたのワサワサッ?)

変な事を言いだした雲雀に、僕は浮遊した町ときたら次に来るのはボーイミーツガールと答える。

ほら、この手の話の相場だと少女が落ちt


「ちっが~う!!」

へ?


「まず最初に“なんでもナーミン?”を唱えなさい!」

雲雀の教育的指導が入りました。

僕の知らないネタ振りされても……。

ラパ・ヌイに来てテンションの上下が激しいなぁ。


「テンション高いのぅ、御主……」

ヴラドも少し閉口気味だ。


「いつもの事……」

うわ、会って間もない伊織にまで言われてる。


(で、お主様、話の続きは?)

あ、うん。

浮遊した岩塊の話の次には、ボーイミーツガールがあるんじゃないかなぁって思ったんだよ。

お約束って言うの?

だけど、その前の設定的に天上は楽園だけど、反対に地上ってスラムとか暗黒街とか、天上のゴミ捨て場とか……っていう話が結構あってね。

まぁ綺麗な天上と、汚い地上みたいな……二面性を現しているんだけど……。

もしかして、そっちもあるのかなぁってね。


「むむ、貧民街かや。

 そこまで酷くは無いが、言い得て妙ではあるのぅ」

「「?」」

「特にゴミ捨て場とか……

 実はの、今から行く街の名が、トラッシュボックスというのじゃ」

「トラッシュボックスぅ?

 そのまんまじゃない」

「ん」


うわぁ、ゴミ箱かぁ。

これじゃあますます……

(エデンの少年みたいな感じね?)

他には……っと雲雀は思い出しながら

「あ、デス・ゲイトの第1部でもいいかな?」

似たような設定のコミックやアニメを色々と思い出しているらしい。


まぁ、そうだね。

他にもユートピア物には必ずついてくるね。

さっきの二面性の話は。


僕が雲雀に心話で話していると

(時雨)

伊織が心を覗いてたらしく心話してくる。


ん、伊織?なに?

(先程言っていた題名の漫画はまだ見ていない。

 帰還後、貸し出し希望)

うん、いいよ。


(それから、これ以上のボーイミーツガールは容認できない。

 義姉妹は3人。

 それ以上は五虎大将軍で)

はい?


「伊織、良い事言ったっ!!」

雲雀が歓声を上げる。


「いや、待つのじゃ。

 五虎大将軍じゃと、ハーレムは、まだ残り3人は大丈夫という意味になってしまうじゃろ?」

「あ、そうか」

えぇと……。

ちょっと待って、3人とも。


僕は3人に現状を理解してもらうべく、話しかける。


ボーイミーツガールは良いんだけど、そこに僕は居ないんだよ?

だから、少女が落下してきてもガールミーツガールだってば。


「あ!!じゃあ、イケメンが振ってくるんだ!!」


「「……」」

……。


「どしたのワサワサッ?」

「ふぅ、イケメンなぞ御免こうむるのじゃ」

「……」

「ん?なんじゃ、伊織。

 難しい顔をしておるが、なんぞあったのかや?」

「知恵熱ぅ~似合わないよ?いおりん」


い、いおりん?

「そ、似合うでしょ?」


あー、うん。


「時雨」

ん?

「……五虎大将軍について意見具申。

 残り3人は時雨のクローンで、各々が好きな様に遺伝子をカスタマイズ……」

「あ、それ良い!!私、欲しいッ!!

 流石いおりん、私が考えつかない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれる!あこがれるゥ!」

「え?うぇえ?

 ……あ、ありがとぅ」

褒められ慣れてないのか、伊織が顔を真っ赤にして、御礼を述べる。


「じゃ、じゃあ、後で時雨の遺伝子を抜き取りに……」


あ、その話は却下で。


「「「ええーっ!」」」

あう。

ヴラドまで……。


後から出てきた自分自身のクローンにNTRされるなんて嫌です。

“誰かに負けるのは良い。けど、自分には負けられない―――!”

英霊と戦った人からの有り難い御言葉は僕の心に息づいています、はい。


皆、後でおしおきだ。

晩御飯抜きだ。

くそぅ。


あ、でも、その前に伊織は買い物に行かないと。

つきあうからね。

(ん?良いのか?)

なにが?

(お仕置き。皆が待ち望んでいる)

どんだけエムいんだ……

じゃあ、ヴラドと雲雀の2人は放置プレイで。

「ちょ、まt」

「ええーっ!?」

(ん、判った。

 デートの契約。速やかなる履行を願う。

 履行されなかった場合は、報復を行うがいかに?)

あう。

怖い、怖いよ!






「ところでさ、私たち飛べないんだけど、どうやってあそこまで上るの?」

伊織が疑問を口にする。

「いや、あそこには行かんぞ?

 用があるのはこの先、地上じゃ」


「あれ?でも、王様を退治すれば、地球侵略は諦めるんでしょ?

 じゃあ、御主人様が神殺しになって、王様退治すれば良いんじゃない?」

「いや、今日は偵察じゃと話をしたはずじゃが……」


雲雀の鳥頭……。


「上手い」

伊織に褒められた。

「これは雲雀という小鳥と、鳥の記憶力を例えt」

説明はいーからっ!





「……」

伊織が再び空を見上げた。

「質問。空を飛べないと、あそこには住めない?」

「そうじゃ。

 それだけの実力と金とコネが必要じゃ」


「飛行以外に行く方法は?」

「いくつかあるが、そのうちに語ろうぞ。

 今はまずギルド支部に向かうのが先じゃ。

 大抵の情報はそこで入手できるしの」


「ギルドッ!?」

「ん?なんじゃ雲雀」

「私も登録する!

 それで冒険者する!!」

「何を言いだすやと思えば……はぁ」


でも、冒険者だけに流れている噂とかもあるから、雲雀の意見もあながち間違ってはいないんじゃ?

溜息を漏らすヴラドに、雲雀の擁護をする。

「まぁ、それはそうじゃがの……」


「冒険者?」

言葉のニュアンスに引っかかったのか、伊織が雲雀に尋ねる。


「荒事、揉め事の解決屋、トラブルバスターと言われ、勇者と人気を二分するファンタジー世界のカリスマ職よ!」

胸を張り答える雲雀。


「そうなのか?

 だが時雨の知識では、鼠だと……」

ネズミ?

「何で鼠なんじゃ?」


冒険者、ネズミってもしかして……あの小説か?

後でアニメ化してるんだよ~って雲雀に見せられたトラウマアニメの原作か?

アレに出て来るイタチが怖いんだ。


「あー、それね。

 間違いではないけど、それは偏った知識よ、いおりん」


「そうなのか……鼠ではないのか。

 皆で鼠小僧をするのだとばかり思っていた……」


多分、伊織が行っているのは先程の鼠を主人公とした大昔のアニメの話だと思うけど……

なんだろう、話が360度回転してあまり間違って無いような気がする。

冒険者と泥棒なんて紙一重だし。


「あー、冒険者の名誉の為にも一言言うとじゃ、お主様の知識も少し偏見じゃぞ?」

あははは。

でも歴史が無いって話なのに、皇國代理天に鼠小僧の話ってあったんだ。


「ん。知っているのは、そんなに居ない。

 企業忍者の誉れ、鼠小僧次郎吉。

 織田信長の治世において、完全と反逆した稀代の義賊」

へぇ。

……ん?






さて、僕がつらつらと考え事をしていても時は過ぎていく。

ヴラド、雲雀、伊織の3人に、陽はサンサンと照りつける。

熱せられた白い砂は容赦なく体力を削り、風は湿気を帯びるも、熱気を伴って更なる灼熱地獄へと誘う。


「あ~ぢぃ~い」

舌を出して雲雀が言う。

そんなメイドさんスタイルで来るから……。


「そうじゃな」

涼しい顔してヴラド。


「心頭滅却すれば陽もまた涼し……」

無表情の中にもきらりと光る汗を僕は見逃さないぞ。



3人は、歩き続けている。

ヴラド、雲雀、伊織の3人以外は、歩いている者を見かけない。


あれこれとやっているうちに30分以上も経っていた。

相変わらず要らん子な僕は、ヴラドの居城である悪魔城でお留守番だ。

(お主様!!その名は違うぞぇ!?

 ラピュタじゃ!!

 誰が何と言おうとラピュタじゃ!)


はいはい。

ラピュタね、うん、空に浮かんで無いのに大空の城ラピュタね。

(お主様とは、一度ゆるうりと話し合わねば成らぬ様じゃな……)怒怒怒


あはは。


流石に日中、照りつける太陽の中を歩いていれば、少しは口数も少なくなろうというものだが、それでも3人はタフだった。

多分、僕だったらバテてしまっていただろう。

僕は、基礎体力ですら彼女達に劣る。

いや、あえて自己弁護するなら、彼女達の基礎体力が地球人離れしているのだ。



彼女達の苦しみを少しでも判りたいと思って、特殊能力【ダメージ転写】を使おうと思ってけど、雲雀にこっぴどく叱られた後だったので止めた。


いや、残念残念。


「今回だけ特別にあげるわよ、この疲労……」

いえ、二日酔いだけで充分です。

「遠慮しない。

 私の疲労は御主人様のモノ」




留守番でヒマをしている僕は、ヴラドの知識からラパ・ヌイに関する地理、歴史、常識、作法など他分野に渡って学んでいる最中だ。

そこで判った事だが、それはラパ・ヌイが地球の歴史と全く違う歴史を歩んだ文明であるという事だ。

いや、正確には再確認したというべきか。

文化の大半は魔法を主軸におかれ発展している。

全てに魔法が関っていると考えて良い。

まさに魔法文明だ。






さて、それぞれの視線を利用して客観的にみんなの格好を見せてもらったけど、やっぱり目立つねぇ。


「まぁ、そうじゃのぅ」

「そうなの~?

 私は只のメイドさんよ~?

 お掃除、洗濯、お料理……♪」

「セーラー服は、この世界でもあるとヴラドの記憶に合った……何故、目立つ?」



ヴラド、雲雀、伊織、彼女達3人はラパ・ヌイの人には奇異に移る集団だ、間違いなく。

3人に目立つ要素となるものについて話していく事にする。


まずは服の縫製。

例えば、3人が来ている服の生地1つとっても、デキが良すぎる。

そりゃシルクとか王侯貴族が着る様な物には及ばないけど、少なくとも一般人が着るレベルのデキではない。

機械によって糸の張り間違い、弛みや綻ぶ事なく均一に造り、発色も鮮やかなのだから。


「そーなの?」

「まぁ、そうじゃの。

 ラパ・ヌイでは織機からして地球でいう古代の物を使っておるからの」


織機と聞いて雲雀が、昔話の鶴の恩返しとかで良く出て来る機織のシーンを浮かべたので、説明しておく。

あのギィー、カシャ、トントンってのは、中世じゃなくて近世のだからね?

だいたい15~16世紀ぐらいだと思ったけど……

「へぇ」

うん、確かなんかの本で読んだ気が……基本となる原型は結構古くからあるんだけどね。


「まぁ、どちらにせよ、魔法のおかげか、魔法の弊害か、様々な分野でラパ・ヌイは立ち遅れておるのじゃ」

「科学文明がとても残念なレベル……」

そりゃ、伊織のいた皇國代理天に比べればそーなるけどねぇ。


「完全自動[オートメーション]化はされておるんじゃがのぅ……」

「完全自動[オートメーション]化?

 それ、凄いじゃない!」

「うぅむ、地球のを知った今ではのぅ……」

「?」

「?」


「ある所に腕の良い機織り職人がおった」

「?」

「ん」

「じゃが、流行り病で死んだ」

「って話が終わってるよ!」

「ん」


「一家の大黒柱を失った家族は嘆き悲しんだが、幸いにして1人息子は魔法師として優秀じゃった」

雲雀と伊織もだんだんと話に聞き入り始めている。


「息子は父の亡骸を荼毘にふした後、残った遺骸に創造魔法【クリエイトスケルトン】を使い、優秀な機織り職人のスケルトンを作った。

 もちろん生前のスキルは関係ない無意味な物となっているがの」

「うん、それで?」

「ん」こくこく


「いや、それで話は終わりじゃ」

「は?」

「?」


「後はスケルトンに“布を作れ”と命令して、壊れるまで織機で布を作らせ続けただけじゃが……

 ふぅむ?

 スケルトンについて説明した方が良いかや?」



あー。

そういう事ね。

僕はこの世界の全自動[オートメーション]化について、説明する。


人間の代わりの労働力があって、単純な仕事なら任せる事ができる。

ただ、それだけの事。

以前、ヴラドがラパ・ヌイでは奴隷が要ないと言っていたけど、労働用の奴隷が要ないって意味だったんだ。

多分、名前は違うけど、剣奴、性奴に類する人はいるんじゃないかな?

この2つは単純な労働ではなくサービス、エンターティメントが関係する場合が多々あるから、スケルトンでは難しいだろうし。


む。

性奴かぁ……。

うぅ~ん。


今から向かう所、トラッシュボックスは名前からしてスラムっぽい響きだしなぁ。

大丈夫かなぁ。

どうしても、人さらいや物乞いに扮した物取りとか、強姦、恐喝、強盗、押し売り、スラムキング、バクシーシ、安いよフレンド、ヒャッハー!水だ、水だぁっ!!とかを想像してしまう。

うう。

大丈夫かなぁ、3人とも。


(あー、お主様?

 そんなに心配せんでも……)

「あれぇ?でも、ジョジョだとバクシーシって確かインドじゃ……」

(ん、インドだった)

「うむ?喜捨[バクシーシ]はインドではなく、イスラームの文化じゃぞ?」

「何でインドがイスラームなのよ?

 あそこはダンスとヒンズーでしょ?

 天空戦鬼・修羅人で覚えたもん」

雲雀、君のうまれる前の作品だよね、それって。


それに別にイスラームじゃないから、喜捨[バクシーシ]の文化が無いってわけじゃないし。

ヒンズーにマッチした文化だからね。

喜捨[バクシーシ]っていうのは、簡単に言うと“施しをさせてあげるよ”って文化だよ。


「うっわ~~~!上から目線ッ!!」

「契約として成り立たない……」

あー、御免。

コレは幾らなんでも言葉が少なすぎた。


えっとね、富める者は貧しき者に施して徳をつむって考えなんだよ。

「ナニソレ。得してないじゃん」

「契約になっていない。

 一方的な損失、腹切りモノ」

え~っと……。


イスラームには義務としての喜捨[ザカート]や、自発的に行う喜捨[サダカ]っていう形があるんだ。

で、この2つと比べて、チップや賄賂的な色合いが濃いのがさっきの喜捨[バクシーシ]で……

うーん、やっぱり“施させてあげるよ”が一番、的確な表現だなぁ……。


「がめついというか厚顔無恥ね!」

「盗人猛々しい」

「まぁ理解せよとは言わんが、そういう文化なんじゃ。

 尊重ぐらいはするべきじゃ」

「「ええー」」


「バクシーシと言われたからと言って、何かくれてやる必要もあるまい?」

「あー、そっか」

「ん」


「まぁ、安心するが良い。

 ラパ・ヌイはイスラームの教えは存在せんから、喜捨[バクシーシ]はないぞぇ?

 妾もあの考え方は嫌悪しておるしのぅ」

君は一応ムスリムでしょうに……。


っていうか喜捨[バクシーシ]が心配なんじゃなくて、どっちかというとスラムキングとか強盗、物取りだってば!

3人とも、可愛い上に金持ちそうなんだから、犯罪者にしてみれば上玉なんだって。


「ふむん、そうであろうの」

「私が?金持ち?」

「う、うぇえ、か、可愛いぃ……」ポッ

三者三様のお返事有難うございます。


そうだね、例えば金持ちについてだけど……。

うーんと、地球の価格だと3人の着ている服の中で一番安いのは、ヴラドのトレーナーとジーンズだk


「なに!そうなのかや!?」

話の腰おらないでよ。


「ぐぬぬ、いつもと立場が逆じゃ」

「ち・な・み・に一番高価なのは、ワ・タ・シのメイド服で~す」

「下女風情の服がかや!?

 それはおかしいじゃろ!?

 色々と!」


まぁまぁヴラド、元々その服は僕が着ていた物なんだし、女物より男物の方が基本的には安いんだよ。

「むぅ、しかし、しかしじゃ……」


ヴラドの服を買った時だって、安い服を着ていたんだから、だいたい判るでしょう?

(まぁ、お主様はあまり服飾にはこだわらん様じゃしの……)


地球での値段は、事業規模と物流ネットワーク、受容と供給のバランスで成り立っている場合が多いから、仕方が無いんだよ。

(ぐぬぬ……)


で、その安いヴラドの服もさっき言った縫製の話で、この世界では高価に見えるんだ。




で、話を戻すけど3人が目立つ要素として、服の次に皆が持つ得物。

ヴラドの槍は素材がレア物だから、目利きが見ると直ぐにばれるよ。

伊織のワルサーやマチェット、雲雀の忍者刀は存在しない形や素材の物だから、珍品や遺失技術品[アーティファクト]として。

目利きの人が見なくても金になるかどうかは、その筋なら嗅覚で判るでしょ。



そして最後に、皆のまとう雰囲気。

美的感覚の違いから可愛いと思われない可能性はあるかもしれない。

黒髪は忌避されるっぽいしね。

でも、染みや荒れ、汚れの無い素肌に整えられた髪は、少なくとも身なりにお金を使う事のできる身分って事だから。

見る人が見れば、やっぱり鴨なわけで。


「言われてみると、そんな気がするにゃ~。

 綺麗、可愛い、賢い、私ッ!!」

「最後はありえんのぅ」

「ん」

「ムキーッ!」





「さて、そろそろじゃ」

「あによ?」

「ん……人の声がする」

「え?街まで、まだあんなに遠くよ!?」


「理由は上と同じじゃ」

そう言ってヴラドは歩いていく。

しかし、数歩も歩かぬうちに、陽炎のように姿が揺らめき消える。

「あー、そういう事かぁ」

「……」

雲雀と伊織も納得した様に歩き出す。



一瞬視界がぼやけるが、突如として視界が広がり、目の前には街が広がっていた。

いわゆるレンガ壁や西洋のゴシック建築やギリシャ建築を期待していた僕の想いは良い意味で裏切られた。


それはとても風変わりな街並で、日の光を浴びて、キラキラ光っている。

正直に言うとまぶしい。

辺り一面が、新雪に覆われた雪国の晴れの日みたいな感じ。

目が痛い。


あ、伊織の視界が少し暗くなった……自動で光量の調節を行うみたいだ。


目が慣れてくると、あたり一面は切り立った山か、断崖絶壁がそびえ立っているように見える。

しかし、それらはその様に見えるだけのビル群。


2階建て?

5階建て?

いや、ちょっと高すぎて……何階建てか判らん。


しかも材質は水晶……

石英で大半の建築物は作られている。

ガラスの様な物もあれば、紫や紅、黄色、緑といった色とりどりの水晶の摩天楼。

透明な建物の内部を窺うに、中は煉瓦やセメント、木材を使った2重構造になっているみたいだ。


石英が風化すると砂になるのだが、その石英は風化に強く硬い素材として知られている。

建築方法としては、最初に巨大な石英の塊を造って、砕いて切って削って、内装として煉瓦を使うといった感じか。


「凄ぉい……」

「……高額商品」


コレのどこがトラッシュなんだ?


(この建築物は、あくまでも生活の知恵が生んだ物じゃ。

 アレキサンドリア市民から見れば、住んでいる者がトラッシュという事じゃよ)

簡潔に吐き捨てるようにヴラドが答える。




「さて、伊織、雲雀。

 ギルドへと案内(あない)しよう。

 妾の所属するギルドはテピト・オ・ヘヌアという名での。

 一応は業界2位のよろず揉め事請け負いのギルドじゃ」


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