37.『退屈』
「たーいーくーつー、ひーまー。カムイきゅんたちだけずーるーいー」
「仕方ないでしょ。武芸部の行事に、無関係の生徒が同行は許されない。そう、許されないのよ……」
文句を言うフィリアを諭すメルトは、ぐっと悔しそうに拳を掲げた。
「お前さんも行きたなかったんだな……」
女子ふたりの気持ちを汲んであげたいが、武芸部ではない彼らにはどうしようもない。
休日での交流試合。追いかけようとも考えたものの、遠い上に課題があるので、行けるだけの余裕がなかった。いつもならカムイとケイに教えてもらい早く済む課題も、ふたりがいなければ進みも遅い。
「どうしてその問題で詰まるの」
「メルトの鬼ー、いけずー」
「ワタシだってカムイ様に頼まれていなかったら、教えてなんてあげていないわ。でも仕方ないじゃない。どうしてもと懇願されたら受けない訳にはいかないでしょ。そ・れ・に、帰ってきたらご褒美が……きゃはっ」
彼らの課題が難航するのを見越して、代わりの先生役をメルトにお願いしていたのだ。カムイくらいに分かりやすく、やはり名家のお嬢様なんだと、バンとフィリアは改めて思い知った。
「さすがカムイ。抜かりないな」
「当然よ。カムイ様は何でもお見通しなんだから」
「どうしてお前さんが鼻高なんだよ……」
カムイが凄いはずなのに、まるで自分のことのように胸を張るメルト。成長がまだ足りないなとバンは密かにとある部分の感想を胸に抱き、バレたらまずいと思考を切り替えるべく話を振った。
「カムイとケイは分かるけどよ。どうやってアリスはついていったんだ?」
「リスっちは、マネージャー候補として同行したらしいよ。私もマネージャーになりたいって言えば行けたのかな?」
「…………納得いかないわ」
バンッと机を思い切り叩いて、メルトは椅子が吹っ飛ぶ勢いで立ち上がる。とても不服そうな表情でだ。
「ど、どうしたよ、メルトさんや」
「納得いかないと言ったの」
「それは聞こえたけど、何が納得いかないのかなーと」
気迫に圧倒され、引き気味のバンは勇気を振り絞って疑問を口にする。
「決まってるでしょ。ワタシが行けなくて、どうしてアリスが行けるの!」
「今フィーが言ったじゃねえか。マネージャー候補として一緒に言ったって」
「では、ワタシも武芸部のマネージャーになればいいのね」
「考え方がフィーと同レベルじゃねえか! 深呼吸でもして、一旦落ち着けってば」
鎮まりかけた感情が、ちょっとしたきっかけでぶり返す。
メルトの場合、アリスがカムイと一緒に行ってしまった事実が、何がなんでも納得したくなかった。
「――ワタシ、行くわ」
恐らくこうなるのではないかと、バンは予見していた。鈍感なカムイならいざ知らず、絶賛片想い中の彼はそういう想いに敏感になっていた。
明日ならもう間に合わないと諦めさせられたので、今日は課題を教えさせることに集中してもらう予定だった。何故なら彼も巻き込まれる確信に近い自信があったのだ。
しかし、幼馴染みの作戦を見事にぶち壊すは、やはりフィリアなのは運命なのかもしれない。と言うより、薄々こうなる気はしていた。長年、一緒に過ごした時間で彼女の性格の把握は済んでいる。……恋心以外はになるが。
「ワタシひとりでカムイ様と邂逅を果たすのは容易だけど、怪しまれると困るわ。仕方ありません。特別にアンタたちふたりも一緒に連れていってあげるわ。喜びなさい」




