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第21話 無知の代償は齟齬と不信

今回はシヅキメインです



悲報 状況が悪化した


……全く持って笑えない状況に陥った。そんな状況で、四人は全く別の反応をする。


「やったね!状況が悪化したぜ!」


「だから笑えないって!?」


「………おええ」


「…………」


ロキは何故か悪ノリしたように笑い、シヅキはそんなロキにツッコミを入れる。執事は倒れ込みながら吐き気を押さえつけ、アリアは虚ろな目でどこか遠くを見ていた。


――カオスである


「まあやることは変わらないんだけどね? さっさと首飾り砕いて質屋に売らないとね。盛大に時間無駄にしちゃったから手早く済ませよっか」


「……アリアさんと執事さんは?」


「2人共放置で」


「ちょっと!?」


シヅキが絶叫するが、ロキはどこ吹く風だ。


「まあその前に――」


『氷よ、触れて根を張り、見えざる波となれ――反響を返し、探知せよ。』


《アイスレーダー》


ロキが突然詠唱を始める。


手のひらに氷を作ったそれを、何故かアリアと執事の服に触れて氷を張った。


「……何やってるの?」


「簡単に言うとマーキング」


「……は、はあ? 本当に簡単すぎない?」


「これ付けとけば相手の居場所が分かるし、自分が近くにいれば探知氷の持続時間が伸びるっていう機能もあるし」


――もちろん壊れてもわかるよ?


「そんな魔術もあるんだ……」


「まあ探知系の魔術は具体的なイメージしづらいから基本的に高等魔術だしなあ。シヅキと出会った初日にリュックの奥に付けたのと同じだね」


「はあ!? 初耳なんだけど!!」


「そりゃあ言ってなかったら当然でしょ? わざわざお酒を霧状に飲まして起きないように泥酔させたり、リュックに僕の匂いつかないように水を操って開けたんだから〜」


あの時、小雨降ってたからちょうどよかったし〜。


「朝なんか頭痛かったのそれ!? 確かにあの時の独特な匂いしたけど……そう言えばあの時バックの中の物ズレてたように見えたけど、気の所為じゃなかったのか……」


シヅキはあの時感じて不思議に思った違和感の答えを不意に出されて、猫の姿のまま頭を抱え始めた。


「そうそう、いろいろ仕込んだんだから。そのおかげで2日後にシヅキが僕から逃げたのをすぐに追跡できたんだよね」


ロキが軽い思い出話をするかのように最悪な事実を暴露した。


「……まあ、あの時のロキは多分僕の事を全然信用してなかったって今なら分かるけどさあ」


今思えば、あの時の僕がロキに関して知ってたことって、結局妖魔だってことと頭いいって事ぐらいだったから、意図的に情報操作してたんだろうし。


そう考えた途端、シヅキは一瞬キョトンとしたが、すぐにロキを疑うようにじとっと見始めた。


「………待って」


「どした?」


「ねえ、僕の居場所探知出来たのに、僕がやられるギリギリで助けに来たのって、もしかしてあの時ロキ物陰に隠れて助けるタイミング見計らってたんじゃ――」


「はい、その話終了。次いこ次」


(誤魔化したな……)


そんな会話をした後に、2人は金や宝石をゴナゴナに砕き袋に詰めて、優しそうな人に質屋の場所を聞いて質屋に突撃して袋を出して換金しようとした。


――が。


「え? これだけ?」


「にゃ、にゃん……」


チャラ男の姿をしたロキと、ロキの頭に乗ったシヅキ(猫)は宝石や金を砕いて質屋にきたが、予想以上に売値が安すぎて驚いた。


「小さすぎだ。これじゃあよくて60000ダルクってとこだね」


質屋の店主の女性はロキ達をチラリともせず、そんな事を言い出す。


「え? 確かに小さいけど本物の純金や宝石だよ?」


「はあ? そもそも小さ過ぎる宝石や金には誰も興味がないから売れないんだよ」


質屋の店主は呆れたように至極もっともな事を言った。


「あ~言われてみればそりゃそっか(まずったな。細かく砕きすぎたな……)」


「? 何ぶつぶつ言ってんだい? 売るのか売らないのかどっちだい?」


「あ、売ります売ります」


「じゃあこれ全部で40000ダルクだね」


店主の女性は急に金額を値引きし始めた。


「は? さっき60000ダルクって――」


「何言ってんだい? それは原価だけの話だよ。手間賃を差し引くに決まってるじゃないか」


店主は飄々と、むしろロキ達が悪いかのようにそんな事をのたまうが、それを差し引いてもどう考えても吹っかけ過ぎだ。


「はあ〜? それにしたって20000ダルクは吹っかけ過ぎだろ。アコギな商売してんじゃねえぞ?」


「そりゃあ迷惑料も込みだからね。そもそも猫を連れてくるな。商品扱う場所で獣連れなんて礼儀知らずにも程があるよ。本当に何考えてんだい? ここは市場だよ、遊び場じゃない」


「うっ……」


立て続けに正論をお見舞いしてくる店主に、ロキは渋い顔で舌打ちした。


(……ここでごねても状況が悪化するだけだな)


ロキは渋い顔で持ってきた小さい金や宝石を差し出し、そうして2人はお金を受け取って質屋からでていった。


「……まいったなあ。まあなんとかするしかないか……シヅキ、お前はどうする?」


「………」


「どうした、シヅキ?」


シヅキは宿屋をでてから一言も言っていない。ずっと何かを考え込みながら、じっとロキを見つめる。


しばらく黙った後、おもむろに口を開いた。


「ロキ、さっきのあれはいくらなんでもやりすぎだよ」


「はあ?……ああ、さっきの執事の事?」


シヅキはロキを真剣にじっと見つめる。


「何であんな事したの?」


「あ~なんとなく?」


シヅキがそう問い詰めるが、ロキは耳をほじりながら誤魔化してくる。


シヅキはロキの頭から飛び降りた。


シヅキは口を開きかけて、結局やめた。少しだけ間を置いて、小さく息を吐くように呟いた。


「…………ロキがわからないや」


「……今、なんか言った?」


「とにかく!!」


ロキがシヅキの言葉を聞き返そうとするが、それをかき消すような大声で遮った。


そのまま猫の姿でも嘘笑いだとわかる程に、口元だけ無理やり持ち上げたようなぎこちない笑みを浮かべてロキを見る。


「情報収集は手分けするほうが効率的でしょ? 僕はロキと別方向に行くよ」


そんなバレバレな嘘を言う。普段のシヅキなら、一旦ロキの指示を聞いてから判断するであろう状況で。


その言葉に対してロキが何かを言う前に、振り返ることもせずに足早にその場を立ち去った。


「……いいんだ。掘り返されるより、あの反応の方が都合がいい」


ロキはシヅキが去った方向を見つめながら、何処か不機嫌そうに一人でそんな事を呟いた。


ーーーーーーーーーーー


シヅキは猫の姿のまま国の大通りを歩いて聞き耳を立てていた。


「この白菜甘いよ〜、買った買った!」


「グモで加工したマスク、今ならなんと1000ダルク!!」


「ねえ、ガルヴァ陛下の王冠ってバフォメット王家の初代国王が建国当時に作らせて受け継いだ物なんだって。凄いよね〜」


「グモで加工したマスク、今ならなんと1000ダルク!!」


だが碌な情報がない。強いて言うなら王冠の話や国王の本名は初耳だったが、それも代々続く王冠なんてものは別の国でもよく聞くものだ。


(はあ〜〜全然めぼしい情報がないな〜。というか、あの国王の名前ってガルヴァって言うのか……)


それじゃあ貴族は名字が逆になるから、バフォメット=ガルヴァって言うのかなあ〜。


シヅキは半ば現実逃避しながら、そんな事を考えていた


「聞いた? 英雄の一族のお貴族が旅人に暗殺されたんだって」


「にゃ!!」


不意に自分達の事が近くに聞こえて驚き、反射的に背中の毛を逆立て垂直に飛び跳ねる。


それを見た通行人たちから不審がるようにシヅキをじっと見つめる。


(や、やってないもん、濡れ衣だもん)


慌ててその場をそそくさと立ち去った。


………大通りを抜けて路地に出た辺りで、猫の姿なので別に逃げなくては良かったのでは? と気付き、さらに落ち込む。


(……何やってんだろ……僕)


天気は晴れだが、心は全く晴れない。


多分ショックだったんだ。


ロキは一見分かりにくいけど、極端なところがある。


だからしばらく一緒にいれば、なんとなく性格も見えてくる。


――でも今回は本当にロキが分からなかった。


あの時のロキの行動は、自分の中のロキ像とはかけ離れ過ぎていた。


自分はロキを理解してるよう、実は全然理解できてなかったんじゃないかって。


そんな考えが頭から離れなかった。


執事さんやアリアさんの仕打ちもショックだった。


『僕を利用していい。捨ててもいい。』


「っ」


かつてロキと旅をすることになった時に宣言した言葉がシヅキを苛む。


(……僕は……何を怖がってるんだろ……)


あの時は騙されても構わないと思っていたのに、いつの間にか全然違うようになった。


(ああ……そっか。僕は――)


知らないまま、全部終わってるのが……怖いんだ。


ロキのことも。

アリアさんのことも。

この国で何が起きているのかも。


シヅキはしょげくれながら路地から出ようとした瞬間、


「あ、ねこにゃん」


「にゃ!」


路地の出口に5歳ぐらいの幼い少女がシヅキを見つけて駆け寄ってくる。


「ママー、ねこにゃんがいるよおー」


「あら、そうー?」


隣の店――


普通の一軒家に花が数え切れないぐらいあり、それを売っている。どうやら家を改築して作った花屋のようだ。そこから花柄のエプロンを着た細身の女の人がでてくる。幼い少女がママと呼んだので、おそらく親子だろう。


「ネコにゃん、なんだかしょげてるねえ? お友だちと喧嘩でもしたのお?」


「にゃっ!」


幼い女の子に見事に図星を付かれて、シヅキは固まってしまった。


(うう、子どもってやけに鋭い所あるなあ)


いくら幼児の何気ない言葉でも、傍から見てもそう見えるという事実でさらに落ち込んでくる。


「アメリのお家おいでえ」


突然、幼児――アメリはそう言って路地の中に突っ込んで飛び付くようにシヅキを掴もうとしてきた。


「にゃあ!?」


普段なら避けれただろうが、落ち込んで考え事をしてたのと完全に不意打ちだったため避けきれない。


ガシ!


「おいでえ。アメリの宝物見せてあげうー」


シヅキを抱きかかえたまま隣の花屋に突撃した。


もちろんシヅキはアメリから逃れようとしたが、幼子なので手加減を知らず抱きかかえる力が強い。その気になれば力付くで脱出は容易だが、爪をたてるわけにもいかず、しばらくもがいたが渋々離してくれるまで無抵抗を貫くことにした。


「ちょ、アメリ。ここは動物厳禁」


アメリの母親からそんな注意が飛んできたが、アメリはお構いなしに、むしろ母親を振り切るかのように走った。


「こらあー! 待ちなさーい!」


母親が追いかけようとした瞬間、足元の花鉢を避けて体勢を崩し、脛をカウンターの角に強打した。


「っっっっっっっ!?」


「がっおー!」


激痛でしゃがみ込む隙に、アメリは自室へ駆け込み、勢いよく扉を閉めた。


(だ、大丈夫かなあ、あの人)


シヅキは母親を心配したが、アメリは特に気にしてない様子で、部屋に入るなりシヅキを下ろし、おもちゃ箱をひっくり返す勢いで漁り始めた。


(今のうちに――)


シヅキが尻尾で鍵を開けようとした瞬間、振り返ったアメリと目が合った。


「あ、開けちゃだめえ!」


次の瞬間、シヅキが何をしようとしたのか気付いたアメリは、母親に怒られる事を想像したのだろう。全力でシヅキ目掛けてドアに走ってきた。


「にゃああああ!?」


ゴツン!!


「うわああああああん!!」


車は急に止まれない……。


その事実を再認識できる程に全力で突っ込んできたアメリは止まれず、そのままドアに激突した。


「うわあああああああああああああああああん!!」


アメリは泣き叫ぶ。怪獣の咆哮と間違うかのようなとんでもない大声で。


(う、うるさっ)


シヅキは耳が良い為、尚更きつい。耳を押さえてなんとか耐え忍び、どうにかしてアメリを落ち着かせる方法を模索する。


(そ、そうだ――)


シヅキは辺りを見回して、ドアの真反対にある窓の鉄の留め具を金属操作で外して、その鉄をコスモスの花の形にして作り、アメリの辺りを浮遊させる。


「うああ……あ?」


鉄の花は蕾になり、ゆっくり咲いた。

花びらが砕けて舞い、次の花へ形を変える。


「うわあ」


そしていつしか泣き声はやんだ。どうやら落ち着いたようだ。


「きゃははは、すごいすごーい」


(修行の合間の息抜きに練習してて良かった……)


さっきまで泣き叫んでいたのが嘘のようにアメリは笑ってパチパチと手を叩いた。その様子を見てシヅキは一安心するが、不意にアメリが何かを思い出したかのように、ついさっき放り投げた物――綺麗な箱を持ち出してきた。シヅキはまた何かやらかそうとするのかと戦々恐々している。


「おれいにアメリの宝物みせてあげうー」


そう言って箱を開ければ、何やら雑多なおもちゃが詰め込まれていた。どうやらアメリの宝箱のようだ。


その中で、花びらは白いが中心は金色の綺麗な花があった。おそらくドライフラワーにしてあるのだろう。いい匂いがして、シヅキはその花をじっと見る。


「こえが気になるの? こえね、あるとりあって言うんだって」


(あるとりあ? ああ、アルトリアか!)


アルトリアはアリアの本名だ。


(アリアさんの名前の由来って花の名前だったんだ)


アリアさん――アルトリアの名前の由来の事は特に気にしてなかったが、白い無垢を思わせる花を見て何処か納得する。


「あるとりあはね、はなことば? はてんしって言うんだって」


おそらく母親に聞いたであろう事を、えっへんという擬音が聞こえてきそうな顔で説明する。


(天使……かあ。アリアさん、愛されてたんだなあ)


それなのに父親が死んでしまったのかと、しみじみと心の中で呟いた。アルトリアの花の匂いが心地よく落ち着いてくる。


「ほらあ、においかいでえー」


「にゃあ!!」


突然アメリがシヅキの顔に花を突っ込んできて盛大にむせる。しみじみとした気分が完全にどっか言った。


「べっぷし! べっぷし!」


「きゃははは」


何度もくしゃみしまくるシヅキが面白いのかアメリは笑うが、何故か突然真剣そうな顔になり話しかけてくる。


「ねこにゃん、お友だちと仲直りするには、そのお友だちの事をよく知ってよく考えうのが大事ってママが言ってたよお。わかんないまま怒ると、もっとわかんなくなるんだって!」


(え? 何の話?)


突然そんな事を言うから一瞬何を言ってるのかが理解できなかったが、なぜこの場所に連れてきたのかを思い出し納得する。


(別に喧嘩ってほどじゃない……けど)


幼児は話が繋がらないことに困惑しつつも、その言葉を反芻する。


(……よく知ってよく考える……かあ)


シヅキが考え込み始めた瞬間、突如部屋の外からドスンドスンと誰かが怒りながらこっちに向かって歩いていくような音が聞こえた。次の瞬間、怒鳴り声がする。


「こらあああああああ! すごい音聞こえたけど何やってるのおおおお!」


アメリの母親の声だ。おそらく先程の痛みから復帰して、さっきの物音を聞いて追いかけてきたのだろう。


「やばいママだ! つかまったらころさえう」


その声を聞いたアメリは、ついさっき笑っていた表情を青ざめた。コロコロと表情が変わる子だなあとシヅキが思ったが、そんなことは知らず、どうにかドアを開けないように押さえつけようとする。


「ねこにゃんたすけてえ!」


アメリはシヅキに助けを求めるように潤んだ瞳で見つめる。


(いや猫にどうしろと??)


シヅキは妖魔だからアメリを連れて逃げ出すことは可能だろうが、それはそれこれはこれだ。


そもそも売り物がある店に動物を連れ込むなど論外であるため、アメリが悪いのは明白だ。


……ついさっき僕が質屋に入ったのは忘れることにする。


(……このままここにいたらめんどくさい事になりそうだな。どうしよう)


シヅキはアメリの部屋の辺りを見回すが、次の瞬間シヅキの目はとある場所に止まる。


――窓だ。


留め具が外れて(外して)おり、シヅキには操作できる鉄(の留め具)が手元にあり、それを薄くして隙間に差し込めば簡単に開けられるであろう。


そして、それを阻止するであろう怪獣アメリは真反対のドアを押さえつけてて動けない。


……

………


やることは一つだ。


少し考えた後、すぐに窓の留め具を操作して薄く引き伸ばし、窓の隙間に差し込んで一気に開ける。


その窓目掛けて全力でダイブ。


「ねこにゃーん!?」


後ろでアメリがショックを受けたように叫ぶが無視する。


(よし!! なんとか脱出できた)


シヅキは花屋の屋根に降り立ち、一人ガッツポーズしようとする。


……猫の手ではできなくて恥ずかしそうにその手を舐めた。


外では怒鳴り声と叫び声が聞こえる。


「ああ!? 窓の留め具壊したわねアメリ!!」


「そ、それはねこにゃんがあ」


「言い訳無用! 3日間おやつ抜き!」


「そ、そんなあああ!?」


……窓の留め具直してなかった。


どうやら母親は。アメリの仕業だと思っているらしい。


(ごめん……全部終わったらきっと直しに行くから)


シヅキはそっとその場を離れた。


屋根を降りて大通りに戻る。しばらく歩いた後、八百屋で白菜を買ってるチャラ男の格好をしてる男の人を見つけた。


――ロキだ。八百屋の人と会話してる。


「昔、国王様が少年だった頃に反乱が起こったんだよ。原因も収まった理由も不明何だけどね?」


「へえー、それはそれは」


シヅキは慌ててロキに気づかれないように立ち去ろうとしたが、立ち止まった。


『お友だちと仲直りするには、そのお友だちの事をよく知ってよく考えうのが大事』


アメリがついさっき言った言葉が頭に響く。


(……そっか……そうだよね)


自分はロキと出会って一週間も経ってない。自分はロキの事をなんでも知ってるとは口が裂けても言えない。


――だからこれからロキの事を知って考えればいいんだ。


……怖いままでもいいのかはわからない。


でも知らないまま離れるのは、もっと嫌だ。


だからいまやるべきことはロキから離れることじゃない。


それに――


……離れる理由を探すより、ちゃんと知る理由を探したいから。


シヅキはロキの方向に向かって走り、辺りの屋根に駆け上って勢いよくロキの頭にダイブした。


「じゃあ白菜一つくださ――い!?」


勢いよく頭に乗っかってきた誰かを慌てて確認して、それがシヅキだと理解すると今度は訝しげな目をする。


「……いきなり何するのさシヅキ」


「お? その猫知り合いかい? フィクサー」


ロキの事をフィクサーと呼んだ八百屋は、微笑ましい物を見るような目をする。


「懐かれてるねえ。羨ましいよ」


「……白菜買うから」


「はいよ。200ダルクだよ」


八百屋の生暖かい目をうっとおしそうに、ロキは白菜を買ってシヅキを頭に乗っけたままで八百屋から足早に立ち去った。


(フィクサーってまた偽名使ってたのか)


「おい、シヅキ」


「え!? あ、うん、なに?」


考え事をしていたシヅキは突然ロキに声をかけられて慌てて返事をする。


「成果はどうだった?」


「え?」


「『え?』じゃねえよ。情報収集の成果は?」


ロキはいの一番にそんな事を聞いてきた。


(……逃げたこと何も言わないでくれるのか……)


「……おい、本当に聞いてるのか?」


「あ、じょ、情報収集の成果ね。えーと、えーと……」


シヅキはロキと分かれてのことを鮮明に思い出して、何故か黙り込んでしまった。


「……」


「おい、どうした」


「……幼児はとても怖いってことを初めて知った」


「何があった?」


何故か酷く疲れたように虚ろな目をして、感情がこもってない声音でそんな事を言った。


「あ、間違っちゃった。国王の王冠って建国当時からあったんだって」


「何を間違ったの?」


ロキはシヅキのあまりの豹変っぷりに驚いたが、深入りしないでおいた。


「俺の情報収集の成果は……宿屋に帰ってから話すよ。もう夕方だし」


ロキの言葉通り、空が夕焼け色に染まっており、すぐに暗くなるであろうことが見て取れる。


「そろそろアリアも執事も正気に戻ってるだろうし、今日は一旦帰るか」


「アリアさんと執事さんにトドメ刺したのロキだけどね?」


シヅキがじろりと責める目をしたが、ロキは何処吹く風だ。


そうこうしてるうちに宿屋につき、中に入る。


ロキはドアノブに手をかける。

シヅキはその頭の上で小さく息を吐いた。


……まだ分からない。

でも、知ろうとは思った。


『ただいま』


2人は同時にそう言ってドアを開けた。

幼児って台風みたいで怖いとこありますよね(笑)

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