14.『部活』
「部活やろうぜ!」
嬉々として親指を立てて満面な笑みを、合流したカムイたちに見せつけるフィリア。隣のバンは素知らぬ顔で、何処か遠いところを眺めている。
「まずは座らない? 食べながらでも話は出来ると思うよ」
「そうだね!」
手を振り上げてから下ろし、再度親指を立ててケイの提案に乗った。フィリア以外の視線がとある人物に集中する。
「すぐに分かる……」
注目の人物は決して視線を合わせず、彼らにそっと告げるのだった。
「――偶然その場面に出くわした、と」
担架で運ばれていた生徒の話を聞いたカムイが顎に手を当てて考え込む。魔法食研究会のひとりらしく、お腹を壊して保健室に運ばれたと。
学園では、授業以外にも生徒主導で行う行事が幾つかある。学園内にある売店もそのひとつだ。
生徒主導とは言え、学園の許可を取った上で執り行われる。が、安心してはならないのは、ここが魔法使いたちの学舎であること。問題が発生した場合は、極力生徒たちで解決するのが暗黙の了解となっている。
本当か否かは不明だが、過去には魔界との交信を目的とした部活が申請され、受理されたのだとか。申請した生徒たちが成功させたのかどうかはわかっていない。何故なら、学園から彼らは消えたからだ――。
「部活かぁ。やってみたいとは思ってたけどよぉ、数が多くてどれが良いのかさっぱりだぜ」
「僕はてっきり、新入生大歓迎、みたいに誘われると思ってた」
「昔はあったらしいが、今は生徒が自ら行動することに重きを置いているんだろう」
物騒な話も少なくはない。だが、本来は授業ばかりでは息が詰まるので、魔法使いらしく自主的に何かをやってみろ、と言う学園側の粋な計らいが始まりである。
あれが怖い、これが苦手――そのように物事を避ければ魔法使いとしてやっていけない。度胸や心構えを身につける通過儀礼や、一種の息抜き、娯楽と考える者が大半だったりする。
もちろん、部活の中には大会が開催されるほど有名なものもあるため、将来の夢への架け橋にもなりかねないのだ。
「フィリアはやっぱり、誘われた魔法食研究会に入るのか?」
「話を聞く限りじゃと、珍味好きの集まりにしか思えんぞ」
「そこから美味を見つけるのが楽しいんだよっ、たぶん!」
恐らくよく分かっていないが、食べ物と楽しそうだからのふたつの理由だけでフィリアにはじゅうぶんなようだ。
「せっかくだし、今日の放課後。部活を見て回るのはどう?」
魔法食研究会はともかく、部活に興味を抱いたカムイが切り出した。
「お、良いねぇ。行こう行こう」
「そういえば、部活に入らなかったらデメリットとかあるのかな?」
カムイの提案に同意したバンに続いて、ケイが不安そうな声を出す。眼帯少年が安心させるべく、即答するように首を横に振った。
「部活に参加しなかったとしても、学園がとやかく言ったりはしない。あくまで自主活動の延長だと考えたら良い。メリット、デメリットがあるかは自分次第」
「大丈夫だよ、ケイケイ。何かあっても、もしかしたらわたしが駆けつける可能性が、まぁ、あると思うような気がするから安心して!」
元気づけたいのか不安にさせたいのか、聞いている側は判断しかねる言葉選びだった。疲れて頭が回っていないとかではない。彼女はこれが平常運転なのだ。
誰とでも打ち解ける才能はあるが、誰かを説得する才能はないのだなとカムイは分析した。
「う、うん、ありがとう。僕もみんなと一緒に行くよ」
「そうこなくっちゃ」
嬉しそうにバンが、ケイの肩に手を回す。
「今日の授業は別々になるから、終わったらここに集合しよう」
カムイの言葉に全員が同意し、お昼休みは終わりを迎えた。




