表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

第19話 犯罪者による華麗なる逃走劇

駆け抜けまくるロキが混乱する程の自体とは一体?そもそも何故葬式に来てたのに追いかけられてるのか?



逃げる、逃げる逃げるひたすら逃げる。


僕はロキ。逃げてる相手はこの国の傭兵。意味わからん。何故こんな事になってる?


今に至った状況を端的に説明しよう。

貴族の馬車が御者に襲われた。助けた。

その結果、お嬢様がシヅキに惚れた。

屋敷に招かれた。疑った。閉じ込められた。

本の中で英雄の真実を知った。

その父親が死んだ。葬式に来た。

国王が現れた。

そして今、国家傭兵に追われている。


……何を言っているのかわからないと思うが僕も何を言っているのかわからない。


本当にどうしてこうなった?


今の状況に至る数十分前に戻る。


ーーーーーーーーーーー


この国の国王が一貴族の葬式に現れた。


……どう考えても嫌な予感しかしない。


(とりあえず巻き込まれないように遠くにいよう)


ロキはシヅキ達を連れて静かに遠くに移動した。


国王は棺桶のすぐそこに立った。


ゴホン。


突然国王は一つ咳をして――そして突然国王は語り始めた。


「本日、我らは偉大なるリュミエール・アレキサンダー卿を偲び、この場に集った。」


「彼は剣において勇敢であり、政において賢明であった。王国は今日その柱を一つ失ったが、彼の志は消えぬ。その名は、王国の歴史と共に語り継がれよう。」


よく響く声で演説し始めた。


「幾度となく民の危機を救い、誰よりも忠実に国を守り支えた。王国は彼の功績を記憶する。忠誠は決して無駄にはならぬ。余はそんな彼を友と呼べたことを誇りに思う。王としてだけではなく、一人の人として彼の死を悼む。」


大仰しくだが敬意を払って語り続ける。


「余は彼を信頼していた。幾度彼の助言に救われたことか。」


少しだけ口籠りまた語った。


「……ああ、本当に惜しい男をなくした。」


その魂に永遠の安らぎあれ。


最後にそう締めくくった――拍手の嵐が起こった。国王が1貴族の死にここまでの敬意を見せたことによって誰しもが感動し涙した。


そこら中から


「国王陛下は立派な人だ。」


「これほどの慈悲深い国王に仕えられて私達はこの上なく幸せだ。」


そんな話し声がやまず聞こえる。誰しもが国王に敬意を払った。


――1人を除いて。


(な〜んか嘘くさいなあ?)


ロキだ。


ロキは拍手も感心も感動も敬意も払わず、国王の事を無礼千万にも嘘くさいと思っていた。


(演説に淀みない上、な〜んか演技じみてるなあ。というかそろそろ当主の死因ぐらい教えろよ。何かを仕掛けるために最初の内に都合が良くなるように士気を高めたように見えるんだよなあ。)


「ロキ、この国の国王って立派な人なんだねえ。」


ロキが悶々と考えてるのも知らないシヅキは感動したように話しかけてくるが、突然また国王の2回目の演説が始まる。


「だが、お前たちにもまだ気になることがあるだろう?」


(うん?今ので終わりじゃないのか?)


「何故、リュミエール・アレキサンダーは死んだのか?」


空気が凍った。誰もが知りたかった事だ。あんなに有能だったリュミエール・アレキサンダーが何故死んだのか?


「病死か?事故死か?あるいは自死か?」


国王は一旦区切って話し始める。


「答えは否――」


「『暗殺』されたのだよ!」


国王はそう言って棺桶を開けた。そこには――首を鋭利な物で突き刺された遺体だった。どう見ても明らかに他殺だ。


(おいおいおいおいマジかよ!?)


アレキサンダーの遺体の首には四角い穴があった。おそらく剣などで突き刺したのだ。


「私は悲しい。ここまで国に尽くしてくれた男を私欲によって暗殺した者がいるなんて考えたくもない。」


一気に葬式場はざわめきだし、国王はいっそ大袈裟なまでに手で顔を覆って嘆き悲しむ。


「だがいくら悲しくても認めざるをえない。何故なら証拠がいくつもあるのだから。」


国王は感情が抑えきれないようによく響く声で話を続けたいっそ演劇でもやってるかのように酷く大仰に。


「だが、せめてもの救いはアレキサンダーを殺した2人組はこの国の者ではなく旅人であることだ!」


(うん?2人組の旅人?)


「何か申開きはあるか?ロキとシヅキとやら。」


『は!?』


5人の声が見事にハモった。すなわちロキとシヅキとアリアと執事と神父が。


「ひ、人殺しだったんですか?」


「え!?ち、違う、誤解だよ!僕なんのことかさっぱりわかんないよ!?」


神父が一気に2人と距離を置き、シヅキは混乱しながらも必死に弁明しようとする。ロキは盛大に渋い顔で舌打ちした。


(おいおいマジかよ。さっきの盛大な演説はこの為かよ)


士気された周りの貴族達は国王の事を疑いもせずにロキ達に距離を置き、疑いの目を向ける。


「……証拠は?ちゃんと揺るがぬ証拠はあるんだろうな?冤罪国王さん?」


「言ったであろう?証拠は揃っていると……」


だが上っ面は極めて冷静に煽ってきたロキに対して、国王は涼しい顔で1人の男を呼び出した。


「私は見ました。アレキサンダーをこの地味な男が刺したところを。」


「…は?」


そんな誰とも知らぬ男が自分が殺したと証言し始めた。ロキがあまりの意味不明さに言葉も出ない隙を狙って、国王が更に畳み掛ける。


「更に!!お前がアレキサンダーを刺した時に使ったナイフだ!このナイフからお前の魔力がでてきた。身体能力強化の魔術を使ったのは失敗だったな!」


ロキが触ったことも見たこともない血塗られたナイフに自分の魔力が付いていたとのたまった。


「そして!!」


更に何かを取り出す。髪の毛だ――


「これはアレキサンダーの服に引っ付いていた髪の毛だ!お前の髪の毛だと魔術による鑑定は認定した!!もう言い逃れはできないぞ!大人しく死刑台に上がれ!」


国王は大仰に怒り狂った表情でそんな事を言い出し、周りの貴族もロキ達を悪者扱いして傭兵達が取り囲んだ。


ロキは冷静に問い詰めた。


「証言の裏は?再鑑定は?証拠の保証は?」


だが国王は一蹴する。


「必要ない。確証は出ている。」


「鑑定機関は王直属だ。それにもう確証は出てるんだ!もう一度やっても結果は同じだからだ!」


「いやだからその確証を保証する証拠を今ここに持ってきてくださいって――」


「いい加減自分の罪を認めんかああ!!お前が殺したアレキサンダーに対する罪悪感はないのかこの極悪人め!!罪を犯したのだからちゃんと償わんかあああ!!」


ロキは努めて冷静に正論を言ったが、一度怪しいと感じたならばずっと怪しいと感じるもの……


その上、この国で一番偉い国王が味方してくれているのだから、自分達が絶対正義と疑わず、正論を戯言としか認識しない貴族達は一切信じず、何を言っても疑われた。


(ああ、全員仕込まれてるか)


もともと先手を取られた時点でほぼ積んでいたのだ。しかも相手は王様だ。


――だが


「アリア!執事!僕達がアレキサンダーがここにいた時一緒にいたって証言してくれ。」


そう、アリアと執事はその時一緒にいた。あまりの情報量の多さにフリーズしていた2人は、その言葉でハッとなり証言する――


「国王陛下!シヅキさまとロキさまは――」


パクパク。


声が出なかった。アリアは焦ったように声を出そうとするが何故か出ない。執事も同じだ。何も喋れない。証言できない――


(おいおいおいおいそこまでするか?――)


アリアと執事の口か魔力が漏れ出ている。おそらく口封じの魔術だろう。アリア達に掛かった魔術を解けと言っても、また戯言呼ばわりされるのは目に見えている。


「誤解だって!僕達は何もしていないって――」


シヅキもようやくフリーズから覚め、周りに弁明しようとするが無駄に終わる。


(……仕方ないか)


「ろ、ロキ、ど、どうしよう」


「いいか?シヅキ、こういう時にはとっておきのいい手がある」


「ほ、本当に!?ど、どんな?」


ロキがそんな事を言い出し、シヅキは希望に溢れた顔をする。


「こういう時はな――」


「こういう時は?」


「逃げるんだよおおお!!」


瞬間、シヅキを連れて猛ダッシュした――


……アリアと執事に向かって。


「え!ちょっ!」


アリアを持ち上げて抱えた――


「おらおら、父親の葬式に娘の葬式をセットであげたくなかったらどけやあああ!!」


そうして盛大に『人質』扱いした。


貴族と衛兵全員が硬直した。戯言を喋っていたが、冷静だと感じていたため、こんな乱暴な強硬手段を用いるとは予想してなかったのだ。


「――捕らえよ!!」


国王が命令を叫び、ハッとなった衛兵がロキを捕らえようとする。


衛兵が一気に入口付近に走り出し、防御を固める。


――だが何故かロキは入口とは全くの別方向に行った。そこには窓があった。


――氷の礫を飛ばして窓を叩き割った。


窓の破片が飛び散っていき、ロキが窓の外に飛び出す。


瞬間、ロキの足元が凍っていき、氷で別の建物の屋根に橋を作って走った。


シヅキと執事も氷の橋を渡って後を追う。


衛兵が氷の橋を渡ろうとした瞬間――


「あ、それ脆く作ってるから危ないよ?」


――氷の橋が壊れて落下した。


「ぐああああ!?」


「ちょっっっ!?」


衛兵達が落ちて怪我をした。


ロキはそれを見ながら、何故か氷でラッパを作って――


プファアアン


――間抜けな音で吹いた。


衛兵達はロキが何をしているのかわからず硬直した。


「ふっ」


硬直した衛兵達に向かって見下すような笑顔で盛大に鼻で笑った。


衛兵達は一瞬呆然としたが、次の瞬間何をされたのか気づき、鬼の形相で怒り狂った。


『あの野郎ぶっ殺してやる!!』


「あっはっはっはっは」


四人、すなわちロキとシヅキとアリアと執事は屋根を飛び移って逃げまくる。


ーーーーーーーーーーー


……回想終了。今に至る。


つまり今の状況に至った過程は


貴族の馬車が御者に襲われた。助けた。

その結果、お嬢様がシヅキに惚れた。

屋敷に招かれた。疑った。閉じ込められた。

本の中で英雄の真実を知った。

その父親が死んだ。葬式に来た。

国王が現れた。

その国王に免罪を掛けられた。

それで今、国家傭兵に追われている。


うん、尚更意味わかんねえな。


「くそ!屋根じゃ剣が届かない!飛び道具であいつを……」


「アホ!そんな事したらアルトリア様とその執事に当たるだろ!!」


屋根を飛び移って走るロキ達に、衛兵達は攻めあぐねている。


「ねえ!ロキ!なんでこんな事したの!?いや、なんとなく分かるけどさあ、このままじゃ更に誤解されちゃわない!」


シヅキが涙目でそう言ってきた。


「いや〜、あの貴族達は思考放棄してたから、あのままじゃ職権乱用でいずれ捕らえられてたよ?今の内に無理矢理にでも逃げとかないと」


「う、そ、それは置いといて、なんで衛兵達を煽ったの!」


「怒ってくれた方が楽になるから」


「ええ……」


ロキはサラリと真顔で言い切った。


「で、でもなんでアリアさんを人質にしたの?」


「衛兵が躊躇してくれて盾に出来るから」


「酷!?」


ロキが酷い事を答え、シヅキが叫ぶ。


「まあ、それにもしもアリアをここで持っていかなきゃ不味いことになってたと思うよ?」


「え?それってどういう――」


シヅキが聞こうとした瞬間、ロキが辺り一面氷漬けにした。


「え!?ちょっ!」


「この高さなら大丈夫だろ。降りろ。」


シヅキとアリアと執事を蹴って下に落とした。


「ふん!!」


シヅキが先に着地して、アリアと執事を受け止めた。


「ナイスキャッチ」


「ちょっとロキ!」


後に降りてきたロキが親指を立ててきて、シヅキは怒った。


「くそ!あいつら何処行った!?」


「氷で見えねえ!!」


衛兵達は氷塊で視界一面を塞がれて、四人を見失ったようだ。


「よし、今の内に遠くに行くぞ」


衛兵達から逃げ切った。何とか裏路地に隠れ、作戦会議を始めた。


「……とりあえず撒いたけど、これからどうしよう、ロキ。」


「ふむ、洞窟や廃墟に潜みましょうか?」


シヅキと執事がロキにそう聞いてくる。


「いやあ?いいアイデアがあるんだ〜。」


「え、どんな?」


「ほう!流石ですな。」


ロキはニヤけながらシヅキと執事にそのアイデアを話した。


『それありなの?』


「いいから、いいから。」


戸惑っている二人を後目に、ロキは面白そうに笑った。


ーーーーーーーーーーー


ここは宿屋『止まり木亭』。しっそりとした、ごく一般的な宿屋だ。


そんな宿屋に四人組が来た。何故か、その四人組は――超派手な服を着て、グラサンをしたチャラ男集団だった。


「チョリース!マジバイブス上げてる〜」


「い、いえーい?僕達超チャラ男〜?えっとチャラ男であってったっけ?」


「………」


「ふ、ふふふ。何故私がこんな格好を?」


……だがチャラ男っぽい口調の人は一人の男の子だけで、後はぎこちなくチャラ男という言葉すらよくわかっていない男の子。


何故か酷くフリーズしている少女と、プライドが傷つけられショックを受けたジメジメした老人がそこにいた。


………カオスだった。


「あ、はい。え〜と地下の5番の部屋でいいですか?」


「え〜、俺さっきの占いのラッキーアイテム、窓だったから窓付きが良い〜」


「あ、はい。じゃあ窓付きの10番の部屋にしておきます。」


宿屋の受付人は顔に『関わりたくない』と言う文字が書かれており、言われるがままに部屋の鍵を変更する。


「……はい、お待たせしました。10番の鍵です。」


「ありがとう〜、マジ感謝〜。さあ行くよ、お前ら。」


そう言って振り分けられた部屋に入って鍵をかけた途端、シヅキが聞いてきた。


「……白昼堂々と宿屋に泊まっていいの?」


「逆だよ。衛兵達も廃墟とか人通りが少ない場所を片っ端から探すから、宿屋に泊まるのが一番バレにくい。つーか貴族の令嬢のアリアが洞窟や廃墟で寝泊まりできるかと言うと……ねえ?」


「……あの格好は何なの?目立つじゃん。」


「それも逆だよ。目立たせてんの。衛兵達も目立つ格好してるとは思わないし。」


「でもあんまりにも派手すぎない?」


「派手なのが良いんだよ。こういう格好してたら、人は服にばかり気を取られて顔を覚えない。結果的には顔隠しと同じ効果があるんだよ。」


ロキは耳の穴ほじりながらそう言った。


「ええ……アリアさんはどう思う?」


「………」


「……アリアさん?」


シヅキがアリアの目に手を振るが、無反応。完全に思考停止している。


心ここにあらず、といった様子で虚空を見つめている。


「……まあ、アリアの視点だと父親が突然死んで、葬式に来て国王が来て、父親が暗殺されたって聞いて、僕らが犯人扱いされて、僕に人質にされて、衛兵達から大立ち回りした挙句、変な格好して宿屋に泊まったんだから、情報量が多すぎて頭の整理が追いつかないのは仕方ない。」


「あ〜、言われてみればそりゃあ思考停止するか……」


「アリア様はどうされましょうか、ロキ殿?」


「今は使い物にならないから放置。時間経てば復活するでしょ、多分。」


まぁそのうち勝手に復活するだろう。倒れないように水だけ置いとけ。


ロキはベッドで寝転がりながらそう言った。


「そんな雑な……まあこういうのは時間が解決するんだろうけどさあ、じゃあ僕らも一回休むの?」


「そうですなあ。衛兵達が探し回っている今の状況で外に出るのは下策ですしなあ。」


シヅキと執事が納得したように頷いた。


――が、ロキの回答は予想の斜め上を行った。


「何を言っているんだい?」


『え?』


「こういう時は、外に出て情報収集するに決まってるじゃあないか。」


………空気が止まった。二人の思考が停止した。


たっぷり10秒間沈黙して、ようやくその言葉を理解した時、シヅキも執事も同じ時間だった。


二人は同時にこう思った。


すなわち『何を言っているんだ、こいつは?』っと。

意味不明な事を言い出す至って普通のロキ戻りましたね(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ