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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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242/307

滝井伊寄・前

名鑑・二十五


五指登録・上の壱・境界


一定速度を超える固体の侵入を阻むバリアを張る。

バリアは非常に頑丈で、銃弾や砲弾にも容易く耐えられる。

バリアは無色透明で肉眼で見る事は出来ない。

バリアは使用者を中心に球状に展開される。

半径を大きくすればするほど消費電力が増える。

制限速度の設定はその場では出来ず、予め式に組み込んでおかなければならない。

バリアを展開する際に、展開予定位置に何らかの固体があった場合バリアは張られず、使用者の位置が変わってもその箇所だけ穴が開いたままになる。

また、バリア展開後、内側で新たに固体が制限速度を超えた場合、即座にこの幻術は解除される。

よって、バリアを展開したまま使用者が強化の式で高速移動したり、一方的に銃を使用したりする事は不可能である。

バリアで防げるのは固体のみである。

つまり、有毒ガスや酸性雨などは防げない。

消費電力が非常に多いため、五指登録を持たない者が使用するのは推奨されない。

開発者、使用者は秋野イズ。

「研究と休暇。どっちも出来るなんて最高じゃーあないの」


伊寄、睦規、海乃は無人島に来ていた。


「休暇扱いのまま仕事をしている、とも言える」


「ブラックだね研究者って」


三人は、研究所が所有する無人島で、開発したばかりの幻術を試用するために来た。

正式な研究員になってまだ一年目だが、三人は優秀さを認められ独自の研究をする事を許されている。

幻術の式を立てられる者は研究所内でも少ないが、海乃は数少ない選ばれた者の方だった。

海乃と同じ研究チームである事で研究は格段にしやすかった。


「二泊三日だし、のんびり行こーか。休暇でもあるんだしねぇ」


「まず泳ごう!ビーチが貸し切りなんだよ!」


「先にテントを張った方が良い。暗くなってから作業するのは難しい」


「そっかーそうだね。よーし!一瞬で組み立てちゃおう!」


巨大なテントを三人がかりで組み立てる。

転移の式で取り寄せた物である。

転移の式で一度帰らないのは雰囲気を楽しむためだ。


「うぉうりゃっ!」


伊寄は大きなハンマーで杭を打ち、テントを固定する。

伊寄の趣味は機械の破壊。

マイハンマーを無人島にも持参していた。


「ふぃー、完成かねぇ。なかなかの出来じゃない?」


テントに仮設トイレ、テーブルなど、必要な物は用意出来た。


「ああ。完璧だ」


睦規は意外と人を褒める。

ただし、客観的な評価に基づく場合のみだ。

それでも褒められるのは嬉しいと伊寄は思う。


「じゃあ泳ごうよ泳ごうよ!まだそんなに暗くないし!」


六月の夕方とは言えやや暑い。

海に入ればきっと気持ち良いだろう。

水着も中に着ているのですぐにでも泳げる。


「ボールを持ってきた」


「有能ぅ!先に三回落とした人が夕飯の用意だよう!」




「さぁさ皆様ご覧下さぁい!完全食だよ!」


「いつもと変わらないな」


「もっと無人島っぽい物食べようよー」


テーブルには完全食バーと完全食ゼリーが三つずつ並べられている。


「じゃあ何かね、トカゲの丸焼きとか訳分かんない木の実とかでも良いのかね?」


「無人島っぽいから良いよ!」


「良いのかよぅ」


楽しく夜を越し、明日からは本題の研究に入る。




はずだった。


「ひええええええ」


「こっち見てるよ」


「四メートルは超えているな」


先住民でも、クマでも、トラでもない。

ヘビだ。


「日本にもこんな大蛇いたんだねぇ、、、」


ライトに照らされたヘビは舌を出し入れしながら三人を睨んでいる。


「あれはアミメニシキヘビだね世界最大級のヘビ。本来日本にはいないけど、昔ペットとして持ち込まれたのが何らかの原因でここに住み着いたのかも」


「愛玩用として飼育が許可されていたのは何百年も前だ。今までに一匹くらいは船に忍び込んで海を渡った事もあるかもしれないな」


「なぁに冷静に分析してんのさぁ!?下手すると絞め殺されちゃうかもしれないんだよう!?」


「このヘビは単為生殖も確認されてるよつまりメスだけで子供を産む事があるんだよ」


海乃は依然解説を続けている。


「だからそれどころじゃないんだってばぁ!?」




そもそも、テントの外にいるヘビを見つけたのは伊寄が、外に設置された仮設トイレに行った帰りだ。

持っているライトが森の入口に佇むヘビを照らし出した時は心臓が締め付けられた思いだった。


「行く途中に見つけなくて良かったよ、ほんとぉ。いや今もピンチなんだけどさぁ」


伊寄が震えながら二人を叩き起こし、今に至る。


「このヘビは夜行性だ。つまり、今が一番活発に動ける。迂闊に手を出すのは危険だ」


「じゃあ無視して寝ろって言うの?出来る訳無いじゃーん」


「そこまでは言ってない」


睦規の後ろに隠れながら、己を鼓舞するかのように大きな声を出す伊寄。


「いよりってさー、ヘビ苦手なの?」


「怖いよ!トカゲとかワニは全然大丈夫だけどヘビだけは克服の余地無し!」


「初めて知ったよそんなの」


「ヘビと関わらないようにしてきたからねぇ!とにかく早く何とかしてくれよぅ!」


怖いかどうかはともかく、危険な事には変わりない。

今もシュルシュルと音を立てる大蛇を何とかしなければならない。


「こうしようよちょっとかわいそうだけど」


特に意味も無く三人で顔を近付け、作戦会議をする。

もはやヘビから目を離してしまっている。


「それじゃあ、開始!」




「風!」


海乃の指揮棒から風の刃が放たれる。

予定より早く使用実験をする事になった。

風の刃はヘビに当たり、怒りをあらわにした。

鎌首をもたげ、牙を光らせている。


「氷!」


睦規はゴム製のボールを投げてぶつけた。

試作段階の、凍らせるボールだ。

まだ完全に凍らせる事は出来ず、地面に一瞬繋ぎ止めるくらいしか効果は無い。

一瞬でも良い、動きを止められれば。


「ハンマー!」


恐怖を堪えながら、テントの陰からヘビに向かって全力で走る。

伊寄の手にはマイハンマー。


「ごめんよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


ちょうど良い位置に頭がある。

握り慣れたハンマーに走る勢いを乗せ、思い切り振り下ろす。

ヘビの生命機能は停止し、戦いは終わった。




「せっかくだからさ、食べてみない?」


「ワタシはパス」

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