第23話 すり合わせ
また遅くなって大変申し訳ありません、今回は4人の認識のすり合わせ回です
「お前に兄は、本当にいるのか?」
そんな言葉とともに、ロキはアリアに指を指した。
「………」
「ここまで来て今更感はあるが、僕がお前らリュミエール家を警戒した最たる例の違和感だった事だ。これを知らなきゃ僕はお前らを本当の意味で信用はできない……で、どうなんだ?」
ロキは、まるで尋問するかのようにアリアを見つめてくる。ロキのその疑問に対するアリアの答えは……
「……あ……に……ってなんでしたっけ??」
「忘れんじゃねえよ!?」
おま、おま、自分で言ったこと忘れるとかっ。
なんの話か分からずキョトンとし始めたアリアに、珍しく、本当に珍しくロキは絶叫した。
「……ロキ」
「シヅキ!こいつ自分で言ったことを忘れてるんだが!!信じられるか!?」
「アリアに兄っていたんだっけ?」
「お前もかよ!?」
シヅキの発言に流石に衝撃を受けたロキは、遂に頭を抱え始めた。
「お前ら最初に出会って活動した要因を忘れるとかさあ!!」
――5分後
「はあ〜落ち着いてきた」
「ロキが乱心するの初めて見たよ」
「ロキさまって人間らしいところもあるのですね」
「ザマア」
「誰のせいだと思ってんだ、つーか執事はあとで覚えてろよ?」
ロキは自分に対してのあんまりにもあんまりな評価を聞きながら、乱暴に頭をかき、ため息をつきながら渋々一から説明をし始める。
「仕方ないからおさらいしてやるよ、いいか?そもそもなんで俺らはこんなことに巻き込まれてるのか覚えてるか?」
「えっと、確か……アリアさんの馬車が襲われてたんだよね?」
「『何』に襲われてた?」
「……御者……でしたね確か」
未だにピンと来ていない様子のシヅキとアリアが記憶を思い出して答える。
「で?アリアと執事がその御者を派遣したのは誰って言ってたっけ?」
「え?……え〜っと確か」
「「………………あ」」
シヅキが未だに考え込んでいるが、執事とアリアはようやくその『理由』を思い出した。次の瞬間、自分たちの失態を悟り冷や汗を垂らし始める。
「あ!!思い出した、確かアリアさんの兄がアリアさんを妬んで派遣したんだった!」
なるほどなるほど、そう言えばそうだった。
シヅキが納得して腕を組み頷き始める。そうしてたっぷり10秒間そうやっていた次の瞬間に、不意に絶叫する。
「!!ちょっと待って、アリアさんに『本当に兄はいるのか?』ってどういう事!?」
「遅いわ!!」
シヅキがそんな事を言った瞬間、ロキがシヅキの頭を引っ叩いた。
「……な、何も頭を引っ叩かなくてもいいじゃん」
「お前が思い出すのが遅いせいだろ。普通この護衛任務がどういう経緯で受けることになったのか覚えるのは当たり前だろ……まあ依頼した側も忘れてたのは流石に予想外だったが」
「――だが、これではっきりした。やっぱりお前には兄はいなかったんだな?」
「………はい」
ロキは真剣に見つめてくる。アリアも、もはや誤魔化すのは不可能だと理解したのか正座して姿勢を正した。
「……お嬢様いいのですか?」
「……グラン、ここまで来たら誤魔化すことはできません――何よりここまで協力してくれた御二方に、未だに真実を隠すなどと不誠実過ぎます」
「……分かっております。シヅキ殿には様々な恩があります……私もこの期に及んで止めることはしません」
「おい、今さらっと僕を除いただ――」
「ロキ待って、ちょっとは空気読んで」
ロキが執事に向かって意見しようとした瞬間に、シヅキがロキの口を塞ぐ。
「――ですがロキ様、その前に一つ聞いてよろしいですか?何故私に兄がいないと分かったのですか?」
「モゴモゴ……ぷは、何故も何もそもそも違和感だらけだっただろ」
「ちょっ痛い痛い痛い」
自分の口を塞いだシヅキの手をわざと捻じ曲げて無理矢理離させてロキはそんな事を言った。
「誰も兄の話を具体的にしない。屋敷にも痕跡がない。なのにお前だけは兄が黒幕だと断言する」
ロキは肩を竦めた。
「だから最初から違和感しかなかったんだよ」
「………」
「――まあ、ついさっきまでは『兄が存在してない可能性が高い』って認識してただけで確信はしてなかったんだけどさ」
「え?あれだけ自信満々に断言してたのに?」
ロキはあっさりと完全に見抜いていたわけではないと否定し思わずシヅキはさっきのくだりは何だったのかと言わんばかりに問いただす
「え?普通に引っ掛けだけど?僕は可能性あるってだけで、断言はしないよ?さっきの確信しているふりはあくまで、全部知ってる風を装って、反応引き出そうとしてただけだけど?」
「……つまり、ふっかけたってこと?」
「え?うん」
何の悪びれもなくあっさりとアリアを罠にかけようとしたと宣うロキにシヅキはジト目で見つめる
「ほら、僕って人から情報を抜き出す時って確信ついたり煽ったりして動揺させる派だからさ?僕の予定ではそれで何らかの反応をしたアリアを畳み掛けようとしたんだけど……僕も予想外な方法で見事に墓穴掘ったんだよねえ」
「………なんの弁明もしません」
「弁明しないんじゃなくてできないんだろ?」
「ロキ殿、塩を塗り込むスタイルは感心しませんよ?いや、あなたに感心できるところはありませんが」
「………」
ピン!!
「痛!?」
ロキは妖術で雹の大きさの氷を作って執事を狙って指で弾いてきた。見事に眉間に当たり、執事は頭をさすった。
「………本当にアリアさんに兄はいないの?僕らに嘘ついてたってこと?」
「……シヅキ、お前本当に気付いてなかったの?」
「……うっ」
「お前、何で僕がリュミエール家を警戒してたと思ってたんだ?」
「……い、いろいろあって後回しにしてそのまま忘れていたと言うか……」
ロキが呆れたようにシヅキを見つめるが、今はそれどころではないと思い直したのかアリアに視線を戻す。
「……まあ今はいいか――それでアリア?何で兄がいると嘘をついたのか、その理由を話してもらうよ?」
「……理由ですか……理由は」
アリアが難しそうにうつ向き、口ごもり始め、そして意を決したように顔を上げる。
「……何なんでしょうね?」
「ふざけてんの?」
「い、いえ誤解です!!」
アリアは首を傾げて疑問そうに『本当にその意図が分かっていない』かのごとく振る舞い始めた。
それを見たロキは一触即発の空気を纏い始め、それは茶化してるのか?と言わんばかりに問いただす。
「……正直に言うと今僕はお前を信用したのを後悔し始めてる。もうこいつを見捨てようかと思ってすらいる」
「ち、違うのです――」
「――その上で聞く、お前は一切ふざけていないんだよな?」
その言葉を聞いた瞬間、アリアは固まり息を呑んだ。何故ならその言葉を吐いたロキの顔がのっぺりとした無表情だったからだ。
――今目の前にいるこの人は、私が返答を誤れば今この場で本当に自分を見捨てる気である。
「……ふ、ふざけてる気は全くありません……強いて言うならリュミエール家の受け継がれてきた家訓……いえ伝統と言うべきものなのでしょう」
「……ほう?」
その言葉にロキが目を細めながら続きを促す。
「我が家には、私のような魔眼持ちが産まれたと確認されたら、それと同時に架空の兄を作るという不可思議な仕来りがあるのです……大々的に発表し、戸籍まで作るほど徹底して」
「………あ」
「そして何故か私が死にかけたならば、その架空の兄が殺そうとしてきたのだと発言しろと口を酸っぱく言われて来たんです」
「………なるほどね」
ロキがアリアの言葉を最後まで聞くと、そう納得したように呟きそっぽを向いた。
アリアはその反応でなんとか峠を越したのだとホッと息をついた。
「ああ、そう言えば言うの忘れたけど、お前の魔眼って実は魔眼じゃねえから」
――ホッとした直後に意味不明な爆弾を落とされた。
「「「は?」」」
あまりの意味不明さに今まで空気に徹して沈黙を貫いてた2人――シヅキと執事すら困惑して反応するほどには。
「いや、ロキ意味分かんないからね?どういう事?」
「はあ?そのまんまの意味だよ。アリアの魔眼は魔眼じゃないって事、何でお前らそんなに大袈裟な反応してんだ?」
「ロキ殿、あなた自分がどれだけとんでもない事言ってるか分かってらっしゃってるんですか?リュミエール家は代々一定して魔眼持ちが産まれる特性があり、リュミエール家の紋章も目を中心にして作られてるんですよ?」
「じゃあ紋章が間違ってるんだな。まあアリアは魔眼じゃねえってことは置いといて、重要な架空の兄に対する僕の考察を解説するぞ〜」
「「「置いと(かないでください)くなよ!?」」」
ロキが3人の反応をガン無視して話を進めようとし始め、思わず全員で突っ込んだ。
「ったく、このままじゃ話が進まねえな〜。仕方ないから説明してやるよ」
「……ねえ、これって僕らが悪いの?」
「いえシヅキ殿、どう考えても説明不足のロキ殿の不手際かと」
「あ、なんか説明する気なくなってきたな?もうこのまま架空の兄のほうに行くか?」
「待ってくださいロキさま!シヅキさまとグランの事は私がいくらでも謝るので、頼みますから説明してください!」
渋々説明しようとしてきたロキに、シヅキと執事はヒソヒソと陰口をし始めた。聞こえていたロキは機嫌が悪くなり、3人の都合を無視しようとし始める。
振り出しに戻りかねないと判断したアリアは、慌ててロキに二人の分を謝罪して事なきを得た。
――5分後
「いいか?まず本当の魔眼の基本的な概要から説明するぞ?」
「「……はい」」
「……お願いします」
陰口をした二人はあの後しっかりとアイアンクローされ、頭をさすって返事をしており、その様子を見ていたアリアも返事をする。
「まず魔眼ってのは、目視によって空気中の魔素に干渉する目の事を言うんだよ」
「……えっと、どういう事?」
「そのまんまの意味だよ。よく誤解されるけど魔眼ってのは、その目単体に様々な力が宿ってるってわけじゃないんだよ。むしろその逆、魔眼には様々な種類があるけど、所有してる能力もその性質も例外なく同じなんだよ。ただ使い方が違うだけだ」
「……はい?」
その説明に執事は言っていることの意味が分からず、思わず疑問符を上げる。
「私は魔術師ではないので魔術に対しての理解は浅いですが、どのような効果がある魔術――ことさらリュミエール家に関係がある魔眼に対してはある程度知っていると自負しております。その上で聞きますが」
執事はそこで一旦言葉を区切り、また話し始める。
「リュミエール家には感情を見る感情の魔眼しか現れたことはありませんが、魔眼の種類は幅広く、停止の魔眼や重力の魔眼、麻痺の魔眼なんてものもあると聞き及んでおります。その魔眼はそれぞれ全く別の効果をもたらすと言うのに、全てを同じ能力で同じ性質というのは少々無理があるのでは?」
「……質問を許可した覚えはないし、話を最後まで聞けってまた額に氷礫飛ばしたいところだが……まあいい。その質問には答えてやる」
ロキはサラリと物騒な事を言いながら渋々その質問に答える。
「最初に言っただろ?『魔眼ってのは目視によって空気中の魔素に干渉する目の事』って。もうちょい具体的に言うと、空気中の魔素を目視によって変質させ操作する目を魔眼と言うんだよ」
ロキはそうして言葉を一旦切って、少し考えた後に続ける。
「お前が出した魔眼で説明するなら、停止の魔眼は相手に付着してる空気中の魔素を一時的に停止することで相手ごとその場で固定して拘束してるってこと。重力の魔眼も麻痺の魔眼も根本的には同じで、空気中または相手に接触している魔素を一時的に重くしたり、毒性にして吸い込ませたりしてるんだよ」
「……な、なるほど」
ちゃんと理解できる納得できる説明に、執事は思わず感心する。
しかし次の瞬間、この会話の発端を思い出し慌てて声を上げる。
「そ、それとお嬢様は魔眼ではないという話とは何の関係があるのですか!!」
「ああ、それは……おいシヅキ」
「え、なに?」
「僕がアリアの魔眼は魔眼じゃないと確信したのは、『地下牢の結界内でアリアが本に感情の色で文字を作っている』という発言だ。そして魔眼は『魔素を変質させ操ることで効果をもたらす目の事だ』。この二つの事に違和感はないか?」
「え?え〜っと」
――――――――
『神獣といった霊素だけで肉体を構築された存在は、魔素が操れないし利用できない。むしろ拒絶してしまう。その力もまた然りというわけさ』
魔素が存在しない結界
=
魔素を拒絶している結界
=
神や神獣の力を使った結界
という公式が成り立つってわけ
――――――――
「……あれ?」
――おかしくないか?目視によって魔素を変質させて操ることで効果をもたらす物が魔眼ならば、何で『魔素が存在しない結界内で効果を発揮できたんだ?』
シヅキはその矛盾した事実に気づいた。
その様子を見たロキは畳み掛けるように説明を重ねる。
「……気づいたようだな。そして魔眼は胎児の時に『偶然に』目に魔素がこもって変質することで魔眼になる。つまり魔素が多いとこで産まれた子供に稀に発生するものだ。つまり本来一代限りの能力で『遺伝性というものはない』」
ロキのその言葉を聞いた執事は驚愕した顔をした。何故ならついさっき『リュミエール家は代々一定して魔眼持ちが産まれる特性を持つ』と言ったばかりなのだから。
「もちろん本来の感情の魔眼と言うものも、『目視によって相手の近くにある魔素を相手の意思に反応して魔眼の持ち主のみに色として見えるように変質し操る』と言う代物だ。つまり魔素がなくても効果をもたらし遺伝性があるアリアの感情を見る眼は、魔眼ではない別物の力っていうことなんだよ」
ロキがこれでわかったかと言いたげな顔で耳の穴をほじった。
そんなロキに動揺しながらもシヅキは質問する。
「……じゃ、じゃあアリアの感情を見る眼って……一体何なの?」
「……もうわかってるはずだぞ?お前も、お前らも『見たんだから』。感情を見る――感情を操る、もっと言えば『魂を操る』。そんな能力を持つ、魔素を経由しない神獣の能力を持った男が、アリアの祖先なんだからな」
「っつ―――!!」
この場にいる全員は、本当は知っていただが『知らないふり』をしていた。何故なら思い出したくない記憶だから、直視したくなかった。
――魂を操る白澤の血肉を食い、民衆を洗脳して国を救って英雄扱いされてしまったラグリス・リュミエール。
その悲劇の英雄が保有していた白澤の権能が、子孫のリュミエール家に未だに受け継がれていたのではないか?という可能性を、直視したくなかったのだ。
「……そう……だったのですか……薄々気づいていましたが、誇りに思っていた……我がリュミエール家は……やはり呪われた一族だったのですね……」
アリアはうつむいてそう呟いた。
「だ、大丈夫だよアリアさん!!」
「――シヅキさま?」
シヅキはうつむいていたアリアの両頬をつつかんであげ、至近距離で見つめる。
「ラグリス・リュミエールは確かに民を洗脳して自殺した。でも国を救いたかったのも本当なんだよ!その想いまで否定しなくていいんだよ!!ラグリスがそうしなきゃ実際に国はとっくに滅んでたんだから」
「――あ」
「アリアさんのお父さんは死んでしまったけど、何で死んだのかはわからないじゃん!もしかしたらアリアさんを守るためにリュミエール家の悲劇に立ち向かっていったのかもしれないじゃん!娘が父を信じなくちゃ誰が信じるのさ!!」
「つっ!?――」
「その眼だって、成り立ちが悲惨で呪われてるって言いたくなるのもわかるけど、その力を持ってるのはアリアさんなんだよ!!成り立ちはどうあれ、今持ってるアリアさんが誰かの為に使えば将来的に誰かの役に立つかもしれないじゃん」
シヅキは言葉を一旦区切り、そしてまた続ける。
「だから、だからさ――」
ラグリスの想いも、父の希望も、その眼も。
「ち、違うと思うんだよ」
「シヅキさま?」
「アリアさん自身の全部が呪いだったなんて、違うと思うんだよ!!」
「――」
シヅキのその言葉にアリアは、まるで目が覚めたようにハッとする。
「あ、あのシヅキさま……」
「うん、なに?」
「……か、かお……ち、近い……です……」
「うわあああ!!ご、ごめん!?」
アリアが顔を真っ赤にしてそう言った瞬間、シヅキは慌てて離れようとするが、勢い余ってつんのめってしまい、ドスンと尻餅をつく。
「くっくっく、最後までしまらねえなシヅキ」
「う、うっさいロキ」
「あ~アリア、シヅキに便乗するわけじゃないが、呪いと祝福ってのは本来同じものなんだぜ?あくまで張本人の受け取り方で変わるってだけだ」
「え、えっとロキどういう事?」
「まあ聞けシヅキ。つまり呪いだの祝福だのは、その人の分を超えた何かが偶々いい方向に行ったら祝福、悪い方向に行ってしまったら呪いって言われる。つまり過程はどうあれ結果でそういうのは決められるんだよ――例えその呪いの発端がどれだけ温かい感情であったとしてもな?」
「「つっ――」」
ロキの身に覚えしかないその言葉に、シヅキとアリアは固まる。
その様子を見たロキはそのまま続ける。
「誰かの願いが誰かを苦しめるし、誰かの祈りが誰かを貶めることだってあるんだ。言っただろ?呪いか祝福かの判断はあくまで結果で決められるんだよ。自身の願いで自身を苦しめることすらあるんだからな」
ラグリス・リュミエールが、英雄になりたい、国を救いたいという自身の純粋な願いと祈りに、ラグリス本人が最後まで苦しんで苛まれたかのように。
「ロキさま、本来に何を――」
「――けど逆に言えば」
ロキはそこで一旦言葉を区切り、その話を続ける。
「呪いだったものが祝福にもなる。力単体に意思というものは基本的にない。その眼の成り立ちは悍ましいってのは否定しないしできない。でもその眼が最終的に呪いになるのか祝福にできるのかは、どこまで言ってもその力を保有する持ち主次第でしかないんだよ」
「あ――」
シヅキの言葉とロキの言葉で、遂にアリアは決心がついたように頷いた。
「……ありがとうございます御二方。私はまた駄目になるところでした」
「別にいいよアリアさん」
「そうそう。また落ち込まれたらめんどくさいから補足してやったんだからさ?その精神のケアも報酬に入れるつもりだから」
「ちょっとロキ!?一言余計すぎるんだけど!?」
「ふ、ふふふ」
ロキとシヅキのそんなやり取りを見て、アリアは思わず笑ってしまう。
――その光景を見た執事が胸の中で呟いた。
(……こいつらなら、もしかしたら本当に『託せる』かもしれない)
我らの想いを、希望を、足掻きを。
(私達の苦しみが光を見るかもしれない……)
そう思った執事は、直ぐに行動に移した。
「お嬢様、シヅキ殿、ロキ殿」
自分の服に隠してあった手記を手に取る。
「――これはリュミエール家現当主にして、お嬢様のお父上である」
執事はロキ達に向かってその手記を差し出す。
「リュミエール・アレキサンダー様の『全て』を記した手記です――」
何かの歯車が回ったような音がした。
考察をすり合わせ、感情をすり合わせ、そして最後には手記という情報もすり合わせる。今回はタイトル通りすり合わせがテーマの回でした




