第17話 アリアの決意
ロキはこんな状況でもとことん冷静ですね
……そこにあったのは英雄の暗く虚しい真実だった
「……とりあえずここから出よう」
「……うん、アリアさん出よう?」
「……」
アリアの返事がなくシヅキは心配そうにアリアを見た。
「アリアさん?」
「……あ、はい」
「大丈夫?」
「……だいじょうぶです」
アリアはそう言ったが全く大丈夫そうに見えない。何処か遠くを見ているようにボーっとしている。
「……早く外に出よう地下牢なんかにいたら気が滅入る」
「……そうだね。だからこの意識結界の封印解いてくれない?多分外に意識牢獄を維持する魔道具とかある筈だから出来れば壊さずに持ってきていろいろ調べたいから」
「分かった持ってくる」
シヅキが外に出て少し経った後――
パキインン
――何かが壊れた音がした。
(……この感じ多分意識牢獄が壊れたな)
「よっこいしょっと。おいアリアボケっとしてないでさっさと出るぞ」
「……はい」
アリアは本を持ち帰って2人は外に出てシヅキが待ち構えていた。
「はい、これ意識牢獄の魔道具だと思う」
「はい、ありがとさん」
「……これから、どうする?一回アリアさんの部屋に行く?あ、でも確かアリアさんの部屋には爆弾が」
「いや、アリアの部屋に行くよ。暗殺者が仕掛けた爆弾がどういう構造してるのかの情報も欲しいし暗殺者が監視してる部屋っぽいからいろいろと罠も仕掛けられるしね」
「そ、そっかアリアさん部屋に行こっか」
「……はい」
ーーーーーーーーーーー
3人はアリアの部屋につきロキが爆弾を回収して監視の目を無効化した後にこれからどうするかを話合うことにした。
「今すぐにこの屋敷を出たほうがいい」
開幕早々ロキがそんな事を言い出した。
「え、な、何で?」
シヅキが疑問を口にする。
「まず、この屋敷は不確定要素が多すぎる。僕とシヅキはこの場所に疎い上に、暗殺者は自由に出入りできる。ここにいるのは危険だ」
「それに、意識牢獄なんて物がもうないとも限らない。むしろもっとヤバいものがある可能性もある」
「以上の理由で、僕達はここにいるべきじゃない。アリアを連れてさっさと逃げ出すべきだ」
「な、なるほど確かに……でもちょっと驚いたよロキならアリアさんを見捨てようって言い出すかもって思ってたから」
シヅキはほっとしたようにそう言った。
「いや、アリアを見捨てても特に利点もないしなあ。僕はここまでやったんだから労力に見合う報酬が欲しい」
「それにどっちみち僕とシヅキは顔を見られてるんだから僕らを狙って暗殺者を派遣されかねないから今のうちにさっさと暗殺者を派遣してきた組織をぶっ潰したいんだよ」
「暗殺者はアリアを狙ってるんだから囮として使えて戦術の幅が広がるし偽りとはいえ世間では英雄の一族として有名らしいからその立場もいろいろ使えそうだしねえ?今ここで見捨てるにはメリットがないし」
「ですよね~」
シヅキはこれがロキだと納得したように頷く。
「じゃあ、この屋敷を出ることにするよ?アリア……聞いてる?」
「………」
アリアは何も聞こえていないように空を見る。
「駄目だ微塵も聞いてなさそうだなあ。まあ、そんな事はどうでもいいからさっさと出よう」
「……待って」
ロキがアリアを運んで脱出しようとするが既でシヅキがロキの裾を引っ張って止める。
「……アリアさんはもう限界だよ。少しでいいからここで休ませてくれない?」
「ええ〜」
「お願い。このままじゃアリアさん旅に耐えられないと思うんだ。ロキもそれは不都合でしょ?」
「……まあ少しだけなら。でも、どうやってアリアを回復するつもりなの?」
「えっと、それは……そうだ!」
シヅキは少しの間考え込みひらめいた用に手を叩いた。
「お?何か思いついたの――」
「ゲームをしよう!」
………シヅキはまるで名案を思いついたかのように目を輝かせたがロキは何を言ってるんだこのアホはと顔にだした。
「……は?アホかお前は」
ロキが悪態を付くがシヅキはそんなロキを無視してアリアに話しかける。
「……アリアさん」
「……シヅキさま」
「辛いのは分かるけど1人で抱え込まないで僕らに頼ってほしいんだ……今までの価値観が否定されて崩れるのって辛いよね苦しいよね」
シヅキが妙に実感がこもった用に言葉を紡ぐ。
「でもあれはずっと前の事なんだ。過去は変えられない。その事を忘れないで自分は今に生きてて未来は変えられんだから。まあ、そうは言ってもそんな簡単に切り替えられないよね……そんな、時はゲームでもして気をはらしてからもう一度考えよう?」
「シヅキさま……」
シヅキは笑いながらそう言いアリアは少しだけはっきりした目でシヅキを見た。
「というわけでロキゲームやろ」
「いや僕、ゲームやるって1言も言ってないし今はそれどころじゃ……」
「いいから、いいから。そもそもロキを探そうとしたのは3人でゲームしたかったからだし」
「ええ〜」
「というわけでゲーム開始まずはトランプでババ抜きから――」
――『2時間後』
「僕のターン」
「僕のターン」
「ずっとずっと僕のターン」
シヅキとアリアは盛大にボコボコにされていた。真剣衰弱であたりを引きまくって2人のターンを一切譲らない。
あまりにもロキが強すぎて勝負にならない上に一切の容赦がなさ過ぎる。
「ちょっと!ロキ!少しは手加減してよ!」
「断る!」
「断る!?」
ロキとシヅキがぎゃいぎゃい騒いでるのを見てアリアは――
「ぷっ」
「あ、」
笑った――
シヅキが満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう御座います何とか整理がつきました」
「へえー?やっとかい?」
「ちょっとロキ」
ロキが肩を竦めてきてシヅキがそんなロキを諌めた。
「ええ、すいません遅くなってしまいまして」
「……それじゃあ本格的にこの屋敷から出ようか――」
「いえ、私はこの屋敷を出ません」
「はあ?」
アリアは決意に満ちた表情でそんな事を言い出した。
「私は……お父様に会いに行きます」
「……正気か?お前のお父様の部屋に隠し通路があったんだから十中八九真実を知ってるぞ?それでも会うのか?」
ロキは正気を疑うように訝しげにそう言った。
「だからこそ…ですよ」
「私はお父様に何故こんな真実を教えてくれなかったのか何を考えてるのか知りたいんです」
「……危険すぎる、暗殺者を送ったのがお前のお父様って可能性だってあるんだぞ?」
「ちょっとロキ!」
「ええ、それは重々承知しています…ですが私が納得したいんです!!」
そんな事をアリアは言った。
そんなアリアを見てロキは一気にクソデカ溜息を吐いた。
「はああああああ〜」
「あ~もう分かった、分かった。お前のお父様が地下牢で知った以外の情報を持ってる可能性もあるし一回だけ合わせれやるよ」
「ありがとう御座います」
「それにしてもですわ〜ですわ〜言ってたのに突然別の口調になるなあ?もしかしてそっちが素なの?」
「うっ茶化さないでください!」
アリアそう真っ赤になりながら言うがロキには別の打算もあった。
(まあアリアのお父様が本当に暗殺者を送った黒幕なら……今のうちにいろいろ出来るしねえ?)
「……ロキがなんか碌な事を考えてない気がするんだけど」
「気の所為気の所為」
「本当に?」
シヅキが怪しむようにロキを見始めたがアリアが会話を切って何かを取り出してきた。
「さあ、そうと決まれば私が作らせたオリジナルのゲームソフトがあるんですのそれをやりましょう!」
アリアが目を輝かせてゲーム機を持ってくるがロキは何故か嫌そうな顔をした。
「……デジタルゲームかあ〜」
「ロキデジタルゲーム嫌いなの?」
シヅキがそう聞いてきてロキが答えた。
「別に嫌いじゃないよ?でもデジタルゲームってルールが全てってとこがあるでしょ?裏技やハメ技は出来るけどイカサマができないでしょ?」
「……いや、そもそもイカサマする前提なのおかしくない?ルール違反じゃん」
「嫌だなあシヅキ?ルールにイカサマ禁止って明記されてないならイカサマはイカサマじゃないんだよ」
ロキはそんな暴論を吐いてきた。
「いやそれはおかしくない?というかロキ、イカサマ禁止ってルールが完全に明記されててもイカサマやるでしょ?」
「うん、やるね。例え明記されててもバレたらゲームオーバーになるって事でしょ?イカサマはバレなきゃイカサマじゃないんだよ?」
「ええ〜」
ロキは世界の真理を語っているかの大袈裟な身振りでそんな暴論を吐いてくる。シヅキは流石に呆れ気味だ。
「まあ、とにかくやりましょう。ゲームタイトルはラスボスを倒してハッピーエンドへGOーGOーです」
「糞ゲーの匂いしかしないタイトルだなあ……そもそもそれ以前に僕、1言もやるって了承してな――」
「いいね!やろうやろう」
「……またこのパターンかよ」
「写真をアップロードすればゲームのキャラが自分と同じ姿になるんですよ〜」
そう言ってシヅキとロキの写真を取ってゲーム機に接続したらデジダルの姿の2人を操作キャラとして選べるようになった。
「……無駄にハイテクだな」
「よーしやるぞ〜」
ゲームがスタートした。そこには――
レンガやら土管やらがそこら中にありキノコっぽい敵キャラなどの2Dの何処かで見たことのあるステージが現れた。
「……いやマ◯オの丸パクリじゃねえか!」
「……マリ◯ってなんですの?」
え?無自覚?とロキとシヅキが戦慄したがゲームが始まる。
ロキはスピーディーに動き一切の無駄なく敵を処理する。
「……なんか普通に上手いね?」
「嫌いだとは言ったが下手だとは言ってない…シヅキお前のキャラ身動き取れなくなってんぞ〜」
「え?あっ!」
シヅキのキャラは視点が前に進んだせいでレンガに囲まれ身動きが取れなくなっていた。
「ぬおおおおおおお」
焦ったシヅキはヤケクソで全力でボタンを連打した。
「いや、そんな事しても無駄――」
――瞬間何故かシヅキのキャラはレンガをすり抜けた。
「やった!助かった!」
「は?壁すり抜けバク?」
ステージはどんどんと進むロキは特に苦もなく敵を蹴散らして行く。一切減速せずに超上手い。
「まあこんなもんかあシヅキはどう……は?」
ロキがシヅキのキャラの様子を見たその瞬間ロキはフリーズした。何故ならそこには――
ピカピカ光って何故か真っ裸でマッスルに巨大過しながら敵とレンガを触れただけで蹴散らしまくっているシヅキのキャラクターがそこにいたのだから――
「いや、どういう状況だよ!?」
「わかんない!!」
「……お前はゲームをバクらせる天才か?」
この時初めてロキはシヅキに対して心のそこから驚愕した。
……こんな事で驚愕して欲しくなかったが――
そうしてロキとシヅキはこんな感じでラスボスを倒してゲームクリアした。
「あ、クリアしましたか別のゲームソフト持ってきますね」
「……まだ、別のオリジナルゲームソフトあるの?」
「ええ、あと十個ほど」
アリアが真剣な顔で言ってロキは溜息を吐いた。
「じゃあ持ってきますね!あ、でもちょっと探すのに時間かかると思いますゲームして待っててください」
「はい、はい」
アリアはそうして何処かに行ってシヅキとロキの2人きりになった。
「………」
「なあ、シヅキ」
「なに?」
「お前無理してるだろ?」
ロキが突然そんなことを言い出し何故かシヅキは動揺した。
「え、そ、そんなこと…ないよ?」
「僕に君程度の嘘が通用するって本気で思ってるの?」
「うっ!」
「思うに君は未だにあの英雄――ラグリスリュミエールのことを引きずってる。まあアリア程のショックじゃなかったと思うけど大分きつかったんだろ?」
「そ、それは……」
「あの時はアリアがいたから大丈夫そうにに振る舞っただけで君も随分とショックを受けた……君、英雄譚とか好きそうだからなあ」
「……確かにショックだったよ。あんなに辛い物語は初めてだったし、それに……あまりにも救いがなさ過ぎたから……正直、ああなる前に何とかできなかったんじゃないかって思う」
シヅキは俯いてそう言った。
「ん〜……正直、あれ以外に国が存続できる方法はなかったと思うよ」
「でも、もしも、もう少しみんなが冷静だったら……」
「もう終わった過去に『もしも』を持ち出してもなあー」
「で、でも……」
「それに――」
シヅキが何かを言おうとした瞬間、ロキが言葉を被せた。
「人が感情だけじゃなく理屈で行動できるなら、世界はもっとマシになってる……ま、理屈で動き過ぎても世界は壊れるけどね……思うに君は人に期待しすぎなんじゃないか?」
「………」
シヅキは俯き、押し黙ってしまった。
ロキはそんなシヅキを見て、深く溜息をつき、語り始めた――
「……そうだなあ人はなんで物語が好きだと思う?」
ロキは突然そんな問題を出してきた。
「え?えっと、別の世界を見れるから?……わかんない」
「単純だからだよ」
「え?」
「物語なんて虚構で作られた世界は、おきれいで単純で解像度が低いからだよ」
「えっとそれってどういう――」
「世界が美しいものだって前提があってどれだけ暗い話でも憎むべき諸悪の根源があって矛盾が少なく単純明快で全てが虚構だから安心して見れるからだよ」
「あっ」
「そもそも現実は醜くさで溢れてるから現実何だよ。現実では全ての元凶がいることの方が珍しい。誰も悪くないのに壊れる。単純明快では決してなくむしろ現実は複雑矛盾でできてるんだから」
「……」
「人はそんな現実に住んでることを認めたくなくておきれいで解像度が低くて単純明快で何より虚構の世界だからどうなっても安心して見れるから人は物語が好きなんだよ」
ま、そうじゃない場合もあるんだけどね?単純にその物語が好きだとか――
「つまり人が物語を見るのは現実逃避という意味合いの場合もある。その単純明快でおきれいな世界の住人になって浸る事で現実に対する醜さや不安を忘れられるからね?」
ロキはゲームを続けながらそんな身も蓋もない事を言い出した。
「あはは、厳しいな…でもまあなんとなく分かるよ」
シヅキはそう言いながら頷いた。
「でも君は違うだろう?」
「え?」
「おいおい忘れたのか?君は僕にこういったんだよ?『君みたいに現実を知って、それでも平然としてる奴の隣で。君の隣で、同じ景色を見て、それでも逃げない人間になりたい』ってね?」
「うっ!」
シヅキは恥ずかしそうに顔を隠した。
「君は物語の世界を拒んだ、おきれいな物語の住人であることを辞めたんだ。現実を知って歩むことを選んだんだ。そんな君だから僕は相棒になることを許可したんだぜ?」
「ロキ……」
「ちゃんとその事を誇れ。少なくともそれはきっと称賛される筈の選択何だから――」
ロキが笑いながらそう言った――
(……もしかしてロキはこれでもロキなりに僕の事を励ましてくれてるのかな……)
「ぷっくっあははっ」
シヅキは笑いが込み上げてきた。本当に嬉しそうに晴れ晴れとした笑顔で――
「ありがとうロキ、元気出た」
「そりゃあ良かったね?」
「それにしてもロキって物語嫌いなの?大分辛辣に言ってたけど……」
「……物語自体は嫌いじゃないよ。ちゃんと物語自体は教訓や生き方を選択する方法を学べるものも多いし」
「……まあ確かにじゃあ何でそんな辛辣だったの?」
「……ご都合展開が嫌い何だよ。まあ物語って人が作る世界って時点で多少なりとも作者の思想が入って歪むじゃん?」
「まあ、人が作ってる物だから多少はそうだね……」
「それで発生した歪みで物語全てが狂わないようにする為に世界自体を歪めて修正する……まあ、要するにくだらない辻褄合わせ、それがご都合展開って事なんだよ。必要なものって思ってはいるけどさあ」
「ああ、言われてみればご都合展開ってそういうものなんだ?」
「まあ単純に作者が未熟で完璧に世界を書けなかっただけって場合もあるけど、あまりにも現実らしくなさすぎてねえ?まあ作者の思想を伝えるのも物語なんだろうけどそれが苦手ってだけで」
「へえ〜」
ロキが少し苦手そうに言ったがシヅキは感心した用に頷く。その時アリアが帰ってきた。
「見つけました〜あれ?何かあったんですか?」
『何もないよ』
「?そうですか?」
そうして3人はゲームを続けた――
――1時間後
「僕ちょっとトイレ言ってくる地下牢にトイレなくてさあ」
ロキがそう言って立ち上がった。
「わかりました気を付けて行ってきてください」
「またいなくなんないでよー」
「へいへい」
ロキはそう言ってトイレに行って帰ってきた時に――
「おーい帰ってきたぞー……シヅキ?アリア?」
「むにゃ」
「くかー」
2人はいつの間にかぐっすりと寝ていた。
「あ~そう言えば一晩中待ってたって言ってたっけ?もしかして寝てなかったのか?」
まあ暗殺者が襲ってきた時に倒れられても困るし――
「まあいろいろ疲れてただろうし……主に僕の罠や本のせいで安心して疲れが一気にきたのかな?寝かしといてやろ」
ロキはそう言い布団をかけた。
「良い夢みろよ?」
ロキはニヤリとそう言った。
――3時間後
屋敷が妙に騒がしかった。
「お嬢様ーーーー!!」
ドタドタとアリアの部屋に最近でてこなかった執事が叫びながら入ってきた。
「お嬢様大変です!ってロキ殿!?いつの間に帰ってきたので!?」
執事はロキを見た途端腰を抜かしそうな程に驚愕した顔で硬直した。
「お?、あんたは執事の……グレツだっけ?」
「愚劣!?伯爵家に使えて50年アリア様御用達の執事グランですぞ!」
「冗談、冗談」
「……全く冗談に聞こえませんでしたぞ?」
目は一切笑わずにロキは笑った
「……それにしても、僕がいる事に妙に驚愕してたなあ?僕がここにいると不都合でもあるのかい?」
執事はギクリとした顔で目を反らし慌てて一気に話し始めた
「い、いえ私は決してロキ殿がいなくなれば報酬を払わなくてすむななどと全く思っていませんぞ!」
執事は大慌てで大声で否定した
「ふ~ん?随分とあっさりゲロったじゃあないか……僕も影が薄い君の事をすっかり忘れていたよ〜まるでそういう本職かと思うほどにねえ?」
「影が薄いのが本職ってどういうことですか!わ、私は執事ですぞ!決してそんな酷い本職ではないですぞ!」
ロキがそんな暴言を言い出し執事は盛大に絶叫したもはや涙目だ
「怒こってるんですか!だとしたら謝りますから許してください!」
だが執事は何故か酷く疲弊した様子で、何故か顔のおでこと手に煤が付いている
「その顔と手の煤どうしたの?」
「え?あ!す、すみません、ついさっき慌ててたせいで火が付いていない暖炉に突っ込んでしまって」
執事は一気に焦ったようにそう言い出した
「ふ~ん?……執事ともあろうものが身だしなみの確認を怠るなんて……本当によっぽどの事があったのかい?」
ロキと執事のグランはそんな会話をしていたがあまりの騒がしさにアリアとシヅキが寝ぼけながら起きて出てきた。
「むにゅ……なんの騒ぎですの?」
「ふあ……もうちょい寝かせてよ……」
「お、シヅキ、アリア起きたのか」
執事ははっとなったように真剣な顔でアリアに話始めた。
「お嬢様落ち着いて聞いてくだされ……当主様が」
「お父様が帰ってきたのですか?私話したいことがありましたの」
執事の言葉を聞いた途端アリアは一気に目が覚めて真剣な顔になった。
「伯爵家当主にしてアリア様のお父様リュミエールアレキサンダー様が……」
執事は酷く辛そうな顔で言い淀んだ
酷く嫌な予感がした
……それ以上の言葉を聞きたくないと全身が叫んでいる気がした
「……お、お亡くなりに…なりました」
――心臓の鼓動だけがやけに大きく響いた
アリアの視界が歪む 音が遠くなる 言葉が理解できない
「――え?」
何故か息がしづらくなって視界が真っ暗になり声が出ない
世界が酷く遠くなった気がした――
そんな衝撃の知らせに
畳み掛ける理不尽に
アリアの瞳が絶望に染まった
不幸は重なるものなんですね誇りに思っていた物がこれ以上ない程に落とされて今までの価値観がぶっ壊れてそれでもなお決意を持って前を向いた瞬間叩き落とされるとかこれぞ現実の不条理と理不尽ですね




