表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「地味で華がない」と宮廷錬金術師をクビにされたので、お隣の魔導帝国に亡命します!〜私が作った魔導具をすべて停止させたら、国の防衛線が崩壊したようですが、そんなの知りません〜  作者: 星海 零
2章:帝国の新生活&元婚約者のストーカー化編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/12

第9話:元婚約者のストーカー化と、帝国への宣戦布告


ガルディニア帝国の中央魔導工房。そこが、私の手によって便利グッズ量産工場と化してから数日。


「リーゼ様! この小型水流の洗い場くん三号の術式、水の循環効率が従来の三倍は超えています! ぜひ我が魔導研究所の教科書に……っ!」


「リーゼ様、こちらの薄肉切断製造機の魔法陣のコピー、ぜひ許可してください!」


最初は私の規格外なものづくりに、目を剥いていたエレーナをはじめとする帝国の魔導師たち。だけど、今や完全に私を魔導の女神と崇め始め、毎日目を輝かせて弟子入り志願するように工房へ詰めかけていた。


私はといえば、ジークのお膝の上でタルトを食べさせられる甘い罰(?)にも慣れつつ、最高の素材に囲まれて職人としての幸せを噛み締めている。


――だが、そんな平和な時間は、ひとつの報告書によって破られることになった。


ある時、工房にやってきたジークハルトの表情がいつになく険しくて、私は躊躇いつつ聞く。


「ジーク、何かあったのですか……?」


彼は私に気づくと、いつものように頭を優しく撫でてくれたけど、どこか呆れた様子で手にした報告書を、机に放り投げた。


「なんでもないよ、リーゼ。ただ、君を捨てたあの国の無能どもが、想像以上の馬鹿者だったというだけの話だ」


ジークが見せた情報部の報告書。そこに書かれていたのは、ラムーバ王国の第一王子レナードが起こした、正気とは思えない暴挙の数々だった。


◇◇◇


一方その頃、ラムーバ王国の王宮では――。


「あああもう、なぜ動かないんだこのゴミクズ共がぁぁぁっ!!」


レナード王子は、完全に半狂乱になっていた。


国境の結界は消滅し、毎日押し寄せる魔獣の群れ。騎士団の武器はチェルシーが魔力を注いだせいで内側からドロドロに溶け、ただの鉄くずと化している。


国内のインフラは完全に停止し、民衆の暴動寸前の怒りの声が王宮まで響いていた。


「レ、レナード様ぁ……私、もう魔力が空っぽですわ……頭が痛くて割れそうですの……」


床にへたり込み、涙と鼻水で顔を汚したチェルシーが縋り付くが、レナードはそれを乱暴に振り払った。


「うるさい! お前が『この国には私一人で充分ですわ』などと嘘をつくから、私はあの女を追い出したんだ! お前など聖女でもなんでもない、ただの無能な疫病神だっ!」


「ひっ……!? そんな、酷いです……っ!」


かつて溺愛していたチェルシーをゴミのように罵倒するレナード。しかし、責めたところで壊れた魔導具は元に戻らない。


さらに追い打ちをかけるように、帝国へ送った使者が「不敬罪で終身刑」になり、帝国からの魔導素材の輸出が永久停止されたという最悪の報が届いていた。


「このままでは……このままでは我が国は滅ぶ。私が王位を継ぐこともできなくなる……!」


焦りと無駄に高いプライドのせいで、まともな思考ができなくなったレナードは、急に動きを止めた。そして引きつった笑みを浮かべ、ギラついた目で立ち上がる。


「そうだ……リーゼだ。あいつは私に惚れていた。私の婚約者という肩書きが欲しくて、健気に地下室で働いていたんだ。帝国に無理やり拉致されて、脅されて無理に手柄を立てさせられているに違いない……!」


恐ろしいほどの現実逃避。周りが言葉を失うほどのおかしな言い分。それはあまりに、都合のいい脳内変換だった。


レナードは「ハハッ」と笑って、側近に指示を出す。


「おい! 今すぐ動かせる兵を集めろ! 聖騎士団の残党と、かき集められるだけの魔導師だ!」


「で、殿下!? 一体……何をされるおつもりですか?」


側近が震え声で尋ねる。レナードは胸を張り、当然とばかりに言い放った。


「帝国へ進軍する! 我が国の資産であり、私の愛する婚約者リーゼが拉致されたのだ! これは正当な『リーゼ奪還のための救出作戦』である! 帝国が引き渡しを拒むなら、戦争も辞さないと通達しろ!」


武器も結界も崩壊し、兵の士気も最低。そんな状態で、大陸最強の魔導帝国へ宣戦布告する。


まさに、破滅へ突き進む愚者のやらかしだった。


◇◇◇


「――というわけだ。ラムーバ王国は現在、君を『拉致された被害者』と主張し、身柄の引き渡しを求めて国境へ数千の兵を進めてきている」


帝国の工房で報告を聞いた私は、あんぐりと口を開けたまま固まってしまった。


「せ、宣戦布告……?! 私を奪還? え、正気ですか? 私は自分の意志で、円満……とは言いがたかったかもしれないけど、こちらに来たのに?」


「ああ、正気ではないな」


ジークはフッと冷たい笑みを浮かべ、私の腰を引き寄せた。その鋭く細められた翡翠の瞳には、他に対する容赦のない殺意すら宿っているように見えた。


けれど、私の額に口づける彼は、どこまでも優しい。


「フフッ……愛しいリーゼ。君の手を汚す必要は一切ないよ。ちょうど、我が国最新の魔導兵器を試したいと思っていたんだ。その実験場として、彼らには消え去ってもらおう。……ただ、その前に」


ジークは私の耳元に唇を寄せ、甘く囁く。


「彼らの目の前で、君がどれほど私に愛され、幸せに暮らしているかを見せつけてやろうと思うのだが……付き合ってくれるかい?」


その悪戯っ子のような顔に、私もつられて笑みを作る。


「ジーク……ええ、喜んで」


元婚約者のあまりの謎の執着っぷりに呆れつつも、私はジークハルトの腕の中で、今度こそ彼らを驚かせるための、新しい魔導具の設計図を描くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ