第16話 ……救いを
とある英雄の物語の真実今回はシリアスで重い回です
地下牢で本を開いたアリアは、その文字を読んだ。
「はくたく?」
「へえ? 白澤ねえ?」
ロキは楽しそうに笑った。
「ロキさま、知っておらっしゃるのですか?」
「白澤って、まさかあの白澤のこと!?」
「シヅキさま、まで!?」
シヅキとロキがその名に
反応するのを見て、アリアは驚愕する。
「知ってるも何も、すっごく有名な神獣だよ! 妖魔や神々の中で、唯一魂を操れる、何千年も昔の最古の獣って言われるくらい何だから!」
「そ、そんなに有名なんですか……」
「まあ、神獣の中でも魂を操作できる唯一無二の存在だからね。妖魔の中では知らない奴はいないな。というか人間達にも結構有名なはずなんだけどな」
「そ、そうなんですか……全然知りませんでしたわ」
「ちょっと見せてみて」
ロキがアリアの持っている本を覗き込む。
――だがその本には確かに文字は書いてあるが、ロキでも分からない未知の文字だった。
しかも最初のページに「はくたく」らしき文字以外なく、他のページも真っさらだった。
「……いや、そもそも何でその文字以外真っさらなんだ? 書物として駄目じゃん。それに見たこともない文字だな……アリア、お前この文字が読めるのか?」
「え? あ、はい……普通に読め……あれ?」
ロキが呆れたように聞くと、アリアは答えようとしたが、途中で首を傾げた。
「……どうした?」
「この文字、よく見ると、元の文字に私が読める別の文字が少し浮いて重なってますわ……感情の色が形作ってるようですわ。この仕組み、どうやってるんでしょうか?」
「お前、何意味のわからないことを……今なんて言った?」
ロキは何を言っているのか分からない顔をしてい
たが、途中で真剣な目でアリアを見て聞き出した。
不思議そうにアリアは答える。
「え? この仕組みどうやってるんでしょうかのところですか?」
「違う、その前の……お前もしかして、この結界の中で魔眼を使えるのか?」
「? ええ、もちろん使えますわよ?」
「は? おかしいだろ、そもそも魔眼って――」
――瞬間、アリアが持っている本が急に動き出した。
『!!??』
本が勝手に浮き上がり、インクが滲むように文字が浮かび上がってくる。
文字自体も蛇のように動き出し、本から飛び出してきた。
「うわあああ!? 何これ!!」
「こ、怖いですわ、シヅキさま!!」
ロキは無言でシヅキとアリアを置いて、速攻で逃げ出す。
――だが、意識牢獄のせいで出られない。
「……忘れてた、どうしよう」
「……ロキ」
その間も文字は壁や床を伝い、地下牢の隅々まで広がろうとしていた。
「これはどう考えてもヤバいやつだな……本当にどうしよう」
「だ、駄目だ、囲まれた!?」
「あわわわわ……」
――瞬間、文字が地下牢を隅々まで埋め尽くすと光りだし、三人を包んでいった。
「くっ」
『うわあああああああああ!』
バタン――
三人はどこかに消えてしまった。
ーーーーーーーーーーー
ジー……
気がつくと、三人は演劇場らしき場所の観客席にいた。
――そう、演劇場だが一体何の?
ガチャッ
唐突に演劇場の幕が開く。
次の瞬間、三人は何の変哲もない村にいた。
声は出せず、自分の姿も見えない。幽霊になったような気分で、意識はぼんやりしていた。
――その時、どこからか声がして、自分たちはこれから起こることを見なければならない気がした。
昔、昔、何の変哲もないとある国の辺境にある村で、村人の二人から何の変哲もない子供が産まれた。
両親は願いを込めて、『ラグリス・リュミエール』と名付けた。
その子供はすくすくと育ち、ごく普通に英雄譚が好きで、ごく普通に剣の練習をし――
ごく普通に絵本の英雄に憧れていた。
そのため、いつも普通にチャンバラをしていた。だが歳を重ねるにつれ、現実が見えてきたのだ。絵本にいる全てを救える英雄にはなれない、と。
しかし憧れも捨てきれず、仕方なくいつもチャンバラをしていたため、騎士になる妥協をした。そのためにずっと努力してきた。
すべては、この国民を救うために――。
ーーーーーーーーーーー
目が覚める。
昔の夢を見た。
何故か絵本の中のようだったが……ああ、本当に嫌な夢を見た。
「ハハハ、何を今更未練がましい」
男――ラグリス・リュミエールは、自分の国を見た。
そこには荒れ果て、人々が醜く殺し合う地獄のような光景が広がっていた。
俺はその中の一人に頭を殴られ、気絶していたのだ。
子供の頃、兵士になりたての頃はまだ良かった。
退屈で、刺激のない――
だが平和で安心できる場所だったあの事さえなければ……
十年前、この国に未曾有の災害が襲った。
何日も、何日も忌まわしい朝日が続き、ずっと雨が降らず、井戸の底が割れて水が枯れて植物が育たなくなった。
そうして雨が降らなくなって3年が経った。
そのせいで、この国始まって以来の飢饉が起きた。
国王ですら腹をすかせ、バタバタと餓死していった……それだけならまだ良かった。
散々雨が降らなかったくせに、
飢饉が始まって3年後ぐらいにようやく雨が降った。
――未曾有の水害として
家が沈んだが、それが2年も続き、何処の家も壊れ続けた。
もう国のお金も何もなかった、あのふざけた異常気象のせいで使い切ってしまった。
王様は税を上げて何とかしようとしていた。
王様は本当に頑張ったのだ。
でも民衆はもう我慢できなかったらしい。
暴動が起こり、この国は内乱状態になった。
くる日もくる日も兵士と民衆が殺し合った。
狂っている。俺達は本来助け合う間柄なのに――
――それが5年前の話だ。
未だに誰が起こしたかもわからない内乱は続いている。
命は重い?尊い?
何もかも全部嘘だ。
俺の育った村の人たちは、とうに全員墓の中だ。
『大人になったら絵本の英雄のように国を民を守るんだ』
昔の俺の声が聞こえる。
くだらない夢はもう覚めた。
この国はもう終わりだ――。
――でも願わずにはいられない。
どうか、本当に神様がいるのならば――
『罪深き俺たちに救いを』
どうしたって願わずにはいられなかった。
だがその願いが届いたのか、千載一遇のチャンスが舞い降りてきた。
「王様の奨励って、何なんだろうな、ラグリス」
「……どうせ『また』何処かの村を潰すんだろ、ベルサ」
「ラグリス……」
気が重い。王様から奨励されたとき、碌なことが起きたことがない。
ああ、帰りたい。帰る場所もないけれど……。
「集まったか、皆のもの」
そんなことを考えていると、王様がやってきた。
ヒョロヒョロで目は虚ろ、病弱そうだ……昔はこんなのじゃなかった。
民衆が城を攻撃してくるから怯え続け、こうなってしまったのだ……。
そして何より、あの事件のせいで――
「お前たちには、とある存在と交渉、または狩ってもらう」
――とある存在? 一体何だ――
「名は白澤」
「は?」
思わず声が漏れた。
いくら何でも、言っていることが無茶苦茶だ。遂に狂ったのか? 王様に無礼極まりないのは分かっているが、どうしてもそう思ってしまう。
辺りを見渡すと、みんなも固まっている。
そりゃあそうだ。あの白澤だぞ?
何千年も存在している最古の獣で、本物の神獣。何処にいるかも分からないし、交渉はまだしも、「狩ってもらう」って何を言っているんだ。
――俺たちは混乱した。
王様は続ける。
「白澤の能力は知っておるな?
唯一魂を操り、意思を歪めて思うがままに改変できる存在だ。その力を使って民衆を洗脳し、内乱を止めるのだ」
――その言葉に、場の空気が凍る。
ラグリスの頭の中で「は?」という声が繰り返される。隣りにいるベルサも息を詰めた。
「……そんな――そんなことが可能だと――?」
王は小さくうなずき、虚ろな目で城の壁を見つめる。
「可能かどうかは問わぬ。必要なのだ。国を救うためにな。知っておろう、この時、我が国は何をしているかすら分かっていない。愚民ども――つまり害虫によって滅びかけている」
「なっ!?」
王様は今、何を言った?自分の国の民を愚民呼ばわりした挙句、害虫だと?
王様にあるまじき暴言だ。
「王様……何を……!?」
隣のベルサが思わず喋ってしまう。
思わず声を詰まらせた。胸の奥が冷たく凍りつく。
「まさか……あの時、第1王女エリサ様が民に殺されて……そのせいでご乱心を……!?」
「黙らんかあああああ!!」
「ひっ!」
「お主今何といった!?乱心だと!ふざけるなあんな愚民どもと手を取り合おうとした優しかった娘を抵抗しなかった娘を一方的に恥かしめて殺したあいつらの方が乱心しておるのだああああ」
王様は血涙を流しながら叫んだ。
エリサ王女を見つけたのは、俺たちだった。
生きていた頃は美しく、本当に優しい人だった。
メイドや一般兵の俺にすら心配してくれるほどによく怪我をしていた動物を拾ってきて手当していた。
虫一匹殺せない優しすぎる子誰もがそう思っていて愛されていた。
――あんな酷い死に方をしていい人ではない筈なのに
エリサ王女の亡骸は、あまりにも原形を留めていなかった。
鎖の跡が肉に食い込み、
皮膚は焼け爛れ、
その目は――
もはや、何も映していなかった。
見ているだけで吐き気が込み上げてきて直視できなかった
あんなのは、人の死に方じゃない。
そんな娘の亡骸を見た瞬間から王様は壊れた。
亡骸を誰にも触らせず抱いて離さず一晩中狂ったように笑いながら泣き続けたのだから。
あの時兵士が王様を落ち着かせようとしたが
王様は一瞬耐えようとしたが王女の亡骸を見て亡骸の前で何かを誓った
あの時から王様は壊れた
「これは乱心ではない。お主も分かっておるだろう。この状況がどうして起こったのか!」
――そう、そうなのだ。兵士なら一度は考えてしまうのだ。
もし、民衆がもう少し理性的だったら……
踏みとどまって、こんな状況になっていなかったのではないか?
もし、民衆がもう少し賢ければ……
俺たちと協力して、今頃は復興が進んで、この国は元の平和な国に戻っていたのではないか?
もしも、もしも、もしも……
....そんな抗い難い言葉が反響する
「わかっておろう。愚民どもを白澤の力で洗脳できれば、この国は元に戻る。わしの娘も救われるのだ」
ゴクリ……誰かの喉が鳴る。
その言葉は悪魔の囁きのように、抗えない魅力を帯びていた。
「実は白澤がこの近くにいると、確かな情報が入ったのじゃ。今、この時しか、この国を救うチャンスはない。わかっておるだろうな?」
もはや、それ以上の言葉はいらなかった。
みんなギラギラした目をしていた。
かくいう俺も、白澤の力が欲しくてたまらなかった。
「このチャンスを逃せば、この国は終わりじゃ。今まで温存していた武器や魔道具を全てお主たちに預ける。何としても白澤の力を手に入れて、この国を救い、英雄となれ!!」
オオオオオオオオオオオオ……
大熱狂だ。俺も叫んでいる。
どんな手を使ってでも、この国を救ってやる!
――
ザッザッザッ……
俺たちは歩き続けた。
遂に、白澤がいると情報にあった場所にたどり着く。
そこには――本当に神々しい獣がいた。
目がいくつもあり、姿形は化物のようだが、どこか懐かしい。
その存在は美しく、威厳に満ちていた。
「ああ……何て美しい」
『人間、何のようだ?』
喋った……いや、神獣だからそういうこともできるのか。
俺たちは全てを白澤に話した。
『ほう? お前らは俺に人間を洗脳しろと?
勿論断る。俺はそんなことをする気はない』
心のどこかで分かっていた。
だが、もう俺たちには後がない。
力づくでその力を奪うしかなかった。
『お前ら、何を!?』
――戦いが始まった。
白澤は異常に強かった。
俺たちの攻撃を一撃も受けず、光の玉を浮かせて操り一方的に蹂躙する。
神獣と言われるだけはある。
だが、俺たちには後がなかった。
どれほど疲れても、死にかけても、止まる理由も道理もない。
ずっと戦い続けた。
三日三晩、戦った。
疲労によってようやく白澤に傷を付けることができた。
鋼のように硬かったが、何度も同じ場所に攻撃を当てた成果だ。
本当に奇跡に近かった。
だが、血が出て肉がえぐれた瞬間、再生してしまった。
『本当にしつこい……付き合ってられない』
白澤はそう言って去った。
戦った兵士は全員死んだ。
残ったのは俺一人。
……喉が渇いた
……腹が減った
朦朧とした意識の中、目の前にある肉を見た。
意識が朦朧としていた。
酷く空腹で、喉も渇ききっていた。
――目の前に肉があった。
極限状態だったためその肉が何だったのかよくわからずとも血で喉を潤すため肉で空腹を満たすため
――その肉を食べた
食べた瞬間、吐いた。
だが、それでも食べた。
死にたくない
生きていたい
死ぬわけにはいかない
生きなくちゃいけない
その肉を獣にように貪った
吐きそうになりながらそんな肉を食べている自分に生理的嫌悪が産まれながら
それでも生きるために貪った
……後で気づいたが
それは白澤の肉だった
肉を食べた瞬間、白澤の力の一欠片が俺に宿った。
国に帰ると、民衆が王様を処刑する寸前だった。兵士も、魔道具も、何もなかった。
――守る者は、もう誰もいなかった。
『殺せ殺せ殺せ』
狂ったように叫ぶ民衆に向かって白澤の力を込めて一言呟いた
「やめろ」
空気が凍った。
民衆が止まった。
一気に感情が抜け落ちたように、無表情になり――
俺の命令に従った
……俺は民衆を洗脳し、英雄となった。
……誰もが笑っている
狂ったように働き続けている
笑顔なのに目が虚ろで
同じ言葉を繰り返し続けて感謝の言葉を何もない場所で喋る
……何かが壊れた気がしたそれも取り返しの付かない何かが
この国は持ち直した。
復興し、元の国に戻った。
――まるで夢だったかのように。
だが違う。
俺が欲しかったのは、そんなものじゃない。俺は英雄なんかじゃない
俺は――
……
「本当によくやった英雄よ!遂にあの愚民どもに裁きが下ったのだクハハハハハハハハハハハハ」
「英雄よお主に公爵の位を授けよう」
「いいえ王様。国を救えたのは私一人の力ではありません。ですから辞退させてください」
「そうか?。だが褒美を授けねば示しがつかぬ。
お主には男爵の位を授けよう」
「ありがとう…御座います一つだけお願いしていいですか?」
「申してみよ」
「私を何処か遠い辺境に飛ばしてください私はそこでゆっくり出来ればそれで満足ですから」
「……よかろう」
罪を自覚してくせに外っ面だけ取り繕って称賛されている自分に酷く吐き気がする
俺は英雄なんかじゃない。
罪を償わず逃げた罪人だ。
間違いを正す勇気すらない、ただの臆病者だ。
俺が見たかったのはこんな光景じゃなかった筈だったのに
民衆を洗脳した罪悪感に蝕まれ、俺は逃げるように辺境の城に籠った。白澤の力で自分の罪悪感を消し、生活を送った。彼女もでき、子供もできた。女の子だ。アリスという名前を付けた。
本当に優しくて
本当に可愛い子だ
「お父さんだ〜いすき」
そう笑って抱きついてくる
アリスは演劇が大好きで毎日のように行きたいと俺にせがんでくる将来は演劇の俳優になりたいらしい
幸せだった、だが、アリスを育てているうちに、どんどん「自分は幸せになっていいのか?」という罪悪感が膨らんでいった。
罪悪感が膨張する一方、白澤の力に耐性が付いてきた。
もともとその力の持ち主だから、効果が薄くなっていたのだ。
俺は誰かにこの真実を知らせるため、自分の魂を込めて本を書き上げた。
――
遂に本が完成した役目は終わったその時――
「お父様……」
アリスが入ってきた自分を心配したのだろう
バシッ
「こっちに来るんじゃない!」
娘を見た瞬間、罪悪感が膨れ上がり、ついに娘を叩いてしまった。
怯えた目で見られて――ああ、もう駄目だ。
その翌日に一人でいる時、刃物を首に押し当てた。
「許してくれ……許してくれ……」
故郷の村を焼いた俺を許してくれ……
父さん母さん、俺だけ生き残ったことを許してくれ……同志たちよ、お前らを洗脳して英雄と言われた俺を許してくれ……
民衆達よ……
だが、中々決心が付かないどうしても死にたくない
ここで何もかも忘れて妻と娘と一緒に暮らしたい
娘が演劇に立って夢を叶える姿を見たい
娘の花嫁姿を見たい
妻と旅行に行きたい
ずっと3人と幸せに暮らしたい
そして――
『本物の英雄になりたい』
最後の最後で溢れるのはそんな後悔ばかり
我ながら鬱屈とした未練ばかりが溢れてくる
これから起きることを知っているから尚更――
ギイー
その瞬間、誰かが入ってきた
――娘だ、昨日叩いた頬がまだ腫れている
「お父さん」
怖がりながら、だが自分を見て近づいてきた
その瞬間アリスを見た時に途方もないはち切れそうな程の罪悪感に襲われた……だがおかげで実行する決心が付いた
――決心がついてしまった
「ハハハハハ」
乾いた笑いが漏れるとんだ皮肉だ娘には一生物のトラウマになるだろう
ああ、どうか……もしも本当に神様がいるのならば――
『どうか神様、この罪深き俺に――』
『 』
――その願いがどれほど残酷でも
どうか切に願う
叶わないことと知りながら
「お父さん? 待っ!!」
娘は手を伸ばす
だが間に合わない
ドス――
世界は白くなる。
父の血を顔から被った絶望の少女を残して――
ジー……
三人はまた最初の演劇場に戻ってきていた
――救いのないまま、幕が閉じた。
瞬間意識がブラックアウトして何処かに引き寄せられる気がした
ーーーーーーーーーーー
……三人は気づいたら元の地下牢にいた
長い長い白昼夢を見た気分だった
しばらく呆けていたが少しづつ何が起こったのかを理解し始める
「うわあ……これは流石にないわー」
「……こんなのってあまりにも救いがなさすぎる」
ロキが呆れたように呟きシヅキもショックを受けていた
「はあ、はあ、はあ」
アリアは誰よりもショックを受け打ちひがれていた……当然だ
今までの価値観が崩れたのだから。
信じてたものは壊れ
誇りにしていたものは地に落ちた
「……違う」
「こんなの違う」
「こんなの……救いであっていいはずがない」
こんなのが私が誇りに思っていた英雄の本当の姿なのか――
「おえ……」
「アリア、大丈夫――?」
本を強く強く握る
「私は……」
本を抱きしめる
まるで、それがまだ生きているかのように
涙が溢れて溢れて止まらない
そうしてこの物語は終わった
――何1つ、救いのないまま。
偽りの英雄は何の救いもなく娘の目の前で自殺した……現実でも輝かしい英雄譚の裏側は大体こんなものなんじゃないですかねえ?まあ偏見かもしれませんけど




